十七
「ねぇ。本当にそのイロンと話せるの?」
エルンが最もなことを聞いてきた。
「うん」
「ふーん……」
「俺だけじゃないよ! ルキウスも話せるし、アナトやイシュタムも話せる!」
話せる人数が多い方が良いかなって思って、女神も数に入れた。
「あ、疑っているわけじゃなくて、ただ不思議だなって思ったの」
え? 疑ってない?
「どうして、話せる人が限られてるんだろうって……」
「あ、それは……」
どうしよう? 転生って言っても分からないし、そもそも転生って言ってもいいんだろうか? 俺は、ちらっと横目でアナトを見る。だが、アナトは俺の視線に気がついていない。
「えーっと、分かんない……」
「そっか……。分かんないか……」
「うん……。ごめんね……」
「えーっ、なんで謝るの?」
それは、真実を話せないからなんだ。
「なんとなく……」
「謝らないで。ソーマたちのお陰で野獣さわぎは収まったし、良いことだらけだよ」
そう、言ってくれると嬉しい。本当にごめん。何も真実を言えなくて……。
「じゃあ、私そろそろ行くね」
「うん」
そう言い残し、エルンは他の場所へ移動した。
「いいの?」
アナトが聞いてくる。
「だって、真実を言ったって分かんないでしょ?」
「そりゃまぁ、そうなんだけど……」
「だから、良いんです」
分かってくれる人が入ればそれでいいや。俺は、アナトの方を見る。そして、クロを見た。
翌日、寝不足の顔をして、俺は皆の前に現れた。昨夜、遅くまでクロと話していたせいだ。おかげで、クロも少しづつ異世界に転生する前のことを思い出してきた。それにしても、異世界転生者、多いな……。他にも居るんだろうか……。神様ってば、手を抜いてない? もう、あの世界で死んだら、この世界に転生でいいやってことになっているような……。まぁ、俺の場合は違うけど……。
「おはよう!」
ルキウスが話しかけてきた。
「おはよ!」
眠い頭で朝の挨拶を交わす。
「クロのこと、なんか分かった?」
「うん。それなりに……・でも、肝心の誰だってのはまだ、思いだせないみたいなんだ……」
「そっか……。まぁ、気長にいくしかないね」
「そうだね……。それにしても、転生者って多くない?」
「それは、私も思った。ただでさえ、蒼真と出会えただけでも奇跡だって思っていたのに……」
やっぱり、ルキウスもそう思ってたか……。




