集団転移
なんてことない日々だった。僕、黒住将彦はいつも通り教室に入り自分の席に着いた僕は本を読み始める。別に友達がいないわけではない。ただ自分は自分の時間を大切にしたいだけだ。そんな、誰に向けてかわからない言い訳をしながら僕は本に集中する。
「やあ、クロ!おはよう」
だが陽キャに邪魔をされてしまった。この陽キャの名前は青山清二。中学校の頃まで親友だったが、高校でクラスが離れてしまってからは話さなくなっていた。しかし僕とは違い彼は、自分のクラスで一軍の地位を築いている人気者だ。すごい差だな、僕と。
「久しぶりだな、アオ。」
青山は僕のことをクロと呼ぶ。それに倣って僕も青山をアオと呼んでいる。というかお前別のクラスだろ。なんでうちのクラスにいるんだ。
「よぉ、黒住。お前、清二と知り合いだったのか?」
そんな人気者と僕のつながりが気になったのか、わがクラスの一軍男子である星崎勇まで声をかけてきた。
星崎も学校一のイケメンで人気者だ。そんな人気者二人がとが僕に話しけるものだからみんながどんどんこちらに注目してくる。
注目されることは嫌いだ。うまく頭が回らなくなるし、なんだが陰口を言われているような気分になる。今だけ消えたい。もしくは空気くらいに目立たない存在になりたい。
そんなくだらないことを考えながら先ほどの質問に答えようとしたその時。足元が眩しく光りだした。その光は魔法陣のような形を作りながら輝きを増している。そして逃げる間もなく、教室の中が真っ白になった。
光が弱まり怯えながら目を開けると、そこはもう教室ではなかった。驚くほど高い天井、床には魔法陣らしきもの、そして僕たちを取り囲むように大勢の人が息切れしながらも喜んでいた。
もしかするとこれはあれか?それなのか?そんな僕の疑問に答えるかのように豪華なドレスを着た女性が言葉を発した。
「ようこそおいでくださいました!勇者様!」