四
ルキアスが悲しそうな顔をした、
「父親は、飲んだくれで仕事もしないで何処かへ行った。母親は、そんな父親が嫌で出ていった。兄妹二人っきりだよ」
あっ、良かった。生きてた。でも、酷いよな……。
「酷い両親だな……」
「んー。まぁ、気にしてたってしょうが無い」
ルキアスは強いな……。これ以上、両親のことを聞くのは止めておこう。うん、それがいい。
「ということで……」
ん? ということ?
「私も付いて行ってらダメ?」
えっ? えぇっー! どうしよう……。どうすればいいの? 俺はアナトの方を見る。
「あ、もちろん、食費や宿代は出すから!」
アナトも困っている……。困っているよね? 困っているはず……。
「いいんじゃない!」
「やったー!」
えっ? ちょっと待って? いいの? 本当に?
「ア、アナト……」
俺はアナトの腕を引っ張り、少しルキアスが居る場所から離れた。
「いいのかよ? マジで?」
「今、モネータが来てるから、目を反らすのに丁度いいかなーって……」
アナトの言葉に溜息を吐く。
「アナト!」
突然、アナトを呼ぶ声が聞こえる。
「何をしているの? 会計監査を始めるわよ!」
「あ! 今、知り合いの子が来てるから後でにして欲しいな……って」
「知り合い?」
金髪眼鏡の幼女が考え込む。
「じゃあ、夜に」
そう言うと黙ってしまった。本当に、夜するんだろうか? アナトは胸を撫で下ろしている。
「あ、そういえば……。広場で芸をしていた子よね? 芸の原理は聞いた?」
「うん。思ったよりも単純だった」
「単純って?」
「妹に化学式を教えていた」
「あら、そう……」
何だかガッカリするアナト。俺もそうだ……。俺もそうだ……。もっとスッゴイことがあるって思っていた。
「話は終わった?」
ルキアスが尋ねてくる。いつまでも二人で隅によっていたら変か……。
「あ、ごめん! ちょっと二人で話があって……」
「いいよ。気にしない」
ルキアス……本当に良いやつだ。転生前も良いやつだったに違いない。
「あ、それと宿屋は決まってる? もし、良かったら、私と同じところにしない?」
マジで! マジでいいの? 宿屋の情報だ!
「いいの?」
「いいよ。安くて、良いところだよ」
よし! 宿屋は決まった。文句無いよね? そこでいいよね? そっとアナトの方を見る。うん。なんだか乗り気だ。
「じゃあ、取りあえず宿屋へ行きましょう! イシュタムも文句無いわよね?」
「ないよ~」
あれ? 金髪眼鏡の幼女には聞かなくてもいいの? まぁ、俺には関係ないか……。取りあえず、宿屋へ向かう。




