十
アーサーが深々と礼をいた、
「うん。何かあったらよろしく」
立ち去るアーサーを見送る。夢……か……。例え夢でも、あの世界にいけるのは、ちょっと羨ましい。俺もちょっとでいいから、戻りたいって思うのはダメだのかな……。それにしても、弟の優真に憑依? してるなんて、偶然だろうか? イシュタムは分からないって言うし、どうなんだろう。
「ねぇ~次に行こう~」
突然、イシュタムが話しかけてきた。
「あ、うん」
まぁ、もう戻れないし……深く考えるだけ無駄か……。そう思うと、足を踏み出した。
宿に戻るとアナトが朝と同じく、死んだ魚のような目をしているのに加え、顔も死んだようになっている。
「アナト大丈夫?」
アナトは何も答えない。もう、答える気力もないのか……。モネータとかいうのは凄いな……。
「アナト! ここだけど!」
モネータがやって来た。アナトがあんな風になっているのに、モネータすげえ!
「アナト!」
遠慮なくアナトに詰め寄るモネータ。なんか、アナトが嫌がっていたのが分から気がする……。
「あ……少し休ませて上げて……」
モネータがこっちを見る。一瞬、ちょっとビビった。
「そうね。今日はこの辺にしておきましょう」
そういうと、モネータはその場から立ち去る。正直に言うと、モネータの様子に危機を感じていたのはないしょだ。まぁ、立ち去ったみたいだし、これでアナトもゆっくり寝られるだろう。俺は、死んだ魚のような目と、死んだような顔をしたアナトを残し、部屋へと戻った。
次の日の朝、ちょっとだけ元に戻ったアナトの姿に、ホッとした。
「大丈夫?」
なんか、機械のような動きをして、アナトが俺を見る。
「無理しない方がいいんじゃない?」
「ダイジョブよ……」
なんかアナトが変だ。今日は一日、アナトに付いていた方がいいんだろうか?
「アナト?」
「ダイジョブ、ダイジョブ」
心配だな……。そうこうしているうちに、モネータがやって来る。
「おはようございます」
俺は軽くモネータに頭を下げた。
「おはようございます」
同じく、モネータも頭を下げる。
「秋鹿蒼真さん。今日は、アナトと一緒に居るの?」
「え、えーと……」
モネータの言葉に一瞬、言葉が詰まる。
「俺、出かけます!」
ごめん! アナト! 不甲斐ない俺を恨んでくれ! 俺は、アナトを置いて、街へ繰り出すことにした。
アナトは、大丈夫かな? うーん。きっと大丈夫なはず。俺はそう言い聞かせて街へ出る。




