五
俺は、朝ご飯の代わりに屋台で買い込んだ。昨日、アーサーと一緒に、どうこが美味しいかリサーチ済みなのが助かった。
「うん。美味い!」
俺は大量の屋台の品を抱え、食べながら歩く。
「そういえば、昨日はアーサーと二人で出かけたけど、なにかあった?」
「うん。美味しい屋台を見つけた」
さすがにプロポーズされたのは黙っていよう。
「それだけ?」
「うん」
「なんだ。プロポーズでもされたかとお思ったわ」
「へ? なんで?」
なになになにごと? なんで?
「だいたい、アナトはアーサーがお気に入りなんじゃないの?」
「まあね。でも、住む世界が違うから」
あっ、そうか……。今、こうして一緒にいるけど、いつかは帰っちゃうんだ……。
「アナトは、アーサーにプロポーズされたら、どうする?」
「えー、そうしたら、ここに住んでもいいかな?」
なんだ。そんなに住む世界が違うって意味ないじゃん。
「そっか……。プロポーズされるといいね」
アナトは、一人でなんか言ってる。放っておこう。そのまま、食べながら歩く。うん。食べながらだと少し歩けるなぁ。
「少しいいですか?」
「なに? アーサー」
「税金について、少し話を伺えればと思うのですが……」
「いいよ」
食べながらとはいえ、ただ歩いているだけだからなぁ。姫だし……。と思っていた時期もありました……。もう、長いよ……。アーサーどんだっけ国政に興味があるの? 俺、知っていることを何度も何度も言ったよ? でも、終わらない……。まぁ、ただ歩いているだけだから、まぁ、いいか……。
なんとか植わった……。長かった……。
「助かりました。ありがとうございます」
アーサーが頭を下げる。本当にもう、長かったよ……。これは、傍にいて欲しいの分かるわ……。税金のことだけじゃないもん……。社会情勢とか、社会インフラとか……。もう、色々と……。まぁ、付き合うか……約束したし……。
「いいよ。また分かんないことがあったら聞いて」
「ありがとうございます」
それにしても、やっぱり民のこと考えているのか……。俺と偽りでも結婚って言うのも分かるな……。
「ねぇ。そろそろ休まない?」
もう結構歩いたし、休んでもいいよね?
「えー、もう?」
「うん」
アナトが溜め息を吐く。
「仕方ないわね。もう少し行ったら村があるから、そこで休みましょう……」
「わーい! やったー」




