三
愚痴? を聞きたくなくて、俺はアーサーの手を取りその場から逃げ出すように飛び出した。
「あーもう。アナトはうるさい!」
「そういうことは、言わない方がいいですよ」
アーサーは真面目だ。
「分かったよ」
まぁ、確かにちょっとだけ言い過ぎたかも? うん、気をつけよう。
「アーサーって、真面目だよね」
「そうですか?」
「うん」
アーサーが何かを考え込む。
「確かに真面目すぎると言われたことはありますが……」
「ほらね!」
「では、そういうことに知ておきましょう」
「ふーん。アーサーは、自分のこと真面目だと思っていないの?」
アーサーがまた考える。
「多少は真面目だと思っていますが、そこまで真面目だとは思っていないです」
「そっか……。俺なんて、不真面目だから、多少でも真面目なのは羨ましい……」
うん。少しはアーサーを見習わないと……。
「ところで、ここの名物って、どこへ行けば食べられるのかな?」
「たぶん、街中ではないでしょうか?」
「よし! じゃあ行こう!」
俺たちは、このとき気が付かなかったんだ。なんか周りの視線を浴びていることに……。
「うわっ、美味しそう!」
「そうですね」
「アーサーなに食べる?」
俺たちは屋台を見て回る。
「迷いますね……」
「じゃあ、片っ端から食べてみよう!」
「そうですね!」
とりあえず、目の前の屋台で注文をした。
「はいよ。お兄ちゃんたちお似合いだね、美男美女カップルだ」
「へ?」
「だって、ずっと手を繋いでるだろ?」
「あっ」
俺はアーサーと繋いだ手を見た。どうしよう。ここで離すとなんだか意識してるみたおだし……。アーサーは特に気にしている風でもないし……。
「ありがとう」
食べ物を受けとり、礼を言う。手は繋いだままだ。
「美味しいですね」
「うん……」
「結婚しませんか?」
「うん……」
って、え? 今なんて言った?
「今……なんて言った?」
「結婚しませんか? と言いました」
「いや、冗談だろ?」
「冗談ではありません」
「いや、いや、いや……」
冗談、そうだよな? そうだと言ってくれ!
「だって、俺、見た目は美少女だけど、中身は男だよ?」
「はい。知っています」
「なら、なんで?」
「優馬のお兄さんだからです」
「はぁ?」
分かんない。訳分かんないよ……。
「兄だって知っているならなんで?」




