帝都到着
――それから2日後、3人はついに帝国へとついた。
帝国は30mほどの城壁に囲まれている為、1kmは離れているというのに迫り来るような威圧感を感じさせた。
そして壁の先には微かに天にも昇るような尖塔がみえ、この国の権力の強さを悟らせた。
「でっかー!!!」
あまりのデカさにウンコは口を大きく開け、叫ぶ。
ミカーヤはその反応にクスクスと笑いながら、荷台に積まれた皮袋を手に取り何かを探り始めた。
「そりゃでかいですよー。何たって世界最大の国ですから、60万k㎡ぐらいあったはずです。――はい、カズヤさんこれ」
ミカーヤは皮袋から上着を一つ取り、カズヤへ差し出した。
「着替えましょ、血ついたままだと捕まりますよ」
ミカーヤの言葉にカズヤは自分の服が血まみれだという事を思い出し、すぐさま着替えた。
カズヤが着替えたのを確認するとミカーヤは馬車を走らせ、城門へと向かっていった。
――「はい、ストップ。嬢ちゃん、目的と身分証を」
城門に到着するなり馬車は3人の兵士に囲まれた。
「はいはーい。魔の2です、離れてくださいね」
ミカーヤは動じる事も無く収納魔法を起動する。
兵士達はミカーヤが言った通りに4歩下がり、ミカーヤの行動を待った。
そしてミカーヤは収納魔法からピンクの結晶を取り出して、兵士の方へ差し出した。
「ゼネビア出身、ギルド『エーテリオン』所属のミカーヤです。目的はギルド試験です。私じゃ無くて、家族の方の」
ミカーヤは後ろのカズヤを指さして兵士達に、伝える。
兵士達は結晶に魔力を送り事実確認をしたのち、カズヤを一瞥。
軽く頷くとミカーヤに結晶を返した。
「よし、行っていいぞ。そっちの、頑張れよ」
兵士達は横に避け、カズヤ達を通した。
カズヤは応援に対して一礼をして、ミカーヤは兵士達に手を振り帝都へと入っていった。
「よし、到着です。とりあえず馬車は止めて、宿探しましょうか」
3人は馬車は近くの馬車庫に止め、降りて宿探しを始めた。
「馬車ってそのままでいいの?」
カズヤは後方の、どんどんと小さくなっていく馬車を指しながら聞いた。
「めんどくさいので、後でギルドに返すよう依頼します」
ミカーヤは地図を眺めながら答える。
地図を眺めながら時折街並みを見て、合っているかどうかの確認をしている。
「ねねミカーヤ。さっきのピンクの石と、魔の2って何?」
次にウンコが疑問を唱える。
「ピンクの結晶はギルド員の証です。魔の2は『魔法を使う』って意味の軍用語ですね」
「へー、カッコいい」
ウンコはミカーヤのプロフェッショナルな一面を見て目を輝かせた。
「――それにしても、なんか色んな人種いんな」
カズヤが呟く。
ウンコはその言葉に視線をミカーヤから逸らし、辺りを見渡した。
――そこにはカズヤの言う通り、獣の耳や肉体を持つ獣人や綺麗な翼を持つ鳥人、硬い鱗を纏った竜人など多種多様な人種で溢れていた。
その光景に2人は世界最大の国という事を再認識し、懐深い文化を感じ取った。
「ほんとだ。だから俺がいても騒がれないのか」
ウンコはその光景を見て、初めて自分が異端ではない状況に胸を躍らせた。
「ヴァルテリアには一つを除いて、すべての魔族が住んでますからねー。凄いですよね」
ミカーヤは変わらず地図と睨めっこしながら応える。
2人は忙しそうなミカーヤを邪魔せぬ為、話しかけるのはやめて景観を楽しんだ。
――歩く事10分。ついに3人は宿へと辿り着いた。
「とうちゃーく」
そういうとミカーヤは宿の扉を開け中へ入っていく、そして2人もそれに続いた。
「はいらっしゃい。何名かな」
宿に入るなりカウンターにいる、目にまで眉がかかった優しそうな老人が出迎えた。
「えーっと」
ミカーヤは後ろを振り返り悩んだ。
――ウンコはカウントしていいのか……?と
悩んだ末にミカーヤは指を二本たて、大銅貨を2枚――通常銅貨の10倍の価値――カウンターに置いた。
「2日分で」
「あいよ、2階の突き当たりね」
老人は大銅貨を受け取り、老人から見て左を指差して説明をした。
3人は指定された部屋に入り込み、荷物を置いてベッドへ座り込んだ。
「やっとベッドでグッスリ寝れますねー」
「だなー。馬車の床固かったし、夜警交代あったしな」
カズヤは凝った肩を回しながら、共感した。
ミカーヤは少し背伸びをした後、近くに置いた荷物から一つの紙を引っ張り出して2人に見せる。
「じゃあついに、ギルド試験ですね。開催は2日後です、しっかり食べて休んで備えましょう!」
――カズヤ一行がヴァルテリア帝国についた同刻。
エクエリア教のとある城の最上部にて。
「なぁー、レイガンさん。作戦って3ヶ月後なんだよな」
椅子に凭れ掛かる男が絹のように美しい長髪を靡かせ、玉座に座る男に問いかける。
「あぁ、そうだ」
レイガンと呼ばれた男は玉座に肘をかけたまま、ゆっくりと答える。
なんて事ないただの一言にも関わらず、男の言葉はその場にいるものに重圧を感じさせた。
だが長髪の男だけは気にせず、言葉を続けた。
「悪いんだけどよ、暇すぎるし先行って来ていい? 視察もこめてさ」
男は困ったように笑い、片手をヒラリとあげて謝る仕草を見せた。
「お前……ホントそういうところあるよな。――作戦が気付かれない自信があるなら好きにしろ。もし捕まったらバレる前に自殺しろよ」
レイガンは心底呆れた表情を浮かべ、男に向かって手を払った。
許しを得た男は満面の笑みで立ち上がり、そばに置いてあった剣を手に取る。
「ハッ、俺がヘマする訳ねえだろ! じゃあちょっくら、ヴァルシェラのクソども100ぐらい殺してくるわ!」
そう言い放つやいなや男は窓を蹴破り、高さ200はあろう城から飛び降りて走り去っていった――




