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45.ランクB『オゾマシドコロ』リザルト&反省会

「──俺の【魔眼】は、相手の精神に干渉するスキルみたいっス。」


 湯取がドローンの残骸に腰をかけながら、どこか得意げにそう言った。


「夢とか幻覚を見せたり、『記憶』を書き換えたり…まあ色々と便利なんスよ、コレが。」


 そう言いながら、海上から回収し砂浜に転がっているA.R.K.兵たちに視線を向けると、指を鳴らした。


「ハーイ!皆さんちょっと注目っス。こっち見てー?」


 湯取の紫色の眼が淡く発光し、その光を見た兵士達の動きが固まる。

 …まるで空気が凍りついたかのような静寂がしばらく続き、終わりを告げる彼の声が響く。


「──よし、改ざん完了っス!…これでコイツら、俺達に会った記憶は完全に消えたっスよ。」


 手をパンッと打ち鳴らすようにして、湯取はそう断言した。

 へぇ…マジか。


「…ちなみに、どんな風に改変したんだ?」


 半信半疑で尋ねると、湯取は悪戯っぽく笑いながら説明を始めた。


「魔力反応を辿ってやって来たら、島の中心部にあった危険なアノマリーが暴走・爆発。部隊は爆風に巻き込まれて──って記憶にしておいたっス。」


 なるほど、現実と齟齬が出にくいような上手いストーリーだ。

 …うん、それなら良いかな?丁度島も焦土と化してるし。


〈──彼等のヘルメットにはカメラと記録媒体が内蔵されています。不自然に見えぬよう、物理的に破壊しておくのが望ましいでしょう。〉


 プシュパカの冷静な助言が、脳内に響く。


〈…また、ホバーバイクにも通信装置と発信機、複数の視覚センサーが搭載されています。【錬金術師の驚異の部屋】に入るようなら何台かは頂いて、残りは破壊してしまいましょう。〉


 なるほど、流石は私設軍。用意周到なことだ。

 【錬金術師アルケミストの驚異の部屋ヴンダーカンマー】に入れてしまえば外界から遮断され、発信機も機能しない。持ち帰ってからプシュパカが発信機を取り除くなり上手いこと改造してくれるだろう。


 …でも、一つ気になることが…。


「…カメラや通信装置が付いていたってことは、最初からA.R.K.の本部なりにいるオペレーターに全部筒抜けなんじゃないか?」


〈素晴らしい着眼点です。それに関しては接近する敵影を感知した時点で、私の方で対処済みです。チョーカーを介して妨害電波を発し、現在マスターを中心に半径5kmは重度の通信障害状態となっております。〉


 このAI、優秀過ぎて怖い。

 …まぁ、元々プシュパカは宇宙船のAI、こういう状況は想定されてるんだろう。


 …それにしたって最近のプシュパカ、思考がどんどん盗賊染みてきてる気がするんだが?

 相手の装備奪うのに躊躇が無くなってきているし。


 …たぶん俺のせいだよな…いや、ほんと申し訳ない。


「──さて。じゃ、残りは放置でいいとして…帰るか。」


 俺はそう呟き、飛行用モジュール【オービタル・ウィングス】を展開。

 唸るような低い音をあげて、空高く浮上していく。


 眼下には、壊滅したオゾマシドコロと、うわごとを呟き続けるA.R.K.兵たち。

 …なんか色々あったが、任務達成ってことでいいだろ。


 不意に腕を掴まれ、振り返るとアグニが無言で下を見つめていた。


「──どうしたアグニ?」


『確か湯取は、奴等は爆発に巻き込まれたように記憶を改ざんしたのだろう?』


「あぁ、そうらしいけど…それが?」


『…このままだと不自然だ。少し焼いておこう。』


「…は?それって──」


 言い終わるより早く、アグニが指を鳴らす。

 右手に現れた小さな火球が、ゆっくりと眼下の島へ向けて降下していく──


 ──そして、


 ズゥゥゥンッ!!!


 ものすごい爆音と共に、島の中央で地割れを起こすような火柱が上がった。


『奴等の装備、一部を破壊したにしても綺麗すぎる。ちゃんと爆発に巻き込まれたように偽装しておかんとな。…心配するな、奴等の装備なら死にはしない。』


「おまっ…お前なぁぁぁっ!?」


『『『『ぎゃぁぁぁぁぁ〜っ!!!』』』』


 地上から響き渡る阿鼻叫喚の声。



 …爆炎とキノコ雲が晴れた後。

 空から見下ろすその光景は、まさに“焦土”だった。

 完全にアノマリー爆発の跡地だ。コイツ嘘を現実にしやがった。

 あんな小さな火球で…。


 …お前はどこぞの大魔王か?



~ ~ ~ ~



『お帰りなさいマスター、湯取さん、そしてアグニさん。上着をお預かりします。』


 帰宅した俺達を出迎えるチーム・プシュパカ。

 俺と湯取には濡らした清潔なタオルを手渡されたので、ありがたく顔と手を拭っておく。

 うちのプシュパカは気が利くなぁ…。


『それと…鹵獲したホバーバイクは庭のラボラトリーでお預かりいたします。ここは別次元ですので通信装置・発信機の類は遮断されますのでご安心を。整備・調整した後に再度マスターの【錬金術師(アルケミスト)驚異の部屋(ヴンダーカンマー)】へ収納をお願いいたします。』


「分かった。…回収してきた【星喰いの夜這星】も出した方がいいか?」


『…アレは絶対外に出さないで下さい。【錬金術師(アルケミスト)驚異の部屋(ヴンダーカンマー)】内で封印です。』

 

 …うん、そうだよね。俺も分かってた。

 あんなもん下手に外に出したら、バイオハザードだもんね。

 …そんなモノ持ち歩く羽目になった俺の気持ちも考えてくれ!


 ラボラトリーに移動した俺達は、プシュパカに指示された場所にホバーバイクを並べていく。

 湯取はバイクを撫でて「へへ~戦利品っス~!」と上機嫌だ。

 ああ、ホバーバイクがあれば、湯取も空が飛べるもんな。


 …おお、こうやって大量のホバーバイクが並んでるのを見ると「格納庫」って感じでカッコイイな。

 庭に格納庫を作るのもアリか…?


 バイクを並べ終えた俺達は、ラボ内に置かれたソファーや椅子に腰を下ろした。

 プシュパカの子機が俺と湯取にアイスコーヒーを持ってきてくれる。

 …ふう、やっと一息付けた。


「それにしても…湯取は【眷属召喚】と【魔眼】スキル、結構使いこなしてるみたいだな。」


「ウスっ!トモダチ作るの得意なんスよ、自分!」


 友達…トモダチ?

 眷属は友達っていうか「しもべ」みたいなカンジだし、【魔眼】は…精神汚染スキルだろ、アレ。

 

『それと…オルテックスの件だな。我の想定より軍事化が進んでいる。警戒度を上げたほうが良い。』


「ああ、クローンサイボーグ兵な!…分かっちゃいたが、倫理もクソも無いな奴等。」


 そういえば、俺達「墓荒らし」の一味だと思われてるんだっけ?

 …beeにも警戒するように連絡しておこう。


「そういえば、マスターの不在中に魔術結社ノクス・ミラビリスからメールが届いております。後程ご確認をお願いいたします。」


 …ノクスからメール?

 何だろう、嫌な予感しかしないんだが…。


────────────────

今回入手したもの

■星喰いの夜這星(封印決定)

■ホバーバイク(50台:整備・調整中)

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