プロローグ
病院前の道路脇は、キンセンカが咲いてた
バスの席は、ざっと見渡して一番後ろが空いていたので、後ろにすわった。
バスは走り出す。
秋晴れ、カラッとして、もうすぐ台風が上陸しそうだと朝のニュースでみた、風が時々強く吹く。
数人乗ってる、バスの乗客を、眺めてみた
うとうと眠ってる80代のおじいちゃん
人の動きをみてるだけの70代のおばあちゃん
スマホをみてる、30代の女性
本読んでる40代の女性
イライラして、貧乏ゆすりしてる、50代の男性
タブレット操作してる40代の男性
ヘッドフォンをつけ外を眺めてる男子学生
深くキャップをかぶってる若い男性
スマホを鏡にして前髪触ってる女子高生
半ズボンの裾をギュッと掴んでる小学生低学年の男の子
幼稚園児くらいの女の子 あれ?1人?親は?
そして。私。
あすなろ広場経由 大森公園行きのバス
私の乗った大学病院前のバス停には、数人バスを待ってる人がいたのに、このバスには、私しか乗らなかった。
そして、このバスには、街中を、住宅地を、学校前を、公共施設や、駅など、バス停でバス待ちをしてる人がいるのに。私の後には、誰もこのバスには、乗らなかった。
ところで、どこのバス停で降りるんだっけ?
どこにいくんだっけ?
あすなろ広場に行くために、乗ったけど、あすなろ広場って?何のためでしたっけ?
運転者いない。自動運転なの? バスが?
そんなに時代は、進んでた?
だって、バスだよ?
降りるための、ボタンがないよ
私はいったい、何のバスに乗ったの?
なぜ、だれも焦ってないの、
バスは、街中から、少しずつ、町の外れを走り出していた。
普通に信号は、止まるし、交差点もスムーズにバスは進んでく。
バス停では停まるのに、乗車口のドアを開けない、誰も乗るわけがない。降車口のドアも開かない。
「このバスは、あすなろ広場経由、大森公園行きです」
バスのアナウンスの 声にさえ恐怖に感じる