三
そこへ話が終わったのかアナトがやってきた。
「蒼真? 何してるの?」
「アナト」
近くに寄ってきたアナトが聞く。
「なんか。異世界転生なんだって」
「えぇーっ! そうなの! なんで、ここに来たの!」
「トラックに跳ねられて! 気が付いたらここに……」
「そうなんだ……。それはお気の毒……」
ルキアスが、明るい表情をした。
「そりゃー、キャリアとか無駄になったし、やりたいこともあったけど、ま、仕方ないかなって……」
「キャリア? 以前は何をしていたの?」
「リケジョだったんですよ。これでも研究所に努めていたんです」
「へー」
ちらっとアナトがこっち見た。どうせ、俺はニートだよ……。
「あ、そうそう。女神様って聞いたけど? アナトってもしかして、ウガリット神話?」
アナトが驚く。
「そう! よく知ってるわね」
「私、神話マニアなんです!」
二人で神話談義が始まった。俺、どうすればいいの? ふと見ると、同じく退屈そうにしている妹が居た。俺は思わず笑みを作る。妹は、ルキアスの後ろに隠れると、その場から顔をだす。えっと、どうすればいいんだ?
「こんにちは」
とりあえず無難に挨拶をしてみる。しばらく見つめ合っている。ダメかなこれは……。って、諦めようとした瞬間、妹の口が開いた。
「……こんにちは」
お! 反応あり! やっぱ、幼女は可愛いな……。って、変態だと思われる……。俺は、頭を軽く振った。
「えっと……。お兄ちゃん、今、お話で忙しいね」
妹が首を縦に振った。
「お名前は?」
無難な話題だよな……。俺、ニートだったから、よく分からん。
「……ユーリ……」
「ユーリちゃんか。可愛い名前だね」
ユーリちゃんが兄の後ろに引っ込む。あれ? 俺、間違えた? ニートだったから、よく分からん……。良かった……。照れていただけか。
うーん……。無難な話題……。
「ユーリちゃん、お父さんとお母さんは?」
よし! 無難な話題! だと思ったけど……。少しした後、ユーリちゃんが首を横に振る。えっ、えぇーっ!
「お父さんも、お母さんも居ない……」
ど、どうしよう……。聞いてはいけないことを聞いてしまった……。
「えっと……・その……」
こういうとき、なんて言えばいいんだ? ニートだから分からない……。
「ん? どしたの?」
突然、ルキアスが言葉を掛けてくる。
「俺……知らなくて……」
「何が?」
「お父さんとお母さんのこと……」
知らなかったけど……それでも聞いたらだめだよな……。
「あぁ……」




