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リゲイン・ロスト・タレント ―才能を奪われた天才たちの異世界再生バトル譚―  作者: 綜目月 梶才
転生の意味

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常識と非常識

「えー、まずこの方、ウンコさん。ミカーヤが動けるようになるまで、条件付きで助けてくれる約束をしてくれた人です」


 カズヤはミカーヤから見やすいよう身体を横に傾け、手の平をウンコに差し向けながら説明した。

 ミカーヤはその手のひらの先にいる魑魅魍魎に視線を向けたがすぐそらし、カズヤにとにかく不安と気持ち悪さを目で訴えた。


 しかしカズヤは、そんなミカーヤの必死のアピールなど気づく事もなく説明を続けた。


「この人――人……? まあいいか。この人凄いのがね、なんか、凄い炎の……。――ウンコ、あれ何」


説明が詰まりウンコに助けを求めるカズヤ。


「……魔法」


 カズヤの助けに何とか答えたが、ウンコは未だ晴れる事のない霧に苛まれていた。

 カズヤは未だ心ここに在らずなその姿を見て、呆れと心配を抱きつつも、時間を無駄にするわけにも行かないため説明を続けた。


「そう、魔法。凄い炎の魔法を使うんだよ。しかも威力が凄くて、ガンラガンラぐらいなら倒せるんだって」


「魔法……!」


 魔法、その一言にミカーヤは始めて好反応を示した。

 先程まで不安と気持ち悪さに押しつぶされていた彼女の心は希望に溢れ、目には活気が蘇りいつもの彼女に戻る兆しが見え始めた。


 活気ついたミカーヤは説明を続けようとするカズヤに一言呼びかけ、自分が話したい旨を伝え、ついにウンコ相手に対話を始めた。


「魔法って事は師がいますよね! ウンコさん、貴方の師は今どこにいますか!」


「……いない」


しかしミカーヤの希望は一瞬で打ち砕かれた。

 だがどうやらミカーヤはウンコの言葉が理解できず、何が起きたかわからない様子で固まった。


「いない……?」


「うん、いない……。俺の魔法、独学だもん。2ヶ月修行して、先月やっと使えるようになった。」


 説明を聞いたミカーヤはまたまたウンコの言葉が理解できず、思考が停止した。

 とりあえず1文字ずつ脳内で反芻して、ゆっくりとゆっくりとウンコの言葉の意味を解析し始めた。


「はっ、えっ?」


三度目のショート。

 何度も何度も繰り返し理解をしようとしても、ミカーヤの脳がそれを拒み続けた。

 それほどまでにウンコの一言は、ミカーヤの常識をぶち壊す爆弾発言だった。


「一から……?」


「うん、独学」


 顔、声色、視線、ミカーヤは全てから困惑が見て取れるほど動揺していた。


 それもそのはず、魔法は神話の原初の魔法使いですら神から授かった技術である。

 魔法独学など前例のない事象に思考が停止するのは、仕方のない事である。


「カズヤさん……、この人ホラ吹きですよ。独学なんておかしいですもん。そんなの、稀代の天才ですよ」


 ミカーヤは自分の頭では対処できない、問題にたまらずカズヤに助けを求めた。


「転生者だし、そんなもんなんじゃない? 才能で言えば、俺が常人の1700倍ぐらいあるらしいし」


 しかしカズヤの一言でさらにミカーヤの混乱は深まった。

 転生者には才能がある。それ自体は知っていたが、想像していたものより一回りも二回りも上回った才能の暴力が、ミカーヤの理解の範疇を超え思考の停止に導いた。


「じゃ、じゃあ。ウンコさんも、それぐらい……?」


「忘れた。3ヶ月以上前だし……。カズヤと同じくらいじゃないかな」


「そう……ですか」

(じゃあ、お父さんの才能はそこまで……)


 ミカーヤの底までついたと思われていた混乱は、どうやらまだまだ浅瀬だったようだ。

 混乱と失意にのまれ、ついには両方が嘘をついているとしか思えなくなってしまった。

 それは誇らしかった父の才能へのプライドのせいではなかった。


「おかしいですよ、そんなに才能があるなら魂も大きいはず。なのに、強さが……辻褄が合いませんよ」


「あー、それね。俺もウンコも、神様に弱くしてもらったの」


「何で、わざわざそんなこ――あ。」


その時、カズヤの性癖が脳裏をよぎった。

 性癖により疑問が裏付けされ、信じるしかなくなった今、ミカーヤは未だに認めたくない気持ちが勝っていた。

 目の前のウンコが、神話を超える天才という事実が受け入れられなかった。


 ――そしてミカーヤはあまりの情報過多に、ついに爆発しそうになった。しかし、


「…………ふう。過ぎた事言っても仕方ないですね。話が逸れすぎました、場を乱してすみません。戻して続きしましょう」


 後悔、文句、神への冒涜、ミカーヤは募る思いを全て我慢して、合理性を選んだ。

 感情爆発ガールのミカーヤにとっては、大きな成長といえるだろう。


「なんでしたっけ、ウンコさんの紹介ですよね。」


「そうだな。と言っても、もう言うような事がないんだよな。優しいぐらいしか。あ、条件まだ言ってなかったな。なな、ウンコ、頼みってなに」


「頼み!」


 頼み事の話をした途端、先程まで放心していたウンコは途端に元気になり、目を輝かせ始めた。―実際に目があるというわけではなく、2人からも感じ取れるという意味で―


「そうだ、頼み! えっと……」


 しかし目を輝かせていたウンコは途端に尻込みし始め、先ほどとは打って変わって不安と緊張で身体を震わせた。


 その姿をみてカズヤはおそらく肩であろう場所に手を置き落ち着かせようとしたが、あまりに汚いので言葉で落ち着かせることにした。


「受け入れるっていっただろ、大丈夫だって」


その言葉にウンコはカズヤの方へ身体を向ける。

 こちらを見つめるウンコにカズヤは優しく頷き、喋るようを促した。


「えっと、頼み事は……。俺を……カズヤの仲間に入れて欲しい。そして、できたら世界中を旅したい」


(うん、デジャヴ)

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