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24.盗賊、家を買う(強制)

『…さて、マスター。アグニさんとの契約更新は済んだようですので、ここで私から提案がございます。』


 メイド服を着たアンドロイド…プシュパカが俺に話しかけてくる。


『…今回の探索で、マスターの存在が裏世界の住人達に露見致しました。ここの住所が特定されるのも時間の問題と愚考致します。そこで、以前より予定していた「新居」への引っ越しを実行に移させていただきます。』


「引っ越すって言ったってお前…まだ何の準備していないし、そんな急に…。」


『事後報告で申し訳ありませんが、既に準備は進めております。…こちらの家で手つかずの荷物は、ベッドとテーブル位でございます。』


 …は?

 プシュパカの言っている意味が理解できず、改めて部屋を見回すと…。

 …アラ殺風景!よく見りゃ家具が無ぇ!

 え…これって、もうほとんど引っ越しが済んでる…ってコト?


「お前なぁ…俺の許可も無く…もしや既に新居も決めてきちゃったカンジか?」


『申し訳ございません。元々準備は進行していたのですが、早急な引っ越しが必要と判断いたしました。』


 …よくよく考えてみると、確かに迂闊だったかもしれない。

 顔も隠さずに忍び込んだ挙句、A.R.K.部隊をブチのめしてきたもんな。

 …冷静に考えるとコレ、裏の世界で指名手配かかっててもおかしくないな。

 …おやおや?なんか急に怖くなってきたぞ?


「…良し!引っ越そう!」


『マスターの心変わりが唐突すぎて、逆に心配になってまいりました。…これが…人間…?』


『…ポンコツに間違った人間像を植え付けるな。』


 


 プシュパカに案内され、新居に向かう。

 アグニは留守番…じゃなくて、湯取が来たら一緒に連れてくるとのことだ。

 

 しっかし、六畳一間のボロアパートでドリア食ってた俺が、一国一城の主か…。

 …まぁ事故ではあったが、感慨深いもんだ。

 トレジャーハンター、恐るべし。


 二十分程歩き、到着したのは予想外にこじんまりとした一軒家だった。


 コンクリート造りの2階建て住宅、正面には入口とガレージと思われるシャッター。

 側面は高い塀に囲まれており、中の様子は伺えない。


「ええっと……プシュパカ、本当にここなのか?」


『はい。既に土地・建物一括購入済みでございます。…もちろん、家主等の情報は偽装済みです。』


 …え~…なんか前に話してた内容と違くない…?

 確かに前のアパートよりは広いだろうけど、なんて言うか…もっと広い家を想像していた。

 …まぁアレか、あまり目立つと引っ越した意味が無いから、仕方が無いのか。


『それではご案内いたします。さぁ、中へどうぞ。』


 プシュパカから手渡された鍵でドアを開け、中に入る。と――



 世界が捻じれるような感覚。


 

 …あれ、このカンジ前にも…なんて思っていると。

 

 玄関、めっっっちゃ広い。

 下手すれば外観で見た建物くらい広い。

 床はグレーの大理石貼り。

 入口の両サイドには室内なのに玉砂利、そんで小さな木が生えている…料亭かな?

 漆喰で仕上げられた壁には、御洒落な間接照明が…。


 …何コレ?

 

 俺が呆然としていると、何もない空間からプシュパカが現れた。


『この家の内部は、異なる次元に存在しています。中の部屋は私が保有する「空間メモリ復元機能」により、過去近隣に存在した資産家の家を再構築したものです。』


 …あ~…そういえばそんな機能あったな、お前。


 …え?じゃあ何かい?

 この家、外観はちょっとお洒落な普通の一軒家だけど、中身は豪邸…ってコト?


 …やるじゃないかプシュパカ君。君なら大丈夫だと信じていたよ?



 それから、プシュパカに案内されるがままに内見(事後)した。

 …したんだが。



 …この間取り、何かおかしくありませんか…?(裏声) 



 …10LLDDKKって何だよ?馬鹿が考えた最強の家か?

 何だ?二家族住むのか?LDK×2の理由が分からん。

 あと10部屋もあっても持て余すわ!一部屋一部屋が無駄に広いし!!

 …持ってきた俺の荷物じゃ部屋スッカスカだわ!!


 地下が二階もあって、最下層が馬鹿デカい室内プールって…怖くて入れんわ。

 …初めて見た時、海外の都市伝説かと思ったわ。


 リビングから外に出てみたら、これまた馬鹿みたいな広さの白い空間だったのも怖かった。

 プシュパカに聞いたら例の宇宙船…恒星間探査船「ヴィマナ」を再建するにあたり、広い空間が必要だったとのこと。

 …あ、ここに作るの?庭に宇宙船?

 10LLDDKKが、そのうち10LLDDKKU()になるってコト?


 …そして何より…。


「…まさか、購入したアンドロイドが一体じゃ無かったとは…。」


『なにぶん広い邸宅ですので。』


『『『この数なら、掃除も完璧です。』』』


 同じ声、同じ顔、同じメイド服のアンドロイドが、さらに三体…幾ら使ったのか怖くて聞けない。

 …ここはファミレスなのかな?

 

『これらは私の子機のような存在です。親機である私の指示に従い、的確に業務を遂行します。…ちなみに「ヴィマナ」再建時には、段階を踏んでさらに十体程追加購入する予定です。』


 …近々ここはファミレスになります。





「なっ…何スかコレッ!?うわっ中広っ!!絶対に部屋余らせるヤツだコレ!!」


「な!広すぎてワケ分からんよな!」


『…身の程を知れ。』


 到着した湯取とアグニを招き入れた第一声がコレだ。

 …良かった、俺の感覚がおかしいのかと思い始めていたところだ。

 …やっぱ金持ちの感覚は理解できんわ。

 

『お帰りなさいませ、アグニ様。湯取様。』


『『『お帰りなさいませ。』』』


「!?」


 メイド服のアンドロイド達が一斉に挨拶をする。


「こ…これは…!?…遂にアリババ先輩のハーレム計画が始動したっ…!?」

 

「そんな計画はこれまでもこれからも無ぇわ!!」

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