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 そう言うと、アナトはあっ! って顔をした。

「そうだった……。これって、署名した私と指定した秋鹿蒼真しか、基本的には見えないからね」

 アナトの握りしめた拳がふるふると震えてる。

「だいたい、あのときあなたが返事したから、こんなことになったんでしょ! どうしてくれるのよ!」

「返事?」

「そうよ! あなた、私を見てた! 私たちが見えるって事は、もうすぐ死ぬ人間ってことでしょ! だから、秋鹿優真(あいかゆうま)か? って聞いたら、あなたは”うん”って答えたでしょう?」

 えっ!?

「これって夢じゃないの?」

 アナトがきょとんとした顔で見ている。

「えっ? 俺……夢だと思って……」

「貴方は、秋鹿優真の代わりに死んだの」

「そっか……」

 俺……死んだのか……。なんとなーくそんな気はしていた。

「ごめん……。そんなに大変なことだって思わなかった……。一度でいいから、弟になってみたかった」

 ずっと引きこもっている俺と違って、弟の優真は明るくて人気者で、親の期待も大きい……。一度、失敗した俺には何もない。友人も、学校も、親の期待も……。だから、あのとき弟の名前を聞かれたときに”うん”って答えたら、昔に戻れるような気がした。

「新しい紙、ある? 今度は、ちゃんとサインする……。それで君が助かるなら……」

「ふぅ……。それがダメなのよ。あれは、一度しか作れない契約書だから……」

「一度だけ?」

「そう。それだけの覚悟が必要なことに使われるもの」

「そうなんだ……。ごめん……」

「まぁ、あなたは今、名前が二つあるからしょうがないんだけどね」

 名前が二つ? どういうことだろう? というかこれって俺の夢じゃないのか? 夢の中で俺は死んで異世界転生したとかじゃないのか?

秋鹿蒼真(あいかそうま)っていう、魂の名前と、その身体のミーナって女の子の名前、二つ名前があるのよ」

「この身体って、俺の夢とか幻想とか想像とかそういうものじゃないのか?」

「違うわよ。死ぬ予定じゃなかったあなたを死なせてしまって、とりあえず何とかしなきゃって思っていたら、丁度この世界で自らの魂を殺しちゃった魂の無い身体があったのよ」

「え? じゃあ、この身体って……」

 俺の妄想とか夢とかじゃなくて実態……?

「そう。あなたは、元の世界では死んでいるけど、この世界ではちゃんと生きている」

「あの……。女の子の身体じゃなくて、もっとこう勇者とか賢者とか魔王とか無かったの?」

 俺の質問に、アナトが溜息を吐いた。

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