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リゲイン・ロスト・タレント ―才能を奪われた天才たちの異世界再生バトル譚―  作者: 綜目月 梶才
転生の意味

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25/58

これから

「ゲルニカさん、本当にお世話になりました」

「ありがとな、おじさん」


「おう、もうくんなよ」


治療所の玄関前。

 カズヤ一行は旅立つ前に世話になった礼をしていた。

 ミカーヤとウンコが笑顔でお辞儀をする横で、カズヤは先程切り刻まれたお腹を摩り、ゲルニカから目を逸らすように東に見える噴水を眺めていた。


「おい、お主もなんかないんか」


 その明らかなる態度に気付き、ゲルニカはカズヤに指摘した。

 しかしカズヤはゲルニカは一瞥した後軽く会釈して、すぐさままた噴水へと視線を戻してしまった。


「……。まぁ良い、じゃあな。」


ゲルニカはそう言うとバタンと扉をすぐにしめた。

 一行は扉の先から聞こえる足音が遠ざかっていくのを聞いた後、ミカーヤの自宅へとむかった。


――当初の目的、ミカーヤを束縛から解放するため。


「なぁ、ミカーヤ。カズヤどうしたの」


 あまりにも元気のないカズヤの姿を見て、事情を知らずに呑気に寝ていたウンコは疑問を抱いた。

 その問いにミカーヤは朝起きた事をウンコに説明した。


「え、お前が悪いじゃん。ちゃんと礼しろよ」


「わかってるけどさあ、メチャクチャ痛かったし……」

(次からは絶対ミカーヤに聞こ)


カズヤは経験から学び、誓いを立てた。

 そしてウンコは不貞腐れるカズヤに呆れ、大きくため息をついた。



――そして歩く事6分。

 ついに、ミカーヤの大邸宅――の残骸――門前に到着した。


「到着でーす!」


「え、燃えてね」


 門前に着くなり、不貞腐れていたカズヤは異様な光景に思わず声を漏らした。


「はい、昨日私が燃やしました」


ミカーヤの返答に再度驚く。

 ミカーヤが燃やしたという事実にではなく、惜しんだり悲しむ様子もなく淡々と答えた事に。


「……え、なんで」


「ウンコさんと逸れた時に、合流する為に燃やしました。とりあえず目立って、人が集まる状況を作りたかったんです。どこにいるか分からなかったんで、ウンコさんの方から来てもらう為に」


 説明を聞いたカズヤは燃え尽きた大邸宅を眺め、ミカーヤの大胆な行動に絶句した。


「悲しくないの……? 家なくなって」


「私、物に愛着湧かないタイプなんです。いくら物があっても、癒しなんてないので。やっぱり繋がりが1番です」


 絶句していたカズヤだが、ミカーヤの言葉を聞くと妙に納得して落ち着き始めた。

 長らく孤独を味わったミカーヤならではの価値観なのだろう、と自分の中で納得したのだ。


「――まぁそれがなくても、いつか燃やしてましたけどね……フッ。私を束縛した大嫌いな家なのでね」


そう呟くとミカーヤは敷地内へと入っていった。

 2人はあえてその言葉には返答せず、ミカーヤに続いて敷地内へ入っていった。


「さて、いよいよ私達の旅が始まるんですね! 楽しみです! いったい何年この時を待ち望んだか!」


 家へと近づくにつれミカーヤは足取りが軽くなり、声色も上機嫌へとなって行く。

 その様にカズヤは微笑み、自分の行動に誇りと満足感を覚えた。


「ちなみに、束縛してる物って形あるの?」


「はい、地下に置いてあります。なので今向かってるのは地下ですね」


 ウンコの疑問にミカーヤは華麗にターンをして、後ろ歩きをしながら答える。

 そしてそのまま後ろ歩きを続け、2人を見ながらニヤニヤと笑い続けた。




――ポスッ


 ミカーヤの足元から炭が潰れる音が3人の耳に届いた時、彼らはついにミカーヤの大邸宅に足を踏み入れた事に気がついた。


「お! ちょっと待っててくださいねー」


 ついた事がわかるとミカーヤはすぐに前を向き、足で木材を蹴り飛ばしながら地下室への扉を探した。


 20秒ほど蹴り飛ばしていると、ミカーヤはついに地下室への扉を発見した。


見つけるや否や2人の方を向き、呼びかける。

 その声に2人は急いでかけより、ミカーヤの指差す先にある地下へ続く扉を見た。


「――じゃあ、行きますか」


 まずミカーヤが最初に入りウンコがそれに続く、そして最後にカズヤが入り扉を閉めた。



 扉を閉めた途端陽光が遮られた事により、地下室は何も見えない暗闇へと変化した。


『エネルギーコントロール』


 暗闇に2人が戸惑っているとミカーヤがスキルを使い、青白い雷光で辺りを照らした。


「とりあえず一旦ウンコさんだけ階段降りて、炎の魔法で照らした後私達もおりましょう。酸素は充分持つので大丈夫です」


 言われた通りウンコは階段を駆け下り、辺りに炎の魔法をばら撒いた。

 魔法により灯りが灯るのを確認するとミカーヤはスキルを解き、2人も階段を降りて合流して先へと進んだ。



 薄暗い地下室を6mほど進むと、暗闇の先から仰々しい4m程の高さの機械が現れた。

 その機械は所々過去に打撃を入れられたような後があり、ミカーヤの暗い過去を2人の脳裏によぎらせた。


「これか……」


「はい。私を束縛する、憎き機械です」


 ミカーヤは怒りが篭りながらもどこか楽しげな声で答えた。


「ちなみに、これって何で転生者じゃなきゃダメなの?」


 カズヤの疑問にミカーヤは人差し指で頭を突きながら、遥か昔の父との記憶を遡った。


「えーっと確か、この機械は転生者の魂を通じて、私に命令を出してるんですよ。それで転生者しか無理な理由なんですが、父曰く転生者の人達はこの世界の生き物とは魂の形が大きく違うらしいので、それを利用して転生者の魂でしか命令をできない設定にしてるんです」


「なるほどな」


 確認が取れたカズヤは一歩前へ出て、機械の前に立った。


 目の前に立つと機械だというのに先程より威圧感を感じられ、カズヤの心を揺らした。


「これ、どうすればいいの」


 カズヤが振り返りミカーヤに聞くと、ミカーヤも一歩前に出て機械の右側に回り込んだ。

 そして自分の目の前にある小さな穴に指を差し込み、反対側にある小さな穴を指した。


「こうか」


 説明の通りにカズヤも同じく指を入れる、そうすると機械が作動し始めたのか、ゴウゴウと音を立て揺れ出した。


「よし! この状態で、『解除する』と一言言ってくれればいいです!」


 カズヤは機械の騒音にも負けぬよう息を大きく吸い込む。

 そして大声で叫ぼうとした直前、静止してゆっくりと息を吐き出した。


「…………カズヤさん?」


 その行動にミカーヤは不安を覚え、反対側にいるカズヤを覗き込んだ。


「ここから始まるんだしさ、この先皆んながやりたい事、意気込んでからやろうぜ」


「――!! いいですね! じゃあ、ウンコさんもこっちきて!」


「おけ」


ウンコも一歩前へでて機械の前に立つ。


「ウンコ」


 カズヤの呼びかけにウンコが左を向くと、カズヤが手を差し伸べていた。

 ウンコは体を変形させて伸ばし、カズヤの手を握る。


「私も」


そして反対側にいるミカーヤとも手を繋いだ。


「まずは私から」


ミカーヤはゆっくりと息を吸い込む。

 ゆっくりと息を吸い込みながら過去を思い出し、感慨深く微笑んだ。


「私は閉じ込められてた分、世界中を旅したい! そして外の美しさを知りたい!」


ミカーヤの叫びが地下室の中反響する。

 3人は反響が収まるまでまち、声が完璧に消えるとカズヤはウンコを握る手を揺らした。


「おーけー」


ウンコもミカーヤ同様ゆっくりと息を吸い込んだ。

 そしてウンコというだけで忌避され、1人孤独に死肉を貪った3ヶ月間を思い出した。

 そして才能がなく虐げられていた前世を思い出し、今世見つけた魔法という才能を思い浮かべ叫んだ。


「俺は自分の才能を世に知らしめたい! だから俺は、世界最強になる! 後人間に戻りたい!」


 カズヤは2人の意気込みを胸に刻み笑みを浮かべる。

 そして反響が消えた瞬間、大きく息を吸い込み叫んだ。


「俺は幸せになりたい! だから、幸せのために俺は世界最高の殺し合いをしたい! 歴史に残るような、世界で2番目に強い最強の敵と戦いたい!そして――」


再度息を吸い込む。

そして施設時代の自分の過去を思い浮かべた。

 その時の感情を胸に身を乗り出して、2人は視線を送り叫んだ――


「お前らの願いを叶えたい! ――解除する!!!」


刹那。

 青白い閃光が地下室を包み込み、地下室はまるでカズヤ達の見たあの世のような風景へと変わった。



 まるでこれから生まれ変わる、人生の始まる3人を祝福するように――




 この物語は、一度目の生で悲運にも才能を開花させられなかった天才達が異世界転生を経て、己の才能を取り戻す物語である。


――そして、人生を他者に奪われた3人が己の人生を取り戻す物語である。




第一章 完

はい、ついに第一章終了です。

実は第一章は全部ライブ間で書き上げてるので、無駄が結構あったんですよね。

自分でも無駄が多いなって思ってて、反省点です。

二章からは道筋を練っているので、期待してください。

加速度的に面白くなります。

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