街を出ようとしたら死にかける
もう、腹が一杯で動けない……。食べ放題なのをいいことに俺、食べ過ぎたかも? いや、俺はもっと食べられるはずだ。って、それは前の俺か……。今は女の子だし、そんなには食べられないと思う。ふと、イシュタムを見る。未だに食べ続けている。あれ、俺よりも食っているぞ? 次にアナトを見た。財布の中を見ながらワナワナと震えている。まぁ、結構、食べたからな……イシュタムなんてまだ食べているし……。
「ねえ~もっと食べていい~?」
「い、いいわよ……」
「やった~」
アナトの返事に喜びながらイシュタムは屋台へ向かう。
「うぅぅっ。経費で申告してやるんだから……」
そっとアナトから目を反らす。
「蒼真はもういいの?」
「うん」
「じゃあ、もう行きましょ!」
「え?」
いや、行くったって食料とか全然買って無いけど? どうすんだ?
「食料とかどうすんの?」
「え? あ、そうね」
アナトはやっぱり変だ。
「次の街で買いましょう! うん、それがいい!」
「えー。それで保つの?」
「とにかく、早く行きましょう! イシュタム行くわよ!」
なんだろう? なにか急ぐ理由なんてあったっけ? まぁ、いいか。
「イシュタム!」
必死にイシュタムを呼ぶ。
「な~に~」
「なに? じゃない。もう行くわよ!」
「え~モネータが来るのがそんなに嫌~?」
アナトが驚きの表情を浮かべる。
「イシュタム……中を見たわね……」
「うん~。何かな~って」
アナトが溜息を吐く。
「分かってるなら、さっさと行くわよ!」
「ん~もう、遅いと思うけど~?」
イシュタムの言葉に、恐る恐るアナトが振り向く。
「ひぃ!」
振り向いた先には、金髪で眼鏡の幼女がいる。ミミぐらい?
「ごきげんよう」
挨拶をする金髪眼鏡の幼女。
「ご、ごきげんよう……」
アナトが挨拶を交わす。誰? 女神?
「会計監査に来たわ」
「はい……」
「えっと……。貴女は今、秋鹿蒼真という人間の護衛? をしているんだっけ……」
どこかから取り出したファイルを見つめながら、そう言った。
「秋鹿蒼真はそこの人?」
金髪眼鏡の幼女が俺を見る。
「そうだよ。俺だよ」
「そう。アナトは十分に貴女を護衛しているかしら?」
ん? そのままふと、アナトの方を見る。なんだかお願いと言わんばかりに俺を拝むように見ている。
「まあ……色々とやってくれているけど……」
「ふーん」




