やはり、オナニーの為の準備はワクワクします! 殺しの為なら怠らない!
「よし! 今回は手のひらで踊らすタイプで殺そう!」
カズヤが手を叩き、第三試験の攻略を思いつく。
「楽しみだなぁ〜、久しぶりのご褒美。精一杯気持ちよくなるぞー」
カズヤは剣を引き摺りながら、気持ちの悪い笑みを浮かべ歩いていく。
獲物を見つけるために。
――いた、獲物だ。
ハオス平原南東部。
探し始めて8分。カズヤはついに受験者を見つけた。
平原といえど林は多数ある。そこを探せば出会えるだろうと思い、探してみると見事ビンゴ。
受験者の1人が息を荒げ、隠れていた。
(見た事ない奴だな……。ランカーじゃない人だ。――うん、あの感じ完璧だ)
カズヤが男の背後からわざと音を鳴らしながら現れる。
「ヒッ」
男は悲鳴を上げ、カズヤに突然剣を投げた。
カズヤはその剣を躱し、掴み取る。
(ダメだなこいつ。武器を投げるか? 普通。ランカーなれなくて納得)
カズヤの実力に男は腰を抜かし、這うように逃げていく。
カズヤはすぐさま回り込み、逃げ場をなくす。
その行動に男は目に涙を浮かべ、足を震わせ止まってしまった。
(やっぱ、死の恐怖があると人間こうなるのね。)
カズヤはゆっくりとしゃがみ込み近づく。
「やっ、やめてくれ!」
男が咄嗟に顔の前に手を突き出す。
しかし男の考えとは裏腹に、カズヤは笑顔で手を差し伸べた。
「すまん、脅かす気はなかったんだ」
「……へ?」
カズヤの笑顔と差し出された手に、男は涙で濡らした顔で驚いた。
「俺は君と殺し合う気はない。話があって来たんだ」
カズヤは見た事もない素晴らしい笑顔で男に語りかける。
前前世で培った営業スマイルである。
「……こ、殺さないって……本当に……?」
「あぁ、本当だ。ほら、証拠に」
カズヤは手に持った剣と、背中にかけた自分の剣を遠くに投げる。
「な……? 殺す気はない」
カズヤの行動に男は涙鼻水を垂らしたままゆっくりと頷く。
「あ、ああ。分かった……。」
――カズヤの演技のおかげで男は警戒を解き、話を聞いてくれる事となった。
この試合は時間との勝負、その事がわかっているカズヤはすぐに本題に入った。
「結論から言う。俺とチームを組んでくれ。一緒に、第三試験を突破しよう」
カズヤが営業スマイルで手を差し出す。
だが、男は手を握らず首を横に振った。
「何言ってんだ。これはソロ全体の試験だろ。もしチームで戦ったとしても、意味がない! チームのどっちかが殺した時点で、そいつだけ抜けて結局1人になるだろ!」
男の主張にカズヤは舌を鳴らさながら人差し指を左右に振る。
「試験官の話ちゃんと聞いてたか? 試験官は合計でって言ってたんだ。つまり、チームの誰かが殺した時点でそのメンバーは全員勝ちなんだ。これは死の恐怖に慣れる試験、チームでもいいんだよ!」
「…………。」
男が黙り込む。
(だ、ダメか……?)
カズヤは男を凝視して、次の行動を待った。
果たしてこの提案に乗ってくれるのだろうか……。
「……うん。確かに、確かにそうだ! あんたの言うとおりだ!」
(キタァァぁぁ!! 乗ってきたぁぁぁ!)
カズヤは心の中でガッツポーズ。
悪魔のニヤけが営業スマイルを崩さぬよう、注意しながら手を差し出した。
男も安心したような顔で、カズヤに手を差し出す。
2人が握手をしようとした瞬間、カズヤは手を止めて口を開いた。
「いやー、ありがとう。助かったよ。ほら、俺って戦闘がダメな頭脳派タイプじゃん? ほら、ランカー6位のカズヤだよ。だから困ってたんだよなー。頭脳派で戦闘が無理な俺が狙われたら、ランカーじゃない奴にも負けそうだからさ! ほら、ランカーって倒した時沢山ポイント貰えるじゃん? だから、ランカー入り目指して狙ってくる人多そうなんだよな。多分上位ランカーの俺倒した奴、トップ20入ってない奴でもトップ10までいきそうだよなー」
カズヤの言葉に男が手を止める。
(……きた)
カズヤは笑みを抑えて男の顔を見る。
「どうした?」
男の目が揺れている。
迷いが訪れている顔だ。
10秒ほどだろうか、停止した男がようやく動き出した。
男は差し出した手を引っ込めた。
「す、すまん。やっぱりこの話は無しにしよう。俺は、ソロでやらせてもらうよ」
男はカズヤから目を逸らしながら語る。
そんな男にカズヤは思わず笑みが溢れた。
(完璧……!)
「……そうか。まぁ、無理にとは言わない。また違う人を探すよ。じゃあな」
カズヤがそういうと男は頷き、どこかへ走っていった。
足音が遠のき聞こえなくなった時、カズヤは両手でガッツポーズをした。
「しゃあ! 今んとこ完璧! ……後は、実のを待つだけだ」
――場面は変わりハオス平原南西部。
小さな林の中に、ウンコはいた。
誰にも気づかれないように丸くなり、浅く息を吐き続けていた。
(フゥ……フゥ……。いけんのか、俺に……。殺人なんて、いけんのか……!)
殺しという重圧に、ウンコはただ息を吐き自問自答を繰り返していた。
(大丈夫……いけるはず……。ガンラガンラだってやれたんだ。 それと同じだ……。人を殺すのも、動物を殺すのも、同じ事と考えるんだ。最強になるなら、敵を殺す事も必ず通る道……。いける、大丈夫なはずだ)
近くの木に縋り、頭を打ちつけ続ける。
自分に言い聞かせ、自信をつけているのだ。
(いける……。やるしかない……。がんばれ、頑張るんだ俺)
――刹那、草木をかき分けウンコ目掛けて石が飛んでくる。
(――あぶっ!)
ウンコは360度の視界により石に気がつく。
そしてなんとか躱して、石の飛んできた方向を睨んだ。
(クソ、敵だ! 敵が来たんだ、もうやるしかない! 殺すしかないんだ……! 誰が相手だ、できればランカー以外で頼む。)
荒ぶる息を抑える事もできず、ウンコはただ魔法を展開するだけだった。
だがその魔法は酷く歪み、形を保つのもやっとだった。
(ちくしょう、魔法構築が定まらねえ!)
焦り恐怖するウンコ。
パチパチと跳ねる火、そして荒い息だけが林の中でこだまする。
――そしてゆっくりと草木をかき分け――ザフネが現れた。
「なんだ貴様か、クソ風情」
(――!! 最悪だ! ザフネ相手に、勝てるのか俺は。死の重圧の中、勝てるのか!)




