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リゲイン・ロスト・タレント ―才能を奪われた天才たちの異世界再生バトル譚―  作者: 綜目月 梶才
転生の意味

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20/58

誤断

(あ、そうだ。ウンコさんどうしよう)


 ミカーヤは治療所へ向かう途中、重大なことを思い出した。

 治療所が発覚した場合の合流方法を考えていなかったのだ。


 そもそもがウンコという魑魅魍魎、自分が慣れ始めていたため忘れていたが、本来は忌み嫌われる化け物。

 別れて聞き込みなど言語道断、完璧なる悪手であった。


(そもそもどこいったのあの人、別れてから見てない)


ミカーヤは焦り辺りを見渡した。

 選択肢は二つ。ウンコを放っておいてそのまま治療所へ行くか、一応合流してから向かうか。


 焦り回らぬ脳を必死に動かし、ミカーヤは決断をした。


(よし、あとで拾おう。そもそもうんちは汚いし、治療所はダメだ)



 ――ミカーヤは急いで治療所へと走り、ピンクに染まったファンシーなドアを叩いた。


「すみません! 治療をお願いしたいです!」


しかし反応はない。


「お願いします、助けてください!」


 焦燥にかられ神に縋るように必死にドアを叩きづけた。

 するとドアの向こうから床が小刻みに軋む音が聞こえたと同時に、扉が開いた。


「なんだなん――ヒッ!」


 扉の向こうから現れた大柄な初老の男は、ミカーヤを見るなり怯え、ドアノブにかけた手を咄嗟に胸の前に引き寄せた。


(最悪だ――)


ミカーヤは絶望に打ちひしがれた。

 考えうる最悪の事態、真昼刻にミカーヤの姿を断片的にも見ていた者が医者だったのだ。


「なんだやめてくれ……! 頼む、ワシだけは村の為に死ぬ訳には……」


 初老の男は片手をミカーヤに突き出し、もう片方の手で顔を守るように覆った。

とにかくミカーヤが恐ろしくてたまらない様子だ。


 ミカーヤは絶望の中、何とかカズヤを助ける為に息を上げながら口を動かした。


「あの、私はかんけ――」


「ん?! まて、お前がおぶっている者は怪我人か!?」


 ミカーヤが弁明をしようとする最中、突如初老の男がカズヤに気づき、玄関の外に身を乗り出した。


「お前、ワシの前で人を殺すか!」


 激怒の表情を浮かべ男は横の壁に拳を叩きつけた。

 ミカーヤは体をビクりと震わせ、涙を流しながら顔を横に振った。


「ちがっ、助けたいんです!」


「なに! それなら早く言わんか! はよう入れ!」


 初老の男はそういうと、ミカーヤの肩を掴み治療所の中へ引っ張った。

 突然の男の心境の変化でミカーヤは混乱しつつも、されるがままに治療所の中へ入っていった。


「いいんですか……本当にありがとうございます」


「当たり前じゃ。患者の前では、この世の万事全てが後回しじゃ」


 初老の男は治療室に着くとミカーヤの背からカズヤを降ろし、手術台に載せ傷の具合を確かめた。

 男は眉を顰めながらカズヤを診て、片手で口元を覆い難儀を露わにした。


「うーむ……。おい、お前」


「あ、はい! ミカーヤです」


ミカーヤは溢れる涙を拭き取り答えた。


「そうか、ワシはゲルニカじゃ。二つ聞きたいことがある。こいつの種族は人間で合ってるか? 後ミカーヤ、お主ケトラは使えるか?」


 ゲルニカは近くの桶で手を洗うと、棚から魔晶石を取り出して、ミカーヤの前に差し出した。


「あってます!いけます!」


 ミカーヤは強く頷き魔晶石を手に取ろうとした、しかし取ろうとした手をゲルニカに叩かれてしまった。


「触るな、清潔が命じゃ。ワシが扱う、お主はケトラだけせい」


「あ、はい。わかりました」


「すまんな、助手は常駐してる訳じゃないんじゃ。――傷を見るに、魔力は()()()の6必要じゃがいけるか?」


「あっ……む、無理です……。4しかありません」


 ミカーヤは焦燥がまたまた蘇り、吃りながらに答えた。

ゲルニカは前腕で自分の額を叩き、天を仰いだ。


「――じゃあ、村の住人何人か引っ張ってこい。ワシの紹介と言えばいい。その間延命をしておく」


「わかりました。すみません」


 ミカーヤは言われるがままに踵を返し、治療室の扉に手をかけた。

 そして何かを思い出したかのように振り向き、カズヤを指差して縋る声で喋った。


「あの、絶対助けてください。その人、多分予言の――」


「知らん! 誰であろうと助ける、そんな事を言う暇があったら走れ!急げ!」


「はい!」

(そうは言っても、多分村人は聞いてくれないし。ウンコさん探しすしかない……!)


 ミカーヤは治療所を飛び出し、村の中央の噴水まで走った。

そして辺りを見渡しウンコを探し始めた。


(完っ璧に判断ミスだ、ウンコさんはやっぱり必要だった。そもそも別れなければ……。やばいやばい)


 仄暗い空に覆われた村で、茶色く闇に溶け込む小さなウンコを探す。

 あまりにも時間のかかりすぎる状況にミカーヤは焦った。


 早くしなければカズヤの命が危ない、その状況の中ミカーヤは必死に頭を動かして解決策を考えた。


――そして一つの案を胸に、ある場所へと走り始めた。

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