四
「保護? といえば聞こえは良いですが、貴方の権利を守りたいのです」
「ほえ?」
「別に、偽りの結婚でも構いません。いかがでしょうか?」
「偽り?」
そんなことしたら、跡継ぎの問題とかどう
なるの?
「はい。跡継ぎは弟もおりますから、大丈夫です」
「ダメだって! アーサーいっぱい努力してきただろ?」
「ですが、この国で暮らす以上、何か手立てが合った方が……」
「ダメ! ったらダメ!」
「はい。分かりました。気が変わったらお知らせください」
もう! アーサーは本当に真面目だ。こんな俺のことも真剣に考えてくれる。でも、ちょっと惜しかったかも? だってアーサーて結婚したら、王妃様だよ! 権力? 二番目だよ! 今の家族も楽させてあげられる!
「でもさ、なんで優馬の兄だからってそこまでしてくれるの?」
「貴方が元居た世界の情報を知りたいんです」
「知ってどうするの?」
「将来、役に立つことが多くて」
「ふーん」
アーサーは、そんなことまで考えてるのか……。
「それだったら、答えられることは答えるけど?」
「本当ですか?」
いや、まー。結婚しなくてもこれぐらい?
「かなり、長くなりそうですが……」
へ? そんなに長くなるの?
「うん。まぁ、それまで友達でいようや!」
「はい!」
「よし! 次、食べる!」
俺は、話題を変えるように食欲に訴えた。やっぱりアーサーは、自分のことよりも、国民のことを考えているのか……。ちょっとだけ見習おうかな? ち、そんなことを考えながらいろいろな名物を食べ歩いた。
次の日の朝、俺は眠い目を擦りながらアナトたちに挨拶をする。
「おはそう……」
「おそよう」
ん? もう時間が過ぎてる?
「朝ごはんは?」
「蒼真が遅いから、片付けられちゃった」
「えーそんな!」
旅の楽しみと言えば、食事だろ? それが無いなんて……。俺はがっつりと肩を落とす。
「いいもん! 屋台でお腹いっぱい食べるもん!」
「はぁ。もう屋台でもなんでもいいから、出発するわよ……」
「はーい!」
俺は、朝ご飯の代わりに屋台で買い込んだ。昨日、アーサーと一緒に、どうこが美味しいかリサーチ済みなのが助かった。
俺は大量の屋台の品を抱え、食べながら歩く。
「そういえば、昨日はアーサーと二人で出かけたけど、なにかあった?」
「うん。美味しい屋台を見つけた」
さすがにプロポーズされたのは黙っていよう。




