仲間
「もう一度言います! ミカーヤです!」
その後もミカーヤは再三ポーズと決め台詞を繰り返し、カズヤにアピールをした。
「だから何者なの! 後ダサいから、そのポーズと決め台詞は一旦止めて話そう!」
ポーズを制止されたミカーヤは、何か常識が覆されたような顔になり、四つん這いにへたり込んだ。
「そ、そんな……。お父さんが自己紹介は、これで事足りるって言ってたのに。確かに今まで、反応が悪かったけど……」
(なんか凄い情緒不安定な子、何でこんな興奮してんだ)
「そっか……、とりあえずちゃんと、話そっか」
「はい、そうですね。父の嘘の教えなんて、今は重要な事ではないですし」
ミカーヤは四つん這いの状態から正座へと変わり、目に浮かぶ涙を人差し指で掬い取ると、ゆっくりとカズヤの方向に向き直した。
カズヤはその涙で彼女の背景を少し察し、口を手で覆った。
「あらま、その自己紹介は今まで何人に」
「多分3桁は超えてます……。黒歴史って、過去に急に現れる事もあるんですね」
カズヤは少し可哀想に思い背中を摩ってあげようと立ち上がったが、自分の今の姿を思い出し静かに座り直した。
カズヤはミカーヤを一旦尻目に、吹き飛んでいった獣の脇腹を観察した。
(で、一体この子何者なんだ。一瞬しか見えなかったが、確かにこの子が蹴ってたよな。あの化け物の腹抉れてるけど、この世界の子達そんなに強いの。2割より強いって話どこいったのさ)
「貴方を襲ったあれは、ザラ・ラントっていう獣の成体ですよ」
思い耽っていると、立ち直ったミカーヤが眺めている物の正体を語った。
「強いのか?」
「強いですね。今いるセプトの森なら、生態系で上から2番目ですかね」
ミカーヤは徐に立ち上がり、血のついた右足をどこからともなく取り出したハンカチで拭き始めた。
「…‥1番目は人間って事か? ミカーヤはこの森に住んでるのか?」
「まさか、近くに村があるのでそこですよ。それと私が強いだけです、一般人じゃただの豪華な晩御飯になっちゃいますよ」
カズヤはもう一度ザラ・ラントの蹴破られた腹を見た後、ミカーヤの華奢な体を見た。
「……だろうな。一般人がそうホイホイと、蹴り一発で化け物殺せるなんて、おかしいもんな」
「あ、流石に私も蹴り一発で、倒したわけじゃないですよ。《スキル》使ってます。――あ、転生者だったらスキルなんて言っても、分かんないですよね。」
「――え?」
予想だにしない言葉にカズヤは思わず素っ頓狂な声を漏らした。
ミカーヤの目的が自分では無いかと思い、カズヤは警戒していつでも動けるよう胡座を解いた。
(いや、何してんだ俺。あいつを蹴り殺すバケモンだぞ、何しても瞬殺だ、意味ねえ。そもそもこいつは守るって言ってたぞ、危害は加える気はないはずだろ。早合点してこいつを敵に回すのはだめだ)
カズヤは冷静になるため一回だけ深めの呼吸を取り、胡座を掻き直した。
「今、何で俺が転生したってわかった?」
「あ、説明まだでしたね! 警戒させちゃいました? すみません」
そういうとミカーヤはどこからともなく、一つの4cm厚の鉄板を取り出した。
「はい、どうぞ」
ミカーヤから渡された鉄板を見てみると、鉄板の真ん中と右端に大きな青色の光が映っていた。
「なにこれ」
「レーダーです、転生者レーダー。半径10km以内の、転生者の位置を教えてくれるんです。真ん中のは貴方ですね。」
(この世界、思ってたよりハイテクなんだな)
カズヤは鉄板をミカーヤに返した。
「だから分かったのな。それで、ミカーヤは何で転生者を探してるんだ?」
その言葉でミカーヤは何かを思い出し、手を叩いた。
「そうでした、本題そこでした!」
その瞬間ミカーヤの急にテンションが上がりだし、ピョンピョンと飛び跳ね始めた。
「私、転生者探してるんですよ! あ、その前にお名前いいですか? それと一つ聞きたい事が」
「ん、カズヤだ。よろしく。それで聞きたい事って?」
カズヤは立ち上がり、ミカーヤに手を差し伸べた。
その手をミカーヤは嬉しそうに両手で包み込んで握手をした。
その瞬間、カズヤはあまりの手の冷たさに驚き振り払った。
ミカーヤの手は酷く冷たく、まるで金属のようだった。
その反応にミカーヤは少し唇を噛み締め、眉を落とした。
それをみたカズヤは罪悪感を覚え、手を握り直した。
「ごめん、驚いて思わず手を払った。悪気はない」
「大丈夫です、驚いても仕方ないですよ。冷たかったですよね、すみません」
ミカーヤは握手をやめ、自分の両手を眺めて開閉した。
「――私ね、実はロボットなんですよ。」
思いもよらぬ回答にカズヤは固まった。
「いや、でも泣いたり笑ったりしてるじゃん」
「それは、父の能力による物です。父もカズヤさんと同じ、転生者でした。……えっと、父曰く、転生してくるものは皆、途轍もない才能を持っているらしいです。その例に漏れず父もそうでした。……そして魂と肉体に刻まれた才能、《スキル》を使い、私に命を吹き込んだんです。――私はロボットですが、魂があるんですよ」
ミカーヤは声を震わせ必死に、声が上ずりながら説明をした。
時折思い出を噛み締めるように、空を見上げながら。
「ミカーヤの体もお父さんが作ったのか? それとも別の人間か?」
「父です、父の前世はエンジニアでしたので。この世界は科学ではなく、魔法で発展しています。機械仕掛けなんて、父の作ったもの以外存在しません」
「そうか。ちなみにミカーヤ以外のロボットは、いるのか?」
「いえ、父は私以外のロボットは、頑なに作ろうとしませんでした。たまにこのレーダーみたいな、発明をするぐらいです」
カズヤは顎に手を当て考え込み始めた。
(だめだわからん、話が全く見えてこねえ。この子情緒不安定だし、話よく脱線するしで、目的が未だにわからん。とりあえず、SF世界じゃないって事が判明しただけだ。これは割と嬉しい。――仕方ないから、俺が頑張って本題に軌道修正するか)
「なるほどな、ミカーヤの生い立ちは大体分かった。ちなみに話聞く感じ、ミカーヤのお父さん死んでるっぽいけど、それってミカーヤが転生者を探す理由と関係してたりする?」
「ですです。私が探す理由は……、あ! その前に一つ聞く事があるんでした!」
(また脱線した)
カズヤは諦めた。
「はい、なーに」
「カズヤさんって、旅がしたいですか? それとも、どこか定住して暮らしたいですか?」
カズヤはあまりに引っ張る物だから何か凄い物が来ると身構えていたが、実際は想像してたよりも遥かに小さい質問であった。
(そうだなぁ、戦争地帯を渡り歩いて、色んな殺し合いしながら、旅するってのがいい暮らし方かもなぁ)
「うん、旅がいいな。色んなとこで、色んな出会いがしたい」
カズヤの答えを聞いた瞬間、ミカーヤは食い気味に土下座をした。
突然の土下座にカズヤが狼狽えていると、ミカーヤが突然地を揺らす様な叫び声をあげた。
「どうかその旅、私も連れて行ってください!! 迷惑はかけません、足手纏いにもなりません、誠心誠意カズヤさんに尽くします! なので、どうか! 私を外の世界に連れて行ってください!」
(本題ってこれかよ! やっべー、魅力ねえー。強い奴連れて行ったら、殺し合いの前に倒して終わりになっちゃうよ。――いや、でも待てよ。戦いを全部、邪魔されなきゃいいだけの話では? それに俺はこの世界の事、何も知らないしな。この子に教わるのもいいのでは?)
カズヤは恐る恐る、土下座の体制からぴくりとも動かず、返答を待ち続けているミカーヤの頭を人差し指で叩いた。
「ミカーヤ、一ついい?」
「はい! なんなりと!」
ミカーヤは土下座の体制を崩さず、何とも気持ちのいい返事をした。
「とりあえず一旦、その土下座やめようか」
「はい!」
ミカーヤは言われた通り土下座をやめ、今度は惚れ惚れするほど綺麗な正座になり、神妙な面持ちで次の言葉を待った。
「ミカーヤって、この世界の事沢山知ってる?」
「はい! それはもう、流石ロボットと言った所でしょうか! この世界の殆どの情報は、この頭脳に入ってます!」
ミカーヤは必死に笑顔を振り撒き、人差し指で自分の頭を押す事でアピールをした。
その時年端もいかぬ見た目の女の子が、プライドなど捨ておべっかを使い続ける姿を見て、カズヤの脳内に過去の記憶が蘇った。
――「なんで?! 僕も外行きたい! 僕アユム君と違って、サッカー上手いよ!」
「くんな化け物! お前と遊んだら、みんな死ぬんだ!」
「僕キーパーもできるから! だから連れてってよ……!」――
――同じだ……。同じなんだ。
カズヤは気づくとミカーヤへと手を差し伸べていた。
「ごめん、試すような真似して。……俺は、君の気持ちなんて考えず、自分の事だけだった。本当にごめん……。――こんな俺でもいいなら、君の為につくすよ」
カズヤは己を叱咤し、その差し出す手に贖罪の意味も込めた。
差し出された手を見たミカーヤは、喜ぶ事もなく鳩が豆鉄砲を食ったような顔で口をパクパクさせた。
手応えが微塵も感じなかった会話だというのに突然の心変わり、思考が停止するのは無理もなかった。
――だが、ミカーヤはこの瞬間を逃してはいけまいと、必死に喉から声を捻り出そうと口を動かし続けた。
そして漸く出てきた声は言葉は、震え、涙声、口元の痙攣が混ざっており聞くものの胸を締め付ける声だった。
「いいんですか……? いいんですか?」
ミカーヤは今度は絶対に離さぬよう、差し出された手を両手で掴み続けた。
流れ続ける大粒の涙を拭く事すら忘れる程熱中して。
ミカーヤが仲間になった。
作品備考1
キャラクタープロフィール
ミカーヤ
身長149cm 体重ひみつ
ビルデンリッシュ???年 8月19日生まれ
魂の形 ??? 肉体の形 ロボット
好きな物 シュークリーム フェン(ミカーヤの国で人気のペット。ウーパールーパーの幼体に似てる)
嫌いな物 1人 お留守番 余暇 1人 広い家 1人 1人
趣味 小説 ランちゃん(ラン・ファンデッド)のライブを見る メイド服
魔法
???
スキル
???
スキル魔法
???
絶技
???
備考
基本的に敬語が拙い。興奮すると拙さに拍車がかかる。
長い間1人で過ごしてきた為、家事全般プロレベル。
得意なものは料理と裁縫。(自分の服は全部自分で作っている)




