第二試験突破! そして……不穏な影……。
「カズヤ、覚悟決めろ。第一試験みたいな策は無理だぜ」
アンダゴルガが拳を撃ち合わせ音を鳴らしながら近づいてゆく。
「ま、待て!話し合おう! てか、話を聞いてくれ!」
カズヤは両手を前に突き出し、後退りをしていく。
その目は泳ぎまくり、アンダゴルガをまともに見ようともしていなかった。
――アクタあぁぁ!大事な事は言ってよ!形成逆転じゃん!
こっからどうやって勝てばいいんだ!
カズヤは無様に後退りをしながら、考える時間を稼ぐ。
だがその事はアンダゴルガも分かっている。
カズヤの要求など無視して、どんどんと距離を詰めていった。
――くっそ!ここまでやって、夢潰えんのかよ!
なんかないのか!
……あ!新技を使えば!
いやでもあれは……。クソッどうすんだ!
アンダゴルガが踏み込み、カズヤの顔目掛けて拳を振り下ろす。
「くたばれやぁ!」
――ちくしょうやるしかねえ!
アクタに任せっぱなしなのに、俺が身体張らないわけにはいかねえ!
拳が顔面に当たる刹那――カズヤが後方に倒れ込んだ。
その結果アンダゴルガの拳は空振る。
だがアンダゴルガはすぐに地面に倒れ込むカズヤを睨み、右足を上げて踏みつけにかかった。
――カサササ
ゴキブリのような足跡と共に転んだままのカズヤが横に動き、スタンプ攻撃を避ける。
「なっ?!」
アンダゴルガは衝撃の光景に目を疑った。
そして逃げていくカズヤを目で追いかけた。
勘違いではない、やはりカズヤは転んだままの状態で地面を走り回っている。
――いや、それどころか木を登り始めたのだ。
カズヤが木の上からアンダゴルガを見下ろす。
その目は先ほどの油断や焦燥はなく、久しぶりの真面目な目だった。
「この形態はな。スキル使いすぎるから、使ったあと確定でゲロ気絶なんだ。しかも、11秒しか持たねえ。後6秒、一気に行くぜ」
カズヤが転んだままの体勢で、アンダゴルガに飛びかかった。
「ハッ! 空中なんてカウンターの餌食だろ!」
アンダゴルガはその攻撃を好機と見て、飛び掛かってくるカズヤに右拳のカウンターを叩き込む。
――だが、直前でカズヤの体が空中で左に吹っ飛んだ。
(なっ、なんだぁ?!)
左に逃げたカズヤを追う。
しかしすでにカズヤの姿はどこにもいない。
「どこに行きやがった!」
アンダゴルガが叫ぶ。
「準備だよ。後3秒で決めるための」
カズヤの声が林のどこからか響き渡った。
それと同時に草木を分けるようなガサガサ音と、ゴキブリのような足音が聞こえる。
その音が不安を煽り、アンダゴルガの脳を鈍らせる。
(何かわからんがヤバい!防御体勢を――)
だがその判断は遅く、頭を守ろうとした手が突然弾かれる。
(ッッ!クソが!)
それに続き、アンダゴルガの右足が吹き飛ばされる
(痛っ!)
次に後頭部。
次に左胸。
次に人中。
1HIT。
2HIT。
3HIT。
4HIT。
5HIT。
6――
7
8
9
10
11
12
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14
15
16
17
18
19
20HIT。
「ガッ……。」
20HIT目でようやく、アンダゴルガが地に伏せた。
そして気絶したのを確認したカズヤは、どこからともなくアンダゴルガの真横に飛んできた。
――制限時間残り1秒。
ギリギリの中勝利を手にし、カズヤは止まっていた息を一気に吐き出した。
――あっ……ぶねええぇぇぇぇ!!ギリギリ間に合った!
ゴルガ硬すぎだろ、間に合わねえかと思ったわ!
それにして……オエッ
安堵の中、カズヤは嘔吐した。
ツケの清算の時間だ。
――クソっ。やっぱりこの技は、燃費悪い!
この……『幻体術』と『血迅』を合わせた技、『百足人間』は……!
『百足人間』とは、第二試験の武器を考えていたカズヤが思いついた技である。
その実態はただの特攻技、相打ち覚悟の技である。
まず、カズヤが全身から大量の『幻体術』の手足を生やす。
当然そんな事をすれば、一瞬で気絶する。
だがカズヤはそれを『血迅』により、脳を無理矢理覚醒、僅かな間気絶を防ぐ。
そして『血迅』はそれだけではなく、『幻体術』の拳の威力の底上げをしているのだ。
その結果。14本の足により立体的な高速移動、16本の腕による高威力の不可視の打撃が可能となる。
これが新技『百足人間』!
――意識がフラフラする。
……だが、しっかり勝ったぞ!やった!アクタさん、ミカーヤさん見ましたか!
俺の夢は潰え……な……い…………
――チームカズヤ勝利。
第二試験、驚異の5連勝である。
――第二試験が終わった同刻、帝国内のとある路地裏。
山積みの死体の中金色に輝く長髪を靡かせ、1人の男が紙を眺めている。
期待に沿わないものがあれば捨て、また死体の中から紙を引っ張り確認を繰り返していく。
目的は――
「……お、あった。やっと見つけた。ギルド試験について書かれた紙。はー、疲れた。広すぎんだろ、帝国」
男は兵士と連戦したにも関わらず息が上がった様子がなく、軽口を叩きながら紙を眺めていく。
「んー。時間的に、もうそろそろ、第三試験に入るのか。場所は――ハオス平原か……。うん、走れば間に合うな!」
男は紙を投げ捨てると、血が一滴も付いていない剣を鞘に納め、飛んだ。
その速度は矢の如く、横をすり抜けた人々にも気付かせない。
そして男は壁を飛び越え、帝都を後にした。
目指すはハオス平原――第三試験会場。
「待ってろよ、受験者のガキども。1人残らず――皆殺しだ」




