十六
「野獣……野獣がいるぞ……」
んっ? あ、否定しなきゃ!
「みんな! 彼は違うんだ! その辺で暴れている野獣と違う!」
「でも……」
段々と人が集まってきて、クロは危ない感じに?
「本当に! 本当に違うんだ!」
集まった人々のおかげで、収集がつかなくなる。どうしたらいいんだろう……。悩んでいると一人の人影が現れた。
「皆、まずは話を聞こうじゃないか」
さすが、王様!
「その獣は、野獣とは違う……。そう言っている」
「うん。違うんだ」
「話を聞こう」
王様……ありがとう。
俺は説明をする。人の言葉が分かること。そして、人の言葉を話すこと。ただし、話す言葉に関しては、俺とルキアスしか分からないことなどを話した。俺が話している間、一言も口を挟まないで、王様は聞いてくれた。周りはざわついている。
「それでは、今回のことは?」
やっと王様が口を開く。
「うーん……」
『おそらく、私がやった』
「えっ? そうなの?」
『転生前は、やたらと動物に好かれていた気がする』
「思い出した?」
『いや。なんとなくだが、そんな気がする』
「そっか……」
うーんでも、原因です! って言うわけにいかないしなぁ……。どうしようか?
「今回のことは、このイロンに助けてもらったんだ! ピカッって光ったと思ったら、みんな大人しくなった。俺! じゃない、私のことも助けてくれた!」
「そうか……」
王様、納得した? 納得してない?
「お父様、ソーマのことを助けてくれたみたいだし、もういいじゃないですか」
ナイス! エルン!
「うん! そう! 助けてくれた!」
俺は必死で説明をする。なんとか分かって欲しい。
「そうだな……」
やったー? 王様が分かってくれた?
「うん! 王様、このイロンは良いイロン!」
「そのようだな」
王様の言葉のせいか、周りの意見も変わってくる。
「王様が認めたぞ……」
「野獣とは違うのか?」
さまざまな意見が飛び交う中、少しずつ良い意見も見受けられる。
「さて、残りは明日にでも聞こうかの」
王様がそう言うと立ち去った。続いて他の人々が立ち去る。すべての人が立ち去って、俺達と、エルンだけになった。
「クロ、こんな感じで良いか?」
『私には、これが良いのか分からない』
「そっか……。でも、まぁ、なんとかなったわ……」
『そのようだな』
クロも納得したような感じだ。




