第二試験内容
――そして漸く鎮まり、デボラの前に集まった5人。
カズヤは5人を代表して頭を下げ、もう一度説明をするよう頼み込んだ。
その結果、デボラはカズヤが被害者だという事に免じて、要点だけ説明してくれる事になった。
「じゃあまず、第二試験について。次の試験はチーム戦で行われる。受験者86名を3で割り、29チーム作る。当然2人のチームが現れるが、そこはまあご愛嬌。チーム分けは、話し合いで決めてもらう事にしている。」
「え」
その言葉にカズヤは声を漏らし、周りを見渡す。
そして苦虫を噛み潰したような顔で、デボラを見た。
その視線にデボラは目を瞑り頷く。
「まぁ、そういう事だ。お前らと組んだら、チームワークもクソもないだろうって事で、みんな避けてた。」
その言葉にカズヤは肩を落とし、俯いた。
「――続けるぞ。この試験では足りない物を他者で補う戦術眼、そしてチームワーク、対多人数戦の立ち回りを測っていく。当然、弱い奴は省き余っていく。そういう奴らを炙り出し、落とすって役割もある」
デボラはそこで一旦息を整え深呼吸をする。
そして近くの掲示板から紙を引き剥がし、5人の前に広げた――小さな林や丘のある、野原の地図のようだ――。
「次に試験内容だ。3対3のチーム戦、フィールドの広さは5万平方メートル、つまり5ヘクタールだ。勝利条件は敵3名の無力化。殺しは無し、後遺症が残る傷も無し。つまり気絶させるか、拘束だ。試合は各チーム5回行う。――ま、こんなもんかな。」
次にデボラは紙をめくり、地図の下にある紙を引っ張り出す。
そこには先ほど見た、ランキングが書いてあった。
「次にランキングについて」
「おお!ついにか! なぜ私がクソ風情に負けているか、教えてもらおうか!」
その言葉に大人しくしていたザフネに活気が戻る。
その姿を見てアクタも思い出したかのように身を乗り出し、カズヤのランキングを指さした。
「そうだぞ! なぜトカゲに勝ったカズヤんが、トカゲより低いんだ!」
迫る2人をデボラは押し返し、淡々と説明をした。
「ランキングの基準は、戦闘力、戦術眼、潜在能力、身体能力、思考力の5つが基準だ。ザフネは戦闘力、身体能力は受験者1だが、思考力と戦術眼が低い。ウンコの技に気づかずやられた事、そして絶技をベラベラと語った事が減点だ」
「クッ。腑に落ちるのが悔しい」
デボラの解説にザフネは下唇を噛み締めた。
「ウンコはザフネに比べ、身体能力が僅かに劣る。しかし潜在能力や戦術眼が高い事を評価して、1位だ。」
一位の説明にウンコは体を変形させドヤ顔を作り、ザフネに見せびらかす。
その行為にザフネは髪を逆立てウンコを蹴り飛ばした。
そんな2人を無視して、次にデボラは10位と7位を指さした。
「カズヤの方は確かに勝ちはしたが、評価点は戦術眼と思考力、そして潜在能力しかない。大事ではあるが、ギルドに必要な他二点が低すぎるのが原因だ。その点アンダゴルガは、身体能力戦闘力共に受験者の中では最上位だ。潜在能力も高く評価している。そのため、負けたはずのアンダゴルガの方がランキングが高い」
「くっ! 納得いかないからくやしい!」
デボラの説明にアクタは唇を噛み締めた。
「よし、じゃあ本題行くぞ。ランキングについて。ランキングは上がれば上がるほど、ギルド加入後の待遇は良くなっていく。上位五名は帝国最強のセリウス・ラインハルト様との謁見も可能だ。」
「なんと! セリウス殿とか!?」
帝国最強とやらの言葉にザフネが目を輝かせ、ランキングの紙を奪取した。
そして自分が2位と書かれている部分だけを切り抜き、鎧を脱いで胸ポケットへしまった。
「……それ持ってても意味ないからね。――次に変動についてだ。今後のランキングは、勝利敗北によって変動していく。ここからが重要だ。もし、一度ランキングから外れたら、その後いくら勝っても二度とあがる事はできん。つまりカズヤ、お前は危ないぞ」
その言葉にカズヤは息を呑む。
(じゃあ、もうあまり負けられないな。)
大丈夫だとは思うが、終戦の戦のメイン部隊の参加条件は10位内。
幸せの為にも終戦の戦は必須条件、決して負けるわけにはいかなかった。
一通りの説明が終わるとデボラは紙を2枚回収し、5人に魔晶石をそれぞれ渡す。
「まあここら辺でいいだろ、説明は終わりだ。それぞれチームが決まったら、俺に言え」
――チーム作りが始まった。
まずザフネ、
「クソ風情、組むぞ」
始まるや否やウンコを鷲掴み。
万力の力で締め上げ始めた。
「あ、ずりいぞ! 遠距離俺によこせよ! お前できるだろ!」
だがすかさずカズヤが奪い返す。
「そもそも、お前俺嫌いだろ!」
カズヤの胸の中でウンコが叫ぶ。
それに対してザフネは髪を靡かせた。
「馬鹿者。感情に流され、勝利を捨てるわけがなかろう。セリウス殿が待っているのだ、負けるわけにはいかん。チームはクソ風情、ちんちくりんのトップ3で決まりだ」
その言葉にアンダゴルガが声を荒げた。
「待て待て、過剰戦力だろ! 1チームは2人だぞ! 戦力的に2人はお前とウンコだろ!」
「そうだ、よく言ったトカゲ! お前らが2人だ! 私はカズヤんとチームがいい!」
アクタも加勢。
だが、その勢力に1人の男が意を呈した。
「絶対やだ! こいつと2人きりはやだ!」
そう、ウンコである。
「フッ!嫌われたなザフネ! ウンコは俺のもんだ!」
そういうとカズヤはウンコをぬいぐるみの様に抱きしめ、ザフネから遠ざけた。
「チームは俺とウンコとアクタで決まりだ! なぁ、ウンコ!」
カズヤがウンコを見る。
だが、ウンコは応えず黙り込んだ。
「……ウンコ?」
その時、カズヤの脳内に嫌な言葉が過ぎる。
『世界最強』……と。
――まさか、こいつ。いや、違うよな……?
カズヤは恐る恐るウンコをザフネと自分の間に置き、ウンコの行動を待った。
するとウンコはよちよちと歩き始め――ザフネの足元に辿り着いてしまった。
「……悪いカズヤ。最強には……、1位の維持にはこいつが必要だ」
ウンコの行動にカズヤは膝をついた。
そしてその様を見てザフネはウンコを抱き上げ、目を覆いながら高笑いをした。
「ハハハハハッ!愚かだなあ10位殿! それと一つ覚えているか? 2人きりはヤダという言葉を! つまり7位殿もこちらのもの確定だ!」
そしていつのまにかザフネはアンダゴルガと肩を組んでいた。
「おいトカゲ、裏切るのか! 過剰戦力はどうした!」
その行為にアクタは拳を震わせる。
「すまん。背に腹は変えられん」
アンダゴルガは目を逸らした。
――そして、3人はデボラの元にチーム確定の申告に向かった。
2人残されたアクタとカズヤは、3人が会場に向かった後、チームの申告に向かった。
「――まぁ、元気出せよカズヤん。3位の私がいる、なんとかなるさ」
落ち込むカズヤの肩に手を回し、アクアが慰めるる。
その言葉にカズヤはハッとした顔をあげ、アクタと目を見合わせた。
「確かに……! アクタがいれば、あいつら以外なら勝てる可能性はある……! まだ希望はあるぞ!」
「あたぼうよ!」
2人は両拳を天高く上げ、雄叫びを始めた。
「その事だが」
燃え上がった2人は、突然後方から水を差される。
2人が振り向くと、そこにはデボラ資料を抱えて立っていた。
「対戦カードの実力は拮抗させるぞ。当然ランカーのお前らは、ランカー相手だ。それとカズヤ、ポイント的にお前は第二試験一回でも負けたらランク落ちだ。」
そう吐き捨てると、室内の左側にある扉から試験会場へと向かっていった。
――終わった……。夢の為には、2人でランカー相手に5連勝かよ……。
カズヤは再び膝から崩れ落ち、蹲ってしまった。




