二
「アナト……この辺にどこか泊まるところある?」
「まだ、一日も歩いて無いわよ」
「えー、でも……どこか泊まれるところがあるか知って置くのもいいと思わない?」
「もう少し歩くと、街が見えます」
突然、アーサーが言った。
「本当!?」
「はい」
「じゃあ、はりきってその街まで行こう!」
俺ははりきって歩き出す。
「でもさ、アナトの上司の人も、自分で来ればいいのにね」
「上司は……忙しいから……こんなことのために来たりしないわよ……」
「そっか……」
アナトの上司の話で、ちょっとだけペースが落ちる。
「アナトの上司も会ってみたかったな……」
「会えるわよ。ちゃんと旅が終わればね」
「え? そうなの?」
俺、てっきり書類にサインして終わりだと思ってた。そうじゃなかったのか……。
「そうよ」
「ふーん。じゃあ、やっぱりはりきって次の街へ行こう!」
なんだか、少し落ちたスピードが戻った。なんでだろう? そんなにアナトんp上司に会うのが嬉しかったのかな? まぁ、いいや。
しばらく歩くと、小さいけど次の街が見えてきた。
「よし! 今日はあそこに泊まろう!」
「はぁ、なにを言ってるの? まだ日は高いわよ?」
「俺、元ニートだったから、もう歩けない! この体も、元病人だったから歩けない!」
そう言って立ち止まる。
「もうっ! 仕方がないわね! 元病人とか言われたら休むしかないじゃないの!」
「元ニートはいいの?」
「それは、考慮に入れない!」
「そんな……」
元ニートには人権は無いんだろうか……。悲しすぎる……。でもまぁ、休みは勝ち取った! 俺の勝利だ! そう考えて俺は歩き出した。そうでも思わないとやってられないよね?
この小さな町でもアーサーが役に立つ! 良い宿を見つけてくれた。
「いやー、アーサーありがとう! 役に立つよ!」
「いえ。お役に立てたなら嬉しいです」
アーサーはいつも低姿勢だなぁ。もっとこう、王子様らしく高飛車でもいいのに!
「ついでに、この辺の名物ってなに?」
食べ物も聞いちゃおう。
「うーん……」
少し考える。アーサーでも分かんないのかな?
「芋ですか……?」
「芋? 美味しそう!」
アーサーも顔がホッとする。
「さっそく食べに行こう!」
「えー、せっかく宿に入ったから休みたい」
「私も~」
「じゃあ、アーサーと二人で行ってくる!」
「そう。だいたい蒼真、その身体は元病人じゃなかったの?」
あ、やべぇ。
「アーサー行こう!」




