六
宿屋に着くとフードを被ったエルフを寝かせる。そっとフードを取り外し、素顔を見た。
「うぉー! やっぱりきれい!」
フードの下には、綺麗な金髪と顔がある。
「でも、男? 女? どっちだろう? 声だけ聞いていると女みたいだけど……」
「うーん……。分からないね……」
ルキウスにも分からないか……。アーサーはどうだろう? 俺はアーサーの方を見る。俺の視線に気がついたのか、アーサーが俺を見た。
「どちらなんでしょう?」
アーサーにも分からなかったか……。アーサーなら、唯一、身体に触れてるし、分かるかなって……。考えてみたら。アーサーはそんなスケベなこと考えないか……。ジッとフードのエルフを見つめた。すると、突然、彼? 彼女? のまぶたが動く。
「もしかして、目が覚めるとか?」
ワクワクしながら待つ。やがて、フードのエルフが目を覚ました。
「えっと……大丈夫?」
うわーっ! 目まで金色だ! やっぱりきれい! と、多少は邪ま? な気持ちでエルフを見る。相手のエルフは怯えているようだ。
「大丈夫だよ! 何もしないよ!」
俺は、必死で安全を問いいた。やがて、アーサーを見つけると安心したようになる。ちくしょーイケメンめ!
「あの、先程、騎士団に渡りをつけられるとか……」
「えぇ」
「お願いします! 私たちを助けてください」
ベッドから降り、アーサーの前へ行き、頼みこみように頭を下げる。
「どうしたんですか?」
「……野獣が……」
「野獣?」
アーサーが尋ねる。
「はい。野獣が私たちの里を襲っているのです」
へー。魔王が居ないなら、野獣が恐怖の対象になるのか……。
「その数、100はくだらないかと……」
「100?」
100匹もの野獣……ちょっと大変かも? 俺はアーサーを見る。でも、野獣なんだから、火を炊くとかすれば追い払えるんじゃないの?
「野獣……」
アーサーが考え込む。
「騎士団は、まず動かないでしょう……」
エルフの顔が青ざめる。
「なんで? なんで動かないの?」
「基本、騎士団は国の有事に動きます」
まぁ、それは最もだ。
「野獣は、基本、人の手で追い払えます。そして、人が殆どいない山奥に、部隊を派遣するのは難しいでしょう……」
「えぇー! なんとかならないの?」
「私が出来るのは、騎士団への紹介ぐらいです」
「王子様なのに?」
「王子だからです。勝手に部隊を動かすことは、出来ません。その間に、国にもしものことがあったら……」
「そっか……」
王子様でも出来ないことがあるんだ……。




