二
「君は……異世界転生者?」
はっ? えっ? どういうこと?
「なんで知ってるの……」
思わず答えた言葉に、兄は嬉しそうな顔をした。
「いやー。魔法なんて言葉はこの世界にないから!」
え? えぇっー!? 無い? そんな事って……。
「えっと……。知らなかった……」
マジ知らなかった……。こういう時のために教えておいてくれよ……。
「いやー! 嬉しい! 同じ異世界転生者に会えるなんて! 私どうしたらいいかもう!」
ん? なんか変だぞ? 話し方が変わってる?
「あの……言葉……?」
「あ、ごめん! 私、転生前は女だったの!」
俺と逆? しかもイケメン? なんじゃそりゃー!
「イケメン……?」
「あぁ、なんかこの身体になっちゃった」
「いいなぁ、イケメン……。俺も成りたかったよ……」
しばし何かを考え込む兄。
「もしかして、転生前は男とか? 美少女なのに?」
「あぁ、そうだよ。名前は秋鹿蒼真」
「私は田上莉子。今は、ルキアス・デイン」
ふうん……。なんか、この世界に転生すると性別が逆になるとか? イケメン……。あぁ、イケメン……。羨ましい……。
「あっ、それでなんか魔法について知りたいんだっけ?」
「あぁ、そうそう。あれ、どうやってるの?」
兄、もとい田上莉子? ルキアス? が考え込む。
「ここの魔法って、化学の式と共通してるってことは?」
「うん」
化学式で色々な現象を起こすんだよね。
「妹は、少しだけど魔力がある。だから、妹に色々な化学式を教えてやってもらう」
「それだけ?」
「そう。それだけ。ただし、妹は記憶力が無いって言うか……。すぐに忘れてしまうんだけどね……」
「そっか……。それは大変だ……」
なんか、思っていたよりも単純なんだな。
「おにいちゃん」
妹が兄の服の裾を引っ張る。
「この人だあれ?」
「あぁ、兄ちゃんの友達」
「ふうん……」
妹がそのまま黙ってしまった。
「そういえば、えーっと君? は魔法は使えないの?」
「ルキアスでいいよ」
「んじゃ、ルキアス魔法は?」
「私、そっちは全然。たぶん魔力が無いか、あっても少しだけのような気がする」
あれ? 魔法って誰でも使えるような……。確かアナトはそう言っていた。あっ、でも、魔力? の量は人それぞれのような気が……。
「そういえば、何をしているの?」
「え? 俺?」
「うん。そう」
「あー」
言ってしまっても大丈夫? かな?
「ちょっと女神たちと旅を……」
「女神!」
ルキアスがキョロキョロと当たりを見る。
「ねぇ、女神様はどこ?」
「あーえっと……」




