第6話 水晶玉
昼過ぎになり、村長の屋敷にエバンスたちが馬に乗ってやってきた。近くの道でまた馬を走らせた後のようだった。
「村長はおるか! 昨日の老人と話がしたい。」
「はい。ただいま。」
村長はエバンスたちを迎え、奥の部屋に通した。そこに村長に呼ばれて老人がエバンスの前に出た。
「方術の占いが当たるのはわかった。それならば人の行いを見通せるか?」
エバンスは開口一番、老人にそう尋ねた。
「それはできます。その人が過去に行ってきたこと、今現在、行っていること、未来に行おうとすることをすべて見通せます。」
老人はすぐに答えた。するとエバンスは身を乗り出した。
「そうか。それなら見てもらいたい者がいる。」
「それはどなたですかな?」
「カーラ夫人だ。」
「あなたのお母さまですな。」
「あのような者は私の母ではない!」
いきなりエバンスは大きな声でそう言い放った。その言葉に老人は眉をひそめた。仮にも継母をあの者扱いにするとは・・・と。
「すまぬ。大きな声を出して・・・。だがあの者はこの伯爵家を乗っ取るつもりなのだ。父に取り入り、私の母を追い出したのだ。そして邪魔になった母を馬車の事故に見せかけて殺して、後妻に収まったのだ。」
エバンスは拳で机をたたいた。
「しかしカーラ様に若様は育てられたとか。」
「ああ、そうだ。だがあの者は人前では猫をかぶっているのだ。父や城の者は騙されている。私も取り込まれそうになっていたが、そうはいかなかった。あの者の野望を教えてくれる忠義な家来がいるのだ。そこで初めてあの者の野心に気づいた。」
エバンスは確信を持っているようだった。
「それで若様はどうされたいのですか?」
「あの者の悪事を暴き、父にあの者の野心をわかっていただいて、ここから放り出すのだ!」
「しかしカーラ様が乗っ取りを画策している証拠がございますか?」
「それはない。だから見て欲しいのだ。あの者が企んだことを。それで証拠が何か出るかもしれない。そしてあの者が何を考えているかを見抜いてほしい。」
エバンスの目は真剣だった。彼は父の伯爵がカーラ夫人に惑わされていると思っていた。老人は少し考えて返事をした。
「わかりました。私の方術でカーラ夫人の本心を見抜きましょう。」
老人は水晶玉を出して中をのぞき込んだ。そこにはカーラ夫人の悪い姿は映らなかった。いやそれよりも献身的に幼いエバンスの世話をしている姿が映し出されていた。泣き声を上げるエバンスをあやし、食事や着替えやお風呂などの世話、病気で高熱が出た時は徹夜で看病している姿が・・・。
「やはりな・・・」
老人はそうつぶやいた。するとエバンスが尋ねた。
「どうであった? 見えたか? あの者のたくらみが。」
「いえ、はっきりとは・・・しかしその方をそばで見られれば、もっと詳しくわかりましょう。」
「よし。それならこれから一緒に城まで来てくれ。そこであの者に会わせよう。」
エバンスはこう言った。それに対して老人はうなずきながら言った。
「ではこれからお城にお邪魔しましょう。供のゲンブも連れて行ってよいですかな?」
「ああ、もちろんだ。では頼むぞ。」
老人はエバンスとともにお城に行くことになった。