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プロローグ

ギャグコメディの話作ってたんですけど、やっぱりバトルでちゃんとストーリーあるもの作りたかったので作ります。


文章力低いですが、ストーリーには自信あるので乞うご期待ください。


小説を書く技術がないので、テクニカルな文章は作れません。

なのでこの作品内でのダッシュの使用方法は、場面転換と遮りの二つです。

ご了承ください。

 『才能』それは人間に授けられた神からのプレゼント。

 人が持つ才能はそれぞれ分野が異なり、才能の限界も人によって違う。

 どれだけ努力しても才能がなければ凡夫止まり。才能があったとしても突き詰めていけば、より才能がある者が上へ上がっていく。

 つまり生まれた時から勝者と敗者は決定しているのだ。






しかし、才能の残酷な点は別にある。

 それは自分がなんの才能に長けているのかわからないということだ。

 たまたま生まれつき己の才能に気づいていた者は神童と称賛され、己の才能を探しに探して開花させた者は努力の天才と称される。



 だがどちらも才能のレベルが低いと次第に軽視され始めてしまう。

 しかし才能を開花させられただけでも至高の人生を辿ったと言えるだろう。

 この世界では才能を開花させられず、退屈だと思いながら死んでいく者が殆どだ。

 これは、そんな開花させられず生涯の幕を閉じた者たちの物語である。


――「シュウキくーん、今日一緒に帰ろー!」


 学校終わりの疲労で満ちた校門前、1人の男の名がこだました。

 名を呼ばれた男シュウキは恒例の行事に溜息が漏れそうになるのを押し留め、声のした方向へ振り向くと、おさげが目立つ女の子が右手を力一杯振りながら小走りで走ってきていた。

 元気溌剌に向かってくる女の子を見たシュウキは付けかけたイヤホンをカバンに戻し、歩みを止め笑顔で手招きをした。


 手招きを見た女の子は笑みを浮かべ、気付かぬうちに軽くなっている足取りに、振り落とされぬよう左手で鞄を強く握り直した。

その時、突如謎の横撃が女の子を襲った。

突然の衝撃に女の子は耐えきれず尻餅をついた。

 女の子は憤慨を露わにし横撃の正体へ目をやると、これまたおさげの目立つ女の子bが胸の前で手を組み、おさ女(おさめ)aを見下ろしていた。


「抜け駆けなんてずるいわよ、今日は私が帰るのよ!」


「なにしてくれてんのよ、手のひら擦りむいたじゃない!」


まさに一触即発。

 シュウキは目の前の憂鬱をどうしたものかと眺めていると、さらなる絶望が向こうから駆け寄ってきているのが見えた。


「ちょっとなになに」


「聞き捨てならない言葉が聞こえてきたわね」


 2人の言い合いを聞きつけて、周りからわらわらとおさ女達が集まってきた。


(今日もか……)


 シュウキはうんざりしながら額に手を当て溜息をついた。


(めんどくさいし置いていこう)


 シュウキは女の子達の相手を諦め、前方に広がる大乱戦を無視して両耳にイヤホンをあて、1人で歩き始めた。


男の名はシュウキ。

 どこにでもいる才能の欠片も感じられない平凡な一般人、今まで顔が良い以外で何一つ人より秀でたことがない男。


 シュウキが自分の才能の無さに絶望したのは8歳の時だった。

 シュウキは顔が良いという理由と親のコネにより、5歳の時に芸能界に売りに出された。

 もちろんシュウキはすぐに天使だと持て囃され時の人となったが、顔が良い以外なにもなく数年で芸能界から姿を消した。

 その時シュウキは若くして自分には何もないと気付いたのだ。


「シュウキ君信号、俯かずに前見ないと危ないよ」


 それからシュウキは己の才能を探そうと躍起になり運動や美術、料理に勉学など様々な分野に手を出したが、案の定目も当てられない悲惨な事になり終わった。

 自分の才能のなさを悉く結果で示されたシュウキはいつしか自分の人生に希望を持てなくなり、ただ時間を浪費する毎日を過ごしていた。


「キャー! トラックよ! 気づいてないの?!」


(相変わらずうるさいな、音量あげよ――)


だがそんな退屈な日常も今日限り。

 味気がなくしかしどこか輝かしい青は、けたたましい音と共に赤へと変わった。



――1人目の男は体内の氣のコントロールに飛び抜けた才能を持っていた。

 拳法家として生きていれば、格闘技の世界を大きく変えることになっていただろう。

 だが自分の才能に気づくことなく、トラックに轢かれて死んでしまった。




――「くっそまた負けかよ、クソゲーすぎ!」


 男はヘッドホンを机に叩きつけ、大きく体をのけぞりながら叫んだ。


(あー、クソクソクソクソクソ、何が悪いんだ……? コンボも選択も悪くないはずだ、反射神経が負けてるなんてないはずだろ。いや、てか僕の方が断然上のはず)


 男は左手で頭を掻きむしりながら先ほどの試合の流れを反芻していた。


「そんなキレんなよストロン」


 男が必死に負けた理由を考えていると、叩きつけたヘッドホンから笑いを抑えた震えた声が聞こえてきた。

 人を小馬鹿にするような声と共にモニターでは対戦相手の操作キャラクターが勝利モーションをしており、キャラクターにそんな意思がないとは分かっていながらも男は2人に感情を逆撫でされた気分になった。


「うるさい! 勝ったからって良い気になんなよ」


 男は相手から見えもしないのにヘッドホンに向かって手を大きく振り落として指を刺した。


「はいはいわかったよ。めんどくさいでちゅねー」


「はーいカッチンガチファッキン。もっかいこいよ、次はボコす」


 敵愾心を燃やした男はヘッドホンを付け直して対戦部屋を立ち上げると、招待ボタンを連打した。


男の名前はショウジ、所謂大天才。

 16年前、とある平凡な夫婦の間に生まれたショウジは当時からその片鱗を見せていた。


 生後間もない赤子にも関わらず、一目で眉目秀麗に育つと確信できる顔立ち、生後1週間であんよを覚えた強靭な肉体、生後4週間で日本語をマスターする至高の頭脳。


並の天才ではあり得ぬほどの奇跡。

 それもそのはず、彼の才能は人類史における最盛期ではなく全盛期、未来永劫現れる事はない人類最高峰、人類の才全ての終着点であった。

 鳶が鷹を産むどころの話ではなかった、鳶がフェニックスを産んだのだ。



 そして月日は流れ、小学生1年生になったショウジは何をしても当然のように大学生含め全国の学校で一番を取り、神童として人生を謳歌していた。


だがそんな薔薇色の人生も長くは続かなかった。

 3年前の5月21日、日本で史上最大の大災害が起きた。

 その時大災害の中心にいたショウジは事故により右腕と右足、そして左目の光を失う悲運に見舞われてしまったのだ。


 だが悲劇はそれで終わりではなかった、学校にはショウジの才能をよく思わない人が沢山いたのだ。

 手足や光を失い無気力になったのをいい事に、ショウジはいじめられてしまった。

 そしていじめにより心に傷を負い、ショウジは引っ込み思案の引きこもりになった。


 その結果見ての通り、ゲームに明け暮れる日々を過ごすようになったのだ。


「絶対ボコすから早くこいよ! 勝ち逃げすんなよ」


「おう、頑張れよ!」


「お前ほんと……今シーズンでランク抜くからな、覚悟しとけよ」


 ショウジは苛立ちが募りマウスにかかる指の力がどんどん強くなっていった。

 悲鳴のようなクリック音が響く中、その騒音を掻き消すようにさらなる騒音が部屋を襲った。


「ショウ! おまえはいつまでゲームをして、穀潰しでいるつもりだ」


 突然鳴り響いた怒声にショウジは反射的にゲームを閉じて、後ろを恐る恐る振り向いた。


「やべ、父さんだ。父さん機嫌悪いみたいだからまた後でな」


 ショウジは急いで通話を切り、改めて父親のほうへ向き直した。

 そこには怒り狂った父親がハンマーを持って立っていた。


「父さん?!」


 父親はショウジの方へ一直線に歩み寄りハンマーを大きく振り上げた。

 ショウジは咄嗟に目をつぶり、左手を頭の上に突き出すように伸ばして頭を守った。


 しかしハンマーから奏でられた破壊音はショウジの後方から聞こえた。

 ゆっくりと目を開き後ろを振り向くと、ショウジのパソコンは父親によって見るも無惨な事になっていた。

 父親は肩で息をしながら乱れた前髪をかきあげると、ショウジの肩に手を置き無理やり自分の方へむかせた。


「こうすればお前もちゃんと、将来の為に行動する気が起きるだろう。お前には誰にも負けない才能があるんだ、父さんはちゃんと真っ当な大人になってほしいんだ。ゲームで遊んでばかりでいてほしくないんだ。」


 父親は大仕事をやり切ったような笑顔で話し始めた。

 恐怖と悲しみで心がグチャグチャになったショウジは、対話よりもまず肩に置かれた父親の手を振り払ってパソコンの残骸を必死にかき集めた。


「何やってんだよ……先週ゲームで稼ぐって話したじゃないか、何で俺のパソコン壊すんだよ!」


 ショウジは父親の方を見向きもせず叫び、焦燥で手元を震わせながらも必死に残骸集め続けた。


(頑張れば直せるかもしれない、とにかく部品を集めなきゃ)


 必死に部品を集めていると、突然父親に腕を掴まれ父親の胸元まで引き寄せられた。


「何を馬鹿なこと言っている、ゲームなんて遊びの道具だ! 稼げるわけがないだろ! それにお前は、もう右腕がないんだぞ!」


 腕の痛みや一方的なコミュニケーションにより、ショウジの心は焦燥から次第に怒り一色へと変わっていった。


「今は時代が変わったんだよ! それに俺なら左手だけでもゲームはできる、自分の主観に縛られて物事語ってんじゃねえよバ――」


 乾いた破裂音が鳴り響き、高ぶっていたショウジの心は一瞬で冷めきった。

 状況が読めぬまま傾いた視線を戻すと、そこには空中で小刻みに震える、皮膚が赤く染まった父親の手があった。

 それを見て初めてショウジは父親に叩かれた事を理解した。


「……なっ……あっ」


 ショウジは打たれた事で放心状態になり乍も言葉を出そうと口をパクパクとさせた。


「今考えると私は、1度もお前を打ったことがなかったな。お前が優秀だからって、甘やかしすぎたようだ。でていけ! 社会の厳しさを少しは感じるがいい! 1週間経てば家に入れてやる、その時考えを改めていなければ絶縁だ!」


 父親は眉間に皺を寄せながらも、真剣な眼差しで息子の次の言葉を待っていた。


「……ああいいさ、こんな家出ていってやるよ! 二度と帰らねえ!」


 ショウジは父親を押しのけて義足も付けずに部屋を出ると、わざと大きな足音を鳴らしながら階段まで急いだ。


(クッソ、イライラする! 何もあそこまでしな――)


 その時ショウジは興奮しすぎて周りをしっかり見ておらず、階段を踏み外してしまった。

ショウジは急いで手すりを掴んだ。

 だが、手すりは経年劣化に加え、長年の引きこもり生活によりぶくぶくと肥えた体重に耐えきれず外れてしまった。


(嘘……でも僕の身体能力なら)


しかしショウジの体は思うように動かなかった。

 長年ひきこもっていたせいで神童時代の動きは失われていた。


(でもこの高さなら大丈夫なはず。いやダメだ、角度が悪すぎる! そんな……こんな……。俺の人生これで終わ――)


 


――2人目の男には大きな才能があり、本人もそれを自覚していた。

 だが環境に才能が殺され、開花せずに人生を終えてしまった。

 もし彼に何事にも動じぬ強靭な心があったなら、世界の記録は全て彼の名で埋まっていただろう。



――「カズヤ君お勤めご苦労様。この後すぐ家帰るの? 用事ないなら飲みに行かない?」


 夜が更け、キーボードが弾む音と、何かの機械のモーター音が鳴り響くだけの生気を失ったオフィス内。

そのオフィス内に久方ぶりに人の声が鳴り響いた。

 名前を呼ばれた男カズヤが振り返ると、声の主、部長がドアノブに手を当てた状態でカズヤを見ていた。


(またか。この人暇さえあれば常に酒だな……)


 カズヤは気怠さが顔に漏れないように作り笑いを浮かべた。


「いいですよ。」


「よし、じゃあいこうか。最近いい店を見つけたんだ」


 部長は喜ぶ様子もなく、了承するのがさも当たり前かのように頷き、ドアを開けてエレベーターに向かい始めた。

 カズヤは帰り支度を早急に済まして荷物を持ち、部長の後に続いた。


(今日も今日とて、仕事以外関わりのないおっさんのストレス発散のために、夜の街を連れ回されるのか)


男の名はカズヤどこにでもいる平凡な会社員。

 男には昔から向上心がなく、そこそこで満足してしまうたちだった。

 理由は単純に世界が面白くない、カズヤは自分から見た世界がつまらないと感じていた。



 つまらないと感じたらどこまでいってもつまらないまま、当然やる気なんて起きるわけがなかった。

 そのせいでカズヤは何かに真剣に取り組む事はなく、適度をモットーに過ごしてきた。


 ならば日本から海外に行けば解決と思っていたが、環境が変わるだけで根本的には同じような世界、カズヤの心が満たされる事はなかった。

 そうしてカズヤは次第に刺激を求め、刺激に満ちた常に生死をかけた戦いができるゲームの世界にのめりこんでいった。


(はぁ、この生活いつまで続ければいいんだろ。起きる。会社に行く。仕事を終える。飲みに行く。肥えた部長の愚痴を聞く。家に帰りすぐ寝る。繰り返し繰り返し。このつまらない日常をいつまで、いつまでやれば報われるのだろう)


 飲み屋につくや否や社交辞令もなく、ビールを片手に愚痴を吐き続ける機械となった男を見つめ、カズヤはジョッキを握る力を強めた。


(つまらない、本当につまらない。もっと刺激のある話はないのか……)


 カズヤは酒を流し込み無理やり楽しんでると思いこむよう努力した。

 しかしいくら飲んでもつまらないものには変わらない。

 カズヤは部長から少し目線を外し、周りの楽しそうに談笑している学生やカップルや会社員に目を向けた。


(いいなぁ。楽しそうにしてて、俺もああなりたい………)


 カズヤはこの世界で1人だけ楽しめていない自分が、惨めに思えてきた。


(みんなだけずるいなぁ……俺だけこんな思いをするぐらいなら……また5.21みたいなことが起きればいいのに。そしたら……楽しく――)









「おーい、カズヤ君聞いてる?」


 闇へと堕ちていくカズヤの思考は、部長の声により現実に引き戻された。


「大丈夫? なんか心ここに在らず、みたいな感じだったけど」


「あっはい、大丈夫ですよ。聞いてますよ」


 カズヤは部長の機嫌を損なわぬよう笑顔を貼り付けて返事をした。

 そして状況を整理するため、耳に入った部長の話と、自分の思考を今一度思い返した。


(ん? あれ、俺今なんて)


 カズヤは先程、とんでもない考えをした自分に恐怖と嫌悪を抱いた。


「それでさぁ――」


「すみません部長、俺帰ります。支払い自分の分は置いていきます」


 カズヤは部長の言葉を遮り席を立ち上がり、カバンから財布を取り出すと、少し多めにお金を取り出し机の上に叩きつけた。


「え、ちょっと」


 カズヤは部長の静止など構わず、怯えるように店から逃げ出した。

あの空間に1秒たりともいたくなかったのだ。

 あのままずっといれば、何か良くないことを自分がしてしまう気がした。


(思い出す事はあっても、こんな事今まで……。やばい、吐きそう。落ち着け、俺は正常のはずだ、今まで大丈夫だったんだ、ただのストレスだ。とりあえず家に帰って落ち着こう。)


 カズヤは人の気配がする場所から直ぐに離れたくて必死に走った。

 脇腹が痛くなり喉が渇いて焼けたように痛み出したが、お構いなしに速度を緩めず走り続けた。


(疲れた。でも、急がないと。確か、こっちの路地が近――)


 カズヤ意識が朦朧としていたせいで通行人に気づかずぶつかってしまった。

 カズヤは急いで立ち上がり、ぶつかった青年に駆け寄り手を差し伸べた。


「すまない、急いでいたんだ。大丈夫か」


 青年は差し出した手を叩き落として自分で立ち上がった。


「大丈夫じゃねえだろボケが、ちゃんと前みろや。詫びとして金出せや、金」


「急に金だなんて言われて――」


 その時、突然腹部に現れた激痛に、カズヤは何が起こったかわからないまま蹲った。


「いいから金出せや」


(殴られたのか……?)


 カズヤは震える膝を手で押さえながら立ち上がり、ゆっくりと青年の方を見た。

よく見ると青年の腕には裾から刺青が覗いていた。


(ヤクザ? いや……半グレか? 痛いのと疲れたので頭が回らない)


 ヨタヨタと近くの壁に寄りかかって、言われた通り財布を出して中身を確認した。

 しかし財布の中にはお札はおろか、小銭もなかった。


(さっきの店で出したのが全部かよ……)


 カズヤは半グレの前に財布を突き出して、逆さにする事で入ってない事を伝えた。


「すまない……今、金を持ち合わせていないんだ」


「んなもん知るかよ、どっかでおろして持ってこいや!」


本日2度目の衝撃が顔に走った。


「これ以上殴られたくないなら、ちゃんと持ってこいよ」


 半グレは殴った右手を振りながら、横たわるカズヤに足を置き、唾を吐きかけた。


(あー死ぬ、死ぬほど痛え。こいつ力やばすぎだろ)


「おーい、聞いてんのー」


 反応がない事に苛立ち始めた半グレは、しゃがみ込んでカズヤの頭をペシペシと叩き続けた。


「これ以上無視するならもう一発入れちゃう――」


 半グレは急に手を止めて、立ち上がって距離を取った。


「お前何ニヤニヤしてんだよ、気持ち悪りぃ」


カズヤは半グレの言葉が理解できなかった。


(ニヤニヤ? してるわけないだろ……こっちは痛すぎて死にかけてんだよ。笑うわけ……)


カズヤは震える手で自分の口元を触った。

 そこには確かに半グレの言う通り、大きくつり上がった口角があった。


(なんで俺ニヤついてんだ? しかも人生最大級のニヤつきだ、今までこんな事なかったのに。俺が楽しいと思うことなんて――)


()()()()()()()()()()()()()()()()


その時一つの言葉が頭の中で反芻した。


(いやいやそれは現実逃避であって、実際に目の前にした時喜ぶなんて頭が……)


 言葉に続くように、先程の飲み屋の出来事がフラッシュバックした。


(そっか、俺は……イカれてんだな……)


 カズヤは優しい眼差しに戻り、失望と諦めの乾いた笑いを吐き捨てた。

 そして先程までとは比べ物にならない、歪んだ笑みを浮かべた。


(だってまだ、こんなにも5.21(あのひととき)恋焦がれている。)


 歪んだ笑顔は恍惚を帯び始め、およそ常人とは呼べぬ顔へと変貌していった。


 カズヤが立ちあがろうと体を起こすと、先程まで抜けていた嘘のように、力が突然湧き上がり始めた。

 まるで目の前の男を倒せ、と体が叫んでいるように感じた。

 対する半グレは一連のカズヤの行動を見て少し、恐怖を感じ始め一歩後退りをした。


「何ビビってんだよ、まだまだこれからだろ。こちとら頗る爽快、テント張りまくりなんだぜ? 付き合ってくれよ」


 口や鼻から垂れる血をワックスがわりに手に馴染ませ、髪の毛をオールバックにすると半グレに向かって歩き出した。


(頭はフラフラするのに視界がクリアだ、何故だ……? まあどうでもいいか。とりあえずどうするか考えなくちゃな。)


 カズヤは次の行動を自問自答をしながらニヤリと笑みを浮かべた。


(やっぱやめ、ぶっつけ本番で行こ! 楽しいなあ。ミスったら死ぬかなあ。楽しいなあ)


 これから起こる惨事を想像すると、歩みを進める足により一層力が込められた。


「何急にイキリ出してんだよ雑魚が」


 半グレは恐怖を度胸で無理やり押さえ、ズボンのバックポケットからナイフを取り出し、カズヤに刃先を向けた。

 カズヤは怯む事もなくナイフの射程圏内まで近寄り、自分の喉を人差し指で2回叩いた。


「刺してみろよ、ビビってんじゃねえぞ」


 カズヤの言葉を引き金に、半グレは足を強く踏み込みナイフを突き出した。

 しかしその一撃は、カズヤの超人的な動体視力により安安と躱された。


(みえる……! はは。なんだ、よく見て避ければ楽勝じゃん、こんなやつ。)


 カズヤは次なる一手を考えるべく、今の状況を脳内で俯瞰した。

 そしてナイフを突き刺す為に踏み出した、無防備な右足に目をつけた。


好機を逃さぬ無慈悲の鎌が半グレの右足を襲った。



しかしその選択は好手になり得なかった。

カズヤには圧倒的に経験が足りなかった。

蹴りの経験、そして戦いの経験。


 経験の無さ故に、圧倒的フィジカル差を前にダメージではなく、体制崩しを選んでしまった。

 カズヤの蹴りは右足を薙ぎ払う事なく、隙を晒して終わった。


「ってぇな、コラ!」


 すかさず隙を逃さぬよう半グレは、ナイフを持ってない方の手で裏拳をかました。

 なんとか避けようとしたが、なれない蹴りにより崩した体制が仇となり、直撃してしまった。

 直撃したカズヤは壁に打ち付けられ、そのまま気絶した。


 気絶したのを確認した半グレは追撃に三発、顔に蹴りをお見舞いしてどこかへ去っていった。

 そして文字通り眠るように、カズヤの命は尽きていった。


――3人目の男は目について、常人とは一風変わった才能を持っていた。

 だが世界がつまらないと信じ込み、男は目を背け続けた。

彼は自分の才能を自分自身で殺してしまったのだ。






 この物語は一度の生では己の才能を開花させれなかった者達が、異世界転生を通して才能を開花させる物語である。

 はたして彼ら3人が異世界でどんな出会いをして、異世界にどんな影響をもたらすのか。

 彼ら3人の才能がもたらすものは厄災か、はたまた救済か。

後書きは作品の備考を書いていきます。


キャラクタープロフィール


カズヤ

身長178cm 体重64kg

享年24歳 (1991年7月18日生まれ)

死亡時刻 2015年9月20日22:47

脳内出血により死亡。

好きな物 ゲーム 5.21の思い出

嫌いな物 部長 暇 施設

趣味 なし

備考 生後4ヶ月から施設育ち。養子として引き取られた回数5回。

その5回全て里親が何らかの理由で死亡した事により、その後9年間施設内で成人まで育った。


5.21で右目が失明したため、義眼をつけている。


死亡後、通行人に発見され通報。その5日後に犯人の男は捕まった。


東大のマークシート方式のテストで、満点を取った事がある。



シュウキ

身長187cm 体重61kg

享年18歳(1997年4月19日生まれ)

死亡時刻 20015年6月14日16:32

トラックに跳ね飛ばされ、近くの縁石に頭を強打。

頭蓋が割れた事で、脳が飛び散り死亡。

好きな物 洋楽 歌う事

嫌いな物 親の小言 期待

趣味 カラオケ

備考 死亡時、彼の取り巻きの女子達は誰1人心配で駆け寄るものはいなかったという。

 後なぜか脳の15%がどこを探しても落ちていなかった。



ショウ

身長 169cm 体重98kg

享年16歳(1999年2月8日生まれ)

死亡時刻 2015年5月3日17:16

階段から落下し後頭部を強打し死亡。

好きな物 カニカマ BBQ

嫌いな物 きのこ タバコの匂い

趣味 クソゲーの世界記録塗り替え

備考 母は5.21で死亡、その後3年間は父と父の祖父母と暮らしていた。


遊んでいたゲームは拳魔闘神という彼らの世界の人気格闘ゲーム。(フルCG映画化2回した事がある)

ショウは初めてまだ1週間。(3日目に親にプロの話をした)

対戦相手は世界ランク8位の日本人ハヤト。

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