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王女とエンジニアの恋

 コペルニクス王国物語 出会い編 前編

〜王女とエンジニアの恋物語 日常の日々〜

〈二〇五五年〉

戦争は。コンピューターで戦う時代になってきた。各国。防御システムにしのぎを削り。

防御力の強い国が発展していった。そしてその防御力世界一が小国コペルニクス王国

そしてその防御力が気に入らない。隣国ミルフォイルの国王マグノリアは、幾度と

なく攻撃を仕掛けるが意図も無駄骨に終わる。



==

二〇五五年六月

ミルフォイル会議室

「シイラ国防大臣コペルニクスの防御網を潰すことは出来ないのか?」

「国王様。今までの攻撃ではコペルニクスの防衛網のかかり。ミサイルが地上に着弾するまでに撃墜されていましたが。新型の無人潜水型カブラに新型の特殊小型中距離ミサイルを搭載して排他的経済水域内ギリギリから防衛網をかいくぐり。地上に着弾させることが可能かと」

「ほう。どんな新型ミサイルだ」

「はい。前回もう一歩のところで迎撃された魚雷タイプの新型ミサイルで、潜水艦で排他的経済水域に行き新型ミサイルを発射させます。ミサイルは。ステレス型超消音スクリューで海底に沿って進み陸が近づくにつれて、加速していき、陸から一kmに近づくと海面に出てすぐに。一段目を切り離し。ジェットエンジンに切り替わり目標地点に落下する。ミサイルが地上に出てから陸地に入るまでの時間は最短着地点まで三十五秒これでしたら包囲網にかからずに着弾できるかと」

「うむ。失敗すると。対策を立てられるので三十秒まで短縮出来れば実行に移そう

「かしこまりました。国王の期待に沿えるよう急がせます」

国王は。満面の笑みを浮かべた。

コペルニクスの国王の慌てる顔が浮かぶ。ワハハ…………。



==

二〇五五年八月一日

コペルニクス首都シャルム

「店長。明後日。俺。休み入れていませんでした?」

ヒロが困惑した顔で店長を見る。

「ヒロ悪い。伝えるの。忘れていた。急に欠員が出て出勤無理かな?」

(この日。みんなと花火大会見に行くことになっているけどなあ

どうしようかな?)

「店長。どうしても人の都合がつかないのでしたら。出勤します」

「ヒロ助かるよ。ごめんな。この埋め合わせはするから」

「しょうがないです。店長困っているのに。無視できないですから」

「ヒロ。ありがとう」

「店長」

 ヒロはしぶしぶ店長の話を聞いた。


==

二〇五五年八月二日

ミルフォイル会議室

マグノリア国王とシイラ国防大臣が、コペルニクスへの新型ミサイル発射に向けて、内密で話をしている。

「シイラ国防大臣ミサイルができたそうだな」

「はい、潜水艦に新型のミサイルを十二発。搬入しております。」

「では、明日の十五時に出航させるのだ」

「明日の十五時ですか?」

「ああ。そうだ。明日はシャルムの花火大会それに合わせてミサイルを打つ。面白いと思

わんか?」

「さようでございます」

「目標コペルニクス。シャルム城」


==

二〇五五年八月三日

 ミルフォイル防衛室

「バレント皇太子。我が軍のステレス潜水艦が。コペルニクスに向かっています」

 バレントは険しい顔をした。

「潜水艦を止めろ」

 防衛隊員が潜水艦に停止の信号を送る

「バレント皇太子。こちらからの停止命令の信号を受け入れません」

「また。シイラ国防相の仕業だな」

「バレント皇太子。どうされます」

「とにかく。停止命令の信号を送り続けろ」

「わかりました」

 バレント皇太子は。マグノリア国王とシイラ国防省を探した。通路で話している二人を見つけ声をかけた・

「国王」

「バレント。慌ててどうしたのだ」

「コペルニクスに向け。ステレス潜水艦を向かわせて何をするおつもりですか?またコペルニクスの防衛網に挑戦ですか?」

「そうだが。何か問題でもあるのか?」

「前回も言いましたが。もし戦争になったらどうするのですか?」

「それはないな。潜水艦が。システムの不具合で暴走した事にすればいいのでは」

「国王!」

バレント皇太子は叫んだ。だがシイラ国防相が水を差す。

「ステレス潜水艦は。止めることは出来んよ。全システムが自動で運航されており。最終的には。自爆するようになっている」

 バレント皇太子は。その話を聞くと愕然とした顔をして防衛室に戻った。


==

コペルニクス王国(十八時)

「いらっしゃいませ!みんな」

「ヒロ。どういうことだ」

「みんな悪い。」

「みんな。ヒロを責めないでほしい」

「トラガス店長」

「みんな。迷惑かけたので。俺のおごりで好きな飲み物注文してくれ」

「トラガスさん。いいですか?」

「いいよ。ヒロ。みんなの注文聞いてあげてくれ」

「はい。わかりました」  

「みんなごめんね」

「ヒロ。でも。ほどほどにしとかないと彼女に逃げられたように友達もなくすぞ」

「ほんとごめん」

「ヒロ。私もクリビアもヒロが一緒に来るの。楽しみにしていたのに。

「ね〜。クリビア」

「私は別に」

「も〜。かわいくないな〜」

「お二人さん。もめない。もめない」  

「昼はしょうがないとして夜の花火大会はこられないのか?」

「店長、十九時からの花火大会の時、抜けてもいいですか?」

「花火上がっているときは暇だしいいよ。その代わり。花火終わる前には。帰ってきて来

るように」

「店長。ありがとうございます」

「やった〜。ヒロが来る」

「クリビアあんたね〜」

「もめない。もめない」

「じゃ決まりだな。十九時時にいつもの時計塔の下で」

「ヒロ。ちょっとくらい遅刻してもいいから必ず来いよ」

「わかった」

「ヒロさんお仕事頑張ってください」

「クリビアも楽しんでおいでね」

「何。この会話」

「セリナ。やきもちやいている」

「ニゲル。あんたね〜」

「逃げるが勝ち〜」

「まて〜」

「アナナス。クリビア。俺たちもそろそろ行くか」

「了解」

「は〜い」

「ヒロ。お前の友達それぞれ個性があっていいな」

「それぞれ個性があるから楽しいです」


 ヒロの友だちが店を出て行ったあと。入れ替わりで女の子がやってくる。

「サラ。ここのコンビニで飲み物でも買っていかない?」

「そうですね。買っていきましょう」

「いらっしゃいませ」

この辺ではみかけない女の子たちだな?

「サラ。今日の花火大会どのへんで見る」

「マリア。私。地理苦手でこのあたり全くわからないのでお願いしてもいいですか?」

「しょうがないな〜。サラは学校では。普通の女子大生だけど外に出るとお嬢様だからね」

「それは学校では内緒にしておいてね。内緒にしないと大変なことが起こるからね」

「はいはい」

サラが。店員のヒロに声をかける。

「店員さん。この辺で花火がきれいに見えるとこありますか?あと。この店のおすすめの

飲み物も教えて頂ければ助かります?」

「花火はこの右斜めの道を上っていくと時計台の丘と呼ばれている広場があります。

そこからの花火はきれいです。おすすめの飲み物は。店長がサノバラの業者から仕入

ている茶葉とミルクで作ったミルクティーです。当店一番人気の商品です」

「ありがとうございます。このあたり全くわからないもので助かりました。それとアイス

ミルクティー二つお願いします」

「お買い上げありがとうございます。二つで三百ペルになります」

サラは。スマートフォンをかざし電子マネーで支払いをした。

「レシートのお返しです」

「はい」

「サラ。おごってもらっていいの?」

「いいよ。私一人で来るの。不安だったから。無理言ってマリアについてきてもらったからこのくらいは出させてください」

「では。お言葉に甘えさせていただきいただきます。ん?このミルクティー店員さんが

おすすめのことはある。めちゃくちゃおいしい」

「ほんと私。こんなおいしいミルクティー飲むの。初めて」

「きれいな子においしいと言ってもらえて店長。うれしいですよね」

「お嬢さんたち。ほめてくれてありがとう。気を付けて行ってらっしゃい」

「はい。ありがとうございます。行ってきます」

「ありがとうございました」

サラは。時計台の広場へ向かう石畳の坂道で。この町。こんな素晴らしい街並みの住宅

街があったのだと思っていた。

二人が。店を出て行ったあとで。ヒロと店長は雑談をしていた

「店長。あの子たち。きれいでしたね」

「この辺では見かけないから。もしかしたら。聖スィートアッサム女子大の子かもしれ

いな」

「聖スイートアッサム女子大か?妹のマリーが高校に行っているけど大学は縁ないな」


ミルフォイル防衛室十七時五十分

「バレント皇太子。潜水艦からミサイルが発射されました」

 皇太子は。困惑した顔で「そうか」と答えた。


コペルニクス シャルム市街地十八時十五分

?街中から爆発音が2発。(ドォーン。ドォーン)

(ん?何だろう)

緊急サイレンが鳴る。街中から再び爆発音が2発(ドォ=ン。ドォ=ン)

「!店長。外見てきます」

「!店長大変です。時計の丘の広場とその周りの建物が崩れています。駅の方向からは

火の手が上がっています」

「!どうゆうことだ」

「!ミサイルが飛んできた。逃げろ」

人々が逃げ惑う街中再び爆発音がド?ン

国防隊はどうした。一人が叫んだ。


==

国防防衛本部

「!どうしたことだ」

 長官が叫んだ。

「レオント長官、海中からミサイルがとびだしてきてシャルム城南東部外壁、

時計の丘広場付近に着弾、第二波来ます。ミサイル着弾、シャルム駅付近、

ディモルフォセカ城中央出入口付近」

「!ミサイルの感知はできないのか?」

「!魚雷型ステレスミサイルで目視でしか対応できません」

「防御バリアー手動で操作」

「防御バリアー手動で発動」

 シャルムの海岸線に高さ100mの電磁バリアーが張られた。

「!地上攻撃班、エンコパスレーザー砲の発射準備」

「!地上攻撃班、エンコパスレーザー砲準備します」

「!航空班、出撃」

「!航空班、出撃します」

「!航空班、発射物を探せ、探し出して撃墜しろ」

「了解」

「!第三波来ます」

「!地上班レーザー砲の充電はまだか?」

「!発射準備完了」

「!目標、ステレスミサイル。エンコパスレーザー砲発射」

「!発射」

「ド?ン」

「レーザー砲ミサイル一発迎撃もう一発は迎撃失敗、マレイノア近郊のシャルム・サノバ

ラ線に着弾」

「第四波電磁バリアーに激突爆破消滅」

「航空班より長官へ。これより。海中探査ロボット排出します。

「了解」

「ジェシー。モニターを海中探査ロボットの画面に切り替えろ」

「了解しました。モニターを海中探査のカメラに切り替えます」

モニターに回収の映像が映し出される。

「長官。探査ロボットの斜め前方。距離三キロ。水深二百メートルの位置に潜水艦らしきものが確認されます」

「ズームアップしろ」

「はい」

「!ステレス潜水艦」

「コリス。探査ロボットから潜水艦に向け。発信ミサイルを発射させろ」

「はい。通信ミサイル発射。」

一分後。潜水艦に発信ミサイルが刺さった。

「長官。発信ミサイルが目標に着弾しました」

「よし。ジェシー。目標に一番適した戦闘機は?」

「マディディ隊員です」

「マディディ。誘導ミサイル発射」

「誘導ミサイル発射」

 二分後。水柱が上がった。

「長官。発信機の反応が消えました」

「探査ロボットで。付近の確認」

「はい。潜水艦撃破確認」

「ほっ。まったくどこの国だ?我が国の防衛網に挑戦してくる国は?」

「コリス。潜水艦の残骸から国の識別を判断してくれ」

「了解しました」

「航空班戻ります」

「ご苦労」

「防護班。町の被害状況を調べて報告するように」

「はい」

「ミサイルの着弾地点は」

「はい、シャルムの市街地に二発。ディモルフォセカ城南東部と中央入り口付近に各一発

シャルムとマレイノアを結ぶ国道一号線の計五発着弾しました」

「市街地に二発。まずいな。国王に報告して来る」

「分析班。魚雷型ステレスミサイルの分析を至急頼む」

「了解しました」



==

ミルフォイル王国

「国王。シャルムにミサイルを五発撃ち込みました」

「シイラ国防大臣でかしたぞ」

「お褒めの言葉。ありがたき幸せ」

「コペルニクスのティフォリア国王の慌てぶりが目に浮かぶ。」

「国王。これからどうするつもりですか?」

 バレント皇太子が叫んだ。

「どうもしないさ。潜水艦が暴走した事にすればいい」

「………………」

==

コペルニクス

「レオント。市街地の状況はどうだ?」

国王が指令室に入ってきた。

「はい。まだ正確な数字は出ておりませんが、市民に多数のけが人に死者も出ていると聞いております。誠に申し訳ございません。市民にこのような被害を与えてしまって」

「市民に。これ以上に不安を与えないように。万全を喫してください」

「私も市街地に出て。市民の救助を行いたいと思います」

「そうですか。よろしく頼みます」

「全力で救助を行います。失礼します」

==

 しばらくしてお妃が険しい顔をして。国王のもとに来た。

「あなた」

「クレマ。どうした?」

「サラが?」

「サラがどうかしたのか?」

妹のフローレンスが話を始めた。

「お姉様。こっそり城を抜け出して市街地に花火を見に行かれたらしいのです」

 国王は。すこし驚いた顔をした。

「そうか」

「国王様。申し訳ございません。私が。私がほんとに申し訳ありません」

メイドのマーガレットが謝罪をした」

 マーガレットが。青ざめた顔をしていた。

「サラは。一人で花火を見に行ったのか?」

「いいえ。サラ様はお友達のアスクレピアス家のマリア様とご一緒でございます」

「わかった。アスクレピアス家には。私から連絡しよう。お前たちはシャルムの町が落ち

着くまでサノバラの祖母の家に行くといい。鉄道が使えないので、車での移動になる

ので。だれを付けるかは考えておく。サラの事は。レオントにも頼んでおこう」

「よろしくお願いします」

(サラ無事でいてくれ)

国王は。サラの無事を願った。


==

ヒロは。トラセナに緊急回線で連絡を試みた。

「トラセナ。みんな大丈夫?」

「多少のけがはしているが元気だ」

ヒロは。みんなが無事だったのでほっとした。

「ヒロ。みんなは無事か?」

「店長。みんな多少けがはしたみたいですが無事みたいです」

「安心だな。そういえばさっき店に来た子たち大丈夫かな?」

「店長。探しに行ってきてもいいですか・」

「ああ〜いいが。気をつけろよ」

「はい。行ってきます」


==

時計台の丘広場への坂道でサラはがれきに埋もれながら。マリアを呼び続ける。

「マリア大丈夫?」

「………………」

「マリア。マリア返事して」

ヒロが店から。女の子たちを探しに来て。がれきに埋もれている二人を発見した。

「君。大丈夫?」

 サラは。がれきの中からヒロを見た。

「あなたは。先程のコンビニの店員さん。私は大丈夫。マリアが。マリアが」

「気を失っているみたいだね。君。店まで歩ける」

「はい」

ヒロは。女の子たちが埋もれていたがれきを、取り除き、二人を助け出す。

「君。右腕大丈夫?」

「大丈夫だと思います」

どうしようかな?抱えて坂道降りるか? 

ヒロは二人のうち気絶している子を左肩に抱え右半身の動かないもう一人の子を、

右腕で支えながら坂道を下っていく。

「もう少しで店だから頑張れ」

「はい」

ヒロはなんとか二人を店まで連れ帰った。

「店長、救急ロボ、救急ロボ呼んでください

「救急ロボ、今呼んでも来ないぞ」

〈十八時四十分〉

携帯の緊急電話が鳴る。

「ヒロ。大丈夫?」

「母さん。僕は大丈夫だけど女の子二人人ケガしていて。一人意識がない状態なのだけど

どうしたらいいですか?」

「今。どこにいるの?」

「トラガスさんの店にいる」

「すぐ行くわ。十五分くらいで行けると思う」

 ヒロの母親は。シャルム総合病院で婦長を務めている。息子が浜日を見に行くと言っていたことを思い出し連絡してきたのだ。

「ヒロ。そっちのお嬢さん大丈夫か?」

「意識あるからこっちの子より大丈夫だと思うけど?」

「君。名前なんて言うの」

 サラは一瞬。ためらって名前を伝えた。

「サラ・ライラック」

「この子名前は?」

「マリア・アスクレピアス」

「ヒロ。名前聞いてどうするのだい」

「メモ書きして母さんに渡す」

「仕事が早いな」

「年齢二十歳くらい?」

「はい」

「家はどこ?」

「…………」

「住所ダメ?」

「…………」


==

〈十九時頃〉

ヒロの母親のティモルが車で到着する。

「ヒロ。けが人病院まで運ぶよ」

「母さん助かったよ」

「早く車に乗って」

「はい」

ヒロは。サラを車の助手席に乗せると。マリアを抱き後部座席に乗り込みマリアを座ら

せた。

「店長。ヒロもらっていくよ」

「はい。ヒロ働けるようになったら連絡くれ」

「わかりました」

「ヒロ。車出すよ。しっかり抱っこしといてよ」

「お手柔らかにお願いします」


==

(十九時二十分)

シャルム総合病院

「ヒロ病院に着いたよ」

「サラさんだったかね。歩けるかい」

ヒロがマリアを抱っこして。ティモルがサラを抱えて病院の中に入っていく。

「ヒロこのまま。診察室まで行くよ」

「はい」

「サラさん先生に痛い所。聞かれたらはっきりと伝えることけっして我慢しないこと」

「はい。わかりました。ありがとうございます」

「母さん。この子らの名前と年齢のメモ。」

「それは。先生に渡して」

ヒロとティモルは。診察室まで行きティモルがドアをノックする。(コンコン)

はい。診察室から返事が返ってくる。

診察室のドアを開ける

「先生入ります」

「あとはよろしくお願いします」

サラって女の子。どこかで見たような?まいいか。これからけが人が運ばれてくるから準備しないと。ティモルは。サラの事は後で考えるとして。これから運ばれてくる。けが人を対処すべく。準備に入った。

ティモルは。サラを椅子に座らせると診察室の奥に入っていった。

「ヒロ君。久しぶりだな。この子たちはどうしたのだい」

「時計台への坂道で家のがれきに埋もれていたの。救出しました」

「そうか。これから負傷者が運ばれて来るからもう少し遅かったら、すぐには

見ることができなかったと思う。運が良かったな」

「はい」

「抱えている子、気を失っているのか?」

「はい。パレンバン先生この子たちの名前と年齢のメモ」

「母さんに似て仕事が早いな。その子ここに寝かせてくれ」

「はい」

マイクロ電磁波映写機の電源を入れ 操作する。ピィ、ウイ〜 検査終了しました。

右足首骨折および右下半身損傷。左顔面および左側頭部損傷全治予測三か月です

「A二〇一。手術対応型の病室で処置をしてくれ。そしてA二〇一に名前を伝えた」

「リョウカイシマシタ。マりア・アスクレピアスサマヲテアテシマス」

「よろしく。お願いしときます」

「さて君の名前は。サラ・ライラックさんでよろしいですか?」

「はい」

「この機会の上にあおむけで寝ていただけますか?」

「はい」

サラは少し不安そうな顔をした。

バレンバンは。再びマイクロMRIの電源を入れ操作する。ピィ、ウイ〜 検査終了し

ました。

右上腕骨骨折および右上腕部骨折。右大腿部剥離骨折。左大腿部打撲及び損傷。右側頭部損傷。全治予測五か月です。

「サラさん。君は精神力強いね。普通。気を失ってもおかしくないけど」

「先生。私。そんなにひどいのですか?」

「そうだね。気絶しているマリアさんより重症です」

「!先生。私。マリアより。重症なのですか?」

「はい」

 サラは。一瞬。驚いた顔をしたが。自分の怪我の状態を聞いて。下を向いてしまった。

「A二〇一。サラさんも同じ部屋でいいので。手当てしてくれ」

「リョウカイシマシタ。ニイマルイチゴウシツシツガアイテイマスノデソチラデ

テアテヲオコナイマス」

「よろしく頼む。ヒロ君。緊急事態で人手がほしいから、A二〇一号機の手伝いを

お願いするよ」

「わかりました。先生ありがとうございます。サラさん歩ける?」

「はい。大丈夫です」

(ガタン)

サラが診察台から降り立つことができず。転倒してしまった。

「サラさん。大丈夫ですか?」

「……サラさん。大丈夫ですか?足に力が入らないのですね」

「はい。先生。私。どうしたらいいですか?」

「先生。僕が二〇一五号室までサラさんおぶっていきます」

「そうしてくれるかい。サラさんは。右半身のダメージが大きいから。特に左太ももを特に気をつけて。運んであげてください」

「はい。それなら抱きかかえたほうがいいですね」

「そのほうがいいと思う」

「サラさん。抱えるね」

「はい」

ヒロはサラを抱えて。A二〇一号機はマリアさんを抱え。二〇一五号室に向かった。


==

「A二〇一。サラさんは。どこにおろしたらいい」

「カベニ。ホジョベッドヨウノ。ボタンガアリマスノデ。オシテイタダケマスデショウカ」

「わかりました」

ヒロは壁のボタンを押した。補助ベッドが出てきた。サラをベッドに寝かせた。

「サラさん。大丈夫だった?」

サラは。小さくうなずいた

「A二〇一。何か手伝うことある」

「マリアサマノ。フクヲヌガセテイタダキ。シーツヲカケテモラエマスカ」

(ん…女の子の服を脱がすの。気が引けるな。でもそんなこと言っている場合ではないか。ヒロはマリアの服を脱がしてシーツを掛けた)    

「これでいいかな」.

「サラサマノ。フクモヌガセテイタダキシーツヲカケテクダサイ」

「わかりました」

「ワタシハ。マリアサマノチリョウヲオコナイマス」

A二〇一は体内から透明な円柱形の筒を出しマリアさんの右足にはめると、電気メスを

使い足を切開し手術を始めた。

サラは。ヒロをすごい形相でにらんでいた。

(サラさんの服を脱がすのはさすがにきついな)

「サラさん。服脱がすの。大変なので。ワンピース。少し切ってもいいですか?」

 サラは無言でうなずく。

 ヒロは。A二〇一にはさみを借り。サラのワンピ?スの右腕。右肩。わきの下の順に切

りワンピースを脱がし。シーツを掛けた。

「サラさん。出血しているけど大丈夫ですか?」

 サラは。うなずくだけだった。

A二〇一は、マリアの右足を切開し、特殊プレートがはめ込まれ、縫合して、十分足らずで手術は完了した。さらに足。顔。頭の傷口には消毒して。薬を塗り被覆材で覆い包帯を

巻いて完了した

「サラサンノジュンビハデキテイマスデショウカ?」     

「準備できています」

 A二〇一はサラに麻酔をかけ。右腕の手術の準備に入る。麻酔がきいてきたら円柱状の

筒を右上腕部にセットして電気メスで腕を切開し、特殊プレートをはめ込み。縫合して腕

の手術は終わった。次に右大腿部にも筒をセットして。電気メスで切開し。剥離した骨を

取り除き。剥離した部分に特殊プレートをはめ込み。縫合した。出血している頭部は消毒

して。塗り薬を塗り。被覆材で傷を覆い包帯を巻いた。左大腿部は傷口の消毒した後。特

殊外用鎮痛消炎剤を張り治療が完了した。

「サラサマノチリョウガ。カンリョウシマシタ。マスイハ。サンジップンデキレルトオモイマス。ヨウダイニイジョウガアッタリ。シツモンガアレ。レンラククダサイ。シツレイシマス」

「A二〇一ありがとう」

最新の医療用ロボットすごいな?医療用ロボットが導入されて三年になるけど、手術する速度、技術、目覚ましい進歩だな。けがの場合。即死以外での死亡率5パーセント以下も納得できる。僕も医療用ロボットを作ってみたくなってきた。


==

〈二十二時〉

「ヒロ」

「母さん」

「二人の状態どうだい」

「気を失しなった子は。見ている限りでは落ち着いている感じ。もう一人の子は麻酔が効いて寝ているけど。あまり変わっているとは思わない」

(マリア。マリア)

サラが。瓦礫が落ちてきたと時の夢を見て寝言を言う。

ヒロが抱き起こして大丈夫だよとささやく。サラから涙があふれてくる。

「サラさん。気がついた」

「私。…………ロボットさんが治療してくれたのですか?」

「そうだよ。麻酔が効いていたから三時間ほど寝ていたけど」

「サラさん。家に連絡入れようか?」

「…………」

「また黙秘ですか」

「ヒロ。またってどういうことだい」

「トラデスさんの店でも家の事聞いたら、答えてもらえなくて」

「そうかい。ヒロはやっぱり乙女心つかめないね」

「そうですよ。僕は乙女心が理解できない人間ですよ」

「怒らない。怒らない」

「それよりサラさん。マリアさんのそばにいたいのはわかるけど、自分の事も考えないと。

病室はいっぱいで。マリアさんのように運よく入院できた人。玄関ロビーで。一夜を過さ

なくてはいけない人。サラさんみたいに。骨折しているけど。入院できずに自宅療養に。

なる人。いろいろな人がいる中でどうするのかっていう問題」

「ここで一緒にいることはできないのでしょうか?」

「あなたがそれを選ぶならそうしたらいいと思う。」

「母さん」

「ヒロ。介護をしていたお前ならならわかるだろう。私の言いたいことが。けが人も

ひと段落ついているから。片付けしてくるから」

「サラさん。ごめんね。普段母さんあんな厳しいこと言わない人。なんだけど。でも看護

婦さんだから。病人とか。けが人の人がわがまま言うとああやって怒るのだ」

「私。わがまま言っているということですか?」

「そういうことになりますね」

「マリアのそばにいたい。私が誘わなかったらこんなことにはならなかったのに」

サラは泣き出した。自分のせいでけがをしたマリアの事を思い。

「泣かない、体に悪いから」

「私よりマリアの事が心配」

「サラさん質問。サラさんがマリアさんとして。自分が目を覚ました時。元気な友達を見

るのと。看病疲れでやつれ。ケガも悪化している友達を見るのと。どちらがいいですか?」

「……………」

「また黙秘ですか?」


==

(二十三時三十分)

「ヒロ。帰るよ」

「母さん。彼女どうするの?」

「私にどうするのと言われても?本人がね。動かないことには?」

サラも本当は自分がここにいてもどうにもならないことを。でも自分のせいでマリアが

ケガをしたことに対して。ひけめを。感じていた。

「サラさん。家に帰れない事情があるなら。家に帰る気になるまでうちに来るといいよ。

まともに体を動かせない人間が。ここにいても仕方ないし。明日になったら。マリアさん

の御両親が来られると。思うけど。その時。あなたはどうするつもりですか?」

サラが泣き出す。

「母さん」

「ヒロ。そのままでいいから抱っこしておやり」

「えっ。どういうこと?」

「もうすぐ二十四時。帰るよ。」

ヒロは泣いたままのサラを抱えながら階段を降り。両サイドに怪我人のいる廊下。玄関

ロビーを抜け病院の外に出て。駐車場に止めてあるティモルの車の後部座席に寝かせ。ヒロは助手席に乗った。そしてティモルに話しかけた。

「母さん。玄関ロビーの人たち入院する部屋がないの?」

「ないよ。一度に百人を超える患者さんが来たら部屋はないよ」

ティモルは。自宅に向け車を走らせた。

「母さん説明してよ」

「説明?何の説明」

「何の説明って。僕にはさっぱりわからない。あんなに病室を離れるのを嫌がっていた

彼女も泣いてはいるけど、すごくおとなしくしているし」

「わかったよ。説明だけする。それ以上は自分で考えて。彼女は。自分があのまま。居て

も仕方がないから。うちに行くことを選んだ。ただそれだけ」

「サラさん。私が言ったこと間違ってないよね」

「はい。間違って……いません。でも……他人の私が……お世話になっても……よろしい

のですか?」

「全然かまわないよ」

僕には。母さんの意図がわからない。でも病院にいるよりは、うちの家に来るほうが。

彼女にとっては。うちに来るほうがいいとは思う。市街地から高台に上った宅地造成地

にアガパンサス家はある。二十分ほどで家に到着した。

「玄関開けるから少し待っていて」

ティモルが、車から降り玄関のドアを開ける。

「サラさん。家に着いたからもう少し辛抱してくれる」

サラは小さく。うなずいた。ティモルが車のドアを開け。ヒロがサラを抱えながら家の

中へ入っていく。

「母さん。彼女どこにおろしたらいい?」

「とりあえず。リビングのソファに寝かしといて」

「はい」

「サラさん。大丈夫?」

「はい。大丈夫です」

「落ち着いたみたいだね。よかった」

「ヒロ。鍋にカレーのルーが入っているから温めて。御飯。すきに入れて食べておいて。

そうそう。サラさんの分お前の半分でいいから用意してあげて。

その間にお前の部屋。片付けてくるから。」

「僕の部屋をかたづける?」

「マリー。起きていたら手伝っておくれ」

「は〜い。お母さんおかえりなさい。その女の人だれ?」

 マリーが。知らない女性が居るので驚いていた。

「後で説明するから。ヒロの部屋かたづけ手伝って」

「は〜い」

ヒロは。ジャーからごはんを皿にのせ。温めたカレールウをのせる。

サラの分の少なめのカレーライスを作った。でも、母さん。いつカレー作ったのだろう?

ヒロは。サラの前の背の低いテーブルに。カレーライスを置いて。さらに食べるように声をかけた。

「カレーライス食べよう」

サラは首を横に振った。

「マリアさんの事考えているのかな?」

「…………」

「ん?ほかに人が居るとき。話し掛けたら答えてくれるけど。僕一人の時は話してくれないね。もしかして嫌いなタイプ?それとも警戒している?」

「…………」

「乙女心わからない?だから二年付き合っていた彼女にも、振られたのだよな。アリリアも我慢していたのだろうな?あっ。ごめん関係ないこと話して」

「…………」

==

その頃。二階ではティモルとマリーが。ヒロの部屋をかたづけていた。

「マリー。ヒロの布団フローリングに下ろすからそっち側もって」

「は〜い」

ティモルは。ヒロの布団をフローリングに下ろした後、客間からお客様用の布団を運び

ヒロのベッドに広げた。枕。薄い掛け布団を広げ、再び客間に行き、収縮式のカーテンレールと厚手のカーテンを持ってきた。

「マリー。カーテンレールの端。部屋の電源スイッチの少し右の一番上で押さえといて

くれる」

「お母さん。この辺でいい」

「うん。そのままで少し我慢しといてくれる」

「は〜い。お母さん。このカーテンレール。前の家で私とお兄ちゃんの境目を。つくって

いたものだね?」

「そうだよ。覚えていたの」

「懐かしい」

「マリー。ありがとうあとは母さん一人でできるからありがとう部屋に戻っていいよ」

「お母さん」

「何だい」

「一階に降りて女の人と話してもいい?」

「そうだね。お兄ちゃん。だいぶ手を焼いているから。マリーが居たら助かるかもしれな

いからいいよ。でも夜も遅いからほどほどにね」

「は〜い」

ティモルは。カーテンレールにカーテンをつるすためフックを付け始めた。

マリーは一階に降りて、サラの前に立ち自己紹介をした。

「初めまして。マリー・アガパンサスと言います。聖スィートアッサム女子高校一年で福

祉看護科で看護の勉強をしています」

サラはソファから起き座りなおした。

「初めまして。私は。サラ・ライラック聖スィートアッサム女子造形芸術科三年で。今。

作業用ロボットのデザインの勉強をしています」

「すごい。ロボットのデザインの勉強。大学進学の選択にいれようかな?」

「あっ。自己紹介してない?」

ヒロは。自己所紹介していないのに気付いた」

「えっ。自己紹介まだ何て最低。最悪。印象わる」

ヒロは。マリーの言葉にへこむ。

「お兄ちゃんへこむより先に自己紹介」

「……はい。僕はヒロ・アガパンサス。ハイドランジア工科大学電子工学科三年。今。けが人が装着するメディカルスーツの開発研究に取り組んでいます」

「はい。よくできました」

「あれ?サラさんのワンピース切れている?」

「僕が病院で切った」

「最低。お兄ちゃんそんな趣味あったの?」

「誰が好き好んで。女の子の服を切るわけがないだろう?」

「まあそれもそうか?サラさん身長何センチですか?」

「百六十八センチです」

「私が百六十四センチだからいけるかな?いくつか服とパジャマ持ってきますので。そこから選んで着てください」

マリーは。二階に上がって自分の服を物色始めた。入れ替わりで片付けが終わったティモルさんが下りてきた。

「まだご飯食べてないのか?もう一時回っているのだから、早くお食べ。あら。サラさんもまだだったのかい。ヒロ。何していたの」

「すいません。僕では彼女説得できなくて。御飯いただきます」

「はい。」

サラの前にあるカレーライルを温めなおす。温まったらサラの前に置く。

「はい。利き手は右?」

「いいえ。左です。」

「私が言いたいこと言わなくてもわかるね?」

「はい。いただきます。」

「よろしい」

サラはティモルさんが作ってくれたカレーライスを食べだした。

「おいし……い」

サラはカレーを食べながら泣き出した。ティモルがサラの体を優しく包み込んであげる。

「泣くと体に悪いから頑張って泣かないようにしよう」

「……はい。どうして見ず知らずの私を暖かく迎えてくださるのですか?」

「何故だろう?看護婦としての使命かな?」

「看護婦としての使命ですか?」

「そう。あなたは。自分より友達の命を心配している。最近は自分さえよければ。自分が助かればいい。そういう人増えている中で。私は。正直言ってあなたの事気に入った。だから家に帰る気になるまで。我が家で預かろうと」

「ありがとうございます」

「カレーの残り食べられる?」

「はい。大丈夫です」

サラは残りのカレーライスを食べると皿をティモルに渡した。

「ごちそうさまでした。とてもおいしかったです」

「少しは。落ち着いたかい」

「はい。ありがとうございます」

二階からマリーが服をもって降りてきた。

「マリー気が利くね。機械オタクとはえらい違いだ」

「マリー。洗面所に椅子を一脚おいてきておくれ」

「は〜い」

「ヒロ。洗面台の椅子に彼女を座らせておくれ」

「はい」

ヒロは。サラを抱きかかえ洗面所の椅子に座らせるとティモルとマリーがきて洗面所から追い出される。ティモルとマリーはサラの服を脱がせて、お湯で丁寧に顔や体をふいていく。ふき終わったらマリーのパジャマを着せるとヒロを呼んで。二階のヒロの部屋に連れて行かせた。二階に上がりヒロが自分の部屋のドアを開けた瞬間。固まった。

「母さん。部屋のかたづけって?」

「こういう事。彼女をベッドに寝かせたら。ルームランプだけにして寝かせておやり」

「あっ。はい」

「この子と同じ部屋だけど、心配しなくていいからね。寝込みをおそうことはしないはずだし。一応。介護の一級免許は持っているから」

「母さん。僕お風呂入ってくる」

「はい」

「サラさん。マリアさんの事心配かもしれないけれど。マリアさんは気を失っているけど。命が危険な状態でなく意識が戻ったら普通に生活できるそうよ。だから心配せずに。ゆっくり休んでね」

「あり……とうご……ざいます」

ティモルは。サラの涙を拭いてあげ。フェイスタオルをサラに手渡した。

「サラさん。お休み」

「おやすみなさい」

ティモルは。部屋をルームランプだけにすると部屋を後にし。一階に降りて行った。        「お母さん。サラさんの事。知っているの?」

「知っているというか。もしかしたら知り合いの子供かもしれないけど。お父さ

んならわかるかもしれない」

「そういえば。もう二時だけどお父さん今日は帰ってこないの?」

「なんでも。ミサイルが国道に落ちて通行止めになっていて。今日は帰れないとしか聞いてないから」

「そうなのだ」

「母さん。お風呂出たよ」

「はーい。私も入ろうかな?」

「母さん。彼女僕の事嫌いなのかな?」

「どうしてだい」

「誰かが居ていると話をしてくれるのだけど。二人きりになると話してくれない」

「それは単に警戒しているだけだと思うよ」

「僕が警戒されている?なぜ?」

「私にそれを説明してと。言うのかい。ヒロ。乙女心がわからないから。彼女にも嫌われたのだろう。別にそれでもいいと思うけど」

「母さん……」

「きゃ〜。マリア。マリア 。いや〜」

サラの悲鳴が聞こえたので二人は二階のヒロの部屋に入った。

「兄ちゃん。サラさんに何かしたの?」

「俺。今の今まで一階で母さんと話をしていただろう」

ルームランプの明かりの先にサラがうつぶせで。マリアごめんなさいと叫びながら号泣している姿があった。ヒロは駆け寄り彼女を抱きかかえ優しく話しかけた。

「サラさん。マリアさんは大丈夫だよ。明日、病院に会いに行こう。連れて行ってあげるからゆっくり休むといいよ」

「ヒロさん。私たちを探して病院に連れて行ってくれてありがとうございます。助けてくれてあり……」

「!彼女。寝ちゃった」

「お前の顔見たらほっとしたみたいだね。ヒロ少しの間、抱きかかえといてあげて落ち着いたらおろして寝かしてあげて。よかったね。彼女に嫌われてなくて。頑張って嫌われないように。私は下に降りってお風呂でも入るか。くれぐれも寝込み襲わないように」

「母さん、自分の息子だろ〜、信用ないのかな?」

「信用あるかないかより、同じ年の男女が同じ部屋にいて、何も、おこらないのが、不思議だと私は思うけど?」

「同じ部屋にしたの。母さんであって僕ではない」

「う……ん。そう言われると返答しようがないね」

「怒らない、怒らないサラさん起きちゃうよ。おじゃまむしは退散します。お兄ちゃんサラさんの看病頑張って」

よく見るとサラさんほんと奇麗だな。顔の傷早く治るといいな。 あっ、そろそろおろして俺も寝よう。ヒロは。サラを下ろし。お風呂に入ってから。床にひかれた布団で眠りについた。


==

〈二〇五五年八月四日八時〉

ヒロは目覚めてサラの状態を見てよく寝てそうだったので一階に降りて行った。一階ではティモルが仕事に行く支度をしていた。

「母さん出かけるの?」

「ああ。本当は休みだったけど昨日の今日だからね。人手が足りないし。昨日みたいなことがあると今の看護婦の人数では足りないから。国立病院だけどなかなか働き手がいなくてね。看護用ロボット居るけど旧型だからすべて人が入力しないといけない」

「大変だね。それ考えたらA二〇一すごいね」

「そうそう彼女たち運がよかったと思う後で聞いたのだけど、ミサイルの着弾被害の最初に診察したのが彼女たち二人で、たまたま待機していた最新鋭のA二〇一に手術してもらえたらしいよ」

「最新鋭のロボット何機あるの?

「三機」

「えっ。三機」

「そうだよ。彼女たちほんと運がよかったと思う。時間だから仕事行くね。彼女見といてあげてね。また。悪い夢を見てうなされたら昨日と同じ対応でね」

「はい。行ってらっしゃい」


ティモルは。休憩時間に。旦那のアキレアに連絡を入れた。

「お父さん。道路状況どんな感じですか?」

「そうだな。国道の復旧は。工事関係者に聞くと。半月ほどかかるらしいけど。高速は。二〜三日で復旧らしい」

「最低二日は帰ってこなれないですね」

「そういうことになるかな。ところで何かあったのか?」

「今ね。女の子をうちで預かっているのだけど。それがサラ第一王女かもしれないの」

「サラお嬢様?何故そう思った」

「名前が。サラ・ライラック」

「!ライラックといえば」

「そうなの。国王の奥様の旧姓がライラック。それと彼女を見た時。どこかで見たように思ったのでも思い出せなくて」

「お母さんが。サラお嬢様のあったのは。去年の国王の結婚二十周年パーティーだと思うけど」

「!あっ。思い出した。そうだ。やっぱりサラ第一王女」

「お嬢様が家に?」

「ティモル。何故。お嬢様が。家に?」

「成り行きで預かることにしたの。サラ第一王女。お屋敷に帰らないと言っているの」

「帰らないのではなく。帰れないのではないのかな?」

「そうかもしれないわね。お屋敷抜け出して。大怪我してしまっているものね」

「!お嬢様が大怪我している」

アキレアは驚いた。

「うん。全治五か月」

「それは大変だ。クレマ様に連絡しないと」

「お父さん待って。クレマには。私から連絡する」

「わかった。ティモルの任せるよ」

「ありがとう」

「お嬢様には粗相のないように」

「わかりました。詳しくは帰ってきたときに話をします」

ティモルは。アキレアとの電話を切り。クレマに電話をした。

==

 クレマに。見慣れない電話番号から電話が来た。クレマは。出るかどうか迷ったが。サラの事があるのでとりあえず電話に出た。

「もしもし。クレマ?」

「!ティモル。どうしたの。あなたから電話してくるなんて」

「サラさんの事なのだけど」

 クレマが。少し驚いていた。

「サラがどうかしたの?」

「今。アガパンサス家で預かっている」

「ティモルの家で。よかった………………」

クレマは。娘が無事でティモルが預かってくれている。涙がこみあげてきた。

「ティモル。すぐ迎えをよこしますので」

「それなのだけど。本人帰る気がないみたいで」

「また。わがまま言っているのね。どれだけみんなに心配をかければいいの」

「クレマ。気持ちはわかるけど。少し落ち着いて。あなたがそうやって怒鳴ったら。サラさん。反発して。家に帰るどころか。ここからもいなくなるかもしれない。ここは私に任せてもらえませんか?」

「ティモル。ご迷惑ではないですか?」

「大丈夫です。それと世話するのは。息子ですので」

「ヒロ君がうちの娘の世話を」

「そう。もともと。ヒロが。がれきの中からサラさんを助けたみたいで」

「!がれき。もしかしてサラは。けがをしているのですか?」

「そう。全治五か月の診断が出ています。それと。朝の段階ではまだ起きていなかったのでダメージが大きかったから」

「………………」

「クレマ。サラさんが戻るというまで。預からしてもらえるかな?」

「ティモル。お願いしてもいいですか?」

「ありがとう。私のお願いきいてもらって」

クレマは。涙ながらティモルに娘を預けることにした。

「娘を。サラをお願いします」

「はい」

ティモルは。クレマとの電話を切った。

 クレマは。サラが無事でいてくれたことにほっとした。落ち着いてから家族にサラが無事でアガパンサス家で預かってもらっている事を伝えた。


==

午前九時と午後六時にA二〇一が彼女の検診に来ていた。二回とも何も言わず傷口の手当だけして帰った。ヒロは一日看病していたが、彼女が起きることはなかった。ヒロは。昼過ぎにパメディカルスーツの件で大学の顧問のハーデス教授に連絡をした。

「教授。ヒロです。いきなりすいませんが。右腕と右大腿部のメディカルスーツの在庫ありますか?」

「確か。あると思うけど。急にどうかしたのか?」

「はい。知り合いの子が。先日のミサイル着弾で怪我をしてしまって。それでメディカルスーツを装着してもらおうかなと思いまして。データーは僕が管理して教授に送りますので」

「わかりました。用意しておきます」

「ありがとうございます」

母さんに一日起きなかったことを伝えたら。そっとしておいてあげてと言われただけだった。翌日も起きなかったので。ヒロは。サラの事が少し気になっていた。


==

〈八月六日午前九時十五分〉

A二〇一がサラの傷口の手当が終わり帰る準備をしていた時。

「うん〜。」

「サラサマ。オメザメデスカ。キブンハイカガデスカ?」

「ロボットさん。おはようございます。頭が少しぼっ〜としている感じなのですけど」

「ワカリマシタ。コウキンザイとブドウトウのテンテキヲトウヨシマス。サンジュプンホドカカリマスノデ。カイシュウハB一〇九ガオコナイマス」

「わかりました。お願いします」

A二〇一は体内から点滴と点滴を下げるための道具を取り出し、点滴の準備を始めた。

「テンテキヲハジメマス。ジリキホコウハ。ヒカエテイタダキタイノデ。クルマイスヲヨウイシマス。ジリキホコウセズ。カナラズクルマイスヲ。シヨウシテクダサイ。アト。サラサマノ。ジョウホウノカイジドウイタシマショウ」

「すいませんが情報は非公開でお願いします」

「リョウカイシマシタ」

ヒロが。検診の様子を見に来て。サラが起きているので一瞬喜んだが、囲いをされた中で点滴をしている姿を見て。痛々しく感じて喜びも消えてしまった。A二〇一が病院に戻った後。二人になったが、彼女に話し掛けることもできず。時間だけが過ぎていった。午前十時頃にB一〇九が来て。電動車椅子の使用の説明と点滴の回収をしていった。右腕が使えない彼女には左側についているシフトレバーの説明をして先生の許可が下りるまでは右腕を動かさないように念を押して病院に戻っていった。そして再び二人になったが話しかけられずいるとサラから話しかけてきた。

「お名前。ヒロさんでしたでしょうか?」

「はい。そうです」

「お願いがあるのですが」

「何でしょうか」

「無理なお願いかもしれませんが。私を病院に連れていってほしいのですが。お願いできますでしょうか?」

「病院ですか?分かりました。お連れ致します」

「ありがとうございます」

「サラさん。お腹すいていませんか?母さんがお腹すいたと言われた時の為に。ご飯を用意してくれているのですが?」

「……お食事。頂いてもよろしいですか?」

「はい。今用意しますので少し待っていてもらえますか?」

「はい。無理言ってすいません」

ヒロは一階に降りて冷蔵庫からお母さんが用意してくれた朝食を温め、トーストを一枚焼き半分に切り、皿に乗せ二階に持って上がった。

「お待たせ」

「おいしそう。ありがとうございます」

「牛乳つめたいのですが温かいのがよければ温めてきますが?」

「ありがとう。でもこのままで結構ですので」

「ただいま」

マリーがバイト先からお昼休憩で帰ってきた。ヒロが一階にいないので。二階に上がってきた。

「お兄ちゃん今日のお昼ご飯…………」

「マリー。お帰り。かたまってどうした?サラさんが起きたから?」

「うん。それもあるけどお兄ちゃんが。御飯用意してあげているから?」

「!お兄さんは普段食事の用意されないのですか?」

「全然。お兄ちゃん料理全くダメだから?電子レンジの扱い方も下手だから。いつもお母さんに怒られているからね」

「えっ。そうなのですか?いい感じで温まっているもので普段からお料理されておられると思っていました」

「マリー。サラさんと外出しようと思もっているのだけれど。貸してもらえる服あるかな?」

「一昨日。用意していた服があるから持ってくる」

マリーは自分の部屋へ戻り、部屋に置いていた服を取り、ヒロの部屋に戻ってきた。

「お兄ちゃん。服ここに置いとくね。私。今。休憩中だからご飯食べて戻らないといけないから」

「冷蔵庫にオムライスはいっているから」

「は〜い」

「クスッ」

「サラさんが笑った」

「ごめんなさい。二人の会話が面白かったので。妹さんと仲いいのですね」

「どうなのですかね。今は部屋が別々でも文句言わなくなったけど。五年前まで住んでいた家では。同じ部屋でこのカーテン一枚。こんな感じで仕切っていて臭いとか言われて。消臭スプレーをかけられたりしたり。エロ兄貴。変態ともいわれていたな?」

「着替えている途中カーテンを開けたりなさったのですか?」

「そんなことしませんよ。もしそんなことしたらボコボコにされますよ。マリーは小学生の時から空手を習っていましたから」

「今は。空手の道場に。行っていないのですか?」

「ここに引っ越したのもあるし。何か違うことにはまっているみたいで、今は行ってないです」

「お兄ちゃん行ってきます。洗い物よろしく」

「はい。いってらっしゃい」

「やっぱり仲いいですね。私にも三歳下の妹がいるのですがほとんど会話をしないです。だから話を聞いていて。うらやましいなと思ってしまいました」

「本人はそう思ってなくても。周りは仲良く感じるのかな?」

「ごちそうさまでした。」

「お母様のお名前。ティモルさんでしたね」

「母さんの名前知っているの?」

「あれ?紹介していただいていなかったでしょうか」

「僕の前では紹介していなかったと思うけど」

(私なぜ知っているのかな?)

「僕。洗い物するからその間にマリーの貸してくれた服に着替れそうだったら着替えといてください」

「わかりました」

ヒロは客間からと寝台の鏡をサラの前に置き洗い物をもって一階に降りて行った。

サラは鏡に映った自分の姿を見て、何とも言えない気持ちになって外出するのがおっくうになってしまった」

一階からヒロが上がってきてサラの落ち込んでいる姿を見て。

「ごめん。この鏡置いたの。悪かったかな?」

「いいえそうでなくて。自分自身こんなにひどい状態なのに病院で帰らないって。わがまま言たり。ヒロさん。病院に連れて行ってほしいと言ったりしている。自分が情けなくなってしまいごめんなさい」

「僕は自分より他人を大事にする人好きだけど。まあ自己犠牲しすぎるのもどうかとは思うけど」

「…………私って他の人から見て自己犠牲しすぎているように見えるのですか?」

「そうですね。最初。病院でマリアさんから離れなかったときはそう思ったけど。母さんに諭されてからはそんな感じには見えないですよ」

「そうですか」

「サラさん。病院行きます?二日ぶりだし。マリアさんの事も。少し気になるから」

「!二日ぶり」

「そうですけど。二日間。寝ていましたよ」

「!私。二日。寝ていたのですか?」

「はい。母さんが体のダメージが大きかったじゃないかって言っていました。もしかしたら。今日も起きないかもって言っていたから。目が覚めているの。見てほっとした」

「心配かけていたみたいで。すいません」

「いいえ。それで病院には行きますか?それともやめますか?」

「どうしても。マリアを見に行きたいので。病院連れてもらってもよろしいでしょうか?」

「はいわかりました。部屋の外で着替えるの。待っていますので終わったら教えてください。ちょっと車椅子を車に積んできますので」

「はい」

サラは。マリーから借りた服で一番合いそうな服を選んで試着してみた。Tシャツ系は右腕が痛いので断念し最終的にワンピースになったが後ろのファスナーが止められないのでヒロを呼ぶことにした。

「ヒロさん。すいません少し手伝ってもらえませんか?」

「何でしょうか?」

ヒロは。階段で待機していて呼ばれたので部屋に入ると背中のファスナーが止まっていないサラが前を抑えて座っていた。

「すいませんが背中のファスナーを止めていただけますか?」

「はい」

(ヒロはサラの背中を見て思った。ところどころ赤くはれて擦り傷だらけの背中変われるものなら変わってあげたいくらい痛々しいな。ほんとなら。きれいな背中しているのだろうな)

ファスナーを上げ終わるとサラがこっちを向いて笑顔でありがとうと言ってきた。

彼女を。そのまま抱え階段を降り。玄関に一度下ろした。玄関。車のドアを開けサラを車に乗せた。

「サラさん。窮屈ではないですか?」

「はい。できれば少し座席を下げて頂ければ助かります」

「わかりました」

「ありがとうございます」

「いいえ。こちらこそ」

ヒロは車の運転をして病院に向かった坂道の途中で、ミサイルが着弾して壊れた時計台を見て、こんな事、おこした国はどこだろうと怒りを覚えた。

「ヒロさん。少し聞きたいのですが?」

「何でしょうか?」

「あの混乱の中。私たちを助けに来ていただいたのか知りたくて」

「そうですね。サラさんたちに。時計台の事を教えたのは。僕ですし。気になっていたので」

「そうですか。ありがとございます」

ヒロは。病院に着いたので車椅子を下ろしサラをのせて、病院に入っていき玄関ロビー

を通りエレベーターの前で待っていると女の子二人が話しかけてきた。」

「もしかしてサラ?」

サラが振り向くと、マリアと共通の友人ミーナ・マルセリアとサツキ・ビアントスが。立

っていた。マリアのお見舞いに来たらしい。

「二人ともマリアのお見舞いに来てくれたの?ありがとう」

「うん。マリアが入院しているって聞いてきたのだけど。まだ意識が戻ってなかったので

話しができなかった。でもサラ。大夫夫?マリアよりひどい感じがするけど」

「私は大丈夫です」

「そう。ところで後ろの人。彼氏さん?」

「ううん。知り合いの息子さんでヒロさん」

「へえ〜そうなの。ヒロさん。お父さんのお名前聞いていいですか?」

「お父さんの名前ですか?」

「はい」

「アキレア・アガパンサスです」

 !アキレア・アガパンサスさんの息子さん?サラは心の中で叫んだ。

「アキレア・アバガンスさんの息子さんですか。よろしかったら連絡先の交換いたしませ

ん?」

「ミーナ。彼。困っているわよ」

「ヒロ君。別に困ってないでしょう?」

「はい。ちょっと待ってください。あれ?スマートフォンどこだろう?しまった車に忘れ

てきた。ごめんなさい。連絡先の交換今度でいいですか?」

「えっ。次あった時でいいですか?」

「はい」

「次でいいです。ミーナ行こう。オジャマムシは退散しよう」

「サツキ……」

サツキは。サラに気を使って。ミーナをなだめ。その場を離れた。サラも。何かほっと

していたが。なぜ自分が。ほっとしている理由がよくわからないでいた。エレベーターが到着したので。乗り込み二階でおりて二〇一五室に向かった。向かっていると部屋から出入りする人影が見えた。マリアの両親のようだ。マリアの母親がサラに気づき声を掛けてきた。

「サラさん。無事だったようですね。ご両親から。音信不通脱聞いていたので心配して。

おりました」

「こちらこそ。なんとお詫びしてよいか。私が誘ったばかりに……………」

「それはあなただけのせいではないので。気にしないでください」

「エレン様。温かいお言葉ありがとうございます」

「いいえ。それよりも二人ともご無事でしたのでよかったです」

「彼が助けてくれたのですごく感謝しているのです」

「彼は?」

「彼はヒロ・アガ」

エレンと話している途中で。男性の声が割り入ってきた。

「エレン。誰と話をしている?」

「君は?君のせいでうちの子が大けがしてしまったのだぞ。どう責任取るのだ」

「申し訳ありません」

「申し訳ありませんではないだろう」

「あなた。サラさんに怒らないように言ったでしょう」

「そうだが意識があるこの子見たら腹が立って」

「すいませんが。意識があるとかないとかでサラさんを。怒ることをやめていただきたいのですが」

「君は誰だ?部外者は黙っていろ」

「部外者ですか?娘さんを病院まで運んだ人間に言う言葉とは思えませんが?」

「君が娘を病院まで運んだ?」

「はい。先ほどの話ですが。サラさんはマリアさんに対して何もしなかったわけではありません。僕が彼女たちを助けた時。サラさんはマリアさんの上にかぶさるように瓦礫に埋もれていました。それはどういうことを意味するがお分かりですか?」

「サラさんが。瓦礫が落ちてきたときに娘にかぶさったということでしょうか」

「そうです。証拠にサラさんの背中を見てもらえればわかると思います。マリアさんのお母さん。二人の背中見比べてください」

エレンは二人の背中を見比べて見て絶句してしまった。

「それと。彼女は全治五か月です」

マリアの両親は。サラの驚いた顔をした。

「サラさん。今日は帰ろうか」

「はい」

サラはヒロの行動に心を打たれ今にも泣きだしそうだったが。ぐっとこらえた。

「失礼します」

ヒロとサラは。マリアの病室から離れて行った。エレベーターを降り一階のロビーを歩いていると向こうからヒロの母親のティモルが歩いてきた二人を見つけると声を掛けた。

「サラさん。大丈夫?」

「はい。ご心配かけていたようで申しわけありません」

「いいのよ。私よりヒロがおろおろしていて」

「母さん。余計なことは言わない」

「はいはい。私。勤務中だからあとでね」

「はい」

ヒロが。玄関から外に出た時、スマートフォンが鳴る。マリーからだ。

「お兄ちゃん。今。どこ?」

「病院だけど」

「もう帰ってくる?」

「そうだな。十五分くらいで帰れると思うけど。」

「サラさんと散歩に行こうかなと思っているのだけど?」

「ちょっと待って。聞いてみる」

「サラさん。マリーが散歩に行きませんかと。聞いているのですけど。どうします?」

「マリーちゃんが?……連れて行ってもらえるのでしたらお願いします」

「はいわかりました。マリー。サラさん。散歩行くって」

「は〜い。お帰りお待ちしております」

「はい」

マリーどうしたんだろう?散歩行こうなんてサラさんの事。気に入ったのかな?

「ヒロさん」

「何でしょうか?」

「つかぬことをお伺いしますが。先ほど。私の友達が連絡先聞いた時にスマートフォン。車に忘れてきたとおっしゃっていたのはうそだったのですか?」

「はい。僕自身。最初から連絡先を教えたりするのが嫌いなものですいません。でも一人の子は。僕が嘘ついているの。わかっていたみたいですね」

「サツキですか?彼女。察知能力が高いのでいつもおどろかされます。多分。私を見つけたのは彼女だと思います」

「凄いですね。僕が見習わないといけないところかな」

「…………」

車に着くとヒロはサラを助手席に乗せ。車椅子を後部に乗せ自宅に向け車を走らせた。

「ヒロさん。マリアの病室での事。ありがとうございます」

「僕は。ありのままを話しただけでお礼何て」

「ううん。私にとってはすごくありがたかったし助かりました。一人でしたら泣いてあの場から逃げていたと思います」

「そういってもらえたら一緒に来たかいがあります」

サラもヒロもお互いいいように思ってくれてうれしかった。車を走らせ家に近づいたら玄関の前でマリーが手を振って待っていた。

「お帰り」

「ただいま」

ヒロは車椅子を下ろし。サラをのせて車を車庫になおした。マリーがサラの車いすを押し、ヒロがついていくという構図になった。サラがふと気になることを聞いてきた。

「ここの街並み、市街地とだいぶ違いますね?」

ヒロの家族が住んでいるオーシャンフラワータウンは、全五十戸の住宅、二件のスーパー、五件の飲食店、一件の診療所からなる最新設備の町である。この町の売りの一つは海の見えるフラワーパークがあり、五年前に分譲された新しい街で、ここの売りはとにかくライフラインがない、電気は電波伝送方式で各家庭に供給されて。水は各家庭の地下にボトルサーバー専用の機械があって、ボトルポットと呼ばれている小型のタンクがありその中には圧縮水が入っていてコンピューター管理によりロボットが自動でボトルポットの交換を行って、いるのだ。トイレなどの下水処理も地下に簡易処理システムがあり。トイレ専用の水として使われる。循環型水と花や農作物用の汚水専用のボトルポットに分けられていてフラワーパークにある工場で栄養液にするようになっている」

「システムが確立していますね。私も手掛けてみたいな」

三人が進んでいくと前が急に開けてきた。オーシャンフラワーパークが一面に広がっている。夕刻で涼しくなってきているためかそれとも夕陽を見に来ているためか人が。多く来園している、ヒロたちは入園せずに高台の展望台に行くことにした。

「サラさん、アイスクリームでも食べませんか?」

「マリーちゃん、この辺でアイス売っているところあるの?」

「そこの角を曲がったところ。ちょうど展望台への坂道への入り口にガーデンアイス

いう名前のアイスクリーム専門店があるの。私。そこでアルバイトしているの」

「マリーちゃんがアルバイトしているアイスクリーム専門店?」

「そうです」

「ヒロさん。寄ってもいいですか?」

「財布持っているので別に構いませんが」

「ありがとうございます」

「やったートリプル・トリプル」

「!なんでマリーが喜んでいるの?」

「私の分も出してくれるのでしょう」

「!はい。わかりました」

ヒロたちは、アイスクリームを購入するのに、ガーデンアイスに立ち寄った。店から店員の声が聞こえた。

「いらっしゃいませ。あら。マリーちゃん何か忘れ物?」

「いえ。アイスを買いに来ました」

「そうなのですね。そちらの女性は?」

「私も詳しくは知らないのですが両親の知り合いの娘さんで一時的に預かっています。

名前はサラさんです」

「初めましてサラ・ライラックです」

「こちらこそ初めまして。店長のルナ・ハーベスターと言います。えっ。ヒロ君もいた

の?」

「はい。いつも妹がお世話なっています」

「いいえ。マリーちゃん頑張ってくれているからすごく助かっています。ヒロ君。久さし

ぶりですね。マリリアさんでしたかね。彼女さん元気?」

「……三か月前に別れました」

「あっ。ごめんなさい。いらないこと聞いちゃって」

「大丈夫です」

「マリーちゃん。おすすめアイスどれですか?」

「今月はこれ。はちみつレモンバニラクッキーとこっちのソルティライチラズベリー

シャーベットの二種類です」

店長がヒロと話がしたかったみたいで。奥からロゼリとクリビアを呼んだ。

「は〜い」

「ロゼリさんクリビアさんオーダーお伺いしてもらいたいのですが?」

「マリーちゃん。いらっしゃい」

「ロゼリさん。クリビアさんこんにちは」

「マリーちゃん。こんにちは。そういえば最近入れ違いが多いですよね」

「そうですね」

「マリーちゃんアイス何にするか決まったの?」

マリーとサラが注文している間に。店長が店内からヒロの横に来て話を始めた。

「ヒロ君。さっきはごめんね。知らないこととはいえ傷つけたわね」

「ハーベスターさん。僕は気にしていないので大丈夫です。」

「ところであの子。だいぶケガしているみたいだけど大丈夫なの?」

「サラさんですか?先生が言うには外傷は大きいけれど精神力が強いから無理をしなければ大丈夫だと言っていました。」

「ご両親の知り合いってホント?」

「僕も詳しくは知らないのですが、両親も知り合いと言っていましたので。皇族の娘さんかと思っているのですが」

「あなた達二人は。知らなかったのですね」

「そうですね。僕と妹は。皇族の人とお付き合いないですから」

「わかったごめんね。話付き合わして」

店長はなぜかサラさんの事が気になったみたいだ。納得して店の中に入っていった。

「お兄ちゃんは何するの?」

「僕はバニラアイスと抹茶アイスのダブルで普通のコーンに入れてください」

「ヒロ。もう一度行ってもらえますか?」

「バニラアイスと抹茶アイスMサイズのダブルでコーンは普通ので」

「普通のコーン?」

「……ワッフルコーンで」

「毎度お気に」

アイスは。ロゼリは。僕が言う前に勝手に作り出来上がっていた。

「ヒロ。購入代金九百ペルになります」

ヒロは。スマートフォンをかざし支払いをした。

「ありがとうございます」

「毎度ありがとうございます。またのお越しをお待ちしております」

三人は展望台へ向かう道を歩き始めた。

「マリー車椅子押すの。変わるよ」

「ありがとう」

「二人ともアイス何味にしたの?」

「私は濃厚バニラアイスとはちみつレモンクッキーと夏みかんシャーベットMサイズのトリプルのワッフルコーン。サラさんが同じアイスのSサイズ」

「サラさん。味のほうはどうですか?」

「お兄ちゃんの抹茶頂き」

「こらっ。マリー抹茶かじらない。油断も隙も無いのだから」

「サラさんどうかしました?もしかして抹茶アイス?」

サラは小さくうなずいた。仕方がないのでサラの口のそばにアイスをもっていったら。半分かじられヒロは。ショックで黙り込んでしまった。女性二人は楽しそうにしゃべりながらアイスをなめている。そうこうしているうちに展望台に到着した。久しぶりに見る景色だった。ヒロは三か月前の別れたアリリアの事を思い出していた。去年の秋にここに来た時、薄暮の中、キスしたことを。

「お兄ちゃんアリリアさんとのこと思い出しているのでしょう」

「ドキッ」

マリー。なんでわかる?マリーの一言でヒロは思い出から連れ戻されてしまった。

「ここってすごく眺めがよくていい場所ですね」

サラもここが気に入ったみたいだ。だいぶ太陽が傾いて海が少しずつ赤くなってきた。

ヒロの携帯が鳴った。

「母さんからだ」

「ヒロ。今どこにいる?」

「オーシャンフラワー展望台」

「サラさんも一緒かい」

「そうだけど」

「大丈夫そうかい?」

「大丈夫そうだけど」

「あまり無理させないように」

「はい。わかりました今から降ります。一応ブランケットもってきているので、掛けて

あげることにします」

「まあ。なかなか用意がよろしいことで」

「それは母さんの子ですから」

「よく言うよこの子は。私は今から病院を出るから気を付けて降りておいで」

「はい」

「サラさん。マリー。帰るよ」

「は〜い」

「はい」

ヒロはサラにブランケットかけてあげゆっくりと坂道を降りて行った。下に降りると、

ロゼリとクリビアが手を振ってくれた。二人に興味あったのか、二人の事を聞いてきた。

「ヒロ君。あの二人とどういう関係?」

「幼馴染の腐れ縁、二人とも前の家の近所に住んでいて幼稚園から大学まで同じ。さすが

に大学では学部が違うけど。もう十七年同じ学校に通っている」

「彼女にはならなかったの?」

「そう言われてみればそうだな?僕自身。女の子というとらえ方をしていなかったかも」

「そうなのですね。」

「私の見る限り。お兄ちゃんはロゼリさんとクリビアさんとは友達の関係のみで恋愛には

発展しないタイプ」

「マリー。いつものように厳しいな」

「しょうがないでしょう事実は事実なのだから」

「家に着いたよ。母さん帰っているみたい」

ティモルは帰宅して晩御飯の用意をしていた。

「ただいま」

「お帰り」

「今日の晩ごはん何?」

「今日はクリームシチューだよ」

「やったー私の好物クリームシチューだ」

4人でご飯を食べながら雑談をしていた。

「サラさん。そういえば家族からの連絡ないけど心配してないのかな?」

「…………」

「そういえばサラさん。スマートフォンは?」

「トートバッグの中に入っているのですけど?」

「ごはん食べたら二階に上がって確認しましょうか」

「……はい。わかりました」

ごはんを食べた後、ヒロはサラを抱えて二階に上がりトートバックの中に入っているスマートフォンを確認した。サラはスマートフォンの電源が入らないのでヒロに充電器を借りて充電したが充電ランプが点灯しないのを見てショックを受けた。それを見ていたヒロがサラに声を掛けた。

「スマートフォン。僕に預けてくれませんか?」

「ヒロさんに。ですか?」

「修理できるかどうかわかりませんが、スマートフォンの部品はコンピューターの部品と変わらないので僕が持っている部品で行けると思うのですが万が一。なおらないかもしれないと思うのでその時はスマートフォンの買い替えを進めますので」

「……わかりました。ヒロさんに預けますのでよろしくお願いします」

「お預かりします」

ティモルが二階に上がってきて、サラに体拭こうかと言ってきた。サラは少し悩んだが。ティモルに甘えることにした。ヒロが洗面所まで運び。ティモルが服を脱がせて体をふいてあげた。ヒロはその間にスマートフォンの修理をはじめた。サラの着替えはマリーのパジャマを借たり下着を頂いた。着替え終わったらヒロが二階まで運びベッドに寝かせた。サラは横になるとすぐ寝てしまった。ヒロはサラのスマートフォンの修理の続きを始めた。


==

一階ではティモルが電話でクレマと話をしている。

「ティモルに聞きたいのだけれど、サラのスマートフォンつながらない理由ってわかる?」

「彼女のスマートフォン。ヒロから詳しくは聞いてないけど通電しないから壊れているらしいの。今。ヒロが修理してくれているから明日にはつながると思う」

「ヒロ君が修理してくれているの」

「あの子の専門分野だから大丈夫だと思う」

「ご主人の国王様、何か言っておられた?」

「娘の事は私に任せると言ってくれてはいるのだけれど。元気な姿を見たがっているのよね」

「それは仕方ないと思う。自分の子供の事。心配でない親なんて私はいないと思っているので」

「ティモルにお願いがあるの」

「何?」

「どこかのタイミングでサラの着替えとか渡したいのだけど」

「そうね。いきなり持ってくるのも変だから。サラさんのスマートフォンが直ったのを確認して。その次の日に電話をかけて反応を見るのはどう?」

「そうね。いいかもしれない」

「明日。スマートフォンが直っていたら連絡する」

「よろしくお願いします」

「心配でしょうけど我慢してね」

「サラをよろしく」

「はい」

ティモルとクレマはサラにはわからないように行動することにした。ティモルは二階に上がり。サラとヒロの様子を見に行った。サラは熟睡している。ヒロはサラのスマートフォンの修理をしている。

「ヒロ。修理できそうかい?」

「うん。基盤が割れていたので。基盤を作り替えるだけで行けると思う。基盤は三?プリンターを使うので。たぶん三時間あればできると思う。母さん一つ聞いていい」

「改まって何だい」

「……サラさんのお母さんとどういう関係?」

「話聞いていたのね」

「ヒロ。サラさんとマリーには内緒だよ。約束できるね」

「うん。わかった。約束する」

「サラさんのお母さんとは大学の同級生で遊び友達で。今は国王様の奥さん」

 ヒロは少し。驚いた顔をしたが。すぐ修理の続きをした。

「わかった。母さん説明してくれてありがとう」

「いいえ。ヒロ。無理せずにほどほどにね」

「はい。お休みなさい」

「おやすみ」



〈二〇五五年八月七日午前八時〉

朝。サラは自分のスマートフォンの音で目を覚ました。メイドのマーガレットからだ。サラはためらいながらも電話に出た。でも言葉が出ない。

「………………」

「サラお嬢様?」

サラはおそるおそる話した。

「マーガレット?」

「お嬢様。ご無事でしたか。よかったです」

「心配かけて……ごめん……な……さい……」

サラはこみあげてくるものに耐えられず泣き出してしまった。

「お嬢様。奥様に代わります」

「サラ。大丈夫?」

「はい。ご心配……」

サラは号泣して声にならなかった。

「お母様。ご心配かけて申し訳ありません」

「?サラ。急に落ち着いたけど……」

「はいお母様。今。彼に包まれながら電話しています」

ヒロは。スマートフォンの音で目を覚ましたが。サラが話をしていたのでそのまま横になっていた。けれど泣いているサラが愛しくなりベッドの端に座らせて左側からやさしく包み込んであげた。

「彼って。ヒロ君の事」

「はい」

「彼のいる横で話をして大丈夫?」

「たぶん彼は。すべてを知っていると思います。そのうえで私を包み込んでくれていると思います」

「そうですか。それなら要件を言いますね。明日からマーガレットが休暇を取って実家に帰省します。その間。あなたの世話をしてくれる人がいないので。ティモルに頼んで預かってもらうことになっているの。それでね。着替えをマーガレットにアガパンサス家へ運んでもらおうかなと思っているの」

「お母様。私一度帰ります。お父様にも直接会って謝りたいです」

「?謝りたい。お父様に?……わかりました。マーガレットを迎えに行かせます」

「いいえ。もうすぐしたらロボットさんが診察に来るので診察が終わり次第。ヒロさんにお願いしてお屋敷に連れて行ってもらいます」

「……?」

「ヒロ君ですか?」

「はい。彼も驚いていますが。私がどんな男の子と一緒にいるのか。知っていただきたいのでの。お会いしてもらえないでしょうか?わがまま言ってすいませんが聞いていただけますでしょうか?」

「……私の一存では決められないのでお父様と相談して決めますので決まり次第連絡します。それでよろしいですか?」

「はい。お母様」

「では。またあとで」

「はい。無理なお願いですがよろしくお願いします」

サラは電話を切りヒロにお礼を言った。

「ヒロさんありがとうございます。おかげで自分が言いたかった事。伝えたかった事。すべて言うことができました」

サラは。ヒロのほほにキスをした。ヒロは照れくさそうにしていたがサラを軽く抱きしめた。

二人で静かな時を過ごしているとチャイムが鳴った。A二〇一が診察に来た。右腕、右足は異常がないとのことで頭部の傷口を消毒して薬を塗り被覆材で覆い包帯を巻いた。診察、処置が終わり、十五分程で帰っていった。

「サラさんお腹すいていない」

「お腹すきました」

「下に降りて御飯食べようか」

「はい」

ヒロは。サラを抱きかかえ一階に降りていって椅子に座らせてからキッチンに立ちティモルが作ってくれた朝ごはんを温めてサラの前に置いた。ちょうどマリーが二階から降りてきたので一緒にあたためた。

「おはようございます」

「おはよう」

「おはようございます。マリーちゃん今からアルバイトですか?」

「うん。十時からです。お兄ちゃんとサラさんなんかあった?」

「どうゆう意味?」

「二人のオーラが昨日までと違うの?もしかして……」

「マリーちゃんそれは飛躍しすぎだと思うけど。ほら。お兄さん動揺してしまっているよ。きっと変なこと想像してしまったのでしょうけど」

「マリー。なぜそう思った?」

「二人の感じが……お父さんとお母さんと同じ感じに近くなっているので」

「お兄さんと私が夫婦みたいに感じたってこと」

「う〜ん。……そこまではいかないけどなんか近い感じ。どう説明したらいいかな?やっぱり。恋愛経験のない私には説明できなあ」

「マリー。それより早くごはん食べてアルバイト行かないと店長に怒られるぞ」

「大丈夫?遅れても店長は。お兄ちゃんみたいに怒りませんから」

「えっ。そうなのだ。時間には厳しい人かと思っていた」

「クスッ。ほんと二人の会話面白い」

「そういえばサラさんいつまでいるのですか?」

「そうですね。いつまでいようかしら」

「えっ。まだ決まっていないのですか?」

「はい。まだ決まっていません」

「あっ。アルバイト行かないと。行ってきます」

「行ってらっしゃい。ヒロさん。何か考え事している?」

「うん。マリーが言っていた事考えていた」

「そう。私わかるような気がする。だって私がそういうとらえ方しているから」

「えっ。どういうこと?」

「私も恋愛経験少ないので説明できませんので」

「サラさん。マリーと同じ感覚ですか?」

「そうかもしれませんよ」

「!えっ」

「マリーちゃん。見ていたらヒロさんいじるのって面白そうだし。いじってみたかったの」

「サラさん。お願いですから。いじるの。やめてください」

サラのスマートフォンが鳴った。母親のクレマから電話が入った。

「サラ。今大丈夫?彼は一緒にいるのですか?」

「はい。彼と一緒に朝ごはん食べています」

「一緒に朝ごはんですか。そうですか。本題に行きます。お父様がヒロさんとお会いになるそうです。午後三時にアキレアさんとお会いになる約束をされているそうなので。その前にお会いになると言っておられますがどうしますか?」

「はい。大丈夫だと思います」

「彼に確認しなくてもいいですか?」

「そうですね。確認します」

サラは。スマートフォンを離してヒロと話をした。

「ヒロさん。お父様と会ってもらえる?」

「国王様と?」

「うん。やっぱり知っていたのですね」

 ヒロは。一瞬しまったと思ったが。素直に話をした。

「昨日。お母さんから聞きました。サラさんからのお願いですからお会いします」

「私のわがまま聞いてくれてありがとうございます」

サラはスマートフォンを近づけてクレマと話をした。

「お母様。彼も会ってくれると言ってくれるので午後二時にお屋敷に戻ります」

「わかりました。マーガレットにも伝えておきますので」

「お手数かけて申し訳ありません。私のわがままとうして頂いてありがとうございます」

「サラ。あなた変わったわね」

「!お母様。私変わりました?」

「私も。彼に会わないといけないので少し気合い入れましょうかね」

「お母様なら大丈夫ですよ。」

「そうですか?午後二時に待っていますので」

「はい」

サラはスマートフォンの電源を切って、少しほっとした様子だった。

「サラさん。ほっとしたみたいだね」

「うん。お父様がヒロ君に会ってくれるか心配だったから」

「なぜ?」

「これからの事。考えたら必要なの」

「これからの事?」

「そうこれからの事。ヒロさん。もしかして。私と終わりのつもりでいました」

「はい。これで終わりだと思っていました」

 サラの顔が。こわばった顔になり少し荒い口調になった。

「ヒロさん。私の事。その程度でしか考えていなかったのですか?本当に乙女心読めませんね」

「!サラさんが怒った」

ヒロは。サラが怒ったのでびっくりした。

「当然です」

サラが怒ったのでヒロはどうしていいかわからなくなった。とりあえず朝ごはんのかたづけをしてからサラに声を掛けた。

「サラさん。どうしたら許してもらえますか?」

「………………」

ヒロは考えた。ご機嫌をなおそうとしてではなく違うことに気がいくことにしようかなと。

「サラさん。お詫びを兼ねて。今度。僕とドライブしてもらえませんか」

「ドライブですか?」

サラがヒロの言葉に反応したのでヒロは喜んだ。

「はい。今日のお詫びをしたいのでドライブしてください。お願いします」

サラは。ヒロさんの意図はわかるけどとりあえず保留にしておこうと思った。

「考えておきます」

「よろしくお願いします。それと今からマリアさんの様子見に行きませんか?」

「連れて行ってもらえるのですか?」

 サラは。少しうれしそうな顔をした。

「はい」

ヒロとサラは着替えて病院に向かった。病院に着くと、サラを車椅子に乗せ、マリアの

病室に向かった。途中詰め所によりティモルにサラのお屋敷に行くことを伝えた。

病室に行くとマリアの母のエレンが来ていた。

「サラさん。今日も来ていただいてありがとう。ほんとごめんなさい。うちの主人には。

くれぐれもサラさんを責めないように伝えていたのですが?理解してくれてなかったので」

「エレン様。あまり気になさらないでください。私から誘ったのは紛れもない事実ですか

ら」

「ありがとう。そういってもらえると助かります」

「サラさん。もう少しマリアさんの様子見ていますか?ちょっと先生の所へ行ってきたの

ですが」

ヒロ君。先生に何の用だろう?

「はい。わかりました。行ってらっしゃい」

ヒロは先生の所へ相談に行った。

「サラ様。つかぬことをお伺いしますが。お母様とヒロさんのお母様はお知合いですか」

「はい。大学時代の旧友と言っておられました。でもちゃんと話しするのは十五年ぶりと

言っておられたので理由は憶えていませんが。妹がこの病院に入院したことがあってその

時以来ということではないかと思います」

「この病院ということはヒロさんのお母様はここで働いておられるのですか?」

「はい。看護婦の婦長の業務を行っておられます」

「そうでございましたか。私も理解できかねないことが多く不思議に思っていましたが

ヒロ様のお母様は初めからサラ様の事をご存じでお世話をしていたということですか」

「はい。そういうことになります」

「そうでしたか?ということはヒロさんもご存じなのですか?」

「はい。彼には感謝しています。王女とわかっているはずなのですけど。普通に接して。

くれているので。すごく助かります。噂をすれば帰ってきました」

「サラ様。いろいろ教えてくださいましてありがとうございました」

「サラさん。お待たせ行きましょうか?」

「はい。エレン様失礼します」

「サラさん。冷たい飲み物でも飲みませんか?」

「はい」

ヒロは自動販売機の前で立ち止まりサラに話しかけた。

「飲みものどれにします?」

「飲み物。いっぱいあって迷いますね」

「何系の飲み物がいい?例えば、コーヒー系・紅茶系・果実系・野菜系・炭酸系であとは

お茶か水かな」

「うん……果実系でお願いします」

「わかりました。ではおすすめの濃厚フルーツミックスをご賞味ください」

「ありがとう、ご賞味させていただきます。(ごくっ)おいしい」

「僕は、定番のコーラで」

ヒロは自分の好きなコーラを購入して飲み始めた。

「ヒロ君。その黒い飲み物はなんですか?」

「コーラと言って簡単に言うとカフェインの入った甘い炭酸水かな?サラさんはコーラを

知らないですか?」

「見たことはあるのですけど周りで飲んでいる人がいなかったのとチャレンジするにも

勇気がなくて。味見してもいいですか?」

「僕ので。よろしいですか?」

「はい。大丈夫です」

「ヒロはサラにコーラを渡しサラは一口飲んでヒロに返した」

「コーラおいしくなかった?」

「そういうわけではないのですが?自分には合わないなと。私はこちらのフルーツミックスで十分です」

「人によって好みが違うから」

二人は飲み物を飲み終えると。ヒロはゆっくり車椅子を押して病院の出入口へ向かった。

「約束の時間まで約三時間あるのでお昼ごはんを兼ねて。近くのショッピングセンターに行きませんか?」

「そうですね……。ヒロさんにお任せでもいいですか」

「はい。わかりました」

「ヒロはサラを連れて病院を出て車に乗り病院から五分の所にあるオーシャンビッグショッピングセンターに向かった。ショピングセンターに到着して一階の駐車場に止めると三階の若い女性向けの専門店に向かった」

「ヒロさん。ここは若い女性向けの階ですけどマリーちゃんにプレゼントですか?」

「ううん。サラさんの」

サラは。驚いた顔をした。

「えっ。私のですか?」

「そう。私のですよ」

「ヒロ君。いいですよ」

「これは朝のお詫びとこれからもあって頂けるというお礼も含めてプレゼントさせてくださいお願いします」

サラは悩んだ。アルバイトしたお金を私の為に使わせていいのかと。

「…………」

「もしかしてお金の事。気にしています。大丈夫ですよ。ここの服や雑貨は若い子向けなのでリーズナブルですから」

「それでも申し訳ないので」

「聞いてもらえないのでしたら。僕はお屋敷にはいきません」

「!ヒロさん。私を困らせないでください」

「では。僕の言うこと聞いてください」

「……わかりました。お言葉に甘えさせていただきます」

サラは心の中で。ヒロ君に押し切られたと思った。

「ヒロさん。私に何を買ってくださるつもりでおられます」

「キュロットワンピースと麦わら帽子」

「キュロットワンピースと麦わら帽子ですか?」

サラはなぜキュロットワンピースと麦わら帽子を買いに来たのか理由がわからなかった。

「そうです」

ヒロは麦わら帽子の売り場に行き。縁の広い麦わら帽子を見つけサラにかぶせた。

「サラさんどうこれだったら頭の包帯目立たなくていいかな」

「頭の包帯隠すために購入してくれるのですか?」

「うん。そうだよ」

「ありがとう」

サラは泣きそうになったがぐっとこらえた。

「リボンの色どうしますか?僕が選んでいいですか?」

「うん」

「すいませんこの紫のリボンの帽子と白のリボンの帽子と二つください」

「はい。こちらの商品の紫と白でよろしかったでしょうか?」

「はい。それでお願いします」

「かしこまりましたお会計はこちらでお願いします」

「はい」

ヒロは。サラにちょっと待ってもらってお会計を済ませた。

ヒロは買ったばかりの紫のリボンの麦わら帽子をサラにかぶせた。サラは。涙目になりながらヒロにありがとうと言った。ヒロは。次に洋服屋さんの前に行きキュロットワンピースを探し始めた。服を決めてサラに確認したら。その色でいいですと言われたので花柄のベージュのキュロットワンピースに決まった。お会計を終えてワンピースの入った紙袋をサラに渡した。それから一階に行きハンバーガー店に入った。サラに好きなハンバーガーを聞き注文して、二人分のセットをもってサラのまっているテーブルに持っていきハンバーガーを食べ始めた。

「サラさんこのセットの名前。知っているのですね」

「この店の名前に聞き覚えありませんか?」

「アスクレピアスバーガー!マリアさんの名前」

「そうです。ここはマリアのお父さんの経営しているハンバーガーショップ。ここの店舗に来るのは初めてですが。シャルム駅にある店舗は。マリアとよく行っていたのでメニューはわかりますし。今日は自分の好きなシーフードクリームバーガーのセットをお願いしました」

「サラさんと居るとすごい人達と知り合いになるのかな?」

「そうかもしれませんね。ところでキュロットワンピースはなぜ買ってくださったのですか?」

「理由ですか?」

「はい。教えて頂けるのであれば」

「まだ。正式に決まったわけではないのですが。さっき病院で先生に相談に行ったのは、サラさんのカルテを。僕の顧問のレオナルド・ハーデス教授に送り、メディカルスーツの被験者になれるか判断してもらっています。そのための物です。サラさんには正式に決まってから話そうと思っていたのでデーターに関しては身長・体重・怪我の状態の三項目だけなので個人情報の漏洩の心配はないです」

「メディカルスーツ?ヒロさんが研究しているもの?」

「そうです」

「私に?」

「はい」

「なぜ。私にそこまでしてくださるのですか?」

「特に理由はありませんが。少しでも。サラさんのお役に立てればと思いついた事をしているだけです」

「ヒロさん。私の為に。申し訳ないです」

「迷惑でなかったでしょうか?」

「ううん。すごくありがたいです。私が被験者になっても大丈夫ですか?」

「大丈夫です。被験者は年齢性別問わずいろいろな人のデーターをとったほうが良いので」

「わかりました。被験者として採用されたらお受けします。ヒロさん。今度からは私のデーターを使うときは内緒でなく一言声を掛けてください」

「あっ。はい。以後気を付けます」

ヒロとサラは食事し終わると車に乗りサラの屋敷へ向かった。市街地を抜け屋敷が立ち並ぶエリアに入った。ヒロはサラに道案内してもらいティフォリア家の屋敷の駐車場に車を停めサラを車椅子に乗せ玄関に向かった。玄関には、メイドのマーガレットが立っていたが車椅子のサラを見て。駆け寄ってきた。

「!お嬢様。おけがの具合大丈夫ですか?」

「大丈夫です。それよりマーガレットごめんなさいね。私の為に父と母から責められたでしょう」

「いいえ。奥様も旦那様も私を責めずに謝罪してくださいました」

「謝罪ですか?」

「奥様から。サラがいつも迷惑ばかりかけてごめんなさいと言われました。私。自身サラ様の外出の手助けをしたのにと申し訳ない気持ちでいっぱいでした。」

「お母様がそんなことを」      

「はい。ですから奥様からお嬢様のご無事を聞いた時は。サノバラの大叔母様のお屋敷から急いで戻ってきました。」

「フローレンスはサノバラに行っているのですか?」

「旦那様のご命令でシャルムの町が落ち着くまでサノバラで過ごすように言われましたので一部の使用人を除いてサノバラに行っております」

「そうですか」

「お嬢様。中へ。奥様がお待ちです」

「はい」

マーガレットはドアを開け。サラとヒロを中に通した。

「奧様。サラ様がお帰りになりました」

奧からサラの母のクレマが歩み寄ってきた。サラは帽子を脱いで謝罪をした。

「お母様。今回はご心配かけて大変申し訳ありませんでした」

「!サラ。けがの状態大丈夫ですか?」

クレマは思っていた以上にサラのけがが重そうなので心配になった。

「お母様。けがは大丈夫です。ご心配ばかりかけて……」

サラは申し訳ない気持ちがいっぱいになり泣き出してしまった。

クレマはサラの目線まで腰を落とし優しい言葉を掛けた。

「サラ。私はあなたが無事で帰ってきてくれた事だけで十分です。そんなに謝らなくてもいいですよ。そうだ挨拶がまだだったですね。ヒロさんでしたかね。」

「はい」

「挨拶が遅れてすいません。サラの母のクレマ・ティフォリアと言います」

「初めまして。ヒロ・アガパンサスと言います」

「ヒロさん。娘を助けてくださってありがとうございました」

「助けたなんてとんでもないです。僕の責任ですので申し訳ありません」

「ヒロさん。私は助けてもらったと思っていますので。自分を責めないでください。ヒロさんが居なければ。私とマリア。今頃どうなっていたかどうなっていたことか」

ヒロはサラの一言で自分の主張を言えなくなってしまった。

「そういえば。サラその帽子どうされました?」

「ヒロさんに買っていただきました」

「ヒロさんに?ヒロさんまだ学生さんですよね」

「はい。お母様」

「クレマ様。帽子とあと服の件は僕がここに来る条件として買ったものです」

「ここに来る条件として買った?どういうことでしょうか?」

「サラさんが僕なプレゼントは受けられないと言われましたのでもらっていただけないのであればお屋敷にはいきませんと言って困らせて無理やり買ったものです」

「!サラ。あなたがヒロさんに押し切られたのですか」

「はい。面も苦ありません」

「サラが。押し切られるなんて記憶にないですね」

「マーガレット。ヒロさんを応接室に案内してください」

「はい。かしこまりました」

「お母様。ヒロを私の部屋に案内してもいいですか?」

「!あなたがよろしければ構いませんが」

「お母様。ありがとうございます。ヒロさん。案内しますので車椅子押していただけますか」

「……はい。わかりました」

「マーガレット。サラの着替えや服を鞄に詰めてあげてください」

「はい。わかりました」

サラの部屋はお屋敷の二階の奥にあり階段までは車椅子で階段からサラの部屋まではヒロがかかえて連れて行った。ヒロはサラをベッドに座らせ靴を脱がせてあげた。サラは四日ぶりの自分の布団に転がったと思ったら寝てしまった。ヒロはサラの部屋を眺めこれが王女様の部屋?とか考えながら時間を過ごした。ヒロはサラの机を見ていた時。ふと幼児期に男の子と映っている写真を見つけた。この写真と一言つぶやき元の位置に戻した。しばらくしてマーガレットさんが部屋の入いってきて、サラが寝ているのを見てびっくりしていたが静かにサラの服や着替えあの荷造りを始めた。ヒロは紙袋の服を取り出し、一緒に入れてもらうようにお願いした。十五分程して国王様が帰って来られたがサラが寝ているとのことで国王・クレマ・ヒロの三人で話をした。

「ヒロ君。娘を助けてくれてありがとう」

「いいえ。僕にも責任がありますので」

「そうか。ヒロ君は自分にも責任があると思っているのだね」

「はい」

「ヒロ君。君は。サラと付き合う気はあるかな?」

ヒロは。今の気持ちを率直に話した。

「今は。正直言ってサラさんとお付き合いをする。しないは考えていませんが。もしお付き合いするとなっても。お互いの気持ちは大切にしたいと思います」

「ヒロ君。君は将来どういう仕事がしたいのかね」

「はい。僕は将来というか当面の目標として来年発足される新型の超電導発電所のプロジェクトチームに入ることと。これから問題になってくるだろうと思われる。デブリ対策の会社を設立することです」

「君はなかなか難しい問題をやってみたいという願望があるみたいだね」

「はい。難しい問題程やりがいがあるともいますので」

「わかった。クレマ。サラとヒロ君の事に関してはお前に一任してもいいかな」

「わかりました。お受けいたします。」

「そうかよろしく頼むとする。サラが起きたら知らせてくれ少し話がしたいのでよろしく頼む。あとアキレア君が来たら応接室へ通してくれ」

「はい。かしこまりました」

「クレマ様。父さんが来るのですか?」

「サラから聞いていませんでした?」

「はい。」

「そうですか。来られる理由はあなたたちの事ではなく先日のミサイル防衛についての話ですのでお父様を交えてお二人の話をすることはありませんので」

「そうですか。ではサラさんの部屋に戻ってもよろしいですか?」

「はい。お願いします。あとサラが起きたら連れてきていただきたいのですがお願いしてもよろしいですか」

「はい。わかりました」

「サラの事。大事にしてあげてください」

「はい。国王様やクレマ様の期待に添えるような人間になってサラさんと交際しても釣り合いの取れていると思われるよう頑張ります」

「楽しみにしています」

「はい。」

ヒロは。クレマの元を離れ二階のサラの部屋に戻った。そして寝ているサラの顔を覗き込んだ瞬間。サラが起き左手で平手打ちを食らった。

バチン。ドン

「痛い。う〜。サラさん…………」

ヒロはサラの平手打ちをまともに食らい床に転倒してしまった。

サラは。ベッドからヒロの転倒した方向を覗き謝った。

「あっ〜やってしまった。ヒロさんごめん」

サラは。ヒロに反射的に平手打ちしたことを誤った。


==

その頃。一階ではヒロの父アキレアがお屋敷に到着してマーガレットが出迎えた。

「アキレアさんどうぞ。」

「遅くなりました。国王様にお呼びいただきましたアキレア・アガパンサスです」

「アキレアさん、お呼びしてすいません。国王様は応接室でお待ちです」

「はい。わかりました。一つお聞きしてよろしいでしょうか」

「ヒロさんの件ですか」

「はい。ヒロに車が駐車場にあったので」

「今。サラの部屋におられますが」

「お嬢様のお部屋に?」

「まあ。驚かれるのも無理はないと思いますが。サラが自分で招き入れたので。私も。驚

いております。

ドン

「何でしょうか?」

「お嬢様の部屋みたいですね。私。様子を見に行ってきます」

「マーガレット。お願いします」

マーガレットが物音のした二階に上がっていった。

「ヒロの件は。後程ということで国王様にお会いします」

アキレアは応接室に入り国王と話を始めた。

「アキレア入ります」

「アキレア君。よく来てくれた」

「国王様。急なご用とは?」

「この映像を見てくれないか?先日のミサイル着弾の映像だ」

「このミサイルの性能すべておいて我が国の防衛突破だけに作られたと言っても過言ではないかと思われます」

「やはり我が国の防衛網に対する挑戦か?」

「はい。私が見る限りではまず間違いないと思います。まず驚いたのがミサイルの性能、水中でのミサイルの推定速度が約一五〇ノット、可動式水平尾翼、切り離してロケットエンジンに点火後、着弾までが最短二十五秒。我が国の防衛網で、一発しか撃ち落とせなかったのは、理解できます」

「早急に、対策を打たないといかんのだが?」

「応急処置としてステレス魚雷探知機を今の防衛網の限界点五十キロの範囲で設置し、対魚雷迎撃ミサイルで迎撃する。現状では、これが最適だと思われます。早急に、水中からの攻撃に対しての防衛システムを作り替える必要があるかと思います」

「そうか、どのくらいの期間で防衛システムを作り替えられる?」

「急がせても約六か月はかかるかと」  

「わかった。我が国の防衛システムの売買にも影響が出るかもしれんが早急に頼む」

「承知しました」

二階ではマーガレットがヒロの右頬に湿布剤を張っていた。サラは。神妙な面持ちで現状

を見守っている。

「ヒロさん。大丈夫?ごめんなさい」

ヒロは右頬が痛くて手を挙げて返事をした。マーガレットが。サラが起きたことを伝える

と国王様がサラの部屋に来て話を始めた。

「サラ。元気そうだな。無事で何よりだ」

「お父様。ご心配かけて申し訳ありませんでした」

「気にするな。こうしてお前の生きている姿を見ているだけで私は満足だ」

「お父様。…………」

サラはうれしさと申し訳なさが交錯して泣き出してしまった。

「サラ。泣かずともこうして素晴らしい男性?ヒロ君どうかしたのか?」

「ヒロ様は。サラ様に平手打ちを食らい右頬が腫れしゃべれない状況です」

マーガレットが状況を国王に説明して部屋を出て行った。

「サラに平手打ちをされたか?さぞ痛かっただろう。何せサラは空手二段の腕前だから

本気でやられたらこうなるわい。はっはっはっ。そうだったサラ。ヒロ君との事は。クレ

マに一任してあるので今後の事は三人で決めるとよい。わしは事後報告でよいので。ヒロ

君。サラと仲良く付き合ってあげてくれ」

ヒロはしゃべれないのでうなずいた。

「!お父様。サラは。ヒロさんとの交際のお話ししておりませんが?」

「私に。会わせたいと伝えてきたので。交際相手としてみてほしいのかと思ったのだが。

違ったのかな?」

「はい。お世話してもらっている人が。どういう人か見てほしくて連れてきました」

「サラ。そうだったか?」

「それだったら。ヒロ君には。申し訳ないことをしたな?」

 ヒロは、首を横に振った。

「ヒロさんと私の事。お話をしていたのですか?」

「どうだな。ヒロ君。先程の話は白紙という事で」

ヒロはうなずいた。

「サラ。今後の事はクレマにまかしてあるので。なんでも相談しなさい」

「お母様に?」

「サラ。まあいいか。私はアキレアとの話の続きがあるのでこれで失礼する」

そういって。国王は一階に降りて行った。

サラは。ヒロにベッドの横に座ってもらい、左手で右頬をさすり謝った。ヒロは首を横に

振りサラを抱きしめた。部屋をノックする音がして慌てて離れ。サラが返事をすると。

マーガレットが入ってきて、サラにキャリーバッグに詰めた荷物の確認をお願いした。

「サラお嬢様。荷物の確認をお願いします」

 サラは荷物の確認をした。

「マーガレットこれでいいです。ありがとうございます」

「いいえ。どういたしまして」

「マーガレットどうかしました。私の顔に何かついていますか?」

「いえそうではなく。ここにいるお嬢様が今までお世話していたお嬢様と同じに思えなく

て何か穏やかになられましたよね」

「ごめんなさい。お母様にも同じことを言われたのですが。私自身何が変わったか理解し

ていないのですが。ただ周りの事を。第一に考えるようになったかな?とは思います」

「ヒロ様の影響ですか?」

「そうかもしれませんね。ヒロさん。私を一階に下ろしてもらってもよろしいですか?」

ヒロは痛みが落ち着いてきたのか喋れるようになった。

「はい」

「マーガレット。キャリーバッグお願いしてもよろしいでしょうか?」

「はい。かしこまりました」

三人は一階に降りていき、ヒロはサラを車椅子に乗せ押してあげた。

広間に行くとクレマとアキレアが話をしていた。

「アキレアさん。七日間。娘をよろしくお願いします」

「お預かりは致しますがヒロで大丈夫ですか?」

「あの。お二人でしたら大丈夫だと思います。何か事が起こっても」

「そうですか。クレマ様がそうおっしゃるのでしたら。ヒロにはよく言っておきますので」

「噂をすれば二階から降りてこられました」

「ヒロ。お前その顔どうした?」

「父さん。その質問は愚問だよ」

「アキレアさん。お久しぶりです。ヒロの頬は。私がひっぱたいてしまったので腫れて

しまっています」

「サラお嬢様。ご無沙汰しております。お嬢様がヒロをひっぱたいた?ヒロ。何か悪さし

ようとしていたのか?」

「寝顔見た瞬間。ひっぱたかれただけ」

「やっぱり。寝顔見たからひっぱたかれたのだよ」

「親父それはないよ。サラさんの寝顔ほぼ毎日見ているから」

「お前。お嬢様の寝顔毎日見ているのか?親子ともいえ。それは許せない」

サラは二人の会話で自分の寝顔で口論しているのを見て恥ずかしくなって帽子で顔を隠し。下を向いてしまった。ヒロがそれに気付き謝った

「サラさんごめんね。寝顔の話で親父と口論して」

サラは。赤面した顔を見られたくないので。帽子で顔を隠したままうなずいた。

ヒロは。クレマに聞きたいことがあったので質問した。

「クレマ様。お聞きしたいことがあるのですが?」

「何でしょうか?」

「はい。サラさんには怒られると思いますが。少し気になる写真を見まして」

「ヒロさん。それって参考書に挟んでいた幼児期の写真?」

「そう。勝手に見てごめんなさい」

「幼児期の写真の何が気になったの?」

「ヒロさんは気づかれましたか?たぶん思っていらしていることであっています」

「やはりそうでしたか」

「ヒロさん。どういうことでしょうか?」

「幼年期の写真の男の子。僕ですよ」

「!えっウソ。お母様ほんとですか?」

「はい。間違いなくサラの横に映っている男の子はヒロさんですよ。あなたが持っている写真はフローレンスが一歳の時。庭で転んでけがをした時。シャルム総合病院でフローレンスを診察している間。預かってもらっていた保育所で。ティモルがとってくれた写真。あなたはそのもらった写真を約十七年間大切にしてきた。理由はわかりませんが」

「お母様。もしかして写真の事があったから。お父様はヒロさんとの交際の話をしていた

のですか?」

「……それは違うと思います。そもそも写真の存在すら知らないと思います。あの写真の

存在を知っているのはサラと私とティモルの三人のみ。それもその場で写真が見られるも

のなので。世界で一枚しかありません」

「世界に一枚だけの写真。そういえばあの時。女の人からこの写真大事にしてつらい時は

この写真を見るといいよと言われて持つようになった。私のお守りみたいなものかな?」

「その時の事。記憶されていますか?」

「記憶がかすかなのですけど。いじめっ子に髪を引っ張られて泣いていると、サラちゃん

をいじめるな。僕がサラちゃんを守ると言ってくれた子がいて。そのお母さんから写

真を頂いたぐらいしか覚えていなくて。だから名前も覚えてなかったです」

「サラさんは。まだ覚えているほうです。僕なんかあの写真見てなぜ?僕がサラさんと一

緒に写真に写っているのか全然わからなくて。クレマ様にお聞きした次第ですから」

「縁って不思議なものですね。本来交わることのないお二人がこうして再会する。私も

まさか。サラの白馬の王子様があなたの人生のピンチを助けていたなんて。とてもすごい

ことだと思います。よほどヒロさんと相性がいいのでしょうね」

「お母様。お母様は写真の男の子が誰なのかご存じだったのですね。だから私が高校三年

の時。大好きだった男の子に振られて。やけになって写真を捨てた時。発見して私に。こ

の写真の男の子。あなたの白馬の王子様ではなかったのと言ってくれた事。今。理解でき

ました」

「そんなこともあったかしら?」

「お母様ったら」

「これは大変もうすぐ十八時ですね。お二人とも晩御飯どうされますか?」

「僕は家に帰ったら母が用意してくれているので。あっ。いけないサラさんA二〇一が診

察に来る時間」

「ヒロさん。どこで見てもらおうか?」

ドアのチャイム音がした。マーガレットが対応してびっくりしていた。

「奥様。ロボットが立っておられますがどう対応したらよろしいですか?」

「マーガレット。ロボットさん。私の主治医だから応接室に案内してもらえますか?」

「かしこまりました」

「サラ。あなたの主治医ロボットなの?」

「はい。有能で素晴らしですよ」

マーガレットはA二〇一を応接室に案内しヒロはサラを抱えて応接室の長椅子に寝かせ

た。

「サラサマ。ドコカイタミヲカンジルトコロハアリマセンカ?」

「痛いところはありません」

A二〇一は右腕と左足の検査と傷口の処理。包帯の交換をして十五分ほどで完了して病院

に。戻って行った。

クレマ・マーガレット・アキレアの三人はA二〇一の検査・処理の速さに驚いた」

「サラに肝心なことを伝える事。忘れていました」

「何でしょうか?」

「サラ。お屋敷に三人しかいないことに気づいておられると思いますが。先のミサイルの事件で。シャルムの町が混乱しているので。落ち着くまでサノバラの御婆様のお屋敷で過ごすことになっています。私も明日。帰省するマーガレットに。サノバラまで送っていただくことになっていますし。お父様も。シャルム城で寝泊まりされますので。このお屋敷には当面。誰もいなくなります」

「それで私は。ヒロさんの家にどのぐらい滞在すればよろしいのでしょうか?」

「先程。シャルム病院に連絡入れて。サノバラの病院での入院。通院の問い合わせをしましたら。一週間くらいで頭のけがの状態が安定するのでそれからでしたら転移も可能と伝えられたので。一応。アガパンサス家に九日間預かってもらうことにしましたので」

「わかりました。九日したら。サノバラの御婆様のお屋敷に行けばよろしいですか?」

「そうですね。十五日の朝に迎えをよこしますので」

「わかりました」

「サラさん。行きますか?」

「はい。お母様。アガパンサス家に行ってきます」

「行ってらっしゃい。ティモルやヒロさんにご迷惑をおかけしないように」

「はい」

「マーガレットサラの荷物アガパンサス家に運んでもらえる?」

「はい。かしこまりました」

アキレアは用事が済んだので。先に家に帰ると言って家路についた。

ヒロ・サラ・マーガレットは屋敷出て駐車場に向かうときサラがヒロにマーガレットの

車に乗せたほしいと伝えてきたので、ヒロはマーガレットの車の助手席にサラをのせド

アを閉めた。車椅子は自分の車の後ろの荷台に乗せた。ヒロとマーガレットはアガパンサス家に向け車を走らせた。

「お嬢様。ヒロ様とご一緒でなくてよろしかったのですか?」

「うん。どうしてもマーガレット話がしたくて」

「私と話を」

「そう。まずは明日からの五日間。ゆっくり休んでください。それから今まで五年間迷惑ばかりかけてごめんなさい」

「お嬢様。私はお世話するのがお仕事ですので」

「フローレンスと比較したら負担の比重が全然違うでしょう?」

「私はフローレンス様には申しわけありませんが。サラ様が好きですし仕事もしやすいです」

「フローレンスより私のほうが仕事しやすい?」

「サラ様は。奥様に似てお金に対して庶民的感覚でいらっしゃいます。ですから服などを用意する時などは自分の感覚で選べるので助かります。あと年が近いせいかも知れませんが人との会話の感覚が近いですので理解もしやすいです」

「そういわれてみれば確かに違和感がないですね。フローレンスと話している時。確かに?がつくことがありますね。考えてみるとそうですね。」

「お嬢様。もすぐアガパンサス家に到着します。ヒロ様が待っておられますが。すごい笑顔ですが何かいいことでもあったのでしょうか?」

二人の乗った車にヒロが寄っていき車のドアを開けサラに朗報を伝えた。

「サラさん。A二〇一からマリアさんの意識が戻ったと連絡が入ったよ」

「マリアの意思が戻った。よかった」

サラは感動して涙があふれ出てきた。

「お嬢様よかったですね」

「うん」

ヒロはサラに。今から病院に行くかどうか尋ねたが明日にしますとの回答だったので

とりあえず二階の部屋に運ぶことにした。

「お嬢様、荷物はどこに置きましょうか?」

「ヒロの部屋だけど?ヒロ。マーガレットに荷物部屋まで運んでもらっていいですか?」

「いいよ」

「マーガレット、荷物二階のヒロの部屋までお願いしてもらっていいですか?」。

「はい。承知しました」

ヒロはサラを二階へ運びベッドに座らせた。マーガレットはサラの荷物を部屋まで運んだ。

「お嬢様こちらのベッドの横に荷物置いておきます」

「ありがとう」

「お嬢様。一つお聞きしてよろしいですか?」

「何かしら?」

「サラ様とヒロ様の間は。このカーテン一枚ですか?」

「そうですね。普通では考えられないと思うけどヒロさんの事。信用しているし。逆にヒロさんが横にいてくれているから。私が安心して生活できているのも事実だから。

「失礼な質問をしてしまい申し訳ないです」

「いいのよ。気にしなくて。気になるのは当然だと思うし当たり前だと思う」

「私はこれで失礼します」

「ヒロ様。お嬢様をよろしくお願いします」

「はい。お預かりします」

「マーガレット。久しぶり実家。ご両親に元気なところを見せてあげてください」

「はい。両親に甘えてまいります。八日後、叔母様の自宅でお待ち申し上げます。失礼します」

「サラさん。明日。マリアさんの面会行く時間だけど。朝九時でいいですか?」

「はい。それでいいです」

「メディカルスーツの被験者の許可が下りたので。途中。大学まで取りに行ってきますの

で。戻ったら。パワースーツ装着しますので。そのつもりでお願いします。それと明日。

今日買った。キュロットワンピース着てもらえますか?」

「!あの短いのですよね」

「そうです恥ずかしいですか?」

「うん。足を見せるの。抵抗あるので」

「……でもメディカルスーツを装着するとき。下着が見えるよりはいいかなと思っていた

のすがサラさんが嫌なら仕方ないです」

「ヒロさん。下着見える?どうゆうことですか」

「メディカルスーツ装着するとき。太ももの付け根からつけるので。ワンピースだと下着

が丸見えになるのですけど」

「ヒロさん。下着が見えること早めに言って下さい」

「あっ。ごめんなさい。言い忘れていました」

「明日。キュロットワンピース着て行きますので」

「無理言ってすいません」

「ヒロ。サラさん。ご飯をできたよ」

「はい。すぐ行きます」

「ヒロさん。お願いします」

「はい。かしこまりました」

「ぷっ。急にどうしたの?ヒロさんが言うと変です」

「いや。ちょっと言ってみたかっただけ」

ヒロはサラを抱えて一階に降りた。一階にはチィモル・アキレア・マリーがヒロとサ

ラが下りて来るのを待っていた。

「みんな揃ったから焼き始めるよ」

「今日の晩ご飯焼肉だったか?」

「ヒロ君。私はどうすればいいのですか?」

「自分で取れそうだったらとってもらっていいですよ。多分難しいと思うので僕がとって

あげるから」

「わかりました」

その日。サラはアガパンサス家の焼肉争奪戦を目の当りにして何もできず。かたまって

いた。焼肉をとる事ができなかったが。幸いヒロがサラの食べる分を死守してくれたの

でゆっくり食べることができた。サラはヒロに感謝した。食事終了後、サラは。自分がクレマの娘と知ったのはいつなのか聞いてみた。

「ティモルさん。私が何処の誰なのか。いつからご存じでしたでしょうか?」

「私が知ったタイミング気になるかい」

「はい。いつから知っていたのかなと思いまして」

「それでは白状しようかな。サラさんの名前を聞いた時」

「やはり最初からご存じだったのですね」

「そういうことになるかな。お母さんにすぐ連絡しなかったのは、私の知っているサラさ

んと。お母さんの性格を考えると家で預かるのがいいかなと思って。お母さんには申しな

かったけど私の事をよく知っているからその件で怒ることはなかったね」

「教えて頂いてありがとうございました。あとヒロ君が三歳ぐらいの時に病院で女の子と

写真を撮りました事。覚えていますでしょうか」

「……あっ〜思い出した。あの時一緒に撮ったの。サラさんだったね」

「覚えていらしたのですか。私。とてもうれしいです」

「ヒロは憶えていなかったのかい」

「はい。憶えていなかったです」

「はい。僕は全く覚えていませんでした」

「ヒロさん。そういうつもりでは言っていませんので」

「はい。わかっています」

「でも。あの時の子がこんなきれいな子になるとはね」

「ありがとうございます」

「ヒロ。サラさんを運んであげて」

「は〜い。今行く」

ヒロはサラを二階まで運び。再び一階に戻りお風呂に入った。湯船の中で国王様が発し

た「サラを大事にしてあげてくれ」と言われたことが少し引っかかっていた。

お風呂から出ると。麦茶を二つのグラスに入れ。二階に持って上がり一つをサラに渡した」

「ありがとう。(ゴクリ)冷たくておいしい」

「サラさん何書いているの?」

「日記書いている」

「サラさん日記書いていたの?」

「ううん。今日が記念すべき日だから書こうかなと思って。大学の友達にもらった日記帳

持ってきたの」

「僕が呼んでもいいのかな?」

「ヒロさんが。どうしても読みたいのであればいいですけど。ただ。私のいない時に読む

のと。書いてあることを他の人に話さないでいただきたいのですが」

「わかりました。守れるかどうか自信ないので。読むのは。やめておきます。そろそろ寝

ますか?」

「もう少し書いたら寝ます」

「はい。部屋の電気どうします?」

「消してもらっていいです。ベッドサイドランプの光で書けると思いますので」

「わかりました。お休みなさい」

「おやすみなさい。今日も一日ありがとうございました」

「いいえ。こちらこそ」

ヒロはサラからお礼を言われてすごくうれしかった。ほんとはもっと話がしたかったが

明日は朝から忙しいので思い床に就いたしばらくしてサラも床に就いた。



==

〈二〇五五年八月八日午前七時〉

「ヒロさん。起きています?」

「う〜ん。サラさんどうかした?」

「背中のファスナーがうまく動かせなくて」

ヒロは。サラのワンピースキュロットのファスナーを上げてあげた。

「ありがとう。助かった」

ヒロは自分が買ってあげたワンピースキュロットが似合っているのでとても

うれしかった。

「サラさん。似合っているよ」

サラは恥ずかしそうにうなずいた。

「うん。」

一階からティモルが上がってきてドアをノックしてヒロが返事をしたのでドアを開けた。

「ヒロ。朝ごはんどうする?」

「すぐ食べるから一階に降りる」

「はい。サラさん。今日はいつもと感じが違うね。いつもはスカートで見えてないけどなかなかの美脚だね」

「ティモルさん。恥ずかしいです」

サラは思わず布団で足を隠してしまった。

「かわいいね。私こんな時期あったかしら?そうそうゆっくりしてられない。ヒロ。朝食用意するから降りといで」

「はい」

ヒロはサラを一階に下ろし、食卓の椅子に座らせてあげた。

テーブルには朝ごはんが置いてあり今日はフレンチトーストとスクランブルエッグとサラダのワンプレートでサラが(おいしそう)と言ってすぐに食べだした。

「ティモルさん。今度フレンチトーストの作り方教えてください」

「いいけど。彼氏さんにでも作ってあげるのかい?」

「はい。そのつもりでいます」

サラの言葉にヒロはのどを詰まらせてしまった。

「なんで。ヒロがむせているのだい。困った子だね」

「ヒロさん。大丈夫?私がびっくりするようなことを言ったばかりにごめんなさい」

ヒロはのどが詰まってしゃべれないので、右手を横に振った。

しばらくしてティモルが話しかけてきた。

「ヒロ。今日の予定は?」

「サラさんを病院まで連れていって、それから大学にパワースーツを取りに行って。病院

に戻ってから。先生とA二〇一とでサラさんにパワースーツを装着してから帰ってくるか

ら予定では六時ごろかな」

「わかった。じゃ大丈夫だね。サラさん。もし元気だったら一緒に晩御飯作ろうか?」

「一緒に作ってもいいのですか?」

「覚える気があれば」

「よろしくお願いします」

「作り始めるまでに帰ってくるように」

「わかりました。頑張って早く帰れるようにします。楽しみだな」

「母さん。僕がいない間もしサラさんに何かあったら助けてあげてほしいのですが」

「しょうがないな。でも、私で手に負えなかったら連絡するよ」

「はい。その時は急いで帰ってきますので」

「お二人ともお手数かけますがよろしくお願いします」

「サラさんは気にしなくていいのよ。これはヒロの問題だから」

「申し訳ないです。サラさんそろそろ病院に行くよ」

「はい。マリアと会うの。楽しみ」

「では私も行こうかな」

ヒロ、サラ、ティモルは一緒に家を出て、病院に向かった途中ヒロとサラは花屋で花束を

買った。病院に着いたらマリアの病室に向かった

「サラさん。マリアさんの御両親と鉢合わせしても落ち着いて対応してね」

「はい、今は落ち着いて対応できそうな気がします」

サラは病室の手前でヒロに車椅子を止めてもらった。大きく深呼吸をしてからヒロに車椅

子を押してもらいマリアの病室に入っていった。

「マリア」

「!サラ」

二人とも五日ぶりに顔を合わせお互い無事だったことで喜び号泣した。落ち着いて買ってきたお花をマリアに渡した。

「マリア。意識戻ってよかった」

「サラ。体大丈夫?」

「私は大丈夫です」

「全然大丈夫そうには、見えないのですけど?」

「そうともとれるかな?」

「サラさん。僕。そろそろ行くね」

「うん。ヒロさん。行ってらっしゃい」

「行ってきます。十三時までには帰って来られると思いますので」

「はい。わかりました」

「サラ。ヒロさんとどういう関係」

「どういう関係でしょう」

「教えてくれないの」

「教えません」

「サラこっちまで来て」

「はい」

サラはマリアに呼ばれたので左手で車いすのレバーを動かしマリアのそばに寄った。座ると。マリアがサラの顔をいじりだした。

「何?マリア何しているの?」

「…………」

「マリア?」

「…………」

「マ…リ…アいつまで人の顔で遊んでいるのよ。

「サラか怒った〜。ごめん。ごめん。あまりにもサラの雰囲気が違うから別人かと思って。

「それで、私の顔で変顔作って遊んでいた?それは筋がとおらないように思いますが?」

「最初は、仮面をかぶっているかなと思って、仮面をはがそうと思っていたのだけど、サ

ラの顔がぷにぷにして気持ちよかったから変顔作って遊んでいました。ごめんなさい」

「マリアだから許してあげる」

「ありがとう。…………」

「マリア。もうやめようね」

「はい。そういえばさっきの男の子コンビニの店員さんだよね」

「うん。そうだよ。覚えていた」

「サラ。仲がいいけど。どういう関係」

「さあどういう関係でしょう?私。黙秘権行使します」

「えっ〜。黙秘?」

「サラ教えて。サラ様。教えてください」

「お断りさせていただきます」

「名前だけでもいいから教えて」

「名前だけね。ヒロ・アガパンサス」

「ヒロ・アガパンサス?そういえばロボットが、私とサラを病院に連れてきた人の名前も

ヒロ・アガパンサスと言っていた」

「マリア意識が戻ったみたいだね」

「親父。何しに来た」

「失敬な。お前の事が心配で見舞いに来た」

「それは。ありがとうございます」

「サラさんだったかな。家には帰られましたか?ここにいているということはまだ帰って

おられないのですか?」

「親父!」

「私ですか?昨日。家に帰りまして、両親と話をしましたが。何か問題でも?」

「今日はお屋敷からこられたのですか」

「すいません。私のメイドが夏季休暇中でして。今コンピューターエンジニアのアキレ

ア・アガパンサスさんの家にお世話になっております。エレン様からお聞きになっておら

れなかったでしょうか?」

「そうでしたか。失礼しました」

「あなた。またサラさんを責めているの?」

「!母さん」

「責めてないです。マリア。俺はここで失礼する」


「サラさん。主人が失礼ばかりでごめんなさいね」

「今日は。話をしただけですので大丈夫です」

「マリアさん。体の調子はどうですか?」

「足以外は大丈夫です」

「それはちょうどよかった。マリアにはそのぐらいがいいかも」

「お母さん。それはひどいです」

「ぷっ」

「サラ。そこは笑うところではないと思いますが」

「失礼しました。マリアの膨れ顔が面白かったので。つい。ごめんなさい」

「サラさん。これからもマリアのよき話し相手、遊び相手になってくださいね。」

「はい。こちらこそよろしくお願いします」

「マリア。これからも、よろしくお願いします」

「よろしく。ところでヒロさんとはどういう関係?」

「…………」

「残念。引かからなったか」

「マリアさん。ヒロ君と会ったの?」

「うん。サラをここに連れてきた時」

「助けてもらったお礼言った?」

「!忘れていた。あとで来た時忘れずにお礼を言います」

「ヒロさん後で来られるの?」

「はい。今大学に行っています」

「どこでしたかしら?」

「ハイドランジア工科大学です」

「そうでしたね。マリアさん言葉使い。サラさんを見習って勉強したほうがよろしいかと

思いますが?」

「そうですね。お勉強しようかな?」

「くすっ」

「サラ。今。笑っただろ」

「ごめんなさい。つい笑ってしまいました」

「サラ。変顔で許してあげる」

「じゃ許してもらわなくてもいいです」

「えっ。そんな……」

「うふふ。サラさんが一枚上手ね」

「やっぱり違うな。五日でそんなに性格代わるものかな?」

「サラさんは、彼と出会ってすごく変わったと思いますよ。クレマ様も自分の娘とは思え

ないぐらい変わったとおしゃっていました」

「お母様がそんなことをおっしゃっておられましたか?正直。私自身。まだよくわかって

ないので。アガパンサス家で生活するようになってから、周りの事を考えながら。話せる

ようになったと思います」

「そうですか。ところで。このお花サラさん買ってきてくださったのですか?」

「はい。お花でも飾ってもらおうかなと思って」

「ありがとうね」

「いいえ」

「マリアさん。何か欲しいものある?」

「今はいい。お母様。ほんと心配かけてすいません」

「あなたが。無事でいてくれてよかったです。ただそれだけです」

「私も、お母様に。心配かけないように心がけます」

「そうしてくれると。私も助かるわ」

「あっ。私もそろそろ。帰らないと。マリア何か欲しいものがあれば、電話でもラインで

もいいので連絡ください」

「は〜い」

「サラさん。ヒロさんがお迎え来るまで。面倒ですがマリアの相手よろしくお願いします」

「こちらこそ。私も。マリアに相手してもらいますので」

「私はこれで失礼します」

マリアはエレンに手を振り。サラは会釈をしてあいさつした。

「サラ。ヒロさんの事教えて?」

「しょうがないな!ヒロさんとの関係だけでいい」

「サラとヒロさんの事。全部」

「お断りさせていただきます」

「サラサマ。ケンシンサセテタダイテモヨロシイデスカ?」

「はい。ロボットさんよろしくお願いします」

サラは補助ベッドを出して車椅子から移り横になった。A201は十五分程でサラの検診が終わり次にマリアの検診を行い十分程で終わり次の検診先へ向かった。

「サラ。なんでヒロさんとのこと教えてくれないの?」

「なぜでしょう?」

「やっぱり私の知っているサラじゃない」

「そうかもしれない」

「サラ?」

「ヒロさんと出会って。自分が変わった感じがする。だから彼に教えていいか聞いてから

話すからでも彼の許可が下りなかったらあきらめてください」

「えっ。そんなに秘密にしないといけないこと?」

「ううん。彼とのことは私だけの判断でなく彼と話して決めたいの。それだけ慎重にしな

いと私とヒロさんでは身分が違うから。お互いが知らないところで話が独り歩きした

ら困るので」

「ヒロさんの事は。ヒロさんが来てからにします。そういえば、サラの両親、よくヒロさんの家に娘を預ける気になったね。」

「それは。私の日ごろの行いがいいから」

「ないない、絶対ない」

「それもそうですね。実は。私のお母様とヒロ君のお母様。高校。大学時代の旧友らしく

て仲が良かったみたい。それと私のメイドのマーガレットさんが休暇を取って屋敷にいな

いので預けられることになったの」

「偶然というよりは奇跡に近いね」

「そうですね。奇跡ですよね」

お昼になりマリアに病院食が出てマリアはおいしそうに食べた。

「サラ。お昼どうするの?」

「たぶん。ヒロさんが買ってきてくれると思う」

「ヒロさん。優しくて気が利くね」

「そうですね」

ヒロが。大学からメディカルスーツをもって帰ってきた。

「ただいま戻りました」

「お帰りなさい。ヒロ君。話があるから外に行こうか?」

「わかった」

「マリア。ちょっと待っていてね」

ヒロとサラはマリアの部屋を出てオープンルームに入った。

「サラさん。どうしたの?」

「マリアがヒロさんと私の関係しつこく聞いてくるので何かあるのかなと思って」

「そうですか?でもどう説明します」

「そうですね。アキレアさんの家にお世話になっていて。ヒロさんに介護をしてもらっている。でいいですかね」

「いいと思います」

サラは。マリアに説明をした。

「分かった。まだ知り合って六日?」

「そうですね」

「これからどうなるかな?」

「マリアさん。どういうことでしょうか?もしかして恋愛とかですか。それはないと思いますと言うか。ないでしょう。身分が違いすぎますから」

「あっそうか。ヒロさん。サラが。誰の娘か知っているのだったね」

「そうですよ。サラさんは国王の娘さんで王女様」

「!マリア。話が飛躍しすぎです」

「そうだよね。ありえないか?」

「うん。ありえないです」

「サラさん。お昼買ってきたけどどうします」

「勿論。頂きます」

「これで少しは株が上がったかな?」

「そうですね。パワースーツの件も含めて。保留にしていた。ドライブデートの件、お受けします」

「よし。お受けして頂いてありがとうございます」

サラは、ヒロの買ってきたシーフードクリームバーガーとポテトとミックスジュースのセットをおいしく頂いた。マリアがうちのハンバーガーと叫んだのは言うまでもなく。ヒロは知らなかったふりをしてダブルチーズスペシャルバーガーとポテト」とコーラを頂いた。

「おいしかった。サラさん。落ち着いたら。パレンバン先生の所に行きましょうか?」

「そうですね。今日はティモルさんとの約束があるから早く帰らないといけないのでそろそろお願いしようかな」

「それではパレンバン先生の所へ行きますか?」

「マリア。またあとでね」

「うん」

「ヒロさん。彼女。どう出るかな?」

「わかりませんが。流れに任せようと思います」

「そうですね」

 ヒロとサラは一階のパレンバン先生のいる診察室へ向かった」

 ヒロとサラは。パレンバン先生の診察室の前に行き。ドアをノックした。

「どうぞ」

診察室の中から声がしたので。ヒロはドアを開けサラと一緒に中に入った。

 中に入るとパレンバン先生とA二〇一がメディカルスーツの調整をしていた。

「サラさん調子はどうですか?」

「はい。特に変わりはないです」

「そうですか。それでは。メディカルスーツの装着を始めるので。ヒロ君。サラさんを診察台に乗せてくれるかな?」

「はい。わかりました」

 ヒロは。サラを診察台に寝かせた。

「サラさん。始めますね」

「はい。パレンバン先生。私はどうすればいいのですか?」

「サラさんは何もしなくていいですよ。私とA二〇一が。スーツの装着と調整をするだけですので。まずは右腕から装着しますね」

 パレンバン先生は。右腕にメディカルスーツを通し。電源を入れた。

(ウィ〜ン)機械が作動して。サラの腕に包み込むようにピタリと収まった。

「サラさん。右腕を動かしてもらえますか?」

「!右腕を動かすのですか?」

「はい。動かしても大丈夫ですので」

「はい」

 サラは恐る恐る。右腕を動かした。

「!右腕が違和感なく動く」

「A二〇一。どんな感じかな」

「ハイ。マゲタトキニ。ヒジノブブンノアツリョクガ。スコシカカリスギテイルノデチョウセイシマス」

 A二〇一は調整を行った。

「サラさん。どうかな?」

「はい。大怪我していると思えないぐらい普通に動かせます」

「そうですか。では。次に右大腿部にスーツを取り付けますね」

「はい」

 パレンバン先生は。サラの右足にスーツを通し電源を入れた。

(ウィ〜ン)機械が動き出して。腕と同じように右足を包み込むようにピタリと収まった。

「サラさん。立って歩いてみようか?」

「はい」

サラは。ヒロにサポートしてもらいながらゆっくりと立って歩いてみた。

「嘘。普通に歩ける」

 サラは違和感なく歩けたので驚いた」

「A二〇一。どんな感じですか?」

「モンダイアリマセン」

「そうですか」

「サラさん。違和感ありませんか?」

「はい。普通に自分の足で立っている感覚です」

「わかりました。サラさん少しでも違和感が出たらすぐに言ってください」

「はい。」

「メディカルスーツの扱いは。ヒロ君に任せますので。よろしくお願いします」

「わかりました。」パレンバン先生。ありがとうございました」

「私は装着しただけだよ」

「でも。メディカルスーツは。医療用で医療従事者しか装着の許可が下りていませんので」

「そうなのですね。先生。ありがとうございました」

「サラさん。お礼なら私でなく。ヒロ君にでも言ってあげて」

「はい」

「ヒロさん。ありがとうございます」

「いいえ。サラさん。マリアさんの所に戻ります?」

「はい」

サラは。マリアの病室に歩いて戻る時に。ヒロにメディカルスーツの装着の仕方と電源の場所、充電の仕方、メディカルスーツの簡単な仕組みを説明した。サラは少し理解できたがわからないときはヒロに聞くということで話は終わった。部屋に入るとサラが歩いているのを見て驚いた。

「!サラ。歩けるの?」

「自力で歩いているのではなく。メディカルスーツのおかげで歩けているのかな?」

 サラは。マリアの病室にある椅子に座った。

「いいな。ヒロさん。私にもメディカルスーツ装着してください」

「……………マリアさんは。ちょっと難しいかな?」

「どうしてですか?」

「今は。テストの段階で。サラさんは。試験者として採用されたので」

「何だ。ヒロさんが。サラにメディカルスーツを提供したのかと思った」

「違います。もしよかったら一応。申請してみます?」

「私でも申請できるの?」

「一応できます」

「ヒロさん。メディカルスーツの試験者の基準って何ですか?」

「そうですね。年齢。性別。身長。体重。けがの場所。状態かな?」

「さっき。ヒロさん私。難しいと言っていたけど。私のけがでは。だめなのですか?」

「ダメというよりも。足首の骨折なので。その部分のけがの試験者が多いので。難しいとお伝えしたのです」

「足首の骨折の人って多いですか?」

「はい。スポーツ選手に多いですね」

「そうですか」

「マリア。ごめんね」

「しょうがないです」

 サラが。急な動きをしてマリアに近づいたので。ヒロが注意した。

「サラさん。急な動きはしないでください」

「はい。わかりました」

「!サラが。ヒロさんに怒られて反論しなかった」

「マリア。私が急に動いたので注意されたので反論しません」

「そうかな。まるでお互いのことわかっている。恋人みたい」

「そんな風に見える」

「見える。見える」

「まだ出会って五日なのですけど」

「そこなのよね。五日で。サラの男性アレルギーが治って。男の子と仲良くなる。普通ではありえないと思う。ほんとわかんない」

ヒロは。サラとマリアが話しているのを黙って聞いていたが一言だけ付け加えた。

「僕はサラさんにとって執事と同じ信頼を築けていると感じています」

ヒロの一言でマリアは納得して二人の件は言わなくなった。サラはティモルとの約束があるのでそろそろ帰ることにした。ヒロはサラに車椅子に座るように促したが。車まで歩くといったので車椅子だけ押して帰ることにした。

「マリア。そろそろ帰るね」

「サラまた明日。来なかったら変顔の罰ゲーム。するからね。

「変顔は勘弁してください。明日必ず来ますので」

「マリアさん。失礼します」

「バイバイ」

サラとマリアは二人で手を振って別れた。

ヒロはサラにマリアの件で話しかけた。

「サラさん。マリアさんへの対応あれでよかったですか?」

「うん。ありがとう」

「そういえば。なんか嬉しそうですね」

「うん。自分で歩けることがこんなに嬉しいと思った事がないから。すごく新鮮な感じで

ヒロさんのおかげです。ありがとうございます」

「サラさんに改めて言われるとなんか照れてしまうな」

「ヒロさんもそんなところもあるのですね」

「ありますよ」

サラは。怪我をしてから。初めて病院の中を歩いて。すごく新鮮な感じがした。

ヒロとサラは車の所まで歩いて行きサラはドアを開け助手席に座った。ヒロはトランクを開け車椅子をなおし運転席に座って家に向かって車を走らせた。

「ヒロさん」

「何でしょうか?」

「メディカルスーツのバッテリーの最大使用時間はどのぐらいですか」

「約六時間でフル充電時間は一時間で予備バッテリーも一個ついているから最大で十二時間は使用可能だよ。これが予備バッテリー」

サラは、ヒロが見せてくれたバッテリーを見て驚いた。

「このバッテリーすごく薄いし軽いし曲がる?」

「バッテリーの総重量は五十八グラム。素材はアグデレスと言って炭素系の素材を使用。このバッテリーは大学で開発した新型のバッテリーで名前は正式な名前がなくて。名称がKI三六〇」

「凄いですね。最新の技術の結晶なのですね」

「そうです。大事に扱ってください」

「はい。大事にします」

「よろしくお願いします」

車はヒロの家に着き車庫に止めた。ヒロはサラに車椅子を下ろすか聞いたがサラは、家の中ではメディカルスーツを使うと返事が返ってきたので、そのまま車に置いておくことにした。二人は家の中へ入り、サラはベッドであおむけに寝そべった。ヒロは買いだめしているジュースとコーラを部屋に持っていきジュースをサラに渡した。サラは起き上がってジュースを飲んだ。

「おいしい。ヒロさん。私。何かお礼がしいんだけど何かしてほしいことありますか?」

「特にないですけど。無理して何かしてあげようと思わなくてもいいですよ」

「それでは私の気持ちが」

「それだけで十分ですよ」

「ヒロさん」

サラは。思わずヒロに抱き着きキスをした。ヒロは。驚いてサラを見た。

「サラさん」

 サラは。自分の行動に。恥ずかしくなって下を向いて返事をした。

「ヒロさん。驚かしてごめんなさい」

「………………」

五時過ぎにマリーが帰ってきて五時三十分にA二〇一が来て処置をして帰り六時過ぎにティモルが帰ってきてサラが一階に降りて行った。

「サラさん。ヒロとなんかあった?」

「いいえ。何もありませんけど」

「なんかすごく元気な感じだから」

「多分。メディカルスーツのおかげだと思います」

「メディカルスーツ。どんな感じ?」

「普通に動けるので。すごく助かります」

「それだったら。一緒にお風呂入らない」

「!お風呂ですか?」

「そう。お風呂」

「メディカルスーツを装着したままお風呂に入ってもよろしいのですか?」

「大丈夫ですよ。病院では。メディカルスーツを装着したままお風呂に入るのは普通に

なっているから」

「そうなのですか?もしご迷惑でなければお願いします」

「では。一緒に入りますか?」

「はい」

サラは今にも泣き出しそうだったが泣いたらダメと自分に言い聞かせぐっとこらえた。

ティモルはサラに料理の説明を始めた。

「今日のメニューはオムライス。ソースはデミグラスソースまずはご飯を炊くだけれど

その中にバター・玉葱・人参・鶏肉を入れます玉葱・人参・鶏肉は一センチ角に切り。

量は御飯の量に合わせて入れてくれたらいいので。今日はご飯を五合炊くからバター

50g玉葱1個・人参1本・鶏肉150gを入れて炊く。炊けるまでの間にソース作り。

今日はキノコのデミグラスソースを作るので材料は生椎茸4〜6枚これを斜めにスライス。

エリンギ2本まず縦半分に切り斜めにスライス椎茸と同じ大きさに切る。マッシュルーム

は水煮だったら水切りしておく。缶詰は二号缶・三号缶どちらでも好みで入れて構わない

ので。私はこれに玉葱の外側を乱切りで切ったものと人参飾り切りして2〜3ミリ切った

ものを使用します。あとデミグラスソースを一から作るのが大変なので市販の粉末のデミ

グラスソースの素とチキンコンソメを使用するの。鍋に水・チキンコンソメ・野菜を入れ

野菜に火が通ったらデミグラスソースの素を入れ。味を整えて出来上がり。

牛肉入りのデミグラスソースを作る時はチキンコンソメでなくビーフコンソメにするとい

いわよ。ここまで出来たらご飯が炊けるまで休憩。サラさんノートの取り方上手だね」

「ノートの取り方ほめて頂きありがとうございます」

「マリーにノートの取り方教えてほしいぐらいだね」

「マリーちゃんと時間が合えば教えてあげようと思います」

「そうしてくれるかい。お願いしときます」

「はい。少しでもご厚意にお返しができればと思っていますので」

「サラさんはお母さんに似たかな?」

「私はそう言っていただけると嬉しいです」

「クレマが泣いて喜びそうだね。あっ。ご飯が炊けたみたいだね」

「今から御飯を玉子で巻くのですか?」

「今日は巻かないよ。上に乗せるだけ」

「ご飯を型に入れてお皿の上に乗せるオムレツを作ってご飯の上にのせてナイフで縦割り

にしてソースをかけて出来上がり」

「おいしそう。私でも作れるようになるかな?」

「大丈夫。最初はうまくいかないと思うけど何回も作ったら上手になるよ」

「サラさん初仕事。冷蔵庫に入っているサラダそこのボール皿に小分けしてくれる」

「はい。わかりました」

サラは冷蔵庫に入っているサラダを取り出しトングで小分けした。その間にティモルは

残りのオムライスを作った。作りながらコンソメスープを作った。

サラは手際よく作っている姿を見てすごいなと思った。

「サラさん。ヒロとマリー呼んできてくれる」

「は〜い。呼んできます」

サラが二人を呼びに行き三人で一階に降りてきた。マリーはテーブルに置いてあったサ

ラのノートを見てすごく見やすいと絶賛しサラのノートの書き方を教わる約束をした。

サラは心の中で少しはお役に立てることに対して喜んだ。ヒロとサラは晩ごはんを食べ

ながら。明日からの予定を話した。ヒロは明日から十日までコンビニのアルバイトを。

オープン(六時)から十五時までバイトして帰ってからサラを病院に送り十六時からラ

スト(午前一時)までバイトで午後七時から八時まで休憩をもらってサラさんを家まで

送るということを話したらサラは困ってしまい言葉を失っていた。ヒロの話を聞いていたティモルは、アルバイトは十五時までにして夕方からはサラと一緒にいてあげてほしいと伝えた。ヒロは。すんなりティモルの意見を聞きアルバイトは十五時までとして、残りの時間はサラと一緒にいてあげることにした。サラは十五時過ぎまで家に居て課題をして時間があれば電子工学の勉強をしてみようと伝えて、もしマリーちゃんが居たら。一緒に勉強をするとも伝えた。ヒロは。サラが電子工学の勉強をしたいとの言葉に驚いたが、わからないことは。メールでやり取りとりすることを約束してあげた。食事後二人は十三日にデートすることを再確認して。十六日は朝六時に出てサノバラに行くことにした。

二十時にアキレアが帰ってきてご飯を食べてお風呂に入ってから書斎に入った。次に。

マリーがお風呂に入りその後ティモルとサラがお風呂に入った。頭のけがの部分は。

ティモルが病院から借りてきた防水カバーをかぶり。初めてアガパンサス家のお風呂に入

り感動した。お風呂がごく一般的なバスタブではなく。日本式と呼ばれているお風呂で

シャワーを浴びて汚れを落としてから浴槽にお湯を七〜八分目まで入れた所に浸

かるサラは初めての体験で気持ちよくて寝そうになった。

「サラさん寝たらだめだよ。危険だから」

「あっ。はい」

日本では寝てしまって。そのまま沈んで水死してしまう人がいるらしくて注意しないと

いけないと言っていた。でもサラは浴槽に浸かることの気持ちよさにはまりなかなか出てこないでいると。ティモルから私上がるけどサラさんヒロに体洗ってもらうと言われたので慌てて。浴槽から出てティモルに体を洗ってもらった。お風呂から上がり下着を付けバスロープをまとってからティモルにお礼を言って二階に上がりヒロにお風呂と言ってあげてからネグリジェに着替えてベッドに転がった。そのまま寝るつもりでいたが。ヒロと話がしたいので起きてベッドの端に座りヒロが帰ってくるのを待った。十五分程してヒロが帰ってきてサラが起きていたので自分に用事だと思いサラの横に座り話しかけた。

「何か話したいことがあるの?」

「うん。少し聞きたいことがあって」

「何かな?」

「ヒロ。私の事。重荷になっていないですか?」

「ごめんね。多分アルバイトのシフトの件だね。あのシフトは毎年の事で夏休みは稼ぎ時

で結構入るから。だから。母さんは。サラさんが居る間はバイト中心でなく。サラさんの

事も見てあげてほしいと思ったから。僕に言ったと思う」

「そうだったんですね」

「うん。サラさんびっくりしてかたまっていたからね」

「私。普段ヒロさんが。どういうシフトでアルバイト入っているか知らないから。シフト

の時間を聞いてびっくりしたので」

「ごめんね。普通の人だったら。びっくりするよね」

「でもよかった。私の事が重荷になっているか思ってしまって」

「それはないですよ。明日早いので寝ますね」

「はい。おやすみなさい」

「おやすみなさい」


==

(二〇五五年八月九日)

朝五時に目覚ましが鳴りヒロが起きると同時にサラも起きてメディカルスーツを装着し。

ヒロを玄関まで見送りに出た。

「サラさん。行ってきます」

「いってらっしゃい」

それを見ていたティモルは一人で笑っていた。サラは二階に戻り。料理用のノートを

取りに行き。一階に降りてティモルの邪魔にならないように料理の作り方の勉強をした。

アキレアが起きてきてサラが料理の勉強をしているのを見て驚いた。

「お嬢様。料理の勉強をしているのですか?」

「はい。アキレアさんお願いがあるのですが?」

「!何でしょうか?」

「アガパンサス家にいる時は。お嬢様と言うのをやめて頂いてもよろしいでしょうか?」

「……………」

「あなた。サラさんで呼んであげたらいいの」

「サラさんでよろしいですか?」

「はい。よろしくお願いします」

アキレアは。この家ではサラの事をサラさんと言うことにした。ティモルが。朝ごはん

を作り終えたところで料理名を聞いた。

「ティモルさん。今日の料理の名前を教えて頂きたいのですが。よろしいでしょうか?」

「今日は和食でご飯・サーモンの塩焼き・納豆・出し巻き玉子・豆腐の味噌汁です」

「よかったらサラさん。早いけど朝食にする」

「はい。頂きます」

「一緒に手伝ってくれる」

「はい」

サラは。ティモルと一緒にマリー以外の料理をテーブルにのせていった。そして三人で朝ごはんを頂いた。アキレアがヒロの事を聞いてきたのでアルバイトに行ったことを伝えた。

食事が終わると片付けを手伝い二階に上がって。ヒロの机にノートパソコンを置き、大

学の課題を始めた。しばらくしてティモルがホットコーヒーをもってきてくれた。

「サラさん。コーヒー飲めたかな?」

「大丈夫です。ありがとうございます」

「!サラさん。このロボットみたいのは?」

「大学の課題のオールオーバーボディスーツのデザイン画です」

「オールオーバーボディスーツ?」

「はい。危険地域での作業等を行う為の補助スーツのデザイン画です。簡単に言うと私が

つけているメディカルスーツの全身版です」

「外見をどういう形にするかというデザインを描いているわけだね」

「はい。そうです」

「サラさんのデザインしたボディスーツが採用されるように頑張って」

「はい。頑張ります。コーヒーありがとうございます」

ティモルが一階に降りて行って。コーヒーを飲みながら一息ついた。ヒロの机の本。大

部分は、電子工学の本だけど。右端の三冊は造形美術の本だけど見たことないな。サラは気になったので三冊を取り出し広げてみた。本を見てサラは驚いた。この本って私が勉強のまったく逆の視点から造形美術を論じている。サラは。本を読みだしはまってしまった。

今まで人が動かせやすく動きやすいスーツのデザインを考えていてけど。この本は形を

作るうえで。まず。物を作るうえで。用途に応じて必要な部分。不必要な部分と考え。人が動かすうえで。動かすのが大変で必要ならば必要度にあった形状にする。必要性の低い部分はそれなりの形状にすると書いてあり。サラは。自分が見た目重視のデザインをしていたことに気付き。デザインに安全性と重要性を加える事にした。今のデザインに肘あて。膝あて。肩と首と足首は二重構造にして頭をどうするか悩んだ。

午後三時三十分日ヒロが帰ってきたので病院に出かけた。

病院に着くとサラはマリアの部屋へ行って話をした。ヒロはオープンルームに行き仮眠した。午後六時になりサラがオープンルームに行き寝ているヒロを起こしてあげた。ヒロは起きて車に乗り家に居帰った。家に帰ったらサラは一旦。二階へ行き料理用のノートをもって一階に降りたヒロは二階に上がり晩御飯まで寝ることにした。

サラは。ティモルに今日の晩ごはんのマグロステーキジュノベーゼソースかけを教わった。晩ごはんができたらマリーを呼びに行き。ヒロは寝ていたので起こしてあげた。晩ごはんを食べ終わるとティモルがお風呂に誘ってきたので一緒に入った。その後ヒロが入り。二階に戻ると。疲れていたのか。サラが寝ていたので。部屋の電灯を消しルームランプに切り替え。床に入った

==

二〇五五年八月十日午前五時

ヒロは起きてそっとベッドから出ようした時。サラも起きた。

「サラさん」

「何か?」

「いえ。なんでもありません」

 ヒロは。一緒に起きずにゆっくりしてほしと思ったが。今は。サラがしたいことをしてもらおうと思ったので言わずにいた。

二人は一緒に着替え一階に降りてサラはヒロを玄関先まで見送り、ティモルに今日の朝食の粗挽きウインナーのソテー・スクランブルエッグ・コーンスープの作り方を教わった。

食事後、ティモルに一緒に買い物に行かないか誘われたので行くことにした。

午前十時に出るという事だったので課題の仕上げとティモルと一緒に洗濯の手伝いをして時間を費やした。家の用事が早く終わったので早めの出ることになった。サラはティモルの車の助手席に乗った。ティモルはオーシャンビッグショッピングセンターに向かった。

「サラさん。ヒロと仲良くやっているみたいだね」

「はいおかげさまで」

「二人を見ていたら新婚当時の事を思い出してね」

「えっ。新婚当時と言う事は。私とヒロ新婚の夫婦に見えているということですか?」

「そういう事かな?」

サラは真っ赤な顔をして下を向いてしまった。

「サラさんかわいいね。これからサラちゃん呼ぼうかな?」

「ティモルさん。サラちゃんはご勘弁願えませんか?」

「大丈夫。しぐさがかわいかったからちょっと言って見たかっただけだから」

サラは、ほっと胸をなでおろした。ショピングセンターについて通路を歩いていると先日買い物をした店舗の店員さんに声を掛けられた。

「こんにちは。先日はご来店されありがとうございます。足のほうはよろしいのですか?」

「いえ。ほんとはまだ治っていないので器具をつけて歩いています」

「そうなのですか。今日はお母様とお買い物ですか?」

「いいえ。彼のお母さんです」

「えっ。失礼しました。あまりにも仲がよろしいので」

「サラさん。ヒロとこの店に来たの?」

「はい。ヒロさんにキュロットワンピースを買っていただきました」

「あっ。メディカルスーツを付けてもらった日に着ていた服ね」

「そうです」

「あの子そんな服のセンスあったかな?まあ。いいか店員さんこの子に似合うワンピース見てもらえないですか?」

「ティモルさん。そんな申しわけないのでいいです」

「サラちゃん。何か言いました?」

「いいえ。何も言っていません。ありがたくお言葉に甘えさせていただきます」

サラはなぜか。ティモルにお母様以上に、頭があがらなくなっていた。店員さんは会話を聞いて笑いながら仲がよろしいですねと言って。サラに似合いそうなワンピースを三着ほど探してきてくれた。

「サラさんどれがいいですか?」

「どれも素敵ですね」

「このえんじ色のハイネックニットワンピースはどう?」

「いいですね。こっちの水色のチュニックワンピースも捨てがたいな。どうしようかな?」

「店員さん。これとこれの二点でお願いします」

「ありがとうございます。サイズがありますので試着なされたほうがよろしいかと」

「お願いします。サラさん試着」

「はい」

サラは試着室に行き二つのワンピースの試着をした。サイズもぴったりで店員さんからもすごくお似合いですと言われた。ティモルは二つのワンピースとおそろいの色のシュシュを二つ購入した。サラは、今にも泣きそうな顔をしながらティモルにお礼を言った。服を購入した後。ティモルはランジェリーショプに行き家族全員の下着を購入した。サラの下着も購入しようとしたが選ぶのが黒のふりふりとか赤のTバックだったのでさすがにサラも勘弁してもらって購入を阻止した。

「サラさんお昼にしようか?」

「はい」

「パスタでもいいかい」

「はい」

ティモルはショッピングセンターの五階にあるレストラン街のパスタ専門店にサラを連れて入店した。

「ティモルいらっしゃい。今日はマリーちゃんと御一緒ですか?」

「!マリーと似ている?」

 ティモルは驚いた顔をした。

「えっ。違った。背格好が似ていたからてっきりマリーちゃんだと思っていた。」

「仕方ないから紹介しようかな。この子はサラさん。クレマの娘」

「!えっ。ティモル。冗談でしょう」

「冗談ではないよ」

「初めまして。今。ご紹介させていただきました。サラ・ティフォリアと申します」

「!えっ。本当にクレマの娘さん?」

「はい。クレマ・ティフォリアの長女です」

「でもなぜ。ティモルがクレマの娘さんと一緒にいるの?」

「いろいろあって。今。家で預かっているの?それより自己紹介」

「あっ。そうだった。私。このパスタ専門店ホワイトペッパーの店長をしていますエレーナ・ディアスと言います。今後ともよろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

自己紹介も終わりティモルとサラはシャルム総合病院の見える窓際の席に案内された。

「ティモルさん。ここから病院よく見えますね」

「よく見えるだろう。ここに来たらいつも窓際に座って病院を眺めながら食事しているの」

 サラはティモルが常に病院の事を考えていることにすごいと思った。

「サラさん。パスタ何にする?」

「はい。入店する前に。サンプル写真を見ていておいしそうだった。ホワイトペッパー特製カルボナーラにしようと思います」

「うんうん。無難なところだね」

ティモルはテーブルの呼び出しボタンを押した。エレーナが注文を聞きに来た。

「私は海老と帆立のクリームパスタ。彼女は特製カルボナーラ以上お願いします。

「かしこまりました」

「サラさんでしたかね」

「はい」

「後ろ姿。お母さんの若い時そっくり」

「!私の後ろ姿。お母様の若い時に似ているのですか?」

「そうね。そっくりよ」

サラは。お母様にそっくりと言われてうれしかったが、周りの人から自分は見られているのだということを認識し自分自身の行動に責任を持たないといけないと思った。パスタがきて二人はおいしそうに食べ、サラはティモルと少しだけパスタを交換してもらった。お会計の時、エレーナがほんとの親子みたいに仲がいいね。とうらやましそうに言っていたのが印象に残った。

「ティモルさん。ごちそうさまでした。今度お母様を連れだしてこようかなと思います」

「それはいい。来るときは前もって教えてね」

「はい。わかりました」

サラはティモルの考えがわかり。お母様に内緒でホワイトペッパーに来店の日時を事前にティモルと打ち合わせすることにした。二人は次に食料品を買いに地下一階に行き食料品を購入した。サラは初めて食料品売り場に行き、食材や調味料などいろいろな商品があることに驚いた。帰宅してかたづけを終わらせ落ち着いたら食料品売り場で購入した苺のショートケーキを頂いた。サラはティモルとショピングセンターに行っていろんなことを学んだことにお礼を言った。

「ティモルさん。今日はいろんな勉強をさせて頂きありがとうございました」

「いいよ。お礼何て。今日は私も久しぶりに楽しくショピングしたから。付き合ってくれてありがとう。そうそう今日の晩ごはんはハンバーグだからね」

「今日は六時までには帰ってきますのでよろしくお願いします」

「今日はお手伝いしてもらうつもりでいているからね」

「わかりました。気合い入れて頑張ります」

ティモルと話をして盛り上がっている間にヒロが帰ってきた。

「お帰り」

「お帰りなさい」

「ただいま。サラさんすぐ出られる」

「はい。すぐ出られます」

 ヒロはサラを車に乗せ病院に向かった。

「ヒロどうかした?」

「うん。今日キングスという人が来店して僕の事を聞いて帰ったらしい」

「ヒロの事を?」

「そう。ちょうど僕が休憩している時で店長が対応してくれたのですけど。不思議なのは

なぜか。彼が僕の名前とアルバイトをしている店を知っているか?」

「それでマリアに聞いてみようと」

「そういううことです」

「話してくれるかしら」

「それはそれで反応だけ見るから」

「反応ですか?」

二人は病院に到着すると急ぎ足でマリアの病室に向かった。病室に着くとマリアは男の子と仲良さそうに話していた。マリアは二人に男の子を紹介した。

「彼はモーリス・ガルディア。私の化粧品の営業さん」

「初めましてサラ・ティフォリアです。」

「初めまして。ヒロ・アガパンサス。ハイドランジア工科大学の学生です」

「初めまして。マリアに紹介して頂きましたモーリス・ガルディアです。ガルディア化粧品の営業をしております」

「マリア。今まで彼の存在聞いたことなかったけど」

「それはそうだよ。親しくなったのはつい二か月前だから。それまでは。営業とお客様の関係でほとんど挨拶だけだったかな」

「そうなのですね。ところでね。キングスが。ヒロさんのコンビニエンスストアに行ったの。それもヒロ君に会いに来たのらしいけど。何か知っている事ある?」

「!キングスがヒロ君に会いにコンビニエンスストアに行った?」

「そうなのよ。なぜ彼がヒロ君の働いているコンビニエンスストアを知っていてそれも会いに行く。不可解でしょう」

「確かに。どこから情報を得たのかな」

「ヒロ君が働いているコンビニエンスストア私とマリアしか知らないはずなのにね」

「……そうだね。でも。私がキグナスにヒロさんの事を伝える意味がないので。すいませんが。お二人すごく仲がいいのですが、お付き合いされているのですか?」

「サラさんと僕の事ですか?」

「そうですが」

「いいえ。どう説明したらいいのかな。そうですね。サラさんが。サノバラの病院に転院するまでのお世話係ですかね」

「サノバラの病院ですか?」

「はい。サノバラまでは長距離なので。一週間程。頭の様子を見てから転院という事になっていまして」

「えっ。初耳。サラ。サノバラの病院に転院するの」

「あっ。ごめん。マリアに伝えていなかったね」

「ごめんじゃないでしょう。サノバラに行ったら会えないよね」

「そういうことになります」

「当面話し相手なしの生活?」

「マリア。ほんとごめんなさい」

「転院はサラのせいではないから仕方ないね」

「ヒロさん。サラさんがサノバラに行ったあとは。どうなさるのですか?」

「!どういう事でしょうか」

「サラさんともうお会いしないのですか?」

「う〜ん。そうですね。サラさんからはこれからも友達付き合いはしてくれると言われていますが。これからどれだけ会うかわからないし。又はお会いしないかもしれないので何とも言えません」

「そうですか?」

「マリア。キングスの事。ホントに心当たりはないのね」

「すいません。僕がキングスにヒロさんの事を話してしまったのです」

「モーリス」

「ではモーリスさん。どういう経緯でキングスに話をすることになったのか。説明をお願いできますでしょうか?」

「はい。先日営業で」

「すいません。モーリスさんはっきりとした日時を言っていただけますか?」

「八月八日の十三時頃、」

「!モーリス」

マリアがモーリスの名前を呼んだが、遅かった。

「モーリスさん。あなたがこの件にかかわっていないのはわかりました。

マリアをかばう気つもりで発言するのはよろしいですが。一つ間違うと刑事事件になりますので。気を付けてください」

「はい。申し訳ないです」

「サラさん落ち着いて。マリアさんにも彼に従わないといけない事情があるかもしれないのでは」

「マリア。正直に話して」

「モーリス」

「サラ。ごめんね。本当の事話すね実は。高校三年の時。キングスに。サラの情報を教えてくれたら。五万ペルと新型のスマートフォンをくれると言われて。つい。ほんとごめんなさい」

「マリア。五万ペルと新型のスマートフォンで私の情報をキングスにリークしたの?」

「ごめんなさい。でもその後は。逆にサラにおまえがリークした事。ばらされたくなかったら。と言われ。それから三年リークし続けた。本当は苦しかった。つらかった。いつ。本当の事。話をしようかと思っていた………………」

 マリアはこらえきれずに泣き出した。

「マリア」

「ヒロさん……ヒロの働いているコンビニエンスストアを教えたのは私です。五名わきかけてすいません。ただ行った理由はわからないです」

「マリア本当の事。話してくれてありがとう」

「サラ。これからも友達でいてくれる?」

「うん。マリアはこれからも私の親友」

「わぁ〜…………。サラ・あ・り・が・と・う」

「マリア。今度。キングスから電話があったら。リークしていたこと。ばれてしまったことはっきりと伝えてね」

「うん」

その後。A二〇一がマリアとサラがけがの処置を行い。サラは十七時三十分すぎにヒロに自宅に戻った。

ヒロは自分の部屋へ戻り。サラはキッチンへそれぞれ向かった。サラはティモルから今日の晩ごはんのハンバーグのトマトクリームソースかけ・玉子スープ・バターライス・シーフードサラダを教わった。サラは、頑張ってサラダを作った。自分としては納得してなかったが、ティモルがほめてくれたのでうれしかった。御飯ができたのでヒロとマリーを呼びに行った。ふとサラは、自分がいつのまにか、アガパンサス家の一員になっていることに気付きほのぼのとした気持ちになりヒロに助けられて本当によかったと感じていた。四人で食事の最中にアキレアが帰ってきて五人で雑談をしながら食事をした。

 食事が終わり、浴槽にお湯がたまったので、サラが一番に入りますと言うとマリーが一緒に入ると言ってきたので一緒に入ることにした。

「サラさん聞きたいことがあるのだけど」

「何かな?」

「お兄ちゃんの事好き?」

「うん。好きだよ」

「どういうとこが好き」

「どういうとこというより。お兄さんと居ていると落ち着くし。ありのままの自分を出せる。それを受け止めてくれる心を持っている」

「私には。そう思えないとこあるけど」

「それはたぶん兄弟だからだと思う。私にも三歳年下の妹がいるけど、相性は悪いと思っているの。全然。考え方が違うし。自分とは合わないと思っているの。だけど血がつながっている妹だし困った時は。相談には乗っているけど。あと性別の違いもあるかも」

「そういうものかな」

「うん。そういうもの」

「お兄さんの理想とする妹。妹が理想とするお兄さん。お互いの理想をお互いがはめて話をするからけんかになる。よく似ているからだと思う」

「お兄ちゃんが理想とする妹?」

「そう。だからマリーちゃんは迷惑に感じていると思う。でも私が来てから絡まなくなったのではないかな」

「そういえば。お兄ちゃん絡んで来なくなってきた?」

「なぜだと思う。私。今日。ティモルさんとホワイトペッパーに行って確信した」

「ホワイトペッパーに行って確信した?どういうことですか?」

「私とマリーちゃん雰囲気が似ているみたい。だからヒロの意識の中で同じように接しないといけないのだという気持ちになっていると思う。だから扱いが同じになってきているでしょう」

「よく考えたら最近同じ感じだな。サラさんありがとうございます」

「何かありました?」

「実はね。さっきも課題のわからないところがあってお兄ちゃんに聞きに行ったら。わかるように説明しながら教えてくれたの。今までなかったことだったので。ついお兄ちゃんに今日は優しいねと言ったら笑って優しいかなって言っていたの。その時。サラさんの影響なのかなと思ったの」

「それでお礼を言ってくれたの」

「はい」

「そう思ってくれただけでも私はうれしいです。そろそろ上がりますか?」

「そうですね」

サラとマリーはお風呂から上がり自分たちの部屋に戻った。サラは部屋に戻ると課題のオールオーバーボディスーツの説明をプレゼンテーション形式での作成を始めた。

ヒロがお風呂から上がるとティモルが声をかけた。

「ヒロ。学費の事なのだけど」

「あっ。しまった。母さんに学費が免除になったこと。伝えるのを忘れていた」

「ヒロ。学費免除?どういうことだい」

「実は。メデカルスーツスーツの著作権の事で。著作権を学校に譲ったら。学費が免除になったうえ。今まで払った学費まで返金してくれたの」

「メディカルスーツ学校で作ったのではないの?」

「授業の一環で作ったものだったら。学校に著作権が行くのだけれど。メディカルスーツは部活で作ったものだから。部品別で著作権があるのだ。それで僕は。メディカルスーツの心臓部のコンピューターを制作して。その著作権を学校に寄与したので代わりに学費が全額免除になった」

「すごいね。お母さんにはよくわからないけど。ヒロは。父さん以上の機械馬鹿だね」

「母さんが出してくれた。学費返済しないと」

「いいよ。今。銀行に入っているお金は。著作権の代わりにもらったお金。ヒロが稼いだお金だから。そのままでいいよ。けど今後の予定だった学費は入金しないよ」

「はい。わかりました」

「そいえば。サラさんとマリー同じ扱いしているね?」

「!母さん。僕ってサラさんとマリー同じ扱いになっている?」

「あら。自分で気づいてなかったのかい」

「うん」

ヒロは返事をして部屋に戻ると。サラが説明文を作成していたので、一階に降りコーヒーを作り。二階に戻ってサラの横に置いてあげた。

サラはニコッと笑ってありがとうと言いコーヒーを一口飲んでから再び説明文の作成を始めた。ヒロは朝が早いのでサラに伝えて床に就いた。

ふと午前二時ごろ、ヒロが目を覚まし、キーボードに頭をのせて寝ているサラに気づきベッドに寝かせてあげた。



                後編に続く

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