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リゲイン・ロスト・タレント ―才能を奪われた天才たちの異世界再生バトル譚―  作者: 綜目月 梶才
ギルド資格取得編

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向かう夢の先

「滅びるって……マジでいってる? 俺まだ生まれて1日なのに、余命……1年……?」


カズヤの口から思わずそんな言葉が漏れた。

 だがミカーヤの瞳は一片の揺らぎもない。淡く、しかし確かな諦念を帯びている。


「本当です。……正確に言うと、“滅びると予言されている”んです」


2人は不安を胸にミカーヤの次を待った。


「まず――この世界で長らく続いている、戦争についての話からしますね」


ミカーヤは腰を下ろし、神妙な顔で語り始めた。

 そして収納魔法から大きな紙を引っ張り出し、2人の目の前に広げた。


――『レンベルド ワールドマップ』と書かれたそれには、世界地図が描かれていた。


 そこには、複数の大陸と群島が描かれている。

その中心にある最も大きな大陸――その真ん中を、まるで世界を裂くかのように赤い線が縦断していた。


「今この世界“レンベルド”には、二つの大きな宗教があります。一つは、私たちが信じるヴァルシェラ教。」


ミカーヤは分割された大陸の右側を指差した。


「もう一つは、敵対するエクエリア教です。」


次に左側を指差す。

こちらの領土は右側に比べて二回りほど小さい。


「この二つの宗教は、六千年も戦い続けているんです」


「ヴァルシェラ教は“己を鍛え、魂と肉体を極める”ことを尊ぶ宗教です。生き抜き、這い上がり、努力で高みに到達する――そういう生き方を“美しい”とするんです。女神の名はヴァルシェラ。鍛錬を通して彼女の理想に近づこうとするのが信仰の本質です」


そこまで話すとミカーヤは一度息を整えた。

 そして口調を少し硬くして、もう一方の名を口にする。


「対して、エクエリア教は“すべての生命を等しく救い上げる”という思想を掲げています。一見、平和的に聞こえますよね? でも違うんです。彼らは“意思を持たない生命”までも、無理やり引き上げる。それが問題なんです。その昔……彼らが儀式を行った時、魂の急激な進化に耐えきれず……三百万もの無辜の命が一瞬で消えたこともあります」


「……引き上げる、ねぇ。そりゃ確かに、暴力的な救いだな」


カズヤの言葉に、ミカーヤは苦笑いで頷いた。


「そうです。だからヴァルシェラ教からすれば、エクエリア教は“神を騙る暴虐”なんです」


「じゃあ、六千年戦っても終わらなかった理由は?」


ウンコが疑問を唱える。


「それは――魔王の存在です」


ミカーヤの声が静まり返る。

外の風が一瞬止まったような気がした。


「エクエリア教では、数百年に一度、“魔王”と呼ばれる存在が生まれます。魔王は魔力を持つすべての生命の“頂点”となり、魂の格そのものを引き上げる力を持つんです。でも、その力はあまりに強大すぎて……世界の均衡を壊してしまう。だからヴァルシェラ教は、代々その魔王を討つ使命を負ってきました。」


「つまり、魔王が出るたびに戦争が再燃する……ってことか」


この世界の醜さにウンコは眉を顰め呟く。


「はい。そして、魔王が滅んでも……エクエリア教の内部から、次の魔王がまた生まれる。だから終わらないんです。彼らの信仰そのものが、魔王を生む構造になっているんです。つまり、エクエリア教そのもの――あるいは女神エクエリアを倒さない限り、戦争は終わらない」


「なるほどね。じゃあヴァルシェラ教が続いてる理由は?」


「ヴァルシェラの教徒は、己を限界まで鍛える性質上、ピンキリですが最上位の戦闘能力が恐ろしく高いんです。それに国の数も多い。だからどちらも決定的に倒れないまま、ずっと続いてきたんです。――でも、それも今年で終わると言われています」


その時カズヤの脳裏にゲルニカの言葉がよぎる。


「予言……か」


カズヤが呟く。


 その言葉にミカーヤは驚き、地図から目を離してカズヤを見た。


「知ってるんですか?」


「ゲルニカが予言や滅ぶとか言ってたからさ。それかなって」


 ミカーヤはまさにといった様にカズヤを指差し、頷いた。


「来年、ザバン283年。これは10年前、“終戦の年”と予言された年です。各国の預言者が、口を揃えて言ったんです。“魔王が万の軍勢を率いて現れ、我らを滅ぼす”と。あるいは、“七人の勇者が女神を導き、魔王を打ち破る”と。どちらにせよ、この戦争には決着がつく――と」


「――勇者……?」


カズヤが呟くと、ミカーヤはその言葉を拾った。


「勇者というのは、ヴァルシェラ教で“神に最も近い魂を持つ者”とされています。魂が進化し、生物の限界を超えた存在。彼らは聖剣に選ばれて生まれる場合と、自ら魂を進化させて到達する場合の、二種類があります。聖剣を持つ者は四人。けれど、未だその四人しか現れていません。予言で言われた七人には、まだ三人も足りないんです。予言が出てからというもの、各国の猛者が鍛錬を積みましたが、今日まで覚醒者は1人も出てないんです」


「……なるほどな。だから滅びるって言ったのか」


  カズヤがぼそりと呟くと、重苦しい空気が2人を包んだ。


「――滅ぶなら、あの意気込みも無駄だったかもな」


 ウンコがぽつりと呟く。その声には、妙な静けさと諦観があった。


「確かにな、1年じゃ……な」


一瞬、場の空気が重く沈む。

 だが――ミカーヤだけは、なぜか穏やかな顔をしていた。

 まるでこの先に、まだ光が残っていると知っているように。


「早とちりしちゃダメです、まだ話している途中ですよ。――続けます、3人足りない()()()()()()()()()


 ミカーヤは小さく笑って、2人の沈黙をやわらげるように言った。


「ここからが本題ですよ。……滅びの予言、もしかしたらまだ何とかなるかもしれません」


 ミカーヤは人差し指を立てて微笑み、ゆっくりと話した。


「――先程言った“勇者”のうち、後者についてなんですけど」


ミカーヤは少し姿勢を正し、二人に視線を向けた。


「その勇者は感情の起伏で、魂が成長するんです。その成長幅は凄まじく、時には格上に追いつける……なんて事も」


「あっ」


ウンコは何かを思い出し、カズヤを見る。


「そういう事」


 ミカーヤはウンコを指差し、同じくカズヤを見る。

 その2人の反応にカズヤは困惑した、なぜ今ここで自分に注目が向くのかがわからなかった。


「――ガンラガンラ戦の時です」


ミカーヤが微笑み静かに言った。


「――!」


そこでカズヤもミカーヤの意図に気づく。

 その反応にミカーヤは笑みを浮かべたまま話を続けた。


「あの時のカズヤさんは、ハッキリ言ってクソ雑魚でした。それに加えて重傷も負っていました――だというのに、ガンラガンラと互角に戦っていました」


「じゃあ――」


「はい、確実でしょう。カズヤさんは、勇者に覚醒しています」


その瞬間、カズヤの中で、ひとつの声が蘇った。

『予言の……か。――まぁ、頑張れよ。ワシもまだ滅びとうない』


 一度捨てた使命、しかしそれは再びカズヤの掌の上に降り立った。

 カズヤは運命からは逃げられない事を悟り、『今度は俺がミカーヤを守る――』誓いを立てたその言葉を心の中で呟いた。


「そのカズヤさんをみて、思い出したんです。転生者は――途轍もない才能を持っていて、魂が強いものだと……。まさに、勇者の素質に当てはまります」


「じゃあ……つまり」


ウンコは目を輝かせながら呟いた。

 この先ミカーヤが喋るであろう言葉に期待を馳せて、急かすように。


「はい! 3人のうち1人は、カズヤさん。そして残す二枠のうち一つは――」


ミカーヤはウンコの方へ視線を向け、頷く。


「カズヤさんと同等の、魂の強さを持つであろうウンコさんです! 今はまだ覚醒していないかもしれませんが、いずれ覚醒する事は確実でしょう! つまり後一枠で、滅びは回避できるんです!」


「う、うおおおおお!!!」


ミカーヤの言葉を聞くなりウンコは叫んだ。

 己の才能が世界に届く兆しが現れた事に、叫ばずにいられなかった。


「そこで、思い返してください。お二人の意気込みを――」


つい20分前、2人が叫んだ意気込みを思い返す。

――世界最強。

――世界最高の殺し合い。


「そうです! 2人のやりたい事は予言へ向かえば、自ずと叶えられるはずです!!!」


 ミカーヤは立ち上がり両手を広げ、2人の未来を祝福した。


「絶対偶然なんかじゃありません! 予言は――2人が現れる事を知っていたんです」


 ウンコはあまりの喜びに涙を流し始め、雄叫びを上げた。

 カズヤは立ち上がり、静かにガッツポーズしながら己の幸運な運命に感謝した。


「そして滅びを回避できたら私の……、世界を旅する事も可能です――」


 ミカーヤは俯き静かに笑い、そして顔をあげて2人へ向けた。


「つまり、私達の旅の行先は予言の渦中! ――終戦の戦です!」


ミカーヤは座り込み地図を手に取る。

 そしてゼネビアから東北へ120キロ先にある大国、ヴァルテリア帝国を指差した。


「その為にはまず、資格が必要! この地で私達はギルドへと加入して、戦士としての資格を得るのです!」

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