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62.ブラックマーケットに行こう⑥

「…ハァ…異世界から転生してきたレベル99の盗賊と、アノマリーの力で転生した魔人とか…アナタ達、ちょっと設定盛り過ぎじゃないかしら?」


 驚きを通り越して呆れた様子のbeeは、行儀悪く頬杖をつきながら紅茶を啜る。


「自分でもそう思う。…それに加えて異星人が遺したアノマリーのボディーガードと、異星の技術で造られた宇宙船のAIが現状ウチのフルメンバーだ。」


「濃い…。」


 もっと詳しく言えば、プシュパカの子機メイドロイドが十数体(着々と増え続けてて正確に把握出来ていない)、アジトの地下には白ワニの百日(モモカ)もいるし、湯取には【眷属召喚】で従えているカブトムシの金剛丸と、ホホジロザメのフカヒレっていう眷属もいるし…って。


「思い出した。湯取、お前【弩龍の卵】ってどうした?」


「?…ああ、アレなら今はノクスの解析部門で色々調べてますよ。新装備の受け取りに行った時に、開発主任のクヴァントさんに号泣されながら頼まれちゃって…装備を作ってもらった手前断り辛かったんで、『絶対無事に返す』って条件でレンタル中っス。」


 …開発主任のクヴァントさんって、あの礼儀の正しいガチムチ髭オヤジだよな?

 …号泣って…さてはヘクセンから無茶な命令でも出されたな?

 …ご愁傷様です。 


「そうか…そういえば間に合ったんだな、新装備。…カッコイイな。」


「…でしょ!?前の装備も気に入ってたんスけど、今回の装備も超お気に入りなんスよ!!」


 興奮気味に立ち上がった湯取が、そのまま流れるように両腕を広げてポージングする。


 ダークレッドのダブルライダース風ジャケットが、筋肉質な体に沿ってギチッと音をたてる。反らした表面は光の反射で独特の光沢を放ち、鱗のような紋様が浮かび上がっている。

 対になる白のボトムスには陶器のような白いプレートが並べて取り付けられており、ともすればガチャガチャ音でも鳴りそうなもんなのに無音。…謎だ。


 赤と白でなんともおめでたい野郎だ。

 一見すると馬鹿にも見えるが…足が長ぇから似合うなクソッタレ。


 …うわっ、得意げな顔っ!うざっ!!


「…というワケでコレ、おNEWの装備なんスけど、どうっスかねbeeさん?」


 湯取が真剣な表情でふざけたポージングを決めるのを見て、beeは紅茶のカップを指先で軽く揺らしながら、一拍置いてから口を開いた。

(…ほんの一瞬だけ視線が泳いだ気がしたが…気のせいか?)


「案外、似合ってるんじゃない?…何かのコスプレに見えなくもないけれど…まぁ、スタイルの良さでギリギリ様になってるわね。」


「おおおっ…!流石beeさん、分ってくれますか!!」


「…ただし、堂々としてないと途端に装備に着られてる感が出るから注意なさい。…せっかくのアノマリー装備、着こなせなきゃ文字通り『宝の持ち腐れ』よ。」


「うぐっ…心得ておくっス。」


 ションボリする湯取に、beeがフォローするように呟く。


「…そうね。でもまぁ…“悪くない”ってところかしら。」


 唇に微笑を浮かべながら、beeはカップを口に運ぶ。


 …うん、なんだかんだbeeも褒めてるしやっぱカッコイイな、畜生。

 …何故かbeeが終始ソワソワしてるように感じるのは気のせいか…気のせいだな。


 …一応、【鑑定】もしておくか。


【ドラゴンスケイルジャケット】ランク:B

 弩龍ヴァリモアの鱗を贅沢に使用したジャケット。

 アンデッド化した幼体から採取した鱗を使用しているので、成体の鱗よりは性能は下がる。

 …が、そこは伝説にも名高い弩龍、幼体といえど破格の性能。

 打撃・斬撃・火炎に対する強力な耐性を持ち、触れた者には灼熱による反射ダメージを与える。

 (本来ならばここまでの性能にはならなかった。完全に素材の勝利。)

 裏地には魔術紋が刺繍されており、【自動調整フィット】が付与される。


【ドラゴンボーンボトムス】ランク:B

 魔術的な加工を施された弩龍の被膜に、ヴァリモアの骨を金属や粘土と練り合わせ焼き固めたプレートで補強を施した逸品。

 打撃・斬撃・腐食に対する強力な耐性を持つ。

 (本来ならばここまでの性能には以下略)


 性能エグッ!!

 …何だよ!性能下がるって言ってたじゃん!!

 これじゃ装備壊した湯取が得しちゃってるじゃねぇか!

 話が違うぜアステリオスちゃんよぉ…。


「…ま、まあまあ高性能そうだな!聞いてた話だともっと低ランクになるみたいな話だったハズだけど…。」


「そうなんスよ!なんか破れた前の装備を解析して得られたデータと、弩龍の素材が相性良かったみたいで!クヴァントさん的にも想定外の性能らしいっス!」


 くそっ!クヴァントさん、良い仕事しやがって…もっと手を抜けっての…!


「…まぁ、それでもそれなりに無茶なスケジュールで制作してくれたみたいだったんで、卵レンタルの件は断れなかったんスよ…途中でヘクセンさんまで来て頼まれちゃったもんで…。」


 そうか、ヘクセンも来て…ん?


「…待て。お前がさっき言ってた『絶対無事に返す』って条件、もしかしてヘクセン本人から言われたのか?」


「良く分かりましたね、アリババ先輩の言う通りっス。」


「…お前ソレ、『絶対無事に()()』って言ってたんじゃね?」


「……え?」


 俺の言葉に、湯取の顔色がどんどん青くなっていく。


 …ヘクセンなら有り得る。

 アイツ、【弩龍の卵】に異常な執着を見せてたからな。


 …後でアステリオスに電話しよう。

 …勝手に卵を孵したら、この前の汚物アノマリー届けるからなって念を押しておこう。


 それにしても…青・赤・白…ロシアかフランスの国旗みてぇだな、湯取。

 どっちも順番が違うけど。

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