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40.ランクB『オゾマシドコロ』②

「まったく!いくら俺でも海の上でひとりぼっちは精神的にキツいっスからね!帰りは抱っこを所望します!」


 湯取はプリプリ怒りながら、担いだサメを砂浜に下ろした。

 …つーか、でけぇサメだな!多分こりゃあホホジロザメ…全長五メートル位あるか?


「いや、マジで嫌だ。…それよりそのサメはどうすんの?マジで非常食?」


 俺が引き気味に質問すると、湯取は得意げな顔で人差し指を立てる。


「あれは流石に冗談っスよ。コイツは俺のスキルで『眷属』にするっス。」


 眷属…あ、【眷属召喚】か!


 え、眷属って自分で用意するのか?

 てっきりスキルの力で生まれてくるのかと思ってた。


「アリババ先輩にコレ言うのは釈迦に説法ってヤツですけど、スキルの使い方って本人にはなんとなく分かるじゃないっスか?それによれば、俺の【眷属召喚】は事前に眷属を作るところまでセットのスキルみたいっス。試しにカブトムシで実験しましたけど、ちゃんと眷属として『召喚』できるっスよ。」


 カブトムシッ!?


 お前の眷属一号カブトムシなのっ!?


「帰りも海の上走るのは面倒なんで、コイツを眷属にして乗って帰るっス。」


 湯取はそう言ってサメに近寄るが、陸に上げられても流石サメ。

 ビッタンビタン大暴れしてる。


「あ~、暴れられるとちょっと面倒なんで…【眷属召喚】、金剛丸!」


 スキルを使った湯取の右手が、魔力によって光り輝く。

 うぉっまぶしっ!!




 …光が納まると、湯取の隣にはカブトムシが浮いていた。

 コイツが眷属の金剛丸…明らかに名前負けしている…!


『…我が主よ、(それがし)に御用でござるか…?』


 …しゃ…喋ってる…カブトムシなのに…。

 …武士みたいな喋り方なのは何故…?


「金剛丸、ちょっとサメ押さえといて。」


『承知。』


 そう言うとカブトムシは、サメの鼻先に止まった。


 …えぇ…それ意味あるかなぁ…?

 サメ、相変わらずビッタンビタンしてるけれど…。


 湯取はその一切を無視して、右手の人差し指に魔力を集め始める。

 そして、空いた左手でサメを押さえつけ、指を頭に押し付けた。

 …いや、結局お前が押さえとるやないかい!!


「よし…『眷属化』…!!」


 再び魔力の光が視界を埋め尽くす。

 またコレかっ!一々眩しいんだよ【眷属召喚】スキル!!




 …そして光が納まると、そこには大人しくなったサメの姿が。


『…御屋形様、拙者を御配下の末席に加えていただき、恐悦至極に存じます。我が刀、御屋形様にお預けつかまつりまする。』


 また武士が来た。

 …なんか【眷属召喚】クセ強すぎないか…?

 湯取の「眷属」に対するイメージが影響しているのか?


「よし、お前の名前は『フカヒレ』っス。」


 食材っ!!

 

 カブトムシは金剛丸なのにサメは食材っ!!

 サメに何か恨みでもあるのかっ!?

 流石にそのネーミングはどうかと思い、口をはさむ。


「…おい、眷属にも名誉ってもんがあるだろ…。」


「え?…俺何か変でした?」


 驚いた表情を浮かべる湯取。 

 …マジか、コイツ狙ってなくてそのネーミングなのかよ。


「カブトムシは虫界の王様、正にムシ〇ングっス!サメは怖くて強い、〇ョーズっス!格好良くて強い眷属をと思ってこの二匹にしたんスけど…なんかマズかったっスか?」


 小学生の発想かよ…いや、ゲームではどうか知らんがカブトムシは弱いだろ…。

 しかも俺が言いたいのはネーミングについてなんだが…。

 …なんかちょっと気になったんだけど、コイツ魔人化してから知能指数下がってないか…?仮にも大学生だぞ。

 【鑑定】がゲームみたいにステータスとかまで見れれば検証のしようもあるんだが…俺の【鑑定】は、そこまで万能では無いんだよな…。


 まぁ、検証しようのない事を言ってても仕方が無い。

 名前の件も、本人(人?)達が納得しているのなら、俺が口を出す話じゃ無いしな。




『…フカヒレ…拙者の名が…フカヒレ…。』


「メチャクチャ不服そうじゃねーか!!!」


 全然納得して無かった!!

 …そりゃあ、これから忠義を尽くそうと思った矢先にあんな名前を付けられたらなぁ…。

 

「…湯取、名前はもうちょっと慎重につけないか?フカ…サメが悲しそうにしてるぞ?」


『え、良い名前じゃないっスか、フカヒレ。高級食材っスよ?』


「うん、食材なのが問題なんだよ。」


 その後俺は、湯取に何がどうしてダメなのか説いたのだが、なかなか納得がいかない様子。

 う~ん、伝わらないかぁ。

 これもジェネレーションギャップなのかなぁ…。


『おい。』


 ここで、今まで無言を貫いていたアグニが口を開いた。


 あ、アグニ。居たんだ?

 …メッチャ睨んでるな。もしかして、俺の心の声、聞こえてます?


 プシュパカで前例があるし…異星由来アノマリーチームはコレが有り得るからな…。


「…どうしたアグニ、もしかして怒ったか?」


『いや、フカヒレが動かなくなったぞ。』


 え?


 振り向くと、あれだけ暴れていたフカヒレがピクリとも動かない。

 …サメ……エラ呼吸……。



「…死んだ?」



 超特急で【ポーション】をぶっ掛け、担ぎ上げて海に放り投げた。

 …迅速な処置が功を奏し、フカヒレはなんとか一命をとりとめた。

 

『いやはや…お手を煩わせ申し訳ない。流石に今回は三途の川が見え申した。』


 ウッカリ飛び込まなくって良かったな。

 …まぁ、こっちも地獄のような空気だったけどな!!

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