収穫の時
「何を泣いているクソ風情。貴様、そこまで殺すのが怖かったのか」
突然の号泣にザフネは困惑。
それまで強者として認めていたはずのウンコが、突然子供のように泣きじゃくり始めたのだ。
無理もない話だ。
「違う、助けてくれるのが嬉しくて……。そんなお前に、攻撃しようとしてたのが情けなくて……」
「……貴様。そこまで気持ちの悪い奴だったか? しょうもない事をウジウジと、女々しい奴だ」
そんなウンコにザフネは先ほどとは違い、呆れ切った顔を見せた。
「早く泣きやめ、クソ風情! 無駄に時間を浪費すると、それこそ本当に我々が戦わなければならないぞ!」
ザフネの叱咤を受けたウンコは、涙を止める。
(そうだった、ザフネがこんなにもしてくれるのに。足引っ張っちゃダメだ。クソっ、頑張れ俺! 泣くな!)
そして今度こそ本当に覚悟を決めた。
仲間がいるという事実に、不思議と竦んだ足は驚くほど簡単に踏み出した。
「――あぁ。もう大丈夫。いこう」
「フッ。それでこそだ。いくぞ!――」
――場面は再び変わり、ハオス平原南東部。
カズヤはあえて停滞を選び、近くでブラブラと時間を潰していた。
男と別れてからはや19分。
カズヤは誰にも襲われる事なく、無事に過ごしていた。
(さて、そろそろ20分ぐらい立つな。辺りに気配は……なし。――んー、やっぱり無理だったかな。この作戦、今回は失敗かな?)
カズヤは作戦の失敗を悟る。
だが、焦ってはいなかった。
何せ受験者数は72名。1人失敗しても、まだまだチャンスはある。
それに第三試験開始からまだ50分ほど、おそらく時間はまだ有り余っている。
それがカズヤの余裕の理由だった。
「よし、あいつは失敗だ。次行くか――ん……?」
武器を持ち次の場所へ行こうとしたその時、どこからか、焼けこげた匂いがした。
(敵か……? いや、気配は……)
辺りを見渡す。
しかし平原も林も静寂を貫き、静かに呼吸をしていた。
何も起きていないかのように。
(気のせい……いや、現に臭いがキツイ……。風で臭いが飛んできてる感じだ。――こっちか)
臭いの方向に振り向いた瞬間、目の前に現れたのは大きな火球。
――なっ、にいいいいい!!!!
カズヤは咄嗟に左手を犠牲に突き出し、魔法をガードした。
「ガァっ! 激痛!」
カズヤは使い物にならなくなった左腕をぶら下げ、剣を敵の方に向ける。
(左腕だけで済んだのは奇跡だ。それにしても、なんだ今の……。確かに魔法は感知できねえが、人の気配ぐらいはわかるぞ。……まさか――いや、そうだ。忘れていた、それしかねえ)
カズヤが虚空を睨む中、それは姿を現した。
まるで空中に浮かぶカーテンを捲るように、何もない空間から現れたそれは。
あの時、カズヤのチームの誘いを断った男だった。
そしてその男は、後方に2人仲間を添えていた。
距離は8m。
襲われれば一瞬で殺される、そう思える程心許ない距離だった。
(そうだ、忘れてた。スキルの可能性を……! ちくしょう、左腕が死んだ!)
カズヤの焦る姿を見て、男は笑みを溢す。
「フッフッフッ。悪いな、6位。お前の作戦、利用させてもらった」
その言葉にカズヤの頭に電流が走る。
(利用……? こいつは今、作戦を利用といったのか……?)
剣を持つ右腕が震える。
押し寄せる感情の波に耐えきれず、どんどんと顔が崩れていく。
「だが、悪く思うなよ。これは戦いだ。俺達はお前を倒し、ランカーになる!」
3人は構え、カズヤに飛びかかる。
カズヤもそれに合わせて飛び込んだ。
左腕は使えない、それに加えて3対1。
そんな状況にも関わらず、カズヤは笑った。
(作戦利用って……。最高じゃねえか……!! お前、いい子に育ったんだな!!!!!!)




