頑張った後には、ご褒美が必ず待っている……はず
目を覚ますとカズヤは知っている部屋でベッドに転んでいた。
(うん。まぁ、この流れにも慣れました)
カズヤが身を起こしベットから出ようとした時、左からカズヤを呼ぶ声が聞こえた。
振り返るとそこには、鎧を脱いで私服と思われる可憐な服に身を包む、ザフネがベッドに座っていた。
(……服普通だとイメージ違うな。お嬢様みたい)
ザフネのギャップに驚きつつ、カズヤが「どした?」と聞き返す。
するとザフネはぎこちない笑顔で、手―を差し伸べてきた。
「最終的には、策だけではなく実力でも負けた。完敗だ、10位殿」
「ありがと」
手を握りながらザフネの腹部に目をやる。
「腹――大丈夫か? 悪いな、あんな手段取っちまって」
「フッ。何を言うか。我々がやっているのはゴッコ遊びではない、戦いなのだ。そんな事、いちいち引きずる訳があるまい。女々しい。それにあの状況なら私でもあの手段を取る。貴様の選択は正しい、悔やむな」
ザフネは不敵な笑みを浮かべながら、頬を指差す。
「それと、腹は3位殿のおかげで完治している。私が来たのは、頬が原因だ」
「あぁ、なるほど」
(ウンコ蹴った時はヤバい認定だったけど。気を遣ってくれるし、いい人だ)
カズヤはザフネの不敵な笑みに、笑顔で返す。
その時。2人が微笑む中、医務室の扉が突然開く。
2人が扉を開けたものに目をやると、そこには100cmほどまで縮んだアクタが立っていた。
アクタはカズヤを見るなりジャンプ。
カズヤの腹に飛び込んできた。
「うおおおおおお! カズヤんよく勝てた! 私は信じていたよ!」
「いやー、何言ってんすか。5連勝は、アクタ先輩のおかげっすよ」
カズヤがアクタの脇に手を回し、持ち上げる。
そしてプラプラと宙を舞う両足に注目した。
「アクタ……これ元に戻らないの?」
「んー。ご飯食えば直るんだけど、お金がなくて……」
「なるほど……それはこまりましたね」
カズヤは悩んだ。
金がない今、どうやってアクタを直すか。
第二試験では9割9分9里アクタのおかげで勝てた。
その恩のため+迷惑をかけたと言う事で、カズヤはなんとか直したい一心だった。
――ミカーヤさんいてくれたらなー。お金立て替えてくれただろうに……
「ほれ、3位殿。」
カズヤが首を傾げ悩んでいる最中、ザフネがアクタの右手を支え持つ。
そしてその右手に金貨を一枚――100万円――置いた。
その顔は聖母のようで、慈愛に満ちた笑みを浮かべていた。
「これで好きなだけ食うのだ。休憩時間は後2時間、急ぐのだぞ」
「ふ、ふおおおおおお!? いいのか槍お――ザフ姐」
アクタはカズヤの抱っこを振り解き、もらった金貨を両手で抱え込んだ。
「うむ、いいのだ。さぁ、沢山食べてこい。3位殿」
「ザフ姐! ありがとー!食べてくる!」
アクタはアンダゴルガと戦った時以上の速度で医務室を後に、廊下をドタドタと音を立てて走っていった。
「……いいの?」
突然の大金の譲渡に、カズヤが首を傾げる。
その瞬間、慈愛に満ちていたザフネの顔は、みるみるうちに悪魔の笑みへと変わっていった。
「3位殿の力は強大だ、利用価値は恐ろしく高い。ここで恩を売っておけば、もし次にチーム戦が来た時、私の手駒にできるのだ……! フフフフフ」
――なるほどな。やっぱこいつザフネだわ。
カズヤはザフネを天使と見間違えたが、すぐに正気を取り戻した。
――2時間後。
カズヤとザフネは第二試験の内容を話した場所と、同じ会場に集まった。
座れる場所を探していると、第二試験と同じ場所にウンコとアクタとアンダゴルガが座っているのが見えた。
当然2人はそこへ向かった。
「アクタ、身長戻ったね」
「おうよ!」
2時間の間に完璧に身長を戻したアクタ、そのアクタにカズヤはハイタッチ。
そして2人はアクタの隣に座った。
アクタは身を乗り出し、二つ隣にいるザフネの肩に文字通り手を伸ばし、肩を叩く。
「ザフ姐、おつり」
「ん、ありがとう」
ザフネがアクタに手を差し伸べる。
アクタは懐から銅貨を3枚取り出すと、その手のひらの上に置いた。
「……? これはなんだ? 金貨のおつりを渡すのではないのか?」
「それがおつり」
「…………。金貨一枚だぞ……? なぜそれが、たった2時間の食事で銅貨3枚まで減るのだ。」
ザフネの銅貨を握る手が震える。
「アクタと、トカゲと、ウンコの3人で食べてた」
ザフネの気も知らず、アクタは笑顔で応える。
「ありがとな、ザフネ」
「ゴチになりました」
アンダゴルガとウンコも身を乗り出し、ザフネに頭を下げた。
ザフネはそんな明るい笑顔の3人と銅貨を見比べ、引き攣った笑顔を浮かべた。
「そ……そうか……それは良かった。」
(どんまい)
悲しそうな顔を浮かべるザフネに、カズヤは心の中で合唱した。
――「これより、第三試験を開始する!」
相変わらずうるさいデボラの声が響き渡る。
その声に5人は試験官達のいる、台へ顔を向ける。
デボラは前回と同様に大きな掲示板を持ち出し、紙を引っ剥がした。
「の前に、現時点でのランキング発表だ!」
いったい第二試験でどう変わったのか……。
5人は同じ思いを胸に、ランキングへと注目した。
――――
1位 アクタ
2位 ウンコ
3位 ザフネ
4位 テッカ
5位 アンダゴルガ
6位 カズヤ
7位 セイカ
8位 アズール
9位 シェイブ
10位 ビヨン
――――
「シャオラァァァァ!」
アクタがガッツポーズを掲げる。
「ッッしゃあ! 頑張った甲斐があった!」
「俺はセーフ!」
そしてそれに続いてカズヤとアンダゴルガもガッツポーズをした。
だがそんな姿を見て、ある2人の人物がアンダゴルガに飛びかかった。
「――ちょっ、ちょっと待てー! なんで、お前だけ上がってんだよ!」
「そうだぞゴルガ! 我々はチームだぞ! 下がるなら貴様も同じなはずだ」
「うるせえ!」
しかし飛びかかった2人は、パワーの差で吹き飛ばされた。
「俺は、格下に負けたお前らとは違って、ランキングが上のアズールとアクタを倒してんだ! 上がるのは当たり前だろ!」
「クッ。腑に落ちるのが悔しい」
アンダゴルガの解説にザフネとウンコは下唇を噛み締めた。
――そしてそんな暴れている3人を、試験官や受験者一同は慣れからか、完璧無視の体制にはいった。
「よし、続けるぞ! ランキングは以下の通りだ! 残念だが10位から落ちたサンザンは、今後10位内に入るのは不可能! だがトップ20に入っていれば、待遇はよくなる! 引き続き頑張れ!」
多少雑な説明が終わると、デボラは懐から紙を取り出し、ランキングの紙の上に貼り付けた。
カズヤが身を乗り出して注視する。
紙の縁には1940ヘクタールと書かれている、どうやら第三試験のフィールドのようだ。
第二試験とは打って変わって超巨大なフィールド、カズヤはその意図を汲み取った。
(全員同時参加か。広さは1940ヘクタールだから……街一つ分ぐらいかな? なんにせよ、楽な試験で頼みます……!!)
カズヤは両の手を合わせ、祈り始める。
第二試験では信じられないほどの疲労を感じた。
それのせいかカズヤは軽く憂鬱、楽しみにしていたギルド試験が少し嫌になっていた。
(本当に頼む……! 充分頑張ったんで、軽いやつ! もうヘトヘトで死にそうです! 5連勝やったんすよ、休ませてください!)
カズヤが必死に祈る中、デボラが口を開く。
――果たして、第三試験とはなんなのか。
「第三試験の説明を開始する!」
カズヤがアクタの耳に届くほどの音を立て、固唾を呑む。
「第三試験の内容は……! 勝ち抜きバトルロイヤルである! 勝利条件を満たした時点で、その者は第三試験突破! 会場内に戻ってよし!」
(キツすぎないっすかぁぁぁ! 全員敵とか、マジで頼むよ!!)
カズヤが目を瞑り両手で顔を覆う。
カズヤはなぜか過去の懺悔を始め、第三試験に絶望し始める。
そんなカズヤの気持ちとは裏腹に、デボラが大きく息を吸い説明を続けた。
「その勝利条件とは! 対象の命を絶つ事である!」
奇跡の大逆転!
「シャオラァァァァ!」
カズヤはガッツポーズを掲げた。




