十四
俺は必死に考える。だが、俺の考えは虚しく、非常事態に呼び声がかかった。
「東の地区に現れた!」
野獣? が現れた?
「よし! みんな行こう!」
みんな、返事をして立ち上がる。
「東地区だ!」
俺の言葉に、皆、東地区へと向かう。
これは……凄いな……。総力戦? って思うぐらい、野獣が居る……。俺も、覚悟を決めるか……。そう思い、戦っていると、悲しそうな遠吠えが一つ聞こえる。なんだろう……? 俺は、戦うのを止め辺りを見回す。辺りを見回してみるが、何も見つからない。俺は、遠吠えのした方へ移動してみる。すると遠くに犬? に似た何か生き物がいる。小さいけど二本の角が額にある。
「君なの? 今の遠吠え……」
って、犬? に言葉が分かる訳ないか……。
『そうだ』
えっ? 俺は辺りを見回す。誰もいないよな……。
『お前は誰だ?』
やっぱり聞こえる。もしかして……この犬?
「君が喋ったの?」
俺の問いかけに犬? もどきは少し驚いたような感じがした。
「君なの?」
『そうだ。私だ』
やっぱり、目の前の犬もどきだったんだ。
「君、名前は?」
『クロ』
なんて単純な……。見たままじゃないか……。
「じゃあ、クロ……。今回の事件、どうしてだか分かる?」
『私……がやっている?』
なんで、疑問形なんだろう?
『わからない……』
分からないか……何か知っていると良かったんだけど……。
『気がついたらここに居た。前は別の世界に居た』
「えっ?」
気がついたらって、転生したってこと? いやまてまて、そんな簡単に転生してるってことはないよな?
「君、転生したの?」
『転生?』
「うん」
『あぁ、そうか。転生したのだ。前は、もっと文明が進んでいる世界だった』
とつぜんパーッと辺り一面が光る。それに合わせたかのように、オオカミにも似た、一匹の野獣が俺に襲いかかってきた。途端、凄い速さで目の前のクロが抑え込む。うぉ! 俺、もしかして死にかけた? とりあえずクロのお陰で助かった……。
「蒼真!」
アナトの声が聞こえた。
「アナト!」
俺の声を頼りに、アナトたちが姿をみせる。
「蒼真! 無事だった?」
「うん。クロが助けてくれた」
「クロ?」
「そこの犬もどき!」
アナトたちが、クロを見る。
「あら、これは……」
「うん~」
珍しいものをみるような目つきだ。
「クロ。転生したみたいなんだ」
「そうね。元は人間だけど……」
「人間?」
「そう~そう~」




