2幽霊バス
キンセンカの咲く停留所【幼稚園前】の真実
「楓ちゃんのお母さんは、頑張ったよね」
本を読んた女性が、言った。
「そうだな。ここの幼稚園は、過去に3人も同じことしてたのに、隠して、誤魔化してきてたからな」
うとうとしてた、おじいちゃんが言った。
楓ちゃんは、運動会の予行練習で、熱中症被害者として、ニュースで取り上げられてた。
【小松原 楓ちゃん事件】 ネットには、面白おかしく、自己満足で、動画あげてる人がたくさんいた。
顔隠して、言いたい放題、承認要求のかたまりだらけの世界は、どこまでも家族を苦しめた。
「楓ちゃん、あの日どうしたの?」
女子高生がきいた
楓ちゃんは
「かえでは、うんどうかいの、おおたまを、
せんせいと、いっしょに、かたづけたの、でも。
すんごく、おなかが、いたくなって、ちもでて……ねちゃった……おきたら、まどがあかなかった」
と言った。
「えーじゃ、楓ちゃんは、だれかにわざと閉じ込められたのね」
女子高生の、大きな声は、ヘッドフォンしてた学生にも、聞こえたようで、楓ちゃんを見てた。
「つらい記憶を、思い出しても…」
そう言ったのは、半ズボンの裾をギュッーと握ってた小学生だった。
みな、その言葉に頷き。席に座った。
「かえでのおうちの、ねこ、ルル しんだの
かえでも、しんだんだね………しにたくなかったな……あした、かえでのたんじょうびだったの、ママのケーキおいしいんだよ」
そう言うと、楓ちゃんは、おばあちゃんに寄りかかった。
しばらくして、楓ちゃんは、うとうと眠りについた。
おばあちゃんに、呼ばれて、楓ちゃんを一番後ろの席に、寝せてあげてと言われて
楓ちゃんを、抱えて、長椅子に寝せた。
ビックリするほど、楓ちゃんは、冷たく。
閉じた瞼から、涙がこぼれてた。
涙を吹いてあげると同時に
怖かっただろう、暗かっただろう、叫んでも、泣いても、届かない声。どれほど辛かったんだろう。
こんなに小さいのに………隠された、衝撃、痛かったよね。
楓ちゃんを思うと、涙がこぼれ落ち、同時に紙で手を切ってしまった時の痛み、スッーと切れた痛みと感覚が、全身をゾワゾワ襲って、身震いしてきた。
楓ちゃんの髪の毛は、さらさらして、寝顔は、天使だった。
「いってらっしゃい」と送り出した最愛の娘が、変わり果てた姿で帰ってきたら。
お母さんずっと苦しむよね、この幼稚園に、入れなければと、今も自分を責めてる。
私の母みたいに。
バスは、静かに、走り出す、いつも見る町の景色のようで、どこか、違う景色に見えた。
バスが揺れて楓ちゃんの鞄がおちた、弾みで一枚の絵が出てきた。
おおきくなったら、おいしゃさんになりたい
白衣きてるおんなのこの絵。
が見えたけど、拾った小学生は、ぐしゃぐしゃにその絵を握りつぶした。
そうか、これは、うわさの幽霊バスなのか、
私は、幽霊になったのか、死んだってこと?
どうやって?いつ?
少し頭が痛くなってきた。
~わたしの 苦いエピソード~
小学4年の頃、夏休みのプールで、忘れ物取りに更衣室に入ると、1人だったこともあり、5年生の女子2人が入り口を押さえつけて、ドアが開かないようにして、閉じ込められたことがある。
その時の、絶望感は、暑い日がくると、嫌でも思い出す。子どもの笑い声も悪意を含むと恐ろしい声になる。