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三人悪女~男は添え物くらいがちょうどいい?~  作者: 頼爾@11/29「軍人王女の武器商人」発売
第二章 マリン・エジャートン

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いつもお読みいただきありがとうございます!

 マリンはお手洗いに行くために一人で席を立った。

 骨折しているといえど、他の男性はお手洗いまではついてこない。他のところならついてきてくれるが。


 部屋を出たところで嫌な女子生徒に捕まった。側近の婚約者でよくマリンに陰口を言っていた一人だ。セラフィナの取り巻きである。


「まぁ、骨折までしたのに頑張っているのね」

「はい。学費がもったいないので」

「休んだ方が早く治ってよ。無理はなさらないで身の丈で生きた方がいいんじゃない?」


 相手の令嬢が心配する振りをしながら悪意を片手に会話をしてきているのは明白だ。マリンは鼻で笑いそうになって耐えた。誰が見ているか分からない。代わりに悔しそうに唇を噛んで俯いた。密かな自慢であるピンクの髪が顔にかかる。


「そんなんだから婚約者に相手にされないのよ」


 ぼそっとマリンは毒を吐く。目の前にだけ届き、決してどこにも響かない声量で。


「なんですって?」

「あなたみたいに意地の悪い女は男から好かれないわよ。顔にも出てるし。だからあなたの婚約者だって学園で王太子の側にばっかりいて、あなたの相手をしないってわけ。ランチくらいは婚約者と食べたっていいのにね」


 視線だけさっと上げる。口汚く罵ったりなんて馬鹿な真似はしない。だって幻滅されるのは一瞬だから。これまでの努力にあまりに見合わない。人目は常に気にする。


 この令嬢が婚約者に相手にされていないのは本当だ。婚約者である側近がよく愚痴っている。くだらないなと思いながら頑張って聞いてあげている。


「若くて婚約者もいてお金もあるのに、男一人にも相手にされないって惨めね。だってあなたばかり婚約者を追いかけてる。彼は嫌そうにするだけ」


 分かりやすく令嬢の顔が歪むのは見ていて楽しい。セラフィナだとこんなに稚拙にはいかない。このくらい単純だったらやりやすかったのに。なんであのセラフィナは無駄に頭が良く狂っているんだろうか。


「あなたと私、どっちが身の丈に合ってないのかしら。あーあ、ディラン様もかわいそう。側近の仕事で疲れてるのにこんな女の相手までしなければいけないなんて」


 ディランというのは目の前の令嬢の婚約者の名前だ。わざと家名ではなく名前で呼んでみた。狙い通り、令嬢の顔が怒りで赤くなる。


 バカみたい。恋だの愛だのに振り回されちゃって。

 男なんて威張りたいしマウント取りたいんだから、そんな態度じゃダメでしょ。はいはいって話聞いてあげて褒めてあげて、綺麗にして笑って健気にしとけばいいのに。


 マリンは別に王太子が好きなわけではない。彼の権力とお金が好きなのだ。


「あんたなんて顔だけが取り柄の貧乏令嬢でしょ。調子に乗らないで」

「その顔だけの女に負けて嫉妬してるのは誰よ。顔だけの貧乏令嬢につっかかってくるなんてよほど暇なのね。ディラン様に相手にされずに私に八つ当たりするしかないなんて、なんて可哀想な人なの?」


 肩に衝撃があった。目の前の令嬢がマリンの肩を押したのだ。マリンは悲鳴を上げてわざと大げさにバランスを崩して倒れ込む。


 目の前の令嬢はしまったという顔をした。同時にさっきまでマリンがいた部屋の扉が開いて側近の一人が顔をのぞかせる。


「どうした!」


 彼はすぐに事態に気付いたのかこちらにやって来る。マリンに都合のいいことに目の前の令嬢の婚約者だった。


 あーあ、ほんとバカみたい。婚約者に相手にされてないからって私に突っかかってくるから。


「まぁ、どうしたのかしら」


 うっかりマリンは舌打ちしそうになった。絡まれたのを利用して、せっかく同情を集めるために挑発して体を張って倒れたのに。


「エジャートンさん、立てる? 骨折していらっしゃるでしょう?」


 どこで見ていたのか、キラキラの金髪をなびかせた令嬢がマリンと令嬢の間に割り込んできた。このいけ好かない金髪女こそがセラフィナだ。急に登場したセラフィナにディランもその婚約者も驚いて勢いをそがれている。


「ありがとうございます」


 舌打ちをこらえながらセラフィナが差し出した手に縋って立たせてもらう。


 セラフィナが自分を見る目がマリンは大変気に食わなかった。セラフィナはまるでマリンの意図などお見通しのように「可愛い子ネコね」などとからかう表情をしているからだ。


「ぶつかったの? 彼女は怪我をしているんだから注意しなきゃダメじゃない」

「セラフィナ様、申し訳ありません」

「謝るのは私ではなく彼女に対してでしょう」

「っ。エジャートン様、ぶつかってしまって申し訳ありません」


 セラフィナはぶつかったことにしてこの場をおさめるらしい。側近も現場を見ていない上に王太子の婚約者であるセラフィナには文句を言いづらいようだ。

 あちらが突っかかってきたので、マリンとしても計画した行動ではない。このくらいでおさめてもいいかと思った。何事もやりすぎは良くない。


悔しそうに謝る令嬢を見て、もうすぐ取り巻きではなくなるだろうと冷静にマリンは推測した。何かセラフィナにとってまずい事態が起きた時に次のクラリス・ジェンキンスとなるのはこの令嬢だ。


クラリスは取り巻きではなかったけど、次は下の方の使えない取り巻きから切っていくはず。もしかしたらエレイン・パンデミリオンを襲撃したのはこの令嬢の責任になるかもしれない。


 マリンは礼をしてセラフィナの横を通る。

 首筋にチリチリするようなセラフィナからの視線を感じた。


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