九
「おはようございます」
無難に俺も挨拶をする。それにしても、こっちの人間なのか……。それなら何で俺の世界の言葉を知っているのだろう? やっぱり聞いたみた方がいいかも? ちなみに、イシュタムには何も期待していない。俺がなんとかしないと……。
「えーっと……」
うーん……なんて聞けばいいんだ? ストレートに、なんで俺の世界の言葉を知ってんの? かな……。
「はい?」
「その……アーサーは……」
いざとなると、言葉が出てこない……。思わず唾を飲み込む。
「こっちの人だって分かっているけど……その……」
なんで俺の世界の言葉を知ってるの? って聞いてっも大丈夫かな? アーサーがなにかを考えるように視線を反らす。
「聞きたいのは。なぜ貴女の世界の言葉を知っているのかですか?」
「えっ?」
驚いた。アーサーの口から言われるなんて……。
「そうなんですね……」
思わず俺は頷く。
「夢を見ます。夢の名かで私は、一人の少年になっています。秋鹿優真です」
えぇっー! なに? それ、どういうこと?
「彼には一人兄がいました。名前は秋鹿蒼真です」
「俺……?」
「やはりそうでしたか。ソーマって名前、こちらではあまり無いもので」
これって偶然?
「でも、確信はありませんでした。性別も違うし……」
「あ、これは……空いている身体がこれしかなくて……」
言い訳みたいなことを言う。
「俺も出来れば男…が良かったけど……」
あぁ、男が良かったけど、まぁ、今の美少女もなかなかイケてる。
「あっ、安心してください。秋鹿優真の中に居るだけで、一切、干渉は出来ませんから」
「そう」
「それでも。色々と勉強は出来ます」
勉強か……。偉いな……。
「なんで、私があの世界へ行けるのかは分かりません」
あぁ、そういえば弟に……。なんでだろう?
「イシュタムなんでだか分かる?」
「分かんない~」
あぁ、イシュタムに期待した俺がバカだった。
「そういえば、兄が亡くなったこと弟さんは、いたく気にかけていました」
「優真が?」
「はい」
いつも何かを言いたそうに俺を見ていて優真……。
「そっか……教えてくれて、ありがとう」
「いえ……」
あの世界を夢に見るアーサー……。少し羨ましいかも? 俺は、夢でも戻れることはないからな……。
「ありがとう……あの世界のことを聞けて……嬉しかった……」
少し涙目なのがバレないように礼を言う。
「いえ。何かあればいつでも言ってきてください」




