四
ふとすれ違った人に目が行く。あれ? 今の人……。ネコだ!
「ねえ! ネコがいるよ!」
俺は興奮してアナトに話かける。
「うん? ネコ?」
「ほら! あそこ!」
「あら本当」
二人してネコの人を見送る。
「獣人ですね。ものすごく数が少ないんですよ」
「そうなの?」
アーサーに俺は尋ねる。
「この国は。殆どが人間。あとは極わずかの獣人やエルフなどで構成されています」
「エルフ!」
マジか? マジでエルフがいるの? 異世界に転生して来て良かった……。
「ただ、エルフは数も少ない上に、他の者との交流を嫌うので、なかなか出会えませんが……」
「そうなのか……」
会ってみたいな……エルフ……。俺はアナトを見る。アナトは興味なさげにしていた。
「どうやったらエルフに会えるんだろうか?」
「無理ですよ。私も数回しか会ったことが無いので……」
うーん……。王子様が数回……。絶望的じゃないか……。
「そっか……」
今まで、会えなかったのが悔しい……。
「帝都のような大きい街では謙虚ですね。どうしても、人が多くなってしまいますから」
うっ、心を読んだ? アーサーがピッタリの言葉を投げかけてくる。
「まぁ……。会えないなら仕方がないや……」
「でも、わかるよ。会いたいよね? エルフ」
「うんうん」
ルキウスもエルフに会いたいんだ。
「エルフが居るなんて知らなかったし……」
「そうなの?」
「うん。そう」
「まぁ、少数民族ですし、知らない人の方が多いかもしれません」
アーサーがフォローを入れてくれる。
「ふーんそうなんだ」
俺がアーサーに返事をしながら歩いていると、突然、フードを被った人物とぶつかる。
「あ、ごめんなさい」
俺は、アーサーが支えてくれたから転ばなかったけど、相手は派手に転んだみたいだ。フードが脱げて金髪があらわになっている。
「大丈夫です」
相手が慌ててフードを被ろうとする。
「え? その耳!」
相手は深く被ったフードを強く手で抑えた。
「エルフ!?」
相手が立ち上がる。走って逃げようとしたが、こっちの人数が多すぎて壁が出来てしまっている。
「え? 嘘! 本当にエルフ?」
相手が怯えている。
「あ、大丈夫だよ。変なことはしないから」
俺は、相手を落ち着かせるように言った。
「あの……どいてください……」
うぉ! 声も可愛い!




