6.遊具とは……
キンセンカの咲く停留所【河川敷の真実】
小学生の男の子が、川に落ち亡くなるニュースをみた。
夏になると、水の事故のニュースばかり見かける。
「あ、でも、この川の事故は、事件になってなかったかしら?エリート校でも、そんな事あるのねって思った気が…」
女性が言った。
大森さんに、
「龍輝君、お父さんは、病院辞めたんだよ」
と言われて
「え?なんでですか?」
龍輝君は、驚きの声をあげた
「龍輝君は、あの日何があったか、覚えてるか?」
大森さんが、優しく聞くと
龍輝君は、バスの乗客を、見渡して、小さく頷いた。
いつの間に起きたのか、楓ちゃんが、龍輝君の隣に座った。
「お兄ちゃんも、いたかった?」
そう言って、楓ちゃんは、龍輝君の太ももを、さわった。
龍輝君の、足には、たくさんの擦り傷があった
龍輝君は、涙ぐみながら、制服の上着を脱いだ、
白い腕が、あらわになり、無数の擦り傷が痛々しい。
さらに、シャツと下着を捲り、お腹と、後ろ向き背中を見せた。
全身に、擦り傷、どうしたら、こんな傷がつくのか、あまりの酷さに、怒りがわいてきた。
「ひどい…」
女子高生が呟く
おじいちゃんも、おばあちゃんも目を伏せ、涙ぐんでた
「誰にやられたんだ!!父親か!!! 」
真くんが、拳を握りしめて龍輝君に言う
龍輝君は、首を、横にふった。
「痛かっただろ!こんなの人間のすることじゃない」
真くんは、自分の事のように怒ってる
龍輝君は、ゆっくり、着衣を直した後、話してくれた
龍輝君は、塾に行くため、住宅から歩いて数分のところで、五年生や、四年生などの、6人グループと出くわした。
その中に、龍輝君と同級生の子がいて
「龍輝!」と呼ばれたけど、反応せず、逃げるように去ろうとした、普段から、嫌な子だったから。
兄が、いたんだ、そこに、
「おいおい、無視したら、ダメだよ」
と言って、僕の鞄を、奪い、公園の遊具の上で振り回した。
その、遊具は、木でできていて
木の階段をわたると、ロープの網があり、それを渡ると、滑り台に繋がる。
アスレチックみたいな、遊具だった。
ぼくは、ゆっくり木の階段を、渡り、ロープの網の上を這って進んだ、網の四角は、僕の足より大きかった、真ん中にきたころ、網のロープが、左右に、揺れて、落ちそうになる、
ロープの網を、両側から、数人で、動かしてた、
身体が何回も浮いて、左右に、上下に、ロープに、しがみついて、落ちないように、必死にロープに、腕や足を絡めて、
「やめて!」と言っても、止まらない
面白いのか、笑いながら
「魚みて~」
「もっとゆらせ~」
「おもしれー」
とか、ぼくは、死ぬんじゃないかと思った、怖かった。
10分だとしても、すごい長い時間だった。
ぼくは、大声で叫ぶように、泣いた
「おい、この鞄いらないのか?」
そう言うと、いじめっ子の兄が言った
揺らすのが、おさまったけど、僕の鞄をもって、河川敷に、みんなで向かう、ぼくは、ヨロヨロ追いかけた。
ぼくの鞄を投げあって遊んでた、
僕がやっとの思いで、たどり着くと、鞄をあけ、この本を川に投げた、
「今日は、ここまで~ 」
と、笑いながら去っていった。
ぼくは、この本を、拾いに、川に入ってしまった。
散歩してた、おばさんが
「子どもが、川に落ちた!!!」
と叫ぶ声がして
「ワンワン!!」「ゥーワンワン!!」
犬が鳴く声が大きくて
ぼくは、息できないのに、身体が痛くて、動かなくて。 たぶんそのまま。
龍輝君の話しに、怒りが、私も、拳を強く握ってた、手のひらに、爪が深く食い込み血が出てた。
~わたしの苦いエピソード~
遊具の嫌がらせは、私の実体験である。
全身の擦り傷に、母が声をあげて子どものように、泣いてた。わたしを抱きしめながら。
傷が全部消える前、風邪引いて、病院に行った時に、先生と看護婦が、息をのんだ。
息をのむとは、こういうことか、その瞬間は忘れない。
親の虐待を疑われて、世の中全体が弱いものいじめだと、悟った。