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リゲイン・ロスト・タレント ―才能を奪われた天才たちの異世界再生バトル譚―  作者: 綜目月 梶才
ギルド資格取得編

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最強への道

「1番長く、1番激しかったかな。終わった人とか、試験官全員が見てたよ」


その言葉に期待を寄せ、カズヤは息を呑む。

そしてそのまま次の言葉を待った。


 待ちの姿勢を見せるカズヤに、アクタは尻を蹴られた羊のようにセカセカと次の言葉を引き出していく。


「なんか、お互い変な人だった。ウンコの人はずっと笑ってて、槍使いの人は変な事叫んでた――」


――閃光。

その槍を表すにはその言葉しかなかった。


 降り注ぐ雨粒すらも触れられぬような速度で放たれるその攻撃は衝撃波を纏い、避けたはずのウンコに傷を負わせた。


「ッッ! その攻撃ずりい!」


「黙れ!クソ風情が! 我が麗しき愛槍(あいそう)、『ビュンビュンヒュルゲ』にクソを喰らわせおって!」


「俺のせいじゃねえよ! お前が――うわっあぶね! ……刺すからだろ!」


 言い合いの中躱される攻防、その様に無傷で勝利を手にした受験者達でさえ戦慄した。


 刹那の槍が降り注ぐ中ウンコは的確に攻撃を避けていき、合間合間に軽い魔法を常に放ち続ける。


 だが女はその魔法を児戯のように容易く貫いていく。



――その攻防に受験者だけではなく、試験官すらも驚愕した。


「デボラ、ちげえ。今回一番の見込みは、あの2人だ」


 その光景を目にしたハルハはついさっき称賛していたカズヤすら忘れて、目に輝きを灯す。


「……君、コロコロ変わりすぎだろ」


秋空の如きハルハにデボラはため息を漏らす。

 だがデボラも同様に2人の戦いの前には、先程のカズヤ達の戦いは霞んで見えた。


「凄いな、これCクラスはあるんじゃ?」


デボラの呟きにハルハが頷く。


「あぁ、ぶっちゃけ俺らより強いかも。もしあいつら暴れたら、止められる自信ねえぞ。……1人ぐらいB〜Sクラスの試験官必要だわ」


「まぁその時は、俺が盾になるから探してきてね――」



 絶え間なく続く攻防にいつしか2人のリングは砕け、教室ほどあった孤島は12畳程の狭さになっていた。


その状況にウンコが立ち止まる。


「ちょい待ち!」


「……なんだ」


ウンコの言葉に女は槍を止め、同じく立ち止まる。


「場所変えようぜ、狭すぎるし」


「それも、そうだな」


 提案に乗った女は辺りを見渡し、ちょうどいい孤島を探し始めた。


 そして損傷の少ない孤島を見つけると、槍を足場に飛んでいった。


 ウンコもそれに続き、地面に刺さった槍をしならせ飛んでいく。


「――! きさっ、貴様ぁぁ!我が愛槍を勝手に使うな!」


それに対して女は発狂。

 だがウンコは悪びれもなく良さげな位置につき、魔法を展開した。


「仕方ないだろ、飛ぶ魔法持ってないんだし。それより、槍なしでやんの?」


「舐めるなクソ風情。付属魔法があるわ」


女が槍に向かって手を翳す。

 そして魔力を送ると、槍は1人でに動き始め女の手元に収まった。


 槍を構えウンコを見る。その顔は先程より怒りに満ちており、ウンコに緊張感を与えた。


「本気でやる。これからは付属魔法も使う」


その言葉にウンコは笑った。


「やっとか。じゃ、俺も」


「…………。なぜ今まで本気を出さなかった」


その言葉に女は眉を顰め、憤慨を露わにする。


「――俺の目指す道は世界最強。本気の奴相手に勝たなきゃ、意味ねえだろ」


炎の魔法が五つ浮かび上がる。

開始の合図だ。

女は槍を強く握り締め突撃した。


「私と同じ道を、貴様が語るな!」


刹那の刺突。

その悪魔が再びウンコの身に差し掛かる。


 ウンコはそれに魔法をしたから当てて、軌道を逸らす。

 体制が崩れたところに魔法を叩き込む為、残りの4つの魔法を放った。


だが、その魔法は突然目の前で消し飛んだ。


――!? 何が起きた……?


ウンコは飛び退き原因を探る。


――あいつ、槍を投げたのか! 槍投げて、腕で吹き飛ばしたのか。頭い!


 ウンコは距離を取ったまま、走り回りながら魔法を構築する。

 その間決して女からは目を離さず、集中し続けた。


――あれ?


ウンコの脳内に違和感が生じる。

女が――攻めてこない。


 先程まで魔法の構築の隙は決して逃さず、その都度攻めてきていたはず。

 だが今回女はただ走り回り、道中で魔力の残穢を残し続けるだけだった。


その違和感にウンコは思考を巡らせた。


――なんだ?何が目的だ? 

あの魔力は、トラップか? なんで、攻めてこない。

……あ。手こっち向けた、攻める気になったか。よし、こ――


違和感が線になった。

 愛槍を捨てた意味、走り回った意味、手を向けた意味。


 その全てが揃った時、ウンコの脳内に一つの言葉が浮かび上がった。


――『付属魔法』


その瞬間ウンコは飛び上がった。

刹那、鳴り響く空を裂く音。


先程までウンコがいた位置を、女の槍が貫いた。


――本気って、まさかこれ!


「あぁ、そのまさかだ!」


女が叫び、再び槍を放つ。

その槍をウンコは空中で魔法を足場に、避ける。


「熱っ!」


 突き刺さるような痛みを我慢して、ウンコは再び魔法を足場に飛んだ。

その瞬間、足場にしていた魔法が砕け散る。


槍が飛んできたのだ。


 戻ってきた槍を避けた事に安堵した束の間、槍は突如軌道を変えウンコに飛び掛かる。

 突然の事にウンコは反応できず、一撃もらってしまった。


――いったぁぁぁ! なんで、反対側にあいつはいないのに!


 飛んでいった槍は再び、軌道を変えウンコに飛びかかる。

 苦しむ暇もない攻撃に、ウンコはなんとか体を動かし回避する。




 飛び回る槍に苦しむウンコを見て、女は高笑いをした。


「ハハハッ!どうだ見たか、クソ風情! これが私の本気だ! そこら中に粘着質の魔力を置き、常に魔力をリンクさせる! その全てが、付属先だ! 絶技『旋回陣風(ラゴミネル・ショット)』!とくと、味わうがいい!」



 四方八方360℃飛び回る槍に、ウンコは必死に避ける。

痛む体を叩き動かし、逃げる事だけに尽力を注ぐ。


――痛い……! 吐きそうだ!

そりゃそうか。3ヶ月前まで、唇割れただけでヒーヒー言ってたんだもんな。

なのにこんな大怪我おって、カズヤみたいに平気な訳ねえよ


 ウンコは傷の痛みと敵のあまりの強さに自信をなくし、どこか脳内で負ける事がよぎった。


――クソ、この攻撃いつまで続くんだよ。

魔力切れまで、逃げれんのか。俺――



突如避け続けていたウンコが立ち止まる。


 その好機を女が見逃す筋合いなどなく、即座に槍を叩き込んだ。


 だが直前で槍は止まり、あらぬ方向へと吹き飛んでいった。


「……こいつ、まさか」


その光景に女は顔を顰める。



――魔力切れまで逃げる……?何言ってんだ俺は。

俺が目指してるのは世界最強だろ、逃げてどうすんだ!

世界最強に逃げなんてない!俺は、真正面からこいつを倒す!!

唸れ!『付属魔法』!


ウンコが魔力を放つ。

 その瞬間槍は突如軌道を変え、女に向かって突き進んだ。


その槍を女は両手で受け止め、歯を食いしばる。

 驚愕と怒りが入り混じった目を向け、ウンコを睨みつけた。


「貴様……!私の魔法を――」


「――あぁ、乗っ取った。」


炎魔法を5つ展開させ、女に向かい飛び掛かる。


「世界、さいきょぉぉぉぉ!!」


叫び高笑いをするウンコ。

その光景に、見る者は皆決着を予感し息を呑んだ。


女は即座に槍のついている付属魔法を解除。

そしてウンコの突撃を右に飛び跳ね避けた。


「舐めるな!」


女は槍を構え、ウンコの方へ振り向く。


――魔法さえ消せば、貴様はむりょ――


ウンコの姿を見た女の思考が停止する。


――魔法が、ない……?


 常にウンコの周りをついて回っていたはずの魔法が、どこにも見当たらなかった。


その大きな異常に、女の思考が停止した。



「付属魔法、発動……」



ウンコの言葉に女は気づく。

だが気づいた時には全てが遅かった。


 1秒の差というのは、戦いの場では永遠にも等しい時間となりえる。



――付属魔法により遅れて飛び込んだ炎魔法が、女の体を打ち砕いた。


 身を焼かれ、骨を砕かれた女は白目を剥き、ゆっくりと地面へと倒れ込んでいった。


第一試験突破。

勝者、ウンコ――

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