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60.ブラックマーケットに行こう④

 俺達とbeeを乗せたヴィマナはステルスモードのまま浮上すると、プシュパカが造った異次元空間の天井をすり抜けて空へと舞い上がった。

 そして空中でピタリと制止すると、一気に加速する。

 予備動作無しでの超加速…なのに、ここまで一切の揺れ無し。

 う~む…恐るべし異星の技術…。


『…カスヴァル共和国まで、およそ三時間で到着致します。』


「「「早っ!!」」」


 えっ…カスヴァルって中東の国だったよな?

 …そんなサクッと着くモンなのか?

 …ヴィマナ、時速何キロで飛んでるんだよ…。


『おっと、忘れるところでした。bee様、今回【カーリストラ】はいかがいたしますか?このヴィマナなら十分な広さの格納庫を備えておりますので、一緒に輸送可能ですが。』


「…本当になんでもアリなのね。…そうね、それなら念の為連れて行こうかしら。」


 beeがプシュパカにどこだかの住所を伝えると、ほんの一分程度で目的地に到着する。

 バカ高そうな高層マンション…ここがbeeの家なのかな?


「…【カーリストラ】は、あのマンションの屋上にステルス状態で置いてあるわ。」


「…えっ野ざらしっ!?」


 お前そんな…乗用車じゃ無いんだからさぁ…。

 …なんか【カーリストラ】が不憫に思えて来たぞ…。


『…【カーリストラ】を捕捉致しました。これは中々に高度なステルス技術ですね。』


「異星のAIに褒められるなんて、きっとオルテックス・インダストリーの研究者が泣いて喜んでるわね。開発の中心人物は確かA.R.K.研究運用部隊隊長のマリア・ニェチェリナだったかしら。」


 マリア・ニェチェリナって…前にA.R.K.空挺魔導部隊の銀ピカ女、エリシア・フロストレインが話してたな…そうだ!なんか戦車型の魔道兵装持ってる物騒なヤツだ!

 そうか…【カーリストラ】ってソイツが造ったのか…。


『…【カーリストラ】回収完了致しました。格納庫にてチェックと整備・メンテナンスが可能ですが、いかがいたしますか?』


「…正に至れり尽くせりって所ね。自己修復機能があるから大丈夫だとは思うけれど…折角だからお願いしてもいいかしら?アタシ個人での整備には限界があるし、あの子結構我慢しちゃう所があるから。」


 …ん?何だって?

 何か今、表現がおかしかった気が…。


「…我慢しちゃうって何だよ?」


「あら、言ってなかったかしら?【カーリストラ】にもサポート用の疑似人格AIがあるのよ。」


 …何それ初耳なんだが?


「…そうだわ、いきなり船内に引き入れられて、あの子きっと混乱してるわ。一緒に格納庫まで来て頂戴。」


 そう言うとbeeは慌てた表情でブリッジから出ていく。

 理解が追い付いていない俺は、急ぎその後を追った。




 格納庫の扉を開けると、耳をつんざくようなけたたましい警報音が鳴り響いていた。


『…警告。こちらは戦術ユニット:神話兵装【カーリストラ】。現在、敵性勢力による不法拘束状態と判断。該当勢力に対し、制圧モードへの移行を宣言。』


 四本の腕を水平に構え、辺りを警戒するようなステップで威嚇するカーリストラ。

 …よく見ればプシュパカの子機達が、銃器のようなものを構えて周りを包囲しているし。

 

『…最終通告。本機体は高次戦術アルゴリズムにより、敵対者の殲滅を自動選定します。五秒以内に、明確な所属コードおよび指揮権限を提示せよ。応答が無い場合、武力排除プロトコルを実行します。』


 …うぉい!!うちの格納庫でこれ以上暴れないでくれ!!

 

「…カーリストラ、アタシよ。ここは安全な場所だから大丈夫、警戒態勢を解除して。」


 落ち着かせるためか、冷静な態度を装ってbeeが言う。

 するとカーリストラは即座に腕を下におろし、beeに三眼レンズのついた頭部を向ける。


『…マリー!!突然連れ攫われたからボク、本当にビックリしたよ!!』

 

 …は?ボク…?


 先程までの底冷えするような機械的な合成音から打って代わり、少年か少女のような声がカーリストラから発せられた。


「事前に伝えておくべきだったわね…ごめんなさい。…紹介するわ。彼がこの船の持ち主、アリババよ。」 


 beeがそう言うと、カーリストラの三眼が俺に収束するのを感じる。

 …おおっ、見られてる見られてる。

 

『…アリババ?…変な名前!変な顔!!ボクの名前はカーリストラだよ、よろしくね!』


 …うん、アレだな…。


「…なんつーか…子供だな、カーリストラのAI。」


「実際、造られて日が浅いのよ。可愛いでしょう?とっても素直な良い子よ。」


 いや、いいのかそれで?

 …それとアレを可愛いと思える感性…いや、心の余裕か?

 俺には小生意気なガキンチョとしか思えん。


「カーリストラ、アリババの所の整備班がアナタを視てくれるらしいわ。…安心して、この船の整備をしてる人達だから腕は確かよ。」


 このbeeの言葉に、四本の腕で体を隠すように身じろぎするカーリストラ。


『えぇ…?だ…大丈夫かなぁ…ボクの体って結構繊細なんだけれど…。』


 女子か。知らんがな。

 …ふむ、ちょっと押してみるか。


「…あ~、カーリストラ?無理にとは言わんが、ウチの整備班…チームプシュパカはマジで優秀だぞ?なにせこの船を造ったのもソイツ等だからな。宇宙人の技術だぞ、宇宙人の。」


『!!…ふ、ふーん…そこまで言うんだったら、任せてあげてもいいけれど?』


 うっわ、ちょっろ。

 …ちょろ過ぎて少し可愛く思えてきたわ。

 ちょろ可愛い。


 カーリストラをチームプシュパカに預け、俺達は再びブリッジへと戻ることにした。


 ブリッジから見える外の景色は青空と一面の雲海…それが物凄いスピードで後ろへと流れていく。


「…さてと。カスヴァル共和国到着まで三時間だっけ?…何して時間潰すかね。」


 指揮席に座ってブリッジの面々を一瞥すると、ハイハイハイッ!と勢いよく挙手する馬鹿が一人。


「はい、そこの元気な馬鹿!」


「ウス!お互いのことを良く知る為に雑談タイムが良いと思います!」


 …あんだけ全力で挙手しといて、普通か!

 …いや、まあ妥当ではあるんだが。


「…確かに、三時間じゃ昼寝か駄弁る程度になるか?…beeはそれでもいいか?」

 

「異論は無いわ。…むしろこっちは色々と聞きたいことだらけよ。」


 …ふむ、beeが良いならそれで良いか。


『それでは談話室に移動致しましょう。お飲み物をご用意させて頂きます。』


『…我は睡眠を必要としない。つまり、三時間お前らの雑談とやらに付き合うしかないというわけだな…地獄だ。』


 プシュパカとアグニも異論無いみたいなので、俺達はブリッジを離れて談話室へと移動することにした。

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