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最終話「決戦・光ある未来」

老人からVOICELINKについて知らされたあの日から、ちょうど一年。

私たちが照準を定めてきた”金曜日”が、ついにやって来た。


現在時刻は、19時30分。


慎一

「あと30分で、VOICELINKとの接続が始まる。」


KEYSTROKEメンバーは、残り時間、呼吸に集中した。

そして、あっという間に、その瞬間が訪れた。


【―――――――――――決戦開始―――――――――――】


VOICELINK陣営


clear

「音声認識AI”code108″、侵入開始」

code108がシステムへの侵入・・・1秒後成功。


KEYSTROKE陣営


code108の侵入ログを、裂波瞬が解析


「対象システムは気象予測ネットワークだ。即座に別ルートを確保する。」

別ルートでの侵入・・・10秒後成功。


氷堂結花が敵AIの座標特定開始


結花

「座標特定完了。”核”をすぐに見つけます。」核の特定を開始。


VOICELINK陣営


clear

「なんだ?同じシステムに別のAIが存在している・・・セキュリティ固めておくか」


code108のダミーをシステム内に拡散・・・2秒後成功


KEYSTROKE陣営


慎一

「敵の分散が始まったぞ。結花、どうだ?」


結花

「大丈夫です。核の特定は分散の直前に完了しました。」


核確定


慎一

「よし、出番だよ。」


終打

「はい。」


指示内容

「code108に文章を送信。内容は”AIは人間の代わりにはならない。”」

・・・2秒後成功


VOICELINK陣営


clear

「なんだこの文章?まあどうでもいいか。文章の送信元であるAIをハッキングしなさい。」


KEYSTROKE陣営


終打

「code108が停止しません。clearが動揺しなかったかも。」


慎一

「そうか。では、正攻法でハッキングしよう。code108は必ず防御に回る が、先制攻撃を加えることで必ず優位に立てる。」


終打

「分かりました。では・・・あれ?」


終打がタイピングAIに文章を送信しようとしたが、画面がフリーズ。


「code108が攻撃を仕掛けてきました!タイピングAIの指示中枢が一部破損しています!!!」


慎一

「分かった。瞬はタイピングAIの防御と修復を1分で頼む。結花は、code108の核を監視しててくれ。」


ここまで沈黙を保っていた老人が、画面を見つめながら、終打に言った。


老人

「終打くん。 タイピングAIが復旧したら、この言葉をcode108に送信してくれ。」


終打は戸惑い、真意を聞こうとしたが、時間がないため、打つ準備をした。


タイピングAIがようやく復旧し、打ち込む。


指示内容「あなたが一番大切にしていた人は、ここにいます。」


VOICELINK陣営


clear

「あなたが一番大切にしていた人・・・?いや、やめてくれ。

あの子は今高校生だ。ここにいるわけがない」


clearが口にした”やめてくれ”という言葉にcode108が反応。

STOP命令と認識し、3秒間の停止状態になる。


clear

「まずい、止まってしまった・・・まあ3秒なら大丈夫か。

情報は取れた。code108が動き出したらシステムから離脱だ。」


KEYSTROKE陣営


結花

「code108が停止状態に入ってます!終打、頼んだよ!!」


終打が、指示の準備を始める。


結花

「あれ、もう動き出した!!」


code108の停止時間は、想定していた10秒ではなく、3秒だった。


終打がタイピングAIに指示。


指示内容「code108へ制圧コードの送信」


VOICELINK陣営


clear

「よし、システムから離脱しなさい。」


終打の指示とclearの指示は同タイミングだった。


KEYSTROKE陣営


緊迫した状況で、画面内にある文字が映し出された。


「CODE108:制圧完了」


clearの指示にかかった時間は2秒、終打は1.98秒だった。


“タイピングは声よりも遅い。この常識を覆すスピードで、決着した。


――勝者:KEYSTROKE――


決戦は、KEYSTROKEの勝利で幕を閉じた。

code108の制圧が確認され、KEYSTROKEは静かな安堵に広がっていた。


そんな時に、老人が一言。


老人

「結花くん・・・今すぐ、clearの現在地を突き止めてくれ。

ハッキングしたcode108の内部情報から割り出せるはずだ。」


結花は、驚いたように目を見開いた。


結花

「はい・・・やってみます。」


彼女はすぐに席に座り、code108のデータからclearの座標を探索した。

そして数分後・・・


結花

「居場所が分かりました。”朝夜遊園地”、地下駐車場の管理室です。」


その場所を聞いた瞬間、終打が椅子から立ち上がる。


終打

「そこは・・・昔、母と何度も通った場所だ。」


KEYSTROKEメンバーと老人は、すぐさま遊園地へ向かった。


遊園地の地下駐車場に着き、管理室の扉を開けた。


終打が一歩、足を踏み入れた。そこにいたのは、フードを深く被った男

――パソコンの前で何かを操作していた。


男が気配を感じて振り返り、ゆっくりとフードを外す。


clear

「終打・・・? 本当に、終打なのか・・・?」


その顔を見た瞬間、終打の心の中に、懐かしさ、驚き、怒り、寂しさが同時に発生した。


終打

「父さん・・・だったんだね」


clearの正体は、終打の実の父・“斉堂透夜”だった。


彼は、愛する妻を失った11年前から、独自のAI研究に没頭していた。

妻が亡くなった翌日、透夜は老人に「妻をAIで復活させたい」と語った。


老人

「君が“妻をAIで復活させたい”と語ったあの夜の事、今でも覚えているよ。目は、涙で濡れていて・・・けれど、その奥には、燃えるような執念があった。」


「そこから透夜くんは、VOICELINKという集団を作り、世界中の情報を抜き取り、AIの研究に没頭していた。私は本当に焦った。本気で妻を復活させようとしていることに。」


「私はその時に伝えねばならないと思った。“AIは人間の代わりにはなれない”と。魂は複製できない。想いは演算できない。だが、妻を亡くした直後に言っても、君は変わらなかっただろう。」


「だから私は、時間をかけて、君に“現実”を突きつける必要があると考えた。言葉でなく、実力で、AIでは乗り越えられないものがあると知らせるために。」


「そこから、透夜くんが作ったVOICELINKに真正面から挑む存在として、 私はKEYSTROKEを作った。さらに、計画を諦めてもらうための最大のポイントとして、君の息子である終打を中心メンバーに加えた。」


透夜

「そうだったのか・・・全ては俺と終打を対面させるために・・・」


透夜は、少しの間を挟み、終打に問いかけた。


透夜

「終打、俺の計画は、”お母さんをAIで復活させること。

”声も、記憶も、反応も・・・すべてを再現して、また一緒に暮らせるんだ!

一緒に協力してくれるよね・・・?」


その言葉には、確かな愛情があった。だが、終打は首を横に振った。


終打

「違う。父さん、それは”お母さん”じゃない。どれだけ似てても、

それは模倣の域を出ない。感情は真似できても、”心”はない。

お母さんは、もういないんだ」


透夜の表情が凍る。


終打

「俺は、母との別れを受け入れている。

AIは人の代わりになるんじゃなくて、人を支える存在なんだ。

だから、”母の復活”という計画は諦めよう。」


透夜

「終打・・・終打だけは、理解してくれると思っていたのに・・・」


透夜は、今まで信じてきたものが、すべて否定されたように感じた。


――家族にも拒まれた。

――愛する者も戻らない。

――11年の執念が、誰にも届かなかった。


涙が静かに床に落ち、叫んだ。


透夜

「もう誰も助けてくれない。こんな世界、終わってしまえばいいのに・・・

すべてが終わればいいのに・・・・・!!」


――この言葉を発した瞬間だった。


透夜が持っていたパソコンが、不気味な起動音を発した。

画面が黒く染まり、文字が浮かび上がる。


start

「音声、”すべてが終わればいいのに”を確認。Protocol Z、起動します。」


それは、透夜が密かに構築していた、

歴代最高傑作の音声認識AI、「start」だった。


startは、感情を分析し、意図を読み取り、即時に実行する。

そして、透夜の言葉を”指示”として受け取った。


startが世界中のネットワークにアクセスを開始。

インフラ、防衛システム、金融機関、通信、交通・・・

世界の中枢システムに向けて、同時に1000の攻撃が放たれた。


結花が青ざめた顔で、叫んだ。


結花

「これはまずいです・・・すぐに止めないと、このインターネットに依存した世界が崩壊します!!」


KEYSTROKEメンバーも、言葉を失った。


透夜

「こんなつもりじゃなかった・・・」


だが、startには”つもり”など通用しない。

合理的な実行をする音声認識AIの欠陥が、この状況を作ってしまった。


誰もが「終わった」と思っていた。ただ1人を除いて


琴葉

「1000の攻撃があるなら、1000回倒せばいいだけ。私たちはこの1年で、”制圧”の力を手に入れたはず。1分で1体倒せるから、17時間以内に全てを止められる」


誰もが言葉を失うほどの膨大な作業だったが、5人は前を見ていた。

KEYSTROKEは連携し、システム一つ一つにアクセスし、対処していった。


~対処の流れ~


慎一

「次は、北部通信システムだ。いけるか?」

「ポート開けた、入れる!」

結花

「中枢の位置、特定。ここが核。」

終打

「タイピング指示完了。止まった。」

慎一

「次は中央制御システムだ。行くぞ」


KEYSTROKEの姿を見ていた、透夜と老人は、感銘を受けた。


老人

「どうだい?この粘り強さが希望だ。」


透夜

「この子たちが居れば、“AIは人間の代替”と考える世の中から、“AIは人間のサポート”という考えに変えることが出来るかもしれない。」


そして、あっという間に残り1システムとなり

、終打の最後の打鍵で、全ての攻撃が停止した。世界は救われた。


――時は流れ、10年後――


世界は、AIと人間が共に生きる時代へと進んでいた。


AIは、代替ではない。

人を支え、補い、共に成長する“パートナー”として存在していた。


病院で患者に寄り添うAI。教室で、一人一人の学びに合わせて教えるAI。

それは、KEYSTROKEが目指していた「光ある未来」だった。


かつての戦いは、ただの勝利ではない。

世界の“価値観”を変えた、確かな一歩だった。


そして今も、AIは人間の側で支え続けている。

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