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16.ランクS『双蛇の霊廟』②

 ランクS、『双蛇の霊廟』付近で俺に絡んできた謎の女。

 【鑑定】をかけてみたところ…。


雁木(がんぎ) マリー】25歳

 職業:トレジャーハンター レベル:11

 自称:beeビー 蔑称:墓荒らし

 職業スキル:【直感】【幸運】

 E:アサシンスーツ(ランク:C)

   サーマルビジョン


 自称beeこと『墓荒らし』に絡まれてる俺www

 …いやいや、人様の通り名を笑っちゃ悪いよな…。

 尊敬をこめて『ビーさんw』と呼ぼう。


 墓…ビーさんの鑑定結果を見るに、どうやら同業者みたいだな。

 …!…コイツの服…生意気に財宝ランクが付いてやがる!

 ランクCってことは、恐らく魔法効果付き…ちょっと【鑑定】してみるか。


【アサシンスーツ】ランク:C

 暗殺者用に調整されたキャットスーツ。

 【認識阻害】の効果を持ち、着用者の存在を曖昧にし、他者の意識下から除外させる。

 一度発見されると、その対象への効果を失う。


 俺の【常闇の外套】に似た性能か。

 …とはいえ、俺のはランクB。ビーさんのより高性能のハズだけど。

 

 それよりもコイツ、レベルがあるのか…?

 こっちの世界の人間では初めて見たんだが…。

 …レベルがあるってことは…。


「…ずっと黙っているけど、喋れないワケじゃないのよね?」


「…ああスマン、喋れるぞ。」 


 あ、そうだ。

 なんかビーさん事情通みたいだし、この状況の説明をお願いしよう。

 …お喋り好きそうだし、上手くおだてりゃ大丈夫だろ。


「…いやぁ~、貴女がトレジャーハンターのbeeさんですか。お噂はかねがね…まさかこんな所で、貴女のようなビッグネームとお会いできるとは。」


 あ、今少し口角上がったな、見逃さないぞ俺は。


「見たところアナタ、同業者ね。ここの情報はどこから?」


「…申し訳ないですが、企業秘密という事で…。」


「…そう、まぁいいわ。来て分かったと思うけど、ここは既にオルテックスの犬だらけ…そう簡単に手が出せないわよ?」


 お、情報来た。

 …ん?今、『オルテックス』って言ったか?

 …それって、『オルテックス・インダストリー』のコト?

 オルテックス・インダストリーって言ったら、誰もが知ってる世界有数の大企業じゃねぇの。

 家電、通信機器、情報端末デバイスから、はたまた医療分野まで…今やオルテックスの名前を聞かない業界のほうが少ないくらいだ。

 …なんでそんな奴等がここに?


「…実はあまり詳しくないんだが…奴等は何故ここに?」


「…アナタ、そんなこと知らないでよくこの仕事してるわね。…いいわ、教えてあげる。…知った方が、諦めもつくでしょうから。」


 呆れの浮かんだ表情でため息をついたビーさんは、俺の欲しかった情報を話し始めた。


「あいつらはオルテックス・インダストリーのアノマリー回収部隊、Anomaly Recovery Kommando…通称『A.R.K.』の連中よ。表の世界でオルテックスが大企業になれたのも、A.R.K.部隊が回収したアノマリーの未知の技術を解析・利用しているから。…こっちの業界じゃ有名な話よ?」


 わぁ…なんか、凄いことになってきちゃったぞ…。


 オルテックスって私設軍隊持ってるような危ない企業だったのかよ。

 大企業おっかねぇなオイ…。


「そのアノマリーってのは、財宝のことか?」


「財宝…まぁ間違ってはいないわ。アノマリー…異物、遺物、オーパーツ、魔道具…そういった未知の技術が使われた品々を、アタシらの業界じゃあ総じて『アノマリー』と呼んでいるのよ。…アナタのコート…それもアノマリーよね?しかも相当上級の。」


 肩をすくめて、曖昧な笑顔で返しておく。

 …こういう「分かってるけど言えないよ!」みたいなリアクション、好きそうだし。


「A.R.K.部隊がこの寺院を占拠したのは、ほんの一月前よ。元々ここを管理していた宗教団体…『キオーンの声』の信者連中は、敷地内の宿泊施設に軟禁状態。元々蛇神信仰があったこの地区に宗教施設を作ったらしいけど、拡張工事中に『アレ』の入口を見つけちゃったってワケね。」


「ふむ…つまり、あの下にある『双蛇の霊廟』は未だ攻略中…ってことか?」


「…あの遺跡、そんな名前なの?…まぁいいわ。連中、入口を確保したはいいけど、その先への進み方…要は中に入れないで手をこまねいてるワケ。下手に爆破して、中のアノマリーが使い物にならなくなっちゃうのも困るしね。」


 よしよし!つまり財宝は手つかずってことだ!

 …これだけ聞ければ、もう十分だな。


「…そうか。分かった、俺は帰る。」


「そう、それが正解ね。…少なくとも、アナタ一人でどうこうできる相手じゃないわ。やつらリバースエンジニアリングで得た技術で『魔道兵装』なんてものを標準装備してるから。」


 …魔道兵装…さっきから新しい言葉のオンパレードだな。

 とりあえず、一度戻って湯取とアグニに相談だ。

 そんなことを考えながら、屋上の縁に足をかける。


「…待ちなさい。名前ぐらい名乗って行ったらどうなの?こっちは親切に色々教えてあげたんだから。」


 名前ねぇ、こっちは裏家業の人間に名乗る名前なんて無いんだがね。

 …そうだな。


「…アリババ。俺のことはアリババとでも呼んでくれ。…じゃあな。」


 俺は屋上から飛び降りながら【常闇の外套】を被りなおす。

 …俺の姿は、闇の中に消えた。



(…やっべぇ、テンパって咄嗟にアリババとか名乗っちゃった…もう高校生探偵のこと笑えねぇな…。)

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