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55.ランクS『弩龍胎内窟』リザルト

 湯取が結構ヤバかった。


 

 腐食ブレスを受けた湯取の体は、まるでシワシワの干物みたいになっていて、ただ【ポーション】をかけただけでは回復しなかった。

 慌てて口からも【ポーション】を流し込んで、結局数本突っ込んでようやく元に戻った。

 …コレ、湯取が魔人になってなかったら死んでたよな…。


 ちなみに、その一連の騒動を見ていたアステリオスが『やっぱり【ポーション】だったんじゃないか!いい加減にしろ!!』と珍しく声を荒げていたのは別の話。


 そんなことよりも…。


「ああああ…俺の…俺のジャケットとボトムスが…。」


 湯取をなんとか瀕死の状態で守り抜いた、【ダンピールジャケット】と【ワームスケイルボトムス】が逝った。アンデッドベビードラゴンの強力な腐食ブレスに耐え切れなかったのだ。


「超気に入ってたのに…こんな…ボロ切れみたいな姿に…。」


「…残念だが諦めろ。お前の命を救ってくれたんだ、防具として本望だったろうよ。」


 そう、アノマリーは貴重品だけれど、命あっての物種だ。

 …お気に入りの装備が傷付くのが嫌で、温存して死んだら本末転倒だもの。


「うう…仕方が無いっス…あ、でもチン〇ン丸出しになっちゃうんで、何か着る物貸して欲しいっス。」


「…分かった。お前には特別にコレを貸してやろう。」


 俺は【錬金術師の驚異の部屋】から、とっておきのアノマリーを取り出した。


「…うぇっ!?ソレ【土偶戦士の甲冑】じゃないっスか!!嫌っスよダサい!!」


「お前に拒否権は無い。丸出しかコレか選べ。」


 …そう、俺はこのタイミングで【錬金術師の驚異の部屋】にウ〇コもどきを入れられた恨みを晴らすことにしたのだ。


「…アリババ先輩、なんか怒ってます?」


「怒ってない。…まぁ、腐食ブレスが撒かれた段階ですぐに逃げる判断をしなかったコトには少し思う所はあるがな。…そこで引いてれば、結果的に服も無事だったハズだぞ?」


「うっ…それは…。」


「…つまり、自業自得ってコトだ。さぁ、どうする?ボスを倒したとはいえ、ゲームじゃ無いんだしこの後戦闘が無いとも限らないぞ?それに外はあの寒さだ。チン〇ンが凍傷になったらどうする?万が一取れちゃった場合、【ポーション】で治る保証はないぞ?」


「…他の服って──」


「無い。」


 本当は有る。でも出さん。

 湯取は腕を組んで暫くウンウン唸り続けたが…最終的には折れた。





「……。」


 俺達の目の前に、【土偶戦士の甲冑】を装備した湯取が立っている。

 ずんぐりむっくりな…遮光器土偶ソックリな見た目で、何故か顔の下部から湯取の顔が丸々露出するデザイン…要は顔出しタイプの着ぐるみのような見た目だ。


『…(プッwwwクソダサイwww)おおっ!思ってた程悪くないじゃないか!なぁアステリオス!』


『…コレにコメントを求めるのは…酷というモノだろう…。』


『なんだ湯取、なんだかやたらと懐かしく感じる服だな。でもお前が着ると馬鹿みたいだぞ。』


 アグニの言葉がトドメとなったのか、湯取は泣いた。


 …よし、これで復讐は完了っと。

 …でもアジトに帰るまではあの恰好でいてもらおう。


『…ふむ…あ〜、湯取よ。今回は我ら「魔術結社ノクス・ミラビリス」の依頼で起こった事だ。私としても、何かしらの形で補填したいと思っている。』


『…それって、何か代わりのアノマリーをくれるって事っスか…?』


『…あまり大きな声では言えない話なのだが、ノクス・ミラビリスでは一部、低級のアノマリーの作成に成功している。ロイヤルガードの揃いの装備等がそれだ。』


『…鎧とかはちょっと…できれば普段使いができる、オシャレな服が良いんスけど…。』


『…善処しよう。』


 アステリオスの言質を取った湯取はクルリとこちらを振り返ると、ニコッと笑った。(ムカつく!)


「さぁアリババ先輩!さっさと素材やらを集めて帰りましょう!俺お腹空いたっス!」


 …ハァ、泣いたカラスがもう笑った…ってか?

 まったく…。





 …調子に乗るなよ、小僧…!



~ ~ ~ ~



「…さて、まずはこの…アンデッドベビードラゴンからだな。」


 アンデッドとはいえ、龍は龍。

 全身が貴重な素材の宝庫だ。


 俺は【プラズマカッター】で骸を切り刻みながら【鑑定】をかけ、貴重な素材を選別していく。


「うぇ…なんか結構グロいっスね…あれ?アリババ先輩、グロいの苦手じゃなかったっスか?」


 湯取の疑問に作業を進めながら答える。


「ああ、なんていうか…無意味にスプラッタなのが苦手なんだよ。これはなんつーか…必要な作業だろ?だから平気。」


「そんなもんスかね…?俺はむしろ今みたいな方が、なんかリアルに感じちゃって駄目っス…。」


 う~ん…その辺は人によるとしか言えんよな。

 …そんな事より作業作業。




 …ふぅ、やっと終わった。

 龍、デカすぎて大変だったわ…。


 肉は腐ってたので全て破棄、内臓も同じ。

 骨と甲殻、鱗はイケる所とアンデッドに汚染された所が半々くらい。

 他には目玉・魔石なんかの希少部位。

 …ま、こんだけあれば、どれかしらで解呪できるだろ。


『…ふむ、終わったのかアリババ?』


『ああ。大きい骨や甲殻は俺の収納アノマリーに、鱗や小さめな爪・牙はこっちのダッフルバッグに詰めてある。重いから俺と湯取で運ぶよ。』


『…助かる。これで同胞達を救ってやれるハズだ。』


 アステリオスはそう言って俺に頭を下げた。


『良いよ、気にすんな。アステリオスには道中色々助けてもらったし、コレ以外のアノマリーは俺達の総取りって約束だしな。』


『…それでも、礼を言わせてくれ。お前がいなければ龍の素材は手に入らなかった。仮に龍を見つけられていたとしても、倒せていたか分からん。』


『いやいや、天下の武闘派魔術結社が何言ってんだか。謙遜すんなよ。』


『…いや、事実だ。アリババ、お前は強い。お前自身が考えているより遥かにな。』


 …そんな事言われたの初めてだな。

 俺ってば、攻撃スキルが一切無い盗賊だぞ?

 …まぁ、確かにコッチで探索始めてから、あまり苦戦した記憶も無いけど。


 そんな疑問が顔に出ていたのか、アステリオスが続ける。


『ふむ、お前の強さは何と言うか…変幻自在?いや、臨機応変…姑息?』


 難しい日本語知ってんな、こいつ。あと最後のは悪口だぞ。


『アリババ先パ〜イ!!ちょっとコッチ来て下さ〜い!!』


 少し離れた場所から湯取の声がする。

 そういえばあいつ…解体作業を見るのに飽きてどっか行ったと思ったら、何してるんだ?




『アリババ先輩!コッチですコッチ!』


『分かった分かった…一体何が…って!?』


 俺達が辿り着くと、そこには仁王立ちするアグニと、何かを抱えた湯取がいた。


 …湯取は、「白い卵」を両腕で抱えていた。


 …えぇ…まさか…二つ目…?

 またアレと戦うの…?


『…ふむ、先程の卵より大分小さいな。…コレも「龍」の卵なのか?』


『そうなんスよ、だからアリババ先輩に【鑑定】で見てもらおうと思って。』


 …コイツ、肝が据わってるなぁ…中からまた魔物が出てくるかもしれないのに、普通に持ってやがる。


『…ふむ。それにしても【鑑定】に【侵入】…とかいう力も使っていたか。盗賊というのは便利な力が多いな。…他にもあるのか?』


『それはまだ秘密で。』


 …なんか探り入れられてるな。

 …ハァ…もういいや。取り敢えず【鑑定】っと。


【弩龍の卵】ランク:S

 弩龍ヴァリモアの卵。

 魔力注入前だった為、運良くアンデッド化を免れた。

 必要分の魔力を吸収することで、幼龍が孵化する。


『あ…アンデッド化してない弩龍の卵だ。…ランクS…だと…?』


『マジッスか!?じゃあコレ、温めたら龍が生まれるんスか!』


 なんか湯取がウキウキし始めたんだが。

 

『…おいお前、止めろよ?…流石に弩龍なんて生まれたら、メチャクチャ邪魔だからな?』


『…では、食うか?』


 アグニが上に向けた手の平から火球を浮かべる。

 …龍の卵焼き?…それか、目玉焼きか…?


『そんな!姐さん酷いっス!!ドラちゃんは俺が孵して眷属にするんスから!!』


 おい、名前をつけるな!

 あと勝手にお前の物にするな!


『アリババ先輩~お願いしますよ~!()()()()()()は先輩の総取りでいいっスから~!』


 そう言う湯取の目線の先には、巨大な岩…岩?…ちがう、これは…赤い宝石?


【弩龍魔石】ランク:S

 弩龍ヴァリモアの魔石。

 世界最大級の大きさと魔力内包量を誇る。

 比類する物の無い、正に「秘宝」と呼ぶべき魔石。





「…うん、ソレはキミのね。…コレボクの。」


────────────────

今回入手したもの

■弩龍の牙〈化石〉

悪魔の貨幣(ディオボルゲルダイ)

邪眼石カトブレパス

■琥珀の沈彫彫刻インタリオ

■囁く巻貝

■龍殺しのアスカロン

■弩龍の骨・牙・爪・鱗等…多数

■弩龍の卵

■弩龍魔石




■ウン…龍涎香(りゅうぜんこう)

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