表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リゲイン・ロスト・タレント ―才能を奪われた天才たちの異世界再生バトル譚―  作者: 綜目月 梶才
ギルド資格取得編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/58

本領発揮

「なんだあいつ、バケモンだろ……! ルールを利用しやがった!!」




――「テメェ……何してんだ。アホか?」


 リザードマンは突然の自傷行為に驚きつつも、次第に冷静になっていき、呆れた様子でカズヤを見下ろした。


「あっ! わかった。俺に勝てないからって、嫌がらせで殺人失格狙ってたの――」


「あ?」



――刹那。呑気に喋っていたリザードマンの喉笛に、カズヤの剣が飛び込んだ。


(――あぶっ!!)


 しかしリザードマンはすんでのところで反応し、状態を逸らして回避する。

 リザードマンは一時距離を取り、喉を摩り始めた。


(こいつ……殺す気だった!!)


 リザードマンは気を引き締め直し、カズヤへと大剣を向けた。

 その剣先は僅かに揺れ、第三者にも心の揺らぎが見てとれる。


 緊迫した空気が流れる中カズヤはゆっくりと血濡れた顔を上げ、リザードマンを睨みつけた。


「テメェ、馬鹿か? なんで雑魚相手に、俺が負けに行くんだよ」


「――()()()()() さっきの奴は……?」


「あ? 何言ってんだ」


 カズヤはリザードマンの言葉が理解できず、首を傾げた。


 その後『幻体術』で飛んでいった剣を回収して、リザードマンへと向ける。


「まぁ、いいや。いいから、やろうぜ! 20秒だろ! ちなみに、故意の殺人はアウトだかんな!」


 そういうとカズヤは突撃して、リザードマンの元へと駆け寄った。



 リザードマンは咄嗟に迫り来るカズヤに大剣を振り下ろした。


――しかしそれは酷く遅く、ハエが止まれそうな剣筋であった。


「はっ! 真面目にやれよ!」


 カズヤはもちろん軽く避け、またもや喉元へと一閃を叩き込む。


 リザードマンはすぐさま剣を持ち替え、その太刀筋を右腕で受ける。

その攻撃は鱗を貫通して骨にまで達した。


「ッッ!」


 リザードマンはたまらず裏拳を振り払おうとするが、静止した。


 その好機にカズヤは笑みを浮かべ、腕に食い込む剣の柄を両手で握り、剣を支えに前中をした。


 その隙まみれの行動にリザードマンは、剣が沈み込んだままの右腕で殴りかかる――が、それも直前で静止。


そのままカズヤの踵落としを喰らってしまった。


「どうしたぁ! やる気出せやぁ!」


 カズヤは思うようにいかないリザードマンを嘲り笑い、さらにもう一撃蹴りの追撃をした。



(……クッ! そうはいっても! こんな重体、何やっても死ぬだろ!)



――カズヤの秘策とは、ルールを逆手に取ったものである。


 第一試験のルール――故意の殺人をしてはならない。

 カズヤは自ら瀕死の重体になる事でそのルールを利用して、ワンサイドゲームを作り出したのだ――


(――そもそも! なんでこいつ、こんなに動けんだよ! その傷で……!)


 リザードマンはせめてもの抵抗で、腕を振り払った。

 カズヤはその腕を足場に後ろに飛び退き、距離を取る。


 そして先程と同じように、『幻体術』で剣を回収した。


「どうしたー? 後16秒だぞ」


「……テメェ! たかが試験に、なんでそこまで!」


「あー? 仕方ねえだろ、俺はこれしかねえんだよ。幸せになるには、殺し合うしかねえんだよ! そのためには受かるしかねえん……だよ!」



――二度目のカズヤの突撃が始まった。


 その突撃にリザードマンも覚悟を決め、大剣を左手で持った。

 しかしその大剣は刃ではなく、側面が向けられていた。


――傷や体力的に『血迅』は使えねえ……。20秒まで後9秒、ここに全てを賭ける――まずはどうする。こいつの体は硬い、どうやって武器を通す……? 骨を避けて腹か口内だな。



――クッソ、どうする。いけんのか……?俺のパワーで、こいつを殺さないなんて――いや、行くしかねえ! さっきの魔力なしの不可視の武器回収、あれがこいつのスキルだ! それだけに気をつければ……!



 激闘までの1秒、その僅かな間2人の脳内に様々な考えがよぎる。


そして、終幕(決着)の時――



 まずリザードマンがその大剣をカズヤに叩きつける。


狙いは足。

足を潰し、カズヤを戦闘不能にする一撃。


地面を這い、振り上げるような横一閃。

その攻撃をカズヤはわざと避けなかった。


 大剣と足の間に剣を挟み、衝撃に身を任せる事でカズヤの体は上方向に吹き飛んだ。


 リザードマンはすぐさま宙を舞うカズヤを見上げる。

 リザードマンはカズヤが吹き飛んだ衝撃に驚き、間抜けにも口を開けたまま見上げていた。


「来たっ!!!!!!」


 カズヤは叫び、全身から『幻体術』で腕を二本生やした。


一本は先程の大剣を抑え。

そしてもう一本を開いた口に入れ込んだ。


(――! 口が、閉じねえ!)


 無防備にポッカリ開いた口にカズヤは狙いを定め、落下の勢いを利用したまま剣を刺し向ける。



――決着まで残り2秒。



突如、カズヤの体が空中でひっくり返る。

 先程まで下を向いていた体は突然上を向き、カズヤの視界を青空が出迎えた。


(……?)


――原因は大剣を抑える『幻体術』であった。


 抑える作戦までは良かったものの、カズヤの腕力ではリザードマンのパワーを抑える事が不可能。


 それによりリザードマンが大剣を動かす事で『幻体術』が跳ね除けられ、結果カズヤの体が吹き飛んだ――


 カズヤは何が起きたか分からず、洗濯機に入れられたカエルのように踠きながら地面に落ちていく。



 リザードマンはその姿を見て戦闘本能が覚醒し、思わず大剣を振りかぶる。


その剣は初めて、カズヤの体へ刃をつきたてた。


 力一杯振りかぶった大剣はカズヤの喉を切り裂き、そのままの勢いで地面へと当たり金属音を鳴らした。


 そして喉を引き裂かれたカズヤはそのまま人形のように、地面へと堕ちていった。


ベチャ


 カズヤの死体は軽い音を立て、地面に叩きつけられた。

 その様をリザードマンは肩で息をしながら、安心させるようにじっくりと見続けた。



「――あぁ、クソ! 殺しちまった! 失格かよ!」


 リザードマンはカズヤの死体をみて頭を掻き、息を吐きながら呟いた。


 そして中央に浮かぶ試験官のいる島の方へ体を向け、終わった事を伝え――


ドスッ


 生々しい音と共に、リザードマンの腹部をカズヤの剣が貫いた。


「は……? なんで……いきて……」


「どうすんの、俺このまま心臓まで引き裂いてもいいけど」


 カズヤはリザードマンの言葉に耳を貸さず、淡々と問いかける。


 リザードマンは脂汗を垂らし、浅い息を吐きながら腹部を貫通する剣をゆっくりと触り目を瞑った。


「…………まいった……。俺の負けだ……」


 リザードマンは両手を上げて、震える声で答えた。


「おーけー、25秒。ちょっと過ぎちまったな」


 カズヤはリザードマンの腹部から剣を抜き、血を拭き取って背中の鞘に納めた。


そして今度こそ試験官達に、終わった事を告げた。


「ふぅ……。まぁ、簡単な仕事でしたね」


――勝者カズヤ。

第一試験突破。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ