十五
「あー。旅に出る準備をしようかなって……」
「旅?」
「うん、そう」
アーサーが何かを考え込む。
「元々、ここに寄ったのって、そのためだしね」
アーサーがまだ考え込んでいる。俺、そんなに変なこと言ったかな?
「あの……」
ん? なにかな?
「その旅に私も付いて行って良いでしょうか?」
へ? 突然、何を言い出すの?
「もちろん、迷惑はかけません」
「え? ちょっと待って? 付いて来るってどういうこと?」
「そのままの意味の通りです」
これ、俺一人では決められないよな……。俺は、しばし考え込む。
「俺、一人じゃ決められないし……」
「もちろん、分かっています」
「仕事はどうするの?」
アーサーは少し考え込んだ。
「父上には、武者修行に行かせてくれるように頼むつもりです」
「あーうん……」
アナトは大喜びだろうな……。いや、待てよ。もしかすると、反対? するかも……。なに公私混同してるんだーって……。上司に会いに行くのに、知らない人を連れてけるかって……。でも、モネータのせいとは言え、ルキウスの動向を認めたし……。まぁ、ルキウスは、異世界転生者ってこともあったけど……。
「仲間に聞いてみないと……」
「もちろんです」
どうなることやら……。俺は宿へ向かって歩く。
宿に着くとアナトが居た。もう、元に戻っているよな?
「ただいま。アナト」
「おかえ……り?」
「あーちょっと川に落ちて……」
「そ、そう……」
アナトの視線が目ざとくアーサーを見つける。
「え? アーサー? どうしたの?」
俺と同じくずぶ濡れのアーサーを見た。
「一緒に川に落ちたもので……」
「まぁ、うちの蒼真が何かしたんでしょうか?」
「いえ」
アナトが目の色を変えている。さすがイケメン。
「俺、ちょっと着替えてくる」
そう言い残し、その場を後にした。部屋へ戻り服を着替える。バスタオル? のようなもので、髪を拭く。なんとか見られるようになった。急いで、元の場所へ戻る。アーサーのことだから、自分から付いて行きたいって話はしないだろうけど、アナトが何をするか心配だ。
「おまたせー」
アナトのもう戻ってきたってメがつらい……。
「そうそう。アーサーも一緒に旅に行きたいんだって」
俺は、何でもないように言う。一瞬、アナトがびっくりした顔をした。
「え?」
まぁ、気持ちは分かるけどね……。
「一緒に旅に付いて来るってこと?」
「はい」
アナトがこっちを見る。
「蒼真! あんたしゃべったの?」
「いや……」
俺、何も話してない!




