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61.ブラックマーケットに行こう⑤

 ヴィマナ内の談話室へと移動した俺達は、部屋の中央に置かれたテーブルセットに腰を掛けた。

 間髪おかずプシュパカと子機がコーヒーや紅茶を持って現れ、各々にそれを配っていく。


 俺の前にはコーヒー、砂糖とミルク入りで甘党の俺好みに調整されている。

 beeには紅茶。注がれたカップから柑橘のような良い香りが漂う…紅茶に詳しくないから銘柄とかは知らんけど。

 …湯取には、氷の入ったグラスになみなみと注がれたコーラが提供された。


 俺はコーヒーを一口飲んでから、辺りを見回して口を開いた。


「…はい、じゃあ話したい話題がある人~?」


 俺の発言に、ズッコケ気味にbeeが挙手で応える。


「なんか締まらない始まり方ね…聞きたいことなら山ほど有るわよ?…例えば、アナタさっき…アグニさんのことを『ランクSのアノマリー』だと紹介してくれたわよね?…その『ランクS』っていうのは、アナタが居たっていう異世界でのアノマリーの格付けなのかしら?」


 俺は想像もしていなかった質問に、一瞬唖然としてしまった。


「…え?いや、まあそうだけど…何?こっちの世界では何か別の言い方があるワケ?」


「…呆れた、本当に知らなかったのね。…この世界でアノマリーの格付けと言えば、天使の階級になぞられて上から順にセラフィム級、ケルビム級、ソロモン級、ドミニオンズ級…といった具合で呼ばれるわ。…言い始めたのは恐らくオルテックス・インダストリーなんじゃないかしら?」


「…あ~、なんとなく覚えてるっス。前にヘルマーのオッサンがアグニ姐さんにそんな事言ってた気がしますね。」


『…我も覚えている。確か我を見て…「ドミニオンズかスローンズ」と言っていたか?…フン、舐められたものだな。』


 口では何でもないように言っているが、目が笑っていないアグニ。

 …ああ、実際のランクより低く見られてたのか。そりゃあ怒るわ。


 …えーっと、つまり。

 こういう事か?


 異世界 /現代

 ランクSS セラフィム級

 ランクS  ケルビム級

 ランクA  スローンズ級

 ランクB  ドミニオンズ級

 ランクC  バーチューズ級

 ランクD  パワーズ級

 ランクE  プリンシパリティーズ級

 ランクF  アークエンジェル級


 …現代の階級、名前が長ぇわ!

 異世界のSとかAとかの方が、分かりやすいし言いやすいと思うんだがね。

 …オルテックスで階級名決めたヤツ、相当高位の中二病だったんだろうな…。


「…アリババはスキルの力で、アノマリーのランクも分かるのよね?」


「おう、盗賊スキルの【鑑定】だな。ランクと名前、あとは簡単な説明文が見えるな。」


「…何よソレ、本当にチートじゃないの!…こっちは、必死の思いで手に入れたアノマリーの使い方が分からないなんて事がザラにあるっていうのに!」


 ああ、そういう事もあるのか。

 確かに、一部のアノマリーは使用方法が分かり辛い。

 それどころか、正確な名前が書いてあるわけでもないし、無論説明書だって付いちゃいない。

 …俺の持ってる【フロートリング】なんかも、使用方法を間違ったら空中に吊り下げられるからな。


「…ちなみに、【カーリストラ】はランクA、【睡蓮の淑女の七つ道具(シャトレーヌ)】はランクB。初めてあった時に着てた【アサシンスーツ】はランクCだったハズだ。」


「…後で、説明文ってヤツも詳しく教えて!アタシが気付いていない機能や使い方があるかもしれないし。」


 口を尖らせてbeeが言う。

 そうか…【鑑定】が無いと気づけない事も多そうだな…。

 …ん?気づけない事…。


「…そういえばbee、お前、自分が【トレジャーハンター】の職業持ってるって事は知ってるか?」


「……は?」


 お、このリアクション…やっぱり知らなかったみたいだな。

 …そうなると、無意識の内に職業を手に入れてたのか…条件は何なんだろう?


「ちょっ…ちょっと!アタシが職業を持ってるって、本当なの!?」


「マジマジ。レベルは11で【直感】と【幸運】のスキルを持ってるな。…知らなかったとしても、スキルの効果を実感したことがあるんじゃないか?」


「…確かに、ここぞという時の感の良さと、神様にでも愛されてるんじゃないかって程度には運が良い自覚はあったけれど…アタシが異能(スキル)持ちだったなんて…。」


 そう言って何やら考え込むbee。

 まぁ悪い事じゃ無い、むしろ利点しか無い話だ。

 …あ、職業適性で武器は制限されるか?

 …トレジャーハンターの武器って何だよ、どこかの先生みたく鞭か?

 それとも二丁拳銃とか?トゥー〇レイダーッ!!


「…レベルっていうのが上がれば、スキルも増えるのかしら?レベルはどうすれば上がるの?」


「基本的にはモンスターを倒してれば上がるな。」


「…あ、アリババ先輩!そういえば俺、前にプシュパカさんの造ったオートなんちゃらを倒した後もレベル上がってたっス!」


 オートなんちゃら…ああ、機人(オートマトン)だったっけ?

 今思えば、初めて会った頃から人型の機械に執着してるよな、プシュパカ。

 自分の手足代わりに作業が出来るボディーが欲しかったんだろうな。

 …それは置いておいて…。


「う~ん…こっちの世界ではモンスター以外でもレベルが上がるって事か?あ、beeモンスターって倒した事あるか?」


「…多分、それらしい怪物と戦闘になった事はあるわね。カーリストラで蹴散らしたから本当にアナタの言うモンスターだったのかは分からないけれど。」


 カーリストラで倒してもレベル上がるのか。

 …そりゃ実感わかないのも無理ねぇか。


「…ちなみに、アリババ達のレベルってどれくらいなの?さっきの話からすると、ユトリ君も職業持ちでレベルがあるのかしら?」


「あ、湯取は無職だぞ。」


「無職って…人聞きが悪すぎるっスよ先輩…。弁明させてもらうっスけど、自分は【魔人の腕輪】っていうアノマリーで魔人に生まれ変わったんスよ。レベルは魔人化の影響で上がるようになったっスね。」


 湯取の言葉を聞いたbeeは何やら呟くと、思考の海へと旅立った。

 …何だ?さっきの湯取の言葉にそんなに考え込む要素があったんだろうか?

 …アレか?もしかしてbeeがトレジャーハンターの職業を手に入れたのも、何かしらのアノマリーの影響だったりするのか?


「ちなみに俺がレベル99で、湯取は…そういえばお前、今レベルいくつになったんだ?」


「フッフッフッ…よくぞ訊いてくれました!自分遂にレベル40になったっスよ!」


「おお凄ぇ、やるじゃん湯取!そっか、いつの間にか成長してたんだな。じゃあ後で鑑定してやるよ、新しいスキル覚えてるかもしれんしな。」


 自慢げに胸を張って語る湯取を微笑ましい気持ちで称賛していると、何故か退き気味のbeeが割り込んでくる。


「…え、アリババ…あなた今、レベル99って言わなかった?」


「あ?言ったけどそれが何か?」


「…確認なんだけれど、レベルって上限とかあるのかしら?」


「人類のレベル上限は99って言われてるな。」


「…じゃあアナタ、盗賊のレベル上限までカンストしてるって事じゃないの!!何よソレ、スキルもレベルもチート性能って…まるで一人だけ『強くてニューゲーム』でプレイしてるみたい…!」


 …いや、そんなこと言われても実際に俺って人生二回目だからな。

 …そんな恨みがましい眼で見んでくれ。

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