虎の尾
「エクエリア教……? ほんとなのか、ゴルガ」
試験官の元へ走る中、アンダゴルガが語った言葉にウンコが反応した。
アンダゴルガは襲来してきた敵、ガリベラはをエクエリア教の者だと言ったのだ。
「あぁ、あいつの剣に描かれた紋章。あれはエクエリア教に属している国の一つ、シャンデリアの紋章だ!」
――「じゃあなんだ、アクタ。今向かってきてる奴は、そのエクエリア教の奴の仕業なのか?」
カズヤは左側を後ろに右側を前に向け、死んだ左腕を庇う構えを見せる。
迫り来る受験者のゾンビ40体、それをたった2人で迎え撃つために。
「うん。いつか忘れたけど、見た事ある。これ、ガリベラって人の絶技だ」
アクタは『四肢類々』を使い、足をバネのように縮めた。
初撃でできるだけ減らすつもりだ。
「でもなんで、今来たんだ。だって――」
「――終戦の戦は来年だろ」
ウンコの言葉にアンダゴルガは、苦虫を噛み潰したような顔を見せた。
「決着がつくのが来年ってだけで。戦いは――」
「――既に始まったんだと思う。」
「それが……これか」
受験者達と激突するまで後2分もないだろう。
腹の傷は治してもらったが、未だ動かない左腕。
本来この傷は第三試験突破の為の必要な犠牲。
連戦など……ましてや強敵との戦いは考慮していなかった。
場所は違えど時同じくして、カズヤとウンコ、2人の思考が一致するする。
(どこか漠然と、1年は平和があると思ってた。)
だが、そこからの思考は違った。
(一年待ってくれるって。それまでに最強になればいいって、そう思ってた。)
ウンコは楽観的な思考を改め。
(一年待たなきゃいけないって。それまでお預けだと、そう思ってた。)
カズヤは悲観的な思考を改めた。
そして過程は違えど、辿り着く道は2人とも同じだった。
走っていたウンコが突然足を止め、振り返った。
「――ごめんゴルガ。お前だけ、試験官のところに行け」
「はぁ!? 何言ってんだお前。――まさか……!」
アンダゴルガも足を止める。
そしてウンコの意図に気づき、止める為捕まえようとした。
しかし、アンダゴルガのスピードでは素早いウンコは捉えられず、逃げられてしまう。
アンダゴルガが顔を上げた時にはすでに、ウンコは20mはるか先。
ウンコは爆発したように走っていた。
――怖い。足が震える。
逃げたい自分がまだいる。
だけど、ここで逃げたら……きっと一生後悔する。
焚き付けられたように走るウンコは、振り返ることすらしなかった。
アンダゴルガのスピードでは今から追いかけても、決して間に合わない。
「ッ! 馬鹿が! クソ、俺だけでも行くしかねえ!」
アンダゴルガがは振り返り、試験官の元まで走った。
仲間を助けるために。
(それにしてもあいつ、なんだあのスピード。あんな速かったか……?)
――(ごめんゴルガ。俺は、変わるんだ。1年先まで、逃げ回って最強なんて意味がない。ガンラガンラ戦みたいに、友達に戦わせているだけでいいのか。違うだろ……! 俺が目指しているのは最強だ! 最強は……格上相手でも逃げない! そうだ思い出せ! ザフネと戦った時に誓っただろ! ビビるんじゃねえ! 俺が友達を助けるんだ!)
――(本当のご褒美会は、ここからだったんだ! エクエリア教の野郎、最高かよ! 覚悟を決めろ。ゾンビ相手で気分は乗らないが、ここを超えると強敵が待っている!)
「アクタァァァ! すぐ終わらせんぞ! そのガリベラって奴、俺らが倒す!」
カズヤが叫び受験者ゾンビの群れに突撃。
「そうかなくっちゃ、カズヤん! いこうぜぇー!」
アクタも笑顔で突撃。
溜めていた足のバネが弾ける。
そしてムチのようにしならせた拳がゾンビの群れに炸裂。
その初撃で、8体ものゾンビを粉砕できた。
「ウッヒョー! 流石1位だぜ! このまま皆殺しにして、侵入者も――殺していこうぜ!」
過程は違えど、2人が辿り着いた道は同じだった。
ガリベラは暇つぶしの為、虐殺のためギルド試験に乱入したが、それは大きな間違いだった。
その行為は1年先まで眠っていたはずの2人の虎の尾を踏む行為。
世界のバランスを崩す程の強力な魂を持つ者、転生者の心を目覚めさせてしまった。
2人の目的は今や試験突破ではなく、ガリベラへと変わっていた。




