君が居なきゃ、壊れてた
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
この子、性格悪いって思います?
私は思わないんですよ。死ぬ気で頑張って、善性に縋る子を、誰が糾弾出来ると言うのでしょう?
朝起きた時、物凄い気だるさを覚えた。指の一つを動かすのが億劫になる程、しんどい。けれども何でもない顔でテンカウントを行い、出社した。
――カシャンっ。
隣で物が落ちた音がした。其れは鼓膜を劈き、精神を掻き乱す。
あああああ!! 五月蝿ないなぁ!! なんで物が落ちるんだよ!! なんでこのタイミングで落ちるんだよ!!
私らしいからぬ暴言。私らしくない心情。こんなの私じゃない。黙って消されろ。そんな思いを胸に抱いたまま、そっと卓上にペンを置く。
隣の彼が拾おうとしていたけれども、それより先に。何より先に。緩慢にも私の目的は遂行された。これで良い。これで良いんだ。
「……有難う」
「気を付けてね。剃刀なら、危ないから」
ただ鏡文字のような言葉を掛けて笑う。そうすると、嵐が一時止んだ気がして、元の、皆が好きな私で居られた気がして、胸がすく。
そんなこんなで一日が終わった。気が荒れる度に何かしらの善行を施して、何でもない顔で笑う。真反対の言葉を掛けて、本性を相殺した。
そうして家に着く頃には心も体も大分弱り果てていて、玄関の扉が開くまでずっと蹲る。
玄関の扉が開いた時、思わず叫びそうになった。『何でもっと早く開かないんだよ!!』と言いそうになった。其れをぐっと堪えて、草臥れた笑顔を浮かべる。
「貴方、今日幸せだった?」
「其れよりどうした!?」
「良いから……良いから答えて……」
「……幸せだったよ」
そうね。そうね。そうね。貴方は男の人。一生かけて、私の苦しみなんか分からない。でも分からなくて良い。絶対分からなくて良い。
だから鞄の中から高カロリーなチョコバーを取り出して、彼の胸にぐっと押し付ける。
「幸せな君の明日が……もっともっと良くなるように。……間違っても、私のようにならないように……。これ、お守り……!! あげるっ。食べるの我慢してた、精神安定剤!!」
其れを皮切りに、私はぐったりと玄関に倒れ込んだ。もう指の一本も動かせない。気持ち悪いよりも怠い。腹痛より頭痛。そんな嵐が体を蝕んで内側から壊していく。
「はぁ……悪いね。……君の好きな私じゃなくて。圧倒的善性で、正論で、強い私じゃなくて……!! でも……一つだけ我儘聞いて欲しい。鞄……部屋まで持ってって……。此処の電気消しといて……。暫くここで、休むから!! 間違ってもベッドまで運んだりしないで!!」
言いたいことは全部言った。やって欲しい事も言った。その反動が来たらしい。私は重たいまぶたを閉ざして、眠りに着いた。
次に目が覚めると、硬い床の上に寝そべっていた。体の上に何かふわふわした物が被さっていた。這い上がって電気を付けると、彼が体育座りのまま、寄り添って眠っていた。
私が起きた事に気が付くと、髪を撫でる。
「……今日も良く頑張りました。こんな状態だって事は、きっと僕の好きな君でいたんだろう?」
「当たり前じゃん。なんで君と付き合ったと思ってんだよ」
私は善性が好きだ。理不尽が大嫌いだ。だから私が理不尽を言ったら引っぱたいて叱ってくれる人がいい。『巫山戯んな』って。そうして自分の錨になる様な君と付き合った。
君が居なきゃ、もうとっくに壊れてた。
人間誰しも苛立つ事はあります。
でも感情のままに、理不尽に振るったら、味方がいなくなります。
だからせめて言葉を放つなら、良い言葉であろうと気をつけてるんですよ。
内心と外面との差が凄まじいですが、彼女が我慢してる証拠です。
これで『性格悪い』なんて言ったら、この子は泣いてしまいます。
ヒステリックにならないだけ、マシじゃん!!
苦しくて思ってしまう事が、そんなに悪いことなの!!
と帰って来ると思います。
そんな彼女が、彼女が言った我儘。
『鞄を片付けて』『電気消して』
これを我儘としている時点で、あんまり頼りたくないと想像できます。
こういう子が好きなんですよ。
本能のままに我儘言わず、善性に縋って意地張る子が。
甘やかしたくなりません?