謎の考察
「――ま、マズイ!このままではマズイぞ!貴様ら!」
正気に戻ったザフネが声を荒げる。
「あぁ、早く対策練らねえと」
その焦燥に感化され、アンダゴルガも焦り始める。
そんな中ウンコだけは落ち着きを見せ、アンダゴルガの肩から飛び降りた。
「4連勝してるから、一試合ぐらいなら俺らのツートップは変わらないだろ。何が来るかわかんねえけど、気楽にいこーぜ」
呑気に喋るウンコを見て、ザフネはいきなりウンコを蹴り上げた。
天井で跳ね返り地面に落ちるウンコ。
その後すぐに顔を上げ、ザフネに「何すんだよ」と怒鳴った。
そんなザフネはウンコに近づき、ウンコの声量を超える声で怒鳴り返す。
「馬鹿者!貴様は脳までクソ風情なのか! 勝敗によるポイント変動は、相手とのポイントの差が関与するのだ! ――考えろ! 我々はツートップ+7位殿の3人!相手は3位殿と10位殿の2人! もし負けてみろ……! 我々は一気に6位未満に、引き摺り下ろされるかも知れぬのだぞ!」
「……あ」
ザフネの説明にウンコはようやく事態を飲み込み、血相を変えた。
「わかったか!? 試合開始まで17分、我々には時間がない! 直ちに他のランカーチームに聞き込み、奴らの策を見破るぞ!」
――10分後。
三手に別れた3人は、各自情報を集め控え室に集合した。
「成果はあるか。貴様ら」
「あぁ」
「もちろん」
そして3人は各自持ち帰った情報を語り、カズヤ達の試合内容を紙にまとめ上げた。
――――
カズヤは簡単に見つけて捕まえれる。
だが、アクタはどこを探してもいない。
探すのを諦め、拘束されたカズヤを餌に待ちの姿勢に。
カズヤを餌に待ち続けて5分後、突然カズヤを中心に半径300m地点の至る所で砂煙が発生。
アクタの襲来である。
だがいくら砂煙を追っても、影一つ見えない。
そして砂煙発生から30秒、気づいたら3人全員気絶していた。
――――
「――むう。4チーム全ての証言は一致しているな」
情報を前にザフネが唸った。
各自持ってきた情報は、コピーされたかのように全くと言っていいほど同じ展開だった。
「4試合全て同じ……。これが奴らの、完成された動きと見ていいだろう。つまり次もこうなる」
ザフネが紙に書かれている一文をなぞる。
「5分……。これが鍵だな」
「理由は」
アンダゴルガが顔を上げザフネを見る。
「1秒のズレもなく5分を4回。規則性があるという事は、恐らく魔法かスキルの発動準備時間だ。なんの意味もなく、5分などかける意味がない。時間が早い方が、勝利時のポイントが高いからな」
「なるほど……」
次にザフネは30秒という1文を指差す。
「制限時間は30秒だな。砂塵が起こり始め30秒で、4チーム全て全滅している。恐らく発動後も、時間を割く技だな」
ザフネの言葉に2人が頷く。
ザフネはそこで一度壁にかけられた時計を見た。
――制限時間は残り5分。
ザフネは焦りつつ、文の1番上をもう一度指した。
「一旦大まかだが、作戦を見据えるぞ。10位殿は簡単に見つかる、恐らくこれはわざとだ。10位殿を餌に待ち、この状況を作り出すための布石だな。目的は……敵をその場に止める為だと予想できる。5分など長い準備が必要な技、確実に3人仕留めたいだろうからな。――その後、3位殿の技が発動。30秒以内に止められなければ、その時点で終わりというわけだ」
説明が終わるとザフネは顔を上げ、ウンコとアンダゴルガと目を合わせる。
「よし、ここから謎を解いていく。貴様らにかかっている、奴ら2人のスキルや魔法について教えてくれ。まずは10位殿だ」
アンダゴルガが挙手をする。
ザフネはそれを指差し「よし、教えろ」と頷いた。
「恐らく、あいつのスキルは力場の操作だ。第一試験で戦った時、あいつは触れずに剣を操り、俺の体を封じた。」
「ふむ、なるほど。――クソ風情はどうだ?」
ザフネがウンコの方を向く。
しかしウンコはザフネから顔を逸らした。
その行為にザフネは首を傾げる。
だがすぐにウンコの考えている事を、見抜いた。
「クソ風情、今は奴らは敵だ。仲間だなんだと、情を欠けている場合ではないぞ」
悪巧みをしているかのような笑みを浮かべ、ウンコの背に問いかける。
「……そうだ、思い出せクソ風情。私と貴様の道は世界最強だ。負けている場合では、ないだろう?」
「…………。クッ! わかった言うよ!」
世界最強という言葉に、ウンコは折れて振り返った。
その反応にザフネは乙女とは思えぬ悪どい笑みを浮かべた。
「正確にいうと違う。あいつのスキルは『幻体術』、見えない体を操る技だ。――それとプラスして『血迅』っていう、身体能力が6〜17秒だけ上がるスキルも持っている」
「……。ッ! わかったぞ!」
説明を聞いたザフネは手を叩き、紙に書かれている砂埃という文字を指さした。
「これは3位殿の襲来ではない!恐らくブラフ! 実態は10位殿の『幻体術』で地面を叩き、あたかも周りを走っているように見せかけているのだ!」
「いや、違うと思う」
ザフネの考察にウンコが横槍を入れる。
ザフネが眉を顰めてウンコの方へ顔を上げ、「なぜ?」と顔で訴えた。
「カズヤはスキルの訓練を積んでないから、スキル疲労がすぐにくる。『幻体術』を30秒も大量に維持できる訳がない。多分、それはアクタで合ってる」
ウンコの説明にザフネは黙り込み、口に手を当て考え込み始めた。
「……。じゃあ、いったいなんなのだ。――貴様ら、3位殿のほう――」
――「第五試合を開始する! 各チームフィールドにつけ!」
待機室の方からデボラの声がここまで響く。
時間切れだ――。
3人は謎を残したまま、魔晶石を砕き戦場へと降り立った。
果たして、カズヤとアクタの策とはなんなのか――




